2011年8月2日火曜日

空海

実家が真言宗の檀家だからといって,特に空海に関心があるわけではないのですが,
6月に「空海からのおくりもの 高野山の書庫の扉をひらく」(印刷博物館)を観てきました。
http://www.printing-museum.org/exhibition/temporary/110423/index.html
7月にはトーハクに「空海と密教美術展」を観に行きました。
http://kukai2011.jp/
空海直筆の全長約12m「聾瞽指帰(ろうこしいき)」の感想は,みな一緒で「上手だけれど,何が書いてあるか,わからない」。
同感ですが,誰でも空海の書いた「針灸」の文字は読めると思う。
「赴神毉道馳心工巧★心洗胃之術越扁華以馳奇」
この★字(分解するとあらまし,扌〔手偏〕に右上部が「ク」+「四」。下部が「犮」。)が読めなかったので,留まっていました。
後から来て追い越していくひとたちが何人も一様に「何が書いてあるか,わからない」と漏らしていきます。
 5分ぐらい考えたけれども,結局わからず,あとで調べたら,★は「換」の増画字でした。

「越」を「越人」のことだと思ったひと,考えすぎです。

「空海と密教美術展」にこれからいらっしゃる方は,特別展をしている1Fの埴輪もご覧になるのをお忘れなく。あのぽっかり,まあるく開いた口は素敵です。
中国関連では,「孫文と梅屋庄吉 100年前の中国と日本」を開催中。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1398

6 件のコメント:

  1. 心を取り換え,胃を洗い清める名医の伝説が有るはずです。何時の何者だったか思い出せないので,コメントを躊躇したけれど,つまり,そういうとんでもない名医の話を求めるのは,何処でも何時でも……,ということです。それは中国でも,無論同じことです。しかも往々にして正史の方技伝に載せたりする。だから,『史記』の扁鵲倉公列伝,中でも(外かも知れない)淳于意が諮問に対えた部分は,とてもとても貴重だということです。

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  2. 「聾瞽指帰」は,『三教指帰』の草稿とされるもので,研究書に拠れば,『時務策』(唐代の試験問題集でしょうか?)に「扁鵲換心,華他洗胃」とあるそうです。もとをたどれば,『列子』湯問「魯公扈、趙齊嬰二人有疾,同請扁鵲求治,扁鵲治之。既同愈。謂公扈、齊嬰曰:“汝曩之所疾,自外而干府藏者,固藥石之所已。今有偕生之疾,與體偕長,今為汝攻之,何如?”二人曰:“愿先聞其驗。”扁鵲謂公扈曰:“汝志強而氣弱,故足于謀而寡于斷。齊嬰志弱而氣強,故少于慮而傷于專。若換汝之心,則均于善矣。”扁鵲遂飲二人毒酒,迷死三日,剖胸探心,易而置之;投以神藥,既悟,如祿。二人辭歸。于是公扈反齊嬰之室,而有其妻子,妻子弗識。齊嬰亦反公扈之室室,有其妻子,妻子亦弗識。二室因相與訟,求辨于扁鵲。扁鵲辨其所由,訟乃已。」の「扁鵲謂公扈曰:……若換汝之心」あたりに行き着くのでしょう。華陀の方は『後漢書』方術列傳の「若在腸胃, 則斷截湔洗」でしょうか。

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  3. かいちゅう8/05/2011

     扁鵲倉公列伝に「湔浣腸胃」、楊玄操難經序に「易心」とありますね。「易」は(「剔」に作るテキストがありますが)「換」と同義です。

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  4. 扁鵲伝のほうに「湔浣腸胃」という語は確かにあります。
    でもそれは,扁鵲が虢の太子の病を治療できるといったときに,中庶子が「あんたが,こんなこともできる,昔の神様のような医者であるならばいざ知らず,冗談を言ってもらってはこまる」と応じた話の中に出てくる「こんなこと」の一つです。
    扁鵲でさえ,自分が「湔浣腸胃」したというわけではありません。
    それが『後漢書』の華佗となると,麻沸散を用いて眠らせて,「断截湔洗,除去積穢」するといっている。
    それは今の医術ではやるでしょうが,長きにわたって「夢物語」だったはずです。

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  5. かいちゅう8/08/2011

     夢物語とは、思えない。
     「積穢を除去」といい、「腸胃を湔浣」といい、実際に胃腸の中をみていないと、表現できないでしょう。外からさわって、汚い物が入っているとは、どうしてもわからない。空けてみたら臭いし汚いから、除去とか洗浣というのであるから、華陀が開腹手術をしたのは、きっと事実だろう。

     

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  6. 他の動物の解体は普通にやっているでしょう。
    「断截湔洗,除去積穢」で治るんじゃないかくらいは夢想もするでしょう。

    で,中庶子がぐだぐだ言っている昔の神医ならいざ知らず,という内容はやはり夢物語としての文脈です。そして中国の歴史書はこれ以降,方技なんぞに関しては,仙人の伝説集になりかねない傾向になるんです。華佗の伝説についても,大丈夫か,夢物語じゃないかくらいの心配は有る。さらに,それ以降は,すべからく眉に唾してみるべきだと思う。

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