2017年9月28日木曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕48

廿五 急死門
中悪と名(なづ)く疾(やまい)あり。是(この)病(やまい)は悪(あし)き気に中(あた)るなり。皆陰中の毒気なり。人多くは莽々(もうもう)たる草の中(なか)、或(あるい)は生(おい)茂りたる藪の裏(うち)、或(あるい)は人常に行(ゆか)ぬ墓(はか)原(はら)にいたり、或(あるい)は古き井(い)口(ど)に入(い)りて忽ち急死することあり。是(この)時忽(たちまち)に百会に二十一壮。間使、年壮。承漿(じょうしょう)に七壮。人中(にんちゅう)に五十壮。陰(き)卵(ん)の下、十字の紋(すぢ)に三壮。神闕に百壮。下(しも)三里に七壮。大に神効あり。皆能(よく)生(しょう)を回(かえ)さずといふことなし。
○溺水(デキスイ/おぼる)して死したるには、神闕に
下二十二~二十六ウラ
百壮。即ち活(いきかえ)ること神(しん)のごとし。
○弔死(チョウシ/くびくくり)したるには、先(まづ)心下を候(うかが)ふべし。微(すこし)にても温(あたたま)りあれは必(かならす)活(いく)べし。法に首を縦(ゆる)めずして索(なわ)を解(とき)おろし、衣服を取(とり)、温(あたたか)なる所に安(やす)く臥(ふさ)しめ、厚く裹(つつみ)きびしく肛門を填(つ)め、一人は頭(づ)髪(はつ)を引(ひき)、縦(ゆる)めず、一人は胸肩を摩(さす)り、頻々(しばしば)屈(かが)め伸(のば)し後(のち)、竹の管を以(もち)て両方の鼻の孔(あな)を吹(ふけ)ば、即ち活(いく)べし。奇々妙なり。必ず針灸を急ぎ施すべからす。三日を過(すご)して章門を焼(やく)こと廿一壮。
○中暑にて死せんとするには、急に両乳(ち)の上(うえ)に灸すること七壮、妙効あり。

2017年9月27日水曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕47

廿四 風癩門
鼻塞(ふさが)り面(おもて)熱して、夜(よる)寝(ねい)れは鼻より血を出(いだ)し、眉毛堕(お)落(ち)、眼(ま)眶(ぶた)腫れ、一身搔(か)痒(ゆく)、瘡(くさ)を成す。三稜針を以て一二日を間(へだ)てて、身上(からだ)の肉黒きところを乱刺し、肉汗(にくかん)出(いづ)るに至(いたる)こと百日。又針して骨に至(いたる)こと初(はじめ)のごとく、汗出(いづ)ること百日、鬚(シュ/ひちひげ)眉(ビ/まゆ)生じて後(のち)に即(すなわち)止(やむ)なり。灸もまた肉黒きところに随(したがい)て佳(よ)し。只(ただ)調摂(ようじょう=養生)は専ら針灸の法に依る。慎(つつしん)で風寒に触(ふるる)ことなかれ。良効あり。治穴(ちけつ)は委中・尺沢・太冲(たいしょう)、皆針して血
下二十二~二十六オモテ
を出(いだ)し棄(すつ)ること糞のことし。池門・中渚(ちゅうちょ)・絶骨・崑崙・申脈・太淵・照海・内関・合谷・心兪(しんのゆ)・肺兪(はいのゆ)・胃兪(いのゆ)・脾兪(ひのゆ)等、皆治(ぢ)すべし。
〔・池門:未詳。〕
〔『鍼灸經驗方』風癩(一名大風瘡。傷於隆冬心肺受邪):「鼻塞面熱、夜寢自鼻出血、眉毛墮落、一身搔痒、成瘡。以三稜鍼間一二日亂刺身上肉黑處。至肉汗出百日。又鍼至骨如初汗出百日。鬚眉還生後即止。灸亦隨於肉黑處、亦佳。調攝則一依鍼灸法。慎勿觸風寒。有大效。治穴、委中・尺澤・太冲、皆鍼出血。池門・中渚・合谷・内關・申脈・大淵・照海・絕骨・崑崙・心兪・肺兪・胃兪・脾兪」。*ハンセン氏病か。〕

2017年9月24日日曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕46

廿三 婦人門
婦人多くは血病なり。経水(けいすい)期(ご)なくして来(きたる)ものは、血(けつ)虚して熱あるものなり。経水来(きたら)んとするに痛(いたみ)を作(なす)ものは、血(けつ)実して気の滞るなり。
○婦人月水(がつすい)調はず、或(あるい)は小産の後(のち)帯下(タイゲ/しらち)腹痛、口乾き発熱(ほつねつ)し大腸(だいちょう)調はず、時々(よりより)血(ち)を下し、久しく懐(はら)孕(ま)ざるには、石門に七壮より百壮に至

下二十ウラ
る。曲泉に三十壮。奇効あり。
〔・小産:流産。〕
○女子(にょし)十五六歳にして経水(けいすい)行(ゆか)ず、日夜寒熱往来し、手足痺れ、食進(すすま)ず、頭痛、心(むね)悪(あし)く嘔吐(オウド/えづきはき)し、腹中塊(かい)ありて否(つか)へ痛(いたむ)には、天枢に百壮、章門・大腸兪(だいちょうゆ)・曲泉・曲池、臍(へそ)に対する背骨(せほね)の上(うえ)に二十一壮灸す。即効あり。
○陰挺(いんでい)の出(いづ)るには、照海・太敦(だいとん)・太谿・陰蹻・曲骨・曲泉に三壮。
〔・陰蹻:照海があるので、陰蹻脈の郄穴である交信穴の別名であろう。〕
○血塊ありて月事(つきのもの)調はざるには、関元・間使・陰蹻・天枢、皆針して奇効あり。
○臍下(ほそのした)に冷疝ありて時々(ときとき)痛(いたむ)には、気海・独陰・陰交・太冲(たいしょう)に灸すること百壮より二百壮。
○赤白(しゃくびゃく)の帯下(たいげ)には、曲骨に七壮。太冲(たいしょう)・関元・復溜・三陰交・天枢に一百壮灸す。
○月経(つきのもの)の通ぜざる
下二十一オモテ
には、合谷・陰交・血海・気衝に針すべし。
○血淋には、丹田に七壮より一百壮に至る。
〔・血淋:淋證以尿血或尿中俠血為主要症候者。 《諸病源候論·淋病諸候》:“血淋者,是熱淋之甚者,則尿血,謂之血淋。”〕
○淋瀝(リンレキ/しょうべんしただり)には、照海・曲泉・小腸兪(しょうちょうゆ)、皆針して神効あり。
○悪血(おけつ)にて腹痛するには、石門に十四壮より百壮に至る。陰都、巨闕(きょけつ)を挟(さしはさ)むこと一寸五ア〔=部=ぶ=分〕にして、下(しも)の二寸に直(なお)る。灸三壮、針を禁ずべし。一度針せば身を終(おわる)まで子なし。四満は臍(へそ)の傍(かたわら)を挟(さしはさ)むこと五分にあり、下(しも)の二寸直(なお)る。灸三壮、神効あり。
〔『鍼灸經驗方』婦人・胞中惡血痛:「石門二七壯至百壯。陰都挾巨闕一寸五分、直下二寸。三壯。禁鍼、鍼之、終身無子。四滿、在挾臍傍五分、直下二寸、三壯」。〕
〔・黄龍祥『中国鍼灸史図鑑』第貳編「明堂与経絡」の結語は、腹部穴の正中線から各経までの距離について、「現存する鍼灸文献や鍼灸図には,腹部穴の正中線から各経までの距離には,以下の五種類がある」として、
①腎経は半寸,胃経は一寸半,脾経は三寸半。
②上腹部の腎経と胃経は各一寸半,下腹部の腎経と胃経は各一寸。脾経は四寸半。
③腎経・胃経・脾経,各一寸半。
④上腹部では各一寸半。下腹部では腎経は五分,胃経は二寸,脾経は四寸半。
⑤上腹部では腎経は半寸,胃経は二寸。下腹部では腎経は一寸半,胃経は二寸。
をあげている。このうち、④にあたるものとしては、韓国にある銅人形をあげるのみで、書籍の存在はあげられていない。『鍼灸經驗方』は、ここで、腎経で上腹部にある陰都を正中線から一寸五分、下腹部にある四満を正中線から五分とするので、④の例に合致する。〕
○乳癰には騎竹馬の穴(けつ)に灸して妙効。
○乳(ちち)の汁なきには亶中に七壮より五十壮に至る。妙とす。是(この)穴処は針を禁ず。
○陰中乾き痛(いたみ)て陰陽を合(ごう)すること能はざるには、曲骨に五十壮、奇効あり。
〔・陰陽を合する:性交する。〕
下二十一ウラ
○小便より血交(まじ)り出(いづ)るには、膈兪(かくゆ)に針すること三分、留むこと七呼(なないき)、灸三壮。
○月事(つきのもの)断(たえ)ざれは、陰蹻に三壮。陰交に百壮。

2017年9月23日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕45

廿二 五癇門
△夫(それ)急驚風は風(かぜ)に因(よつ)て作(おこ)る。或(あるひ)は禽獣雞犬の声(こえ)を聞(きき)て作(おこ)る。口(くち)涎(よだ)れを生じ、一身搐搦(チクデキ/ひきつり)し、身口(しんこう)皆熱し、其(その)発(おこ)るや暴烈(ホウレツ/にわかはげし)し、惺(さめ)て後(のち)、旧(もと)のごとし。
下十九オモテ
慢驚風は大病(たいびょう)の余(あまり)、或(あるい)は大(たい)吐(ト/はく)の余に発するものなり。内(うち)大(おおい)に虚乏(きょほう)し、其(その)身口鼻(しんくひ)の気出(いつ)れとも、皆冷(ひえ)、時々(おりおり)瘈瘲(けいちゅう)す。或(あるひ)は昏睡(コンスイ/よくねいり)して睛(ひとみ)を露(あハらす)の類(たぐ)ひなり。
〔・あハらす:「あらハす(あらわす)」の誤りであろう。〕
右(みぎ)急慢驚の両症ともに気絶するものは、先(まつ)大衝の脉を胗(みる)に、絶(たえ)ざるものは必(かならず)治(ち)すべきなり。
○其(その)治方(ちほう)には百会に三壮(ひ)灸す。或(あるい)は両乳(りょうち)の頭(かしら)に五壮、背(せなか)の第(たい)二椎(すい)と五椎とに灸七壮(ひ)。或(あるい)は臍(へそ)の中(うち)に百壮(ひ)。神効あり。
〔・椎:繰り返しになるが、原文は「推」。〕
△医多くは大炷(だいちゅう)を以て灸壮(きゅうかず)を多くせず、僅(わづか)に十四五壮(ひ)にして止(やむ)。曰く不治(ふぢ)なりとす。歎すべし。予(よ)往々是(この)症(やまい)に遘(あう)ことに、先(まつ)太衝の脉を胗(しん)して未(いまだ)絶(たえ)ざるものは、肝兪(かんのゆ)・鬼眼(きかん)・神庭・百会
下十九オモテ
等(とう)に灸し、後(のち)に神闕に灸す。五十壮(ひ)より百壮(ひ)二百壮にいたりて輒(すな)はち効を奏することあり。
△案(あんず)るに、火気(かき)神(しん)に徹せずんは験(しるし)なし。神(しん)を補ふに火気を以てす。火気能(よく)生(せい)を回(かえ)す。神(しん)また火気を得て盛(さかん)なり。効(こう)あるかな。艾火(がいか)の神(しん)を殷(さかん)にし、病(やまい)を減ず。孟軻の曰く、三年の病に七年(しちねん)の艾(もぐさ)を用ゆ、と。若(もし)之(これ)に拠(よら)ば、よく治(ぢ)せざるもの疾(やま)ひならん乎(か)。
〔『孟子』離婁上:「今之欲王者,猶七年之病求三年之艾也」。覚え違いか、意図的な改変か。〕
  馬癇には、金門・神門・臍中に三壮(ひ)。
  羊癇には、大椎(たいずい)に三壮、第九椎(たいぐずい)の下(しも)に三壮。
  牛癇には、鳩尾に五壮、三陰交・大椎を治(ぢ)す。
下二十オモテ
  雞癇には、百会・間使・絶骨・申脈七壮。
  犬癇には、労宮・申脈に各(おのおの)一壮づつ。
  猪癇には、太淵・巨闕・絶骨に三壮。
  食癇には、鳩尾の上五分に三壮、三陰交。
〔『千金要方』卷五上・候癇法・灸法:「馬癇之為病,張口搖頭,馬鴻(鳴?)欲反折,灸項風府・臍中二壯,病在腹中,燒馬蹄末,服之良。
牛癇之為病,日(目?)正直視腹脹,灸鳩尾骨及大椎各二壯,燒牛蹄末,服之良。
羊癇之為病,喜揚日(目?)吐舌,灸大椎上三壯。
猪癇之為病,喜吐沫,灸完骨兩傍各一寸七壯。
犬癇之為病,手屈拳攣,灸兩手心一壯,灸足大陽一壯,灸肋戸一壯。(肋戸は未詳)
雞癇之為病,搖頭反折,喜驚自搖,灸足諸陽各三壯。/右六畜癇證候。」〕

2017年9月22日金曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕44

下十五ウラ
※四花穴の図あり。省略。
廿一 小児門
○遊風の毒、胸腹に入(いる)則(とき)は死(しする)なり。是(この)時急に三稜針を以て紅(あか)き処を乱刺して多く悪(お)血を出(いだ)し、翌日更に紅赤(こうしゃく)の処を見て、右のごとく針刺(しんし)す。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「火丹毒謂遊風、入胸腹則死(即用利鍼、周匝紅處多出惡血、翌日更觀紅赤處、如右鍼刺效)」。〕
〔・遊風:『幼科概論』論小兒之遊風丹毒:此症由娠母過食辛辣煎炙之物,或久卧火炕,内熱熾盛,波及生兒,降生後復感風邪,將血中已蘊之熱毒引起,發爲遊風丹毒。失治能漫延全身,變症百出,亦能致命也。俗云風疹·風疙疸者是。其症象小兒身上忽然紅腫,或分點粒,或成片斷,脹痛發癢,甚至滿身皆有,遊走無定。萬不可用手抓搔,因指甲梢有毒,能引外風,立刻全身皆起,且能起至二層三層。斯時起到何處,何處肌膚即行麻木癢痛。入口内小兒即不能吮乳,到心口上,小兒即心中慌亂,啼不住聲。再甚涕淚皆乾,丹毒轉向裏攻進,侵及神經,筋青鼻煽,痙攣抽搐,立時發措手也。其初跳見白斑,漸透黃色光亮,皮中恍如有水,脹破即流黃水,黃水到處,同樣之症型旋生,濕爛痛癢,名爲水丹。多生腿膝等處,屬脾肺有風熱而濕也。又有頭面身體起赤紅平點,不發熱而乾燥作痛癢,起多即連成雲片,名爲赤遊丹,是血分有火而受風也。又有遍身起扁疙疸與肉皮同色,無熱而微脹痛兼癢,遊走不定,是爲膜冷所致。又名冷丹,由胎毒未能發出肌膚,外受風寒郁遏也。又有腰間紅腫一圈,名纏腰,甚毒火甚更,是心包及内腎有毒熱感風邪而成,其發甚速,頃刻傷生,無法救治也。總之丹毒起于胸腹及于四肢者,其症象順而吉,起于四肢及于胸腹者,症象逆而危,治療之宜急也。今將各項丹症的治法藥方列下,按症之現象,應服何等方劑,即對症與小兒服之,自可應症而癒也。治水丹應用天保採薇湯,此症濕盛,脾氣因之不運化,濕熱郁積成毒,復感外間風邪而起,治法宜用利濕清熱,疏風邪,通脾氣法,使其熱清風去濕開氣通,脾能營運,毒自解也。
『漢方用語大辞典』:赤遊風·赤遊丹ともいう。一種の急性に皮膚にあらわれる風証である。多くは小児に見られ、口唇·眼瞼·耳たぶまたは胸部·背部·手背などに多発する。常に突然発生し、消失も速やかで転移も一定しない。患部の皮膚は紅く炎症を起こし、かつ浮腫は雲のような形で灼熱感がありかゆい。形が風疹のようであれば、さらに大きくなる。発熱·腹痛·嘔吐·吐瀉·便秘などをともなう。一般に背腹よりおこって四肢に流れていくものを順とし、四肢よりおこって胸腹に入るものを逆とする。食物アレルギーなどによって起こる。血分に滞れば赤色を発し、赤遊風·赤遊丹と名付け、気分に滞れば赤色となり、白遊風と名付ける。〕
○驚風には神道に灸七壮より百壮に至る。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「驚風(神道、在第五椎節間、灸七壯至百壯。即效)」。〕
○陰卵(きんだま)偏(かた)く大(おおい)にして、腹に入(いり)たるには、太冲(たいしょう)·独陰(とくいん)・気海·三陰交·関元を治(ぢ)すべし。
〔・偏(かた)く:「く」は、繰り返し記号が短くなっている形。パソコンで縦書きでは「〳〵」をつかう。読みは「カタカタ」。一方。かたほう。〕
〔『鍼灸經驗方』獨陰二穴:「在足大指次指內中節橫紋當中。主胸腹痛及疝痛欲死。男左女右」。『鍼灸大成』獨陰二穴「在足第二指下,橫紋中是穴,治小腸疝氣,又治死胎,胎衣不下,灸五壯」。〕
〔『鍼灸經驗方』小兒:「陰卵偏大入腹(太冲·獨陰·氣海·三陰交·關元)」。〕
○雀目(とりめ)には、手の大指(おおゆび)の甲(つめ)の後(うしろ)の第一の節の内の橫紋(よこすじ)
下十六オモテ~十八オモテ
の頭(かしら)白肉の際(あいだ)に各(おのおの)灸一壮(ひ)。肝兪(かんのゆ)に九壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「雀目(手大指甲後、第一節內橫紋頭白肉際各)灸一壯。肝兪(九壯)」。〕
○児(こ)生(むま)れて一七日の内啼(なく)こと多く、客風(カクフウ/かぜ)臍(へそ)に中(あた)りて、心脾に至るには、神門·合谷·太冲(たいしょう)·列缺、各灸七壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「兒生一七日內多啼客風中於臍、至心脾(合谷·太冲·神門·列缺七壯。承漿七壯)」。〕
○先に驚(おどろき)て後(のち)に啼(なく)ことの噪(さわが)しきには、百会に七壮。齦交·間使に五壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「先驚後啼(百會七壯。間使·齦交)」。〕
○浮腫(フシュ/うき)ありて気促するには、水分に三壮、三陰交に三十壮。脾兪(ひのゆ)に三壮。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「浮腫(水分三壯。三陰交三十壮。脾兪三壯)」。〕
○乳(ち)を吐(はく)には、中庭。亶中(だんちゅう)の下(しも)一寸六分に灸すること五壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「吐乳(中庭、在亶中下一寸六分、灸五壯)」。〕
○四五歳まで言(もの)いわざるには、心兪(しんのゆ)、足の内踝(うちくるぶし)の尖(とがり)の上(うえ)に各々(おのおの)灸すること三壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「四五歳不言(心兪·足内踝尖上各灸三壯)」。〕
○臍(へそ)の腫(はれ)るには、臍(へそ)に対する背骨(せほね)の上(うえ)に灸三壮、或(あるい)は七壮。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「臍腫(灸對臍脊骨上、灸三壯、或七壯)」。〕
○小便通ぜざるには、百会に七壮。湧泉に三壮。胞門に五十
下十六ウラ~十八ウラ
壮。而(しこう)して後(のち)、芭豆(はず)の肉を搗(つき)て、餅となし、臍(へそ)の中(なか)に填(うめ)て灸五七壮。妙。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「小便不通(百會七壯。營衝各三壯。丹田二七壯。湧泉三壯。胞門五十壯。又用巴豆肉、搗作餅、或炒鹽安填臍中。灸五七壯)」。〕
〔『鍼灸經驗方』大小便不通:「膀胱兪三壯。丹田二七壯。胞門五十壯。營衝在足内踝前後陷中、三壯。經中穴、在臍下寸半兩傍各三寸。灸百壯。大腸兪三壯」。〕
○口(くち)噤ずるには、然谷を治(ぢす)べし。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「口噤(然谷)」。〕
○善驚(おどろく)には、然谷。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「善驚(然谷)」。〕
○多く哭(なく)には、百会。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「多哭(百會)」。〕
○遺尿(イニョウ/よばり)には、気海に百壮。太敦に三壮。妙効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「遺尿(氣海百壯。大敦三壯)」。〕
○夜々(よなよな)魘(ゆめ)を見、悎(おび)へ、或(あるい)は自汗し、驚き悸(むなさわ)ぎし、或(あるい)は詈(ののし)りて息(やま)ず。又は譫語(うわこと)をいふには、心兪(しんのゆ)に百壮。腰眼·大陵·湧泉·後谿等(とう)に三壮。即効あり。
〔・悎(おび)へ:書いてあるのは、忄+牛+繰り返し記号(「渋」字の右下の部分)。本来なら「忄+犇」と翻字すべきだが、そのような文字はないようなので、誤字ととらえ、意味にあわせて「悎」とした。〕

鍼灸書は,どこに分類されているのか

国立国会図書館デジタルコレクションでは,現在,古典籍資料(貴重書等)96947点がデジタル化されている(ネットでは見られない,館内限定をふくむ)。
http://dl.ndl.go.jp
http://dl.ndl.go.jp/search/searchResult?categoryTypeNo=1&categoryGroupCode=C&categoryCode=02&viewRestrictedList=0|2|3
自然科学に分類されているのは183点。そのうち医学・薬学分類が38点。大半が本草綱目であり,鍼灸書はない。
では鍼灸と名の付くものはないかというと,検索方法をかえて探すと2点みつかる。
ひとつは,現在,更新中の『仮名読十四経治方』。もうひとつは『鍼灸極秘伝』。それから書名ではないが,『東医宝鑑』鍼灸篇。
鍼灸書は,どこに分類されているのか。
NDC分類で表記されている数字を足し算すると,96947に達しそうにないので,分類外なのかも知れない。
ちなみに馬医書は,産業に分類されている。
なお,「針」は「鍼」に包摂されません。
「針灸」で検索すると「針灸之秘伝」が見つかります。

2017年9月21日木曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕43

二十 四花の穴法
第二穴は、先(まづ)患人(びょうにん)を平身(まつすぐ)に正(ただ)しく立(たた)し、蝋縄(もとゆい)を以て、男は左り女は右の足の大(おお)拇(ゆ)指(び)の端(はし)に縄の頭(はし)を当(あて)て、足の掌(うら)に循(まわ)し、後(うしろ)に向(むか)はしめ、膝の膕(かがま)りの所、大(おお)横紋(よこすじ)に至りて截(きり)断(たち)、偖(さて)患人(びょうにん)の髪を解き、両辺(りょうほう)へ分(わけ)、平身(ますぐ)に正(ただ)しく坐せしめ、彼(かの)足を量りし縄を鼻の尖(とがり)の上(うえ)にあて、指にて按(おさ)へしめ、縄を引(ひき)て上(うえ)に向(むか)ひ
〔・第二穴:『鍼灸経験方』によれば「第一の二穴」の誤り。〕
下十四オモテ
頭(かしら)の正(まん)中(なか)、皮に循(そ)ふて脳後に至り、肉に付(つい)て垂れ下(くだ)し、背骨(せぼね)の正(まん)中(なか)に当て、縄の端(はし)の竭(つくる)処に記(しる)しを附(つ)け、卻(さ)て、病者の口を微(すこ)しく合(あい)さしめ、短き蝋縄(もとゆい)を以て口の左(ひだり)の角(かと)より上(うえ)へ唇の吻(ふち)に循(そう)て鼻の根に至り、斜(ななめ)に下(くだ)し、口の角(かど)に至るなり。
★〔顔面の絵あり。原本参照〕是(かく)の如くなして、截(きり)断(たち)、此(この)縄(なわ)を展(の)べ、中(ちゅう)を摺(お)り、墨(すみ)にて記(しる)し、先(さき)に記(き)したる背中の骨の上(うえ)に圧(お)し当て、墨(すみ)と記(すみ)とを合(あわ)せ、横に左右へ𤄃(ひら)き、平(たいら)かにして、高下(こうげ)もなく縄の両頭(りょうはし)の竭(つくる)ところ、墨にて記(しる)すべし。〔穴/灸〕(きゅうけつ)なり。
〔・「穴偏に灸」という字は、撰者が『鍼灸経験方』にある「灸穴」ということばから作った文字のようである。〕
〔『鍼灸經驗方』四花穴・治勞瘵症:「第一次二穴、先令患人平身正立、取一細蠟繩、勿令展縮、以繩頭於男左女右足大拇指端、比齊循足掌向後、至曲䐐大橫紋截斷、令患人解髮分兩邊、要見頭縫至腦後、又令患人平身正坐、將先比繩子一頭、於鼻尖上按定、引繩向上、循頭縫、至腦後、貼肉垂下、當脊骨正中、繩頭盡處、以墨點記之(是非灸穴。○或婦人纏足不明者、當於右肓穴、點定、以繩頭按其穴上、伸手引繩向下、至手中指盡處、截斷而用。男子之足不明者、亦佳)。卻令患人微合口、以短繩一頭、自口左角按定、鉤起繩子、向上至鼻根斜下、至口右角作△、此樣截斷、將此繩展、令摺中、墨記將繩墨點、壓於脊骨上先點處、而橫布左右取平、勿令高下、繩兩頭盡處、以墨圈記(此則灸穴) 」。〕
第次(だいじ)の二穴は、病人を平身(ますぐ)に正(ただ)しく座せしめ、両肩を脱(ぬが)
下十四ウラ
し、蝋縄(もとゆい)を以て項(うなじ)を繞(まと)はし、前に向(むか)ひて、双(ふた)筋(すじ)にし、垂(たれ)下(くだ)し、鳩尾の尖りと斉(ひと)しくなし、即ち双(なら)べ截(き)る。是(この)縄の中心(まんなか)を喉(のど)の結骨(けつこつ)の上(うえ)に着(つけ)て、縄の両頭(りょうはし)を引(ひき)て後(うしろ)へ向へ、背骨(せこつ)の正中(まんなか)に当(あた)て、縄の端(はし)の尽(つく)るところ、墨にて記(しる)す。卻(さ)て病者をして口を合(あわ)さしめ、短かき蝋縄(もとゆい)を以て横に口の両吻(りょうはし)を一文字(いちもんじ)の如く截(きり)取る。中(なか)より摺(お)り、墨にて記(しる)し、背骨(せほね)の上(うえ)の前(まえ)に点する所に推(おし)あてて、前(まえ)のことく横に両端(りょうはし)の尽(つくる)ところに墨にて記(しる)す。是(これ)四穴を共に同時に灸各々七壮より十五壮に至り、百壮にいたる。或(あるい)は百五十壮。神効あり。
〔・当(あた)て:「当(あて)て」の誤りであろう。/・是(これ)四穴:「是(この)四穴」の誤りか。〕
下十五オモテ
灸瘡(きゅうそう)初(はじめ)て発(おこ)るときを候(うかが)ふて、後の法に依(より)て又二穴に灸すへし。
〔『鍼灸經驗方』四花穴・治勞瘵症:「二次二穴、令患人平身正坐、稍縮肩膊、取一蠟繩、繞項向前雙垂、與鳩尾尖齊(鳩尾是心弊骨也。人無心弊骨者、從胸前岐骨下、量取一寸、是鳩尾穴也)、即雙截斷、將其繩之中心、着於喉嚨結骨上、引繩兩端向後、會於脊骨正中、繩頭盡處、以墨記之(是則非灸穴也)。卻令患人合口、以短蠟繩、橫量口兩吻、如一字樣截斷、中摺墨記、壓於脊骨上先點處、如前橫布、繩子兩頭盡處、以墨記之(上是四花穴之橫二穴也)。以上第二次點穴、通共四穴、同時灸各七壯、至二七壯、至百壯、或一百五十壯、為妙。候灸瘡初發時、依後法、又灸二穴」。〕
」。〕
第三の二穴は、第次の口を量る一文字の縄を中(なか)より摺(お)り、墨にて記(しる)し、第次の背骨(せぼね)の上(うえ)へ正中(まんなか)に推(おし)あてて、上下に𤄃(ひら)き、縄の端(は)し上下尽(つく)るところ、墨にて記(しる)す。是(これ)四花の穴より灸すること各々百壮。第三ともに六穴也(なり)。日輪(にちりん)の火(ひ)を取(とり)て、是(これ)に灸すること奇効あり。尤(はなはだ)妙とす。百日の中(うち)、飲食房労を慎み身を静かなる処に置(おき)て心を安(やす)んじ、三十日の後(のち)尚(なお)いまだ愈(いえ)ざるを覚(おぼう)ときは、復(また)初(はじめ)の灸穴に再(ふたたび)灸す。
〔『鍼灸經驗方』四花穴・治勞瘵症:「三次二穴、以第二次量口吻如一字樣短繩、中摺之墨記、壓於第二次脊點上正中、上下直放、繩頭上下盡處、以墨點記之(此四花穴之上下二穴也)。已上第三次點穴、謂之四花穴也。灸兩穴各百壯、三次共六穴、取火日灸之、百日內慎飲食房勞、安心靜處、將息一月後、仍覺未瘥、復於初灸穴上再灸」。〕

2017年9月20日水曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕42

十九 勞瘵門
勞瘵には、独(ひと)り艾火(がいか)を以て貴(たつとし)とす。針(しん)術薬餌(やくぢ)は功大(おおい)に微(すこ)し。脊(せ)の第(たい)三椎(ずい)より十五椎(ずい)の尖(とがり)に灸して、効あり。或(あるい)は脊(せ)骨(ぼね)を挟(さしはさ)んで両傍(りょうほう)とも、其(その)病(びょう)鬱の気の聚(あつま)る所を見(み)認(とめ)て数所を焼(やく)べし。
〔・微(すこ):「微(すく)」と書いてあって「微(すくナ)」の略か。〕
○四花患門等(とう)に灸、五万壮(ひ)。妙。
○又方。腰
下十三ウラ
眼の穴に艾(もぐさ)を安(あん)し、山椒(さんしょう)の末(まつ)を密(みつ)に𩜍(ね)りて餅の如くし、其(その)四畔(ぐるり)を闈(かこう)て火気を留(とどめ)しめ、数日(すじつ)灸して、三万壮に至れば、族類に伝(つたわ)る虫を殺す。是(これ)を遇仙の灸と名附(なづく)。神効有(あり)。
〔・密:「蜜」。〕
〔四花患門:下文を参照。また『新版 経絡経穴概論 第二版』二二二~二二三頁を参照。〕
〔『鍼灸經驗方』別穴・腰眼:「令病人解去衣服、直身正立、於腰上脊骨兩傍、有微陷處、是謂腰眼穴也。先計癸亥日、前一日預點、至夜半子時交、為癸亥日期、便使病人伏床着面而臥、以小艾炷灸七壯九壯至十一壯、瘵蟲吐出、或瀉下、即焚蟲、即安。此法之名遇仙灸。○治瘵之捷法也(病人をして衣服を解き去らしめ、身を直くして正しく立ち、腰上の脊骨の兩傍に於いて、微(すこ)し陷なる處有り、是れを腰眼穴と謂う也。先づ癸亥の日を計り、前(まえ)一日に預じめ點し、夜半子時の交(あいだ)に至るを、癸亥の日期と為す。便ち病人をして床に伏し面を着けて臥さしめ、小艾炷を以て灸すること七壯九壯より十一壯に至れば、瘵蟲吐出し、或るいは瀉下す。即ち蟲を焚けば、即ち安し。此の法之を遇仙の灸と名づく。○瘵を治するの捷法也)」。〕
〔『鍼灸經驗方』勞瘵(腹中有蟲惱人至死、相傳於族類、而殺害是也):「勞瘵症(灸腰眼穴。穴法載別穴中。其名遇仙灸)。人脈微細、或時無耇【「老」の異体字か】(以圓利針、刺足少陰經復溜穴、深刺以俟回陽脈生、方可出鍼)。虛勞百損失精勞症(肩井・大椎・膏肓俞・肝俞・腎俞・脾俞・下三里・氣海)」。〕

2017年9月19日火曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕41

下十三オモテ
十八 痔疾門
痔は凸(なかだか)の肉孔(あな)の中(なか)より出(いづ)るなり。是(この)肉に三稜針を用ひて多く血を取(とり)棄(すつ)れば、立処(たちところ)に治(ぢ)愈(ゆ)す。
○又方。凸(なかだか)の肉に灸すること百壮。即ち平(たいら)ぎて、効を奏す。
〔『鍼灸經驗方』痔疾・痔乳頭:「灸痔凸肉百壯、即平、神效」。〕
○痔疾、種々(しゅしゅ)の症ありといへとも、百会・瘂門等(とう)に灸して、神効あり。

2017年9月18日月曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕40

十七 痢疾門
〔『鍼灸經驗方』痢疾:「中氣虛弱、三焦不和之致」。〕
○赤白(しゃくびゃく)痢には、臍中に百壮。神効あり。
〔『鍼灸經驗方』痢疾・赤白痢:「臍中百壯、神效」。〕
○脱肛して苦しむには、神闕に年の壮。百会に二十一壮。膀胱兪に三壮。
〔『鍼灸經驗方』痢疾・脱肛久不愈:「臍中年壯、百會三七壯、膀胱兪三壯」。〕
○大便秘結し、絞(しぶり)重(おき)きには、巴豆(はづ)の肉を𩜍(ね)(ね)りて、餅のごとくし、臍の中(うち)におき、其上(そのうえ)に灸三壮。即効あり。
〔「おき」は「おも」の誤り。〕
〔『鍼灸經驗方』痢疾:「若大便秘結、取巴豆肉、作餅、安臍中、灸三壯」。〕

2017年9月17日日曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕39

十六 鼻病門
凡(およそ)水出(いづ)るを鼽(きゅう)といひ、血出(いづ)るを衂(ちく)といふ。倶に風府・迎香・上
下十二ウラ
星(じょうしょう)に十四壮灸す。太冲(たいしょう)・絶骨・合谷・大陵・尺沢・神門等(とう)を治(ぢ)すべし。
〔『鍼灸經驗方』鼻部・鼽衂:「水出曰鼽。血出曰衂。○風府・迎香・上星、二七壯。太冲・絕骨・合谷・大陵・尺澤・神門」。〕
○衂(ちく)血(けつ)止(やま)ずして、瘖(お)して言(もの)語(いう)こと能はざるには、肺兪・合谷・間使・大谿・霊道・風府・太冲(たいしょう)等治(ぢ)すべし。
〔『鍼灸經驗方』鼻部・衂血不止、瘖不能言:「肺兪・合谷・間使・大谿・靈道・風府・太冲」。〕
○鼻塞(ふさが)るには、臨泣・合谷に灸すべし。
〔『鍼灸經驗方』鼻部・鼻塞:「百會・上星・顖會・臨泣・合谷・厲兌、幷皆灸之」。〕
○鼻の中(なか)に瘜(に)肉(く)を生じて、涕(はな)出(いづる)には、上星(じょうしょう)に百壮。迎香・神門・合谷・肺兪(はいのゆ)・尺沢・顖会、皆灸すべし。
〔『鍼灸經驗方』鼻部・鼻中瘜肉:「上星百壯、迎香・合谷・神門・肺兪・心兪・尺澤・顖會」。〕

2017年9月16日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕38

十五 手臂(シュヒ/てひぢ)門
両手倶に大(おおい)に熱して火(ひ)の中(うち)に在(ある)ごときには、湧泉に灸五壮。立どころに効あり。
○左(ひだ)りの手足倶に何(なに)となく倦(だる)く力なきには、神闕に百壮。如(も)しそれにて愈ざれは、五百壮を灸すべし。
○手の五指倶に屈(かが)んで伸(のび)ざるには、曲池・合谷・中脘に針(はり)すへし。伸(のび)て屈(かがま)ざるによし。
〔『鍼灸經驗方』手臂・手五指不能屈伸:「曲池・下三里・外關・支溝・合谷・中脘鍼。絶骨・中渚、手大指内廉第一節横紋頭一壯」。〕

2017年9月15日金曜日

京都大学貴重資料デジタルアーカイブ

http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1375887
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/

現在、「京都大学 富士川文庫 目録」
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/kicho/fuji.html
で「鍼灸」を検索すると白黒画像の2点(鍼灸集要/鍼灸要論)のみですが、
上の試験公開されたもので検索すると、
12点カラーで見ることができます。
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/search?keys=%E9%8D%BC%E7%81%B8

長野仁先生の成果が公表されているようです。

なお、京都大学の富士川文庫の目録は
https://kuline.kulib.kyoto-u.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=v3search_view_main_lnklst&block_id=251&tab_num=0&lnkfunc=9
です。

仮名読十四経治方 〔翻字〕37

十四 膝脚(シツギャク/ひざあし)門
○足の内外(うちそと)の踝(くるぶ)し紅(あか)く腫(はれ)て日(ひ)久しく、膿(うま)ず、微(すこ)しく痛(いたみ)て座しがたきには、騎竹穴に灸七壮(ひ)。若(もし)愈(いえ)ざれは、更に灸すべし。
○足(あ)脚(し)輒ち転筋(こぶるがえ)りして、痛(いたみ)忍(しの)びがたきには、承山
下十二オモテ
に灸三十一壮。若し内(うち)らの筋攣(すちつる)には、内(うち)踝(くるぶ)しの尖りに七壮。外(ほか)の筋(すぢ)急(つる)には、外(そと)踝(くるぶ)しの尖(とが)りに七壮。妙とす。
〔・こぶるがえり:「る」は「ら」のあやまりか。こむらがえり。腓(こむら・こぶら)=ふくらはぎ。〕

2017年9月14日木曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕36

下十一オモテ
十三 咳嗽(ガイソウ/せき)門 幷痰喘(たんぜん)
凡(およそ)痰喘は熱に因(よっ)て上(のぼ)り、大気(たいき)の炎上(えんしょう)より致(いたす)ゆへなり。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽:「凡痰喘、因熱而上、謂大氣炎上故也」。〕
○咳逆久しく止(やま)ざるには、大椎(たいすい)より五の椎(すい)に至る節(ふし)の上(うえ)に灸すること年(とし)の壮(かず)に随う。而(しかう)して期門に三壮(ひ)。立(たち)どころに止(やむ)こと、神効あり。
〔・椎:あらためて注記しておくと、原文はみな「推」につくる。振り仮名には「すい」と「ずい」が使われている。〕
〔『鍼灸經驗方』咳嗽・咳逆不止:「自大椎至五椎節上、灸隨年壯。又方:期門三壯、立止」。〕
○又(また)方(ほう)。乳(ち)の下(した)、一指(いっし)を留(とど)むばかりに当(あた)りて、正(まさ)に乳(ち)と相(あい)直(なお)る胸肋の間(あいだ)、陥(くぼか)なる中に灸すること三壮(ひ)。女人(おんな)は、乳(ちち)の頭(かしら)を屈(かが)めて之を取り、灸す。男(おとこ)は左り、女は右り、肌に至れば、立処(たちどころ)に治(ぢ)す。神(しん)のごとし。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽・咳逆不止・又方:「在乳下下一指許、正與乳相直肋間陷中、灸三壯。女人則屈乳頭、取之灸。男左女右、到肌立止」。〕
○音(こえ)失(いで)がたきには、魚際・合谷・間使・然谷・肺兪(はいのゆ)・腎兪(じんのゆ)に灸すべし。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽:失音「魚際・合谷・間使・神門・然谷・肺兪・腎兪」。〕
○喘息には、合谷・太谿・上星・太陵・列決・下(しも)三里等(とう)に久しく針(はり)
下十一ウラ
を留(とど)めて、其気(そのき)を下(くた)すべし。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽・喘急:「上星・合谷・太谿・太陵・列缺・下三里。久留鍼、下其氣」。〕
○哮喘には、天突に五壮(ひ)。又細き蝋縄(もとゆい)の類(るい)を頸(くび)に套(かけ)て前に垂(たれ)しめ、鳩尾の骨の尖(とが)りを量り、其(その)両端(りょうはし)を後(うしろ)に旋(まわ)し、脊骨(せぼね)の上(うえ)へ索(なわ)の尽(つく)る処(ところ)に点記(てんき)し、灸七壮(ひ)より二十一壮(ひ)。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽・哮喘:「天突五壯。又以細索套頸、量鳩尾骨尖、其兩端旋後、脊骨上索盡處點記、灸七壯、或三七壯」。〕
○痰喘(たんぜん)には、膏肓兪(こうもうゆ)に灸し、腎兪(じんのゆ)に灸し、合谷に針(はり)し、太淵(だいえん)に針(はり)し、亶中(だんちゅう)に二十一壮(ひ)。神効あり。
〔『鍼灸經驗方』咳嗽・痰喘:「膏肓兪灸、肺兪灸、腎兪灸、合谷針、太淵針、天突灸七壯、神道三七壯、亶中七七壯」。〕

2017年9月13日水曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕35

十二 腰脊(ヨウハイ/こしせなか)門
○腰の辺(あたり)より脊(せ)へかけて疼(いたみ)、溺水(しょうべん)の濁(にごる)には、章門に百壮、
下十ウラ
腎兪(じんのゆ)に百壮。膀胱兪・気海に二十一壮。
〔『鍼灸經驗方』腰背・腰脊疼痛溺濁:「章門百壯、膀胱兪・腎兪・委中・次髎・氣海、百壯」。〕
○卒(にわか)に腰痛(こしいたみ)て屈伸(のびかがみ)の自由なりがたきには、尾窮骨より上(うえ)へ一寸に七壮(ななひ)づつ、婦人は八膠(はちりょう)に五十壮。
〔・八膠:八髎。〕
○又法。病者をして正(ただ)しく立(たた)し、細き竹を地(ち)より竪(たて)に臍(へそ)を量りて竹に記(しる)しをつけ、其(その)竹を後(うしろ)の脊骨(ぜほね)に着け、竹の上(うえ)の記(しる)しの当(あた)るところに灸すること年(とし)の壮(かず)に随ふ。是(これ)を俗に臍(へそ)がへしと呼ぶ。
〔・ぜほね:おそらく「せぼね」。〕
○腰痛(こしいたみ)て腹の鳴(なる)には、神闕に百壮。胃の兪に年(とし)の壮(かず)。太谿・太冲(たいしょう)・三陰交に五十壮(ひ)。妙効あり。
〔『鍼灸經驗方』腰背・腰痛腹鳴:「胃兪、年壯。大腸兪・三陰交・太谿・太冲・神闕、百壯」。〕
○老人の腰いたむには、腎兪(じんのゆ)に三十壮。命門に五十壮。即効あり。
〔『鍼灸經驗方』腰背・老人腰痛:「命門三壯。腎兪年壯」。〕
○腰腫(はれ)て倦(だる)く痛(いたむ)には、崑崙・太冲(たいしょう)・章門に二十一壮。能(よく)愈(いゆ)るなり。
〔『鍼灸經驗方』腰背・腰腫痛:「崑崙・委中・太冲・通里・章門」。〕

2017年9月12日火曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕34

十一 大小便
○大小便通ぜされは、膀胱兪に三壮(ひ)。丹田に二十一壮。胞門に五十壮。臍下(へそのした)一寸半、両傍各々三寸に灸百壮。大腸兪に三壮(ひ)。
〔『鍼灸經驗方』大小便・大小便不通:「膀胱兪三壯。丹田二七壯。胞門五十壯。營衝在足内踝前後陷中、三壯。經中穴、在臍下寸半兩傍各三寸。灸百壯。大腸兪三壯」。
〔『鍼灸經驗方』「胞門一穴:在關元左傍二寸、治婦人無子」。ちなみに「關元右傍二寸」にある穴を子戸という(『東医宝鑑』別穴)。〕
○小便黄赤(コウシャク/きあかく)にして禁ぜざれば、膀胱兪・三焦兪・小腸兪に針(はり)すべし。
〔『鍼灸經驗方』大小便・小便黃赤不禁:「腕骨・膀胱兪・三焦兪・承漿・小腸兪」。〕
○小便通ぜずして、臍下(さいか)冷(ひゆ)るには、胞門・丹田・神闕・営衝(えいこう)・膀胱兪、皆灸すべし。
〔・「えいこう」(原文は「ゑいこう」)は、「えいしょう」とすべきであろう。〕
〔『鍼灸經驗方』別穴・營衝:「一名營地。在足内踝前後兩邊池中脉。主赤白帶下、小便不通」。/「營地」當作「營池」。 營池:營,作圍繞解,池,停水之處。內踝下緣前後,繞內踝下而生,骨邊有如水池之凹陷,穴當其處,故名營池。位於足內踝下緣前後凹陷處。每側二穴,左右計四穴。〕
〔『鍼灸經驗方』大小便・小便不通臍下冷:「膀胱兪・胞門・丹田・神闕・營衝、皆灸」。〕
○小便難(かたき)には、臍(へそ)に対する脊骨(せこつ)の上(うえ)に灸三壮。
〔『鍼灸經驗方』大小便・小便難:「灸對臍脊骨上三壯」。〕
○小便に血交(まじわ)り出(いづる)には、胃兪(いのゆ)・関元・曲泉・営宮(えいきゅう)・三焦兪・腎兪・気海に年(とし)の壮。太冲(たいしょう)に三壮。膀胱兪・小腸兪、皆灸すべし。
〔・営宮:「労宮」のあやまり。〕
〔『鍼灸經驗方』大小便・尿血:「胃兪・關元・曲泉・勞宮・三焦兪・腎兪・氣海、年壯。太冲三壯。少府三壯。膀胱兪・小腸兪」。〕
○腸鳴り、溏泄(トウセツ/べたくだり)して、腹痛するには、神闕に百壮。三陰交に三壮(ひ)。
〔『鍼灸經驗方』大小便・腸鳴溏泄腹痛:「神闕百壯、三陰交三壯」。〕

2017年9月11日月曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕33

十 蟠蛇(はんだ)癧
瘰癧の別名(へづみょう)なり。頂(うなじ)を繞(めぐり)て核(ガイ/ぐりぐり)を起(おこ)すを蟠蛇癧と名附(なづく)。
〔・「へづみょう」は「べつみょう」、「頂」は「項」、「ガイ」は「カク」とすべきであろう。〕
○天井・風池・肘の尖(とがり)に百壮。下(しも)三里・百労・神門・中渚(ちゅうちょ)・外関(げかん)・大椎(たいすい)、皆倶に灸して、神効あり。
〔『鍼灸經驗方』別穴・百勞二穴:「在大椎向髮際二寸點記、將其二寸、中摺墨記橫布於先點上、左右兩端盡處、是。治瘰癧兪【「大椎ヨリ髮際ニ向ヒ二寸ニ點シ記シテ、其ノ二寸ヲ將(もつ)テ、中ヨリ摺(おつ)テ墨ニテ記シ橫ニ先ニ點シタル上ニ布(し)キ、左右兩端盡クル處ニ在リ、是ナリ。瘰癧ヲ治ス】」。/在項部,當大椎直上2寸,後正中線傍開1寸。/摺:折疊。曲折。〕
〔『鍼灸經驗方』蟠蛇癧:「瘰癧繞項起核、名蟠蛇癧。天井・風池・肘尖百壯。換治下三里・百勞・神門・中渚・外關・大椎灸」。〕

2017年9月10日日曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕32

九 風丹幷(ならび)に火丹毒
三稜針を以て間(すきま)もなく腫(はれ)る処(ところ)及び暈(ウン/ざどり)の畔(くるり)を乱刺(ランシ/みだれさす)して多く悪血(おけつ)を出(いだ)し、翌日更に赤気(しゃくき)の在(ある)ところを看て、初(はじめ)のごとく乱刺して血(ち)を捨(すつ)ること糞(ふん)のごとくすれば、神効有(あり)。
〔・ざどり:座取る:場所をとる。腫れ物などの周囲が、赤くはれあがる。/・丹毒:火丹ともいう。連鎖球菌の感染によって起こる皮膚の浅いところ(真皮)の化膿性炎症。皮膚の浅いところに生じた蜂窩織炎。突然、高い熱、悪寒、全身の倦怠感を伴って、皮膚に境のはっきりしたあざやかな赤い色のはれが現れ、急速に周囲に広がる。表面は皮膚が張って硬く光沢があり、その部分は熱感があって触れると強い痛みがある。水疱や出血斑を伴うこともある。Web記事/・風丹:水疱性丹毒。水丹。/水丹:小儿丹毒证型中之如有水在皮中者。出 《备急千金要方》卷二十二。...为小儿丹毒之一。多因热毒与水湿相搏所致。以股及阴部较多见,亦可发于遍身,证见黄赤色水疱,甚者破烂流水,湿烂疼痛。治宜清热利湿,方用防己散内服,外用升麻膏敷之,或以如意金黄散调敷。〕
〔『鍼灸經驗方』風丹及火丹毒:「以三稜鍼無間亂刺當處及暈畔、多出惡血、翌日更看赤氣所在、如初亂刺棄血如糞。神效」。〕
癭瘤:針(はり)し破(やぶ)るべからす。針(はり)する則(とき)は、毒を肆(ほしいまま)にす。
肉瘤:針(はり)灸するときは、皆人を殺す。慎むべし。
血瘤:針(はり)するときは、大(おおい)に血を出(いだ)す。止(やま)ずして死す。
△瘤(こぶ)に種々ありて、皆能(よく)治(ぢ)し易からず。其(その)数(かず)三十有(ゆう)六(りく)。最も血瘤・肉瘤・癭瘤は、針(しん)灸の施しがたきなり。膏薬・服薬を以て治(ぢ)すべし。
  〔癭瘤:病名。癭は頸部の腫瘤、瘤は体表に発生する腫物で、あわせて癭瘤というが、単に癭をさすことが多い。癭は大脖子・癭気とも呼ばれる。発病は環境や憂・思・欝・怒と関係があり、肝気が欝結し脾が健運できなくなったため、頸部で気滞痰凝が生じて形成される。 甲状腺腫・リンパ節腫などをさすことが多い。/肉瘤:肉腫。/血瘤:中医病名。血瘤是指体表血络扩张,纵横丛集而形成的肿瘤。可发生于身体任何部位,大多数为先天性,其特点是病变局部色泽鲜红或暗紫,或呈局限性柔软肿块,边界不清,触之如海绵状。相当于西医的海绵状血管瘤。〕

2017年9月9日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕31

下九オモテ
八 石癰門
腫(はれ)堅(かたく)して根(ね)あり。石(いし)の如くなるを石癰(せきよう)といふ。腫物(しゅもつ)の上(うえ)に灸百壮(ひ)。或(あるい)は二百壮。毎日に炷(すゆ)べし。石子(いし)の如きものも砕(くだ)け潰(つぶ)るるなり。

2017年9月8日金曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕30

七 附子灸の法
附子を削ること、厚さ碁子(こいし)の如く、正(まさ)に腫物(しゅもつ)の上に着け、唾(つば)にて附子を湿(うるお)はし、艾(もぐさ)を附子の上に置(おき)、灸す。熱をして附子に徹せしむ。乾かんとせば、更に唾つけ、熱をして附子に徹せしむ。屡々(しばしば)乾(かわか)ば、輒(すなわ)ち改(か)ゆべし。艾気(がいき)附(フ/ぶし)熱(ネツ)と相(あい)撃(うつ)て、腫物(しゅもつ)に徹せしむ則(とき)は、愈(いえ)ざるものなし。
〔『鍼灸經驗方』附子灸法:「腦瘻及諸癰腫堅牢者、即削附子厚如碁子、正着腫上、小唾濕附子、以艾炷着附子上、灸之、令熱徹附子、欲乾更唾令熱徹附子、屢乾輒改、又令艾氣徹腫、則無不愈者」。〕

2017年9月7日木曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕29

蒜(にら)灸の法
〔ニラのどの部分を使うのか?「蒜」は、ニンニクである。ニラ=ニンニクなのだろうか?〕
蒜(にら)を隔てて灸する法は、其(その)腫毒大(おおい)に痛(いたみ)、あるひは痛(いたま)ず、麻木(マボク/しびれ)するに、先(まづ)湿紙(シツシ/うるおうかみ)を以て、其(その)腫物(しゅもつ)の上を覆(おお)ひ、其(その)乾く処を候(うか)がふ。乃ち是(これ)腫頭(はれかしら)なり。即ち蒜(にら)を片(へん)となし、厚さ三分ばかりにし、腫物(しゅもつ)の上(うえ)に置き、之に灸すること五炷(いつひ)にして、蒜(にら)を更(か)へ数々(しばしば)炷(すゆ)べし。初め灸して疼(いたむ)は、灸して痛(いたま)ざるに至
下八ウラ
る。初(はじめ)灸して痛(いたま)ざるは、灸して痛(いたむ)に至る。此(これ)則ち鬱毒を引(ひく)の法なり。且(かつ)回生の功(こう)あればなり。若し腫(しゅ)色(しょく)白(しろく)して、膿(うみ)を作(なさ)ざれは、日期(ニチキ/ひのかぎり)を問(とわ)ず、宜(よろし)く多(おおく)灸すべし。若(もし)腫物(しゅもつ)大(おおい)なるは、蒜(にら)を搗(つき)ただらし、患(うれうる)ところに鋪(し)き、艾(もぐさ)を置(おき)て灸するなり。
  〔・ただらす:ただらかす。爛れるようにする。ただれさす。〕
〔『醫說』鍼灸22  ●蒜灸癰疽
凡人初覺發背、欲結未結、赤熱腫痛、先以濕紙覆其上、立視候之、其紙先乾處、則是結癰頭也。取大蒜切成片、如當三錢厚薄安其頭上、用大艾炷灸之三壯、即換一片蒜、痛者灸至不痛、不痛者灸至痛時方住、最要早覺早灸爲上、一日二日、十灸十活、三日四日六七活、五六日三四活、過七日不可灸矣。若有十數頭、作一處生者、即用大蒜研成膏、作薄餅鋪頭上、聚艾於蒜餅上燒之、亦能活也。若背上初發、赤腫一片、中間有一粟米大頭子、便用獨頭蒜切去兩頭、取中間半寸厚薄、正安於瘡上、却用艾於蒜上灸二七壯、多至四十九壯。(江寧府紫極觀因掘得石碑載之)
凡そ人の初めて背に發し、結ばんと欲して未だ結ばず、赤熱腫痛を覺ゆれば、先づ濕紙を以て其の上を覆い、立ちどころに之れを視候す。其の紙 先づ乾く處は、則ち是れ結癰の頭なり。大蒜を取り、切りて片と成す。三錢に當たる厚さの如く薄くし、其の頭上に安んず。大艾炷を用いて之れに灸すること三壯にして、即ち一片の蒜を換え、痛む者は痛まざるに至るまで灸し、痛まざる者は痛むに至る時まで灸して方(まさ)に住(や)む。最も要なるは、早く覺え、早く灸するを上と爲す。一日二日ならば、十灸して十活す。三日四日ならば六七活す。五六日ならば三四活す。七日を過ぐれば灸すべからず。若し十數頭有り、一處に生ずるを作す者は、即ち大蒜を用い、研して膏と成し、薄餅を作り、頭上に鋪す。艾を蒜餅の上に聚め之れを燒く。亦た能く活するなり。若し背上に初めて赤腫一片を發し、中間に一粟米大の頭子有らば、便ち獨頭の蒜を用いる。切りて兩頭を去り、中間の半寸の厚薄を取り、正に瘡上に安んず。却て艾を蒜の上に用い、灸すること二七壯、多くは四十九壯に至る。(江寧府の紫極觀に掘りて得たる石碑に因りて之れを載す)〕

『针灸古典聚珍』

『针灸古典聚珍』全45册,中国科技出版社が,来年ついに出版されるようです。

亜東書店
中国科学技术出版社の記事

個人では,とても手が出ない価格ですね。

2017年9月6日水曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕28

五 疔腫門
下八オモテ
○疔腫、面(メン/かお)上(じょう)口角(コウカク/くちのかど)に生ずるには、合谷・下(しも)三里・神門に針(はり)すべし。
○手上(シュジョウ/てのうえ)に生ずるは、曲池の穴に二十一壮(ひ)。
○脊(せなか)上に生ずるには、肩井に七壮(ひ)。
△病の軽き重きを観て、重(おもき)ものは数(すう)を倍して灸すべし。幷(ならび)に騎竹馬の穴に灸七壮(ひ)。

2017年9月5日火曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕27

四 腸癰門
腸癰は、小腹より腰に連(つらなり)て痛み、或(あるい)は一脚(ひとあし)を蹇(ヒキ/ちんば)、身(み)熱すること火(ひ)のごとく、小便数(さく)にして、欠(あくび)し、昼は微(すこ)し歇(やめ)ども、夜(よ)劇(はげし)きは、三十余日(よにち)の後(のち)に膿(うみ)をなす。未(いまだ)膿(うま)ざるの前(まえ)、預(あらかじ)め騎竹馬の穴に各々灸七(なな)壮(ひ)。神効あり。已に膿(うみ)て後(のち)は、肘の尖(とがり)に百壮。膿汁(のうじゅう)注ぎ下(くた)ること一二鉢(はち)。神効あり。

2017年9月4日月曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕26

三 騎竹馬の穴法
一条(ひとすぢ)の蝋縄(もとゆい)を以て病人の尺沢の横紋(よこすぢ)より、中指(ちゅうし)の端(はし)までを量り、載断(きりたち)、偖(さて)病者の衣(き)裙(もの)を解き、体(からだ)を露(あらわ)し、直竹(まるたけ)の上(うえ)に騎(のせ)坐せしめ、尾竆骨(ひきゅうこつ)に当て、坐するに堪(たえ)しめ、彼(かの)先(さき)に量る蝋縄(もとゆい)を脊(せなか)より坐する竹の上に竪(たて)にし、縄の端尽(つく)る所の脊(せ)の上(うえ)に借(かり)点し、更に別の紙捻(こより)を作り、病者の中指(ちゅうし)の中(なか)の節(ふし)を量り、一寸となし、脊(せなか)の借(か)点より左右へ濶(ひら)き、端の尽(つく)る所に各々灸七壮(ひ)。
〔・載断:『鍼灸経験方』によれば、「截断」のあやまり。意味は「裁断」とおなじ。/・「借(か)点より」:「借(かり)点」の省略か、あるいは「仮点」の意味か。〕
止(ただ)多く灸すべからず。此(この)法を以て之(これ)に灸するときは、愈(いえ)ざるものなし。蓋し是(この)二穴は、心
下七ウラ
脈の過(よぎ)る所なり。凡(およそ)癰疽の疾(やまい)は、皆心気留滞に於(おい)て此(この)毒を生ず。之に灸せば則(すなわち)心脈流通(るづう)し、即時に安(やすく)し、以て死を起(おこ)し生(しょう)を回(かへ)する奇方(きほう)なり。
〔『鍼灸經驗方』騎竹馬穴法:「以直杻先量患人尺澤穴橫紋、比起循肉、至中指端、截斷令患人解衣裙露體、騎坐於直竹之上(瘦人用細竹、肥人用大竹)、當尾竆骨、可堪接坐。然後將其先量杻、從脊竪於坐竹之上、杻端盡處脊上點記(此則非灸穴也)、更用禾稗量病人男左女右中指中節兩紋、爲一寸、又加一寸、合爲二寸、將其二寸、中摺墨記、着於先點脊上、橫布稗兩端盡處(是灸穴也)各灸七壯、止不可多灸、以此法灸之、則無不愈者。蓋此二穴、心脉所過、凡癰疽之疾、皆於心氣留滯、故生此毒。灸此、則心脉流通、即時安愈。以起死回生矣」。〕

2017年9月3日日曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕25

下一オモテ
仮名読(よみ)十四(じゅうし)経(けい)治法(ちほう)巻(かん)之下(げ)
一 銅人形総図
□印は灸を禁(いむ)
△印は針(はり)を禁(いむ)
★五丁まで図(「腋より季肋まて一尺二寸」など骨度の説明あり)。省略
下六オモテ
二 癰疽門
癰疽の初(はじめ)て出(いづ)る、先(まづ)其(その)経絡の部分(ぶわけ)を看て、其(その)各(おの)おの経に随ひて針(はり)を行(おこな)ふこと間日(かんじつ)なし。如(も)し或(あるい)は針(はり)、日(ひ)を間(あいだ)するときは効(しるし)なし。日(ひ)を逐(お)ふて刺(さ)し、或(あるい)は一日(いちにち)に再び刺(さ)し、以て其(その)毒を瀉するときは、十日(じゅうじつ)に至らずして自(おのづか)ら安(やす)し。若(も)し針(はり)日(ひ)を間(へだ)て、或(あるい)は針(はり)五六度にして病者苦しみ半途(はんと)にして癈(やむ)れば、死に至る。如(も)し或(あるい)は死せずとも腐内(ふにく)より新肉を生じ、艱苦(かんく)万痛(まんつう)、累月に及ぶ。譬(たとう)るに物(もの)なし。若し病人(びょうにん)針治(しんぢ)を欲(よく)せざれは、急に騎竹馬の穴(けつ)に灸すること七壮(ななひ)。神効あらずといふことなし。
〔・腐内(ふにく):『鍼灸經驗方』瘡腫「腐肉」。/・艱苦萬苦:形容非常艱難辛苦。〕
〔『鍼灸經驗方』卷下 瘡腫:痛痒瘡瘍、皆屬心火、主治在各隨其經、及心經。癰者、陽滯於陰、為腫、有觜高起、皮肉光澤者是。疽者、陰滯於陽、為腫、無觜內暈廣大、皮膚起紋不澤者是。癰疽疔癤之初出、看其經絡部分、各隨其經、行鍼無間日、如或針間日、則無效矣。勿論擇日諸忌、逐日鍼刺、或一日再刺、以瀉其毒、則不至十日、自安。若針間日、或鍼五六度、而病者為苦半途而廢、至於死亡。如或不死、腐惡肉生新肉、延於累月、艱苦萬狀、連鍼十餘日之苦、與其死亡、或至辛苦、孰輕孰重、悔之無及。若病人不欲鍼治者、急灸騎竹馬穴七壯、無不神效」。〕
○又方。癰疽初め出(いづる)の三日の
下六ウラ
前(まえ)、急に其(その)腫物(しゅもつ)の頭(かしら)に灸二十一壮。自(おのづか)ら安(やす)し。
△其(その)初発は、至りて小(しょう)にして粟(あわ)のごとく、故(ゆえ)に人(ひと)みな忽(ゆるかせ)にして、其(その)毒を発するに至るを待(まち)て、終(つい)に死するに及ぶ。追ふて悔(くゆる)とも及(およぶ)ことなし。若(もし)已に三日を過(すぐる)ときは、即ち騎竹馬の穴(けつ)に灸各(おの)おの七壮(ななひ)。奇効あらざることなし。
〔『鍼灸經驗方』瘡腫:「又方:初出三日前、用手第四指納口、侵津涎、洽涂腫上、晝夜不輟、使不乾、不過四五日、自安。方藥無逾於此也。癰疽毒腫初出三日前、急灸其腫觜三七壯、自安。千方萬藥、無逾於此。其初發、至小如粟、故人皆忽待至其發、毒必至死域、追悔莫及。若已過三日、即灸騎竹馬穴、各七壯、無不神效」。〕
○癰疽(ようそ)諸腫(ショシュ/もろもろのはれ)、或(あるい)は痒からず痛(いたま)ず、色青黒のものは、肉先(まづ)死す。終(つい)に救(すくう)べからず。其(その)初(はじ)起(め)に急に騎竹馬の穴(けつ)に灸すること各(おの)おの七壮(ななひ)。
〔『鍼灸經驗方』瘡腫:「癰疽諸腫、或不痒不痛、色青黑者、肉先死、終不救、其初發、急灸騎竹馬穴、各七壯」。〕
○癰疽発脊、皆日(ひ)を逐(お)ふて経絡に針(はり)を行(おこな)へば、自(おのづか)ら安(やす)し。然れ共、未(いまだ)能(よく)治(ぢ)すること能(あた)はず、竟(つい)に熟し膿(うむ)に至る。三稜針を以て赤暈(せきうん)の四(ぐる)畔(り)を刺すべし。而(しこう)して大針(おおはり)を以て腫物(しゅもつ)の頭(かしら)
下七オモテ
を裂(さき)破(やぶ)る。連日に悪肉(あくにく)尽(ことごと)く消(しょう)し、新肉已(すで)に生ずるなり。
〔『鍼灸經驗方』瘡腫:「背腫、亦行逐日鍼經絡、自安然、而未能善治、竟至熟膿、以大鍼決破裂、過赤暈之裔、即取大蟾六七箇作膾、用薑芥汁連食、惡肉消盡、而新肉已生、可以起死回生。背腫當處狀如粟米者、亂出於腫上、自作穿孔、以手指揉按、則自其各孔、膿汁現出、按休則其各孔膿汁還入、是為熟膿矣。以大鍼裂破、赤暈之裔。凡大小腫、不問日數、即灸騎竹馬穴七壯。無不效者」。〕

2017年9月2日土曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕24

廿一 中毒門 どくにあたる
△凡(およそ)物(もの)食して忽(たちま)ち痛(いたむ)ものは、物(もの)毒ありて胃化(か)することあたわず、故(ゆえ)に胃中に受(うけ)ずして、胃口に溜(とど)む。滞(とどこお)るときは、痛(いた)む。多くは吐(とし)て止(やむ)べし。又(また)物(もの)食して一二時(じ)を遇(すご)し、或(あるい)は一日(いちにち)を経て、臍下(さいか)臍傍(さいほう)にて疼(いたむ)ものは、物(もの)毒ありて胃化せず、腸胃に滞(とどま)り痛(いたむ)なり。
〔・遇:「過」の誤字。四オモテにもあり〕
下(くだ)して治(ぢ)すべし。針灸(しんきゅう)の能(よく)及ぶ所にあらず。又河豚(ふぐ)の毒に中(あたり)たるは、毒に酔(えい)たるなり。血(ち)を吐(はき)て既(すで)に已(すで)に死すといへども、必ず葬るべからず。四五日を経て蘓(よみがえ)るもの多くあり。譬(たとえ)ば酒に酔(よう)と同
三十一オモテ
じ。毒醒(さむ)れば、蘓生(そせい)すべし。又(また)少(すこし)く中(あたり)て、心中(しんぢゅう)快々(おうおう)とあしく、腹痛せば、急に胆礬(たんはん)の末(まつ)を湯(ゆ)に拌立(かきたて)呑(のめ)ば、其(その)侭(まま)吐逆して愈(いゆ)べし。瓜葶もよし。
〔・快:添えカナと意味から、「怏」のあやまり。『鍼道秘訣集』に「胃快(イクワイ)之針」あり。「大食傷の日(とき)、針(はり)先を上へ成(なし)、深く荒荒(あらあら)と捏(ひねる)。大法是の針にて食を吐き、胃の府くつろぎ快(こころよく)なるが故に胃快の針と号す」という。これは、もともと「胃怏(々)の針」(胃の不快感に対する針)であった可能性はないだろうか?/・「末」は「粉末」。/・膽礬:鉱物(硫酸塩鉱物)の一種。化学組成は硫酸銅(II)の5水和物(CuSO4・5H2O)であり、水によく溶ける。加熱すると結晶水を失って白色粉末になる。又名膽子礬、藍礬、立制石、石膽。內服刺激胃壁神經,反射性引起嘔吐,大量嘔吐可致脫水或休克,同時刺激胃腸黏膜,引起黏膜損害,造成穿孔。/・瓜葶:瓜蔕。本品為葫蘆科一年生草質藤本植物甜瓜 (Cucumis melo L.) 的果蒂。【功效】涌吐痰食,祛濕退黃。用於痰熱鬱于胸中及宿食停滯于胃所致的多種病證。瓜蒂味苦涌泄,性寒泄熱,具涌吐熱病、宿食之功。治病熱鬱于胸中而為癲癇發狂,或喉痹喘息者,可單用研末吞服取吐,小豆為末,香豉煎湯送服,如瓜蒂散。 《本經》:「咳逆上氣,及食諸果,病在胸腹中,皆吐下之睜」。〕
○食毒、心下(しんか)に滞(とどこお)りて疼(いた)痛(み)、或(あるい)は悶(もん)し苦(くるし)むには、幽門・通谷の辺(へん)より針(はり)して、逆(さかさ)まに上(うえ)へ鳩尾に向(むけ)刺(さす)べし。忽(たちま)ち吐(と)す。吐物(とぶつ)尽(つき)て治(ぢ)す。
△予(よ)先年阿波(あわ)の州(くに)に遊んで、河豚(ふぐ)の毒に中(あた)りて已に死(し)たる人(ひと)を見るに、既に死せり。針灸(しんきゅう)更に駮(しる)しなく、亶中・湧泉・神闕、何(なに)の応ずることか有(あら)ん。況(いわん)乎(や)湯(くす)液(り)の咽(のんど)に下(くたす)べき手術なし。親属相(あい)集(あつま)りて葬(ほうむり)を談ず。一日一夜(や)を経て、遂に棺(かん)に斂(おさ)め框(ひつぎ)を曳(ひく)に至(いたり)て何(なに)か頭(こうべ)微(すこ)しく顫(うごく)を見る。驚(おどろき)て、予(よ)
三十一ウラ
をして胗(しん)せしむ。乃ち心下(しんか)微(び)陽(よう)を覚(おぼ)ふのみ。然(しかれ)ども手(しゅ)散(さん)し口開(ひら)ひて、素(もと)のごとし。
〔・死(し)たる:「死(しし)たる」か?/・駮:「験」か「効(效)」に作るべし。〕
〔(宋)楊士瀛撰『仁齋直指方論』卷之三 諸風・風論:「至若口開手散,瀉血遺尿,眼合不開,汗出不流,吐沫氣粗,聲如鼾睡,面緋面黑,發直頭搖,手足口鼻清冷,口噤而脈急數,皆為不治之證」。「散」は「撒」(放開、散放)の意。撒手:鬆手(手をゆるめる)、放開」。『古今醫統大全』卷之八 中風門・丹溪治法:「《脈訣》內言諸不治證︰口開手撒,眼合遺尿,吐沫直視,喉如鼾睡、肉脫筋痛、發直、搖頭上竄、面亦如妝、或頭面青黑,汗綴如珠,皆不治」。〕
かくて葬(かふむる)に忍(しのび)ざれは、更に一日を経(ふる)に心下(しんか)の微(び)陽(よう)竭(つき)ず、三日に至りて遂に蘓(よみがえる)べきことを得(え)たり。後(のち)これを語り、彼(かれ)を聞(きく)に、是(かく)のごときの類(るい)、間(まま)あり。中毒の軽きは両(りょう)三(に)日(ち)、重きは四五日を過ぎて生(しょう)を回(かえ)すもの多しと。豈(あに)卒(そつ)葬(そう)をなすべけんや。
〔・葬(かふむる):「ホふむる」とすべきであろう)〕

仮名読(よみ)十四(じゅうし)経(けい)治法(ちほう)上巻終

2017年9月1日金曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕23

二十 耳病(ニビョウ/みみのやまい)門
経に曰く、耳塞(ふさが)り噪(さわぐ)ものは、九竅(キュウキョウ/ここつのあな)通ぜざれはなり。心神(しんじん)最も竅(あな)に通ず。故(ゆえ)に心(しん)病(やむ)ときは、先(まつ)耳噪(さわい)で鳴り、遠声(エンセイ/とおくきく)聴(きく)ことあたはず。
〔・ここつのあな:「ここノつのあな」の省略であろう。〕
〔『鍼灸經驗方』耳部:耳者屬腎。左主氣,右主血。耳塞噪者,九竅不通。○又曰:心主竅,心氣通耳,氣通于腎。故心病,則耳噪而鳴,不能聽遠聲。〕
△或(あるい)は又(また)精虚して耳(みみ)聾(つぶ)れ鳴(な)あり、又(また)虚火逆(のぼ)り、痰気 耳の中に鬱(うつ)し、或(あるい)は閉(とぢ)、或(あるい)は鳴り、気鬱し、痞満(ヒマン/つかえ)し、
〔・鳴(な)あり:「鳴(なる)あり」の省略とも思えるが、「鳴(な)り」の誤りか。〕
二十九ウラ
痰盛(さかん)に咽(のど)の中(うち)快(こころ)よからぬあり。又(また)厚味(こうみ)を常に食し、胃火盛(さかん)にして、両(りょう)耳(に)聾(つぶる)もの、或(あるい)は瘡毒(そうどく)愈(いえ)て後(のち)、余毒(よどく)にて耳聾(みいしい)るあり。針灸(しんきゅう)の全く治(ぢ)すること能はずといへども、一二を載(の)す。
○耳鳴り、耳痛(いたみ)で響き、頭(かしら)にこたへ、或(あるい)は目(め)睡(ねふ)りて、輒(すなわ)ち神(しん)寢(いね)がたく、昼夜大(おおい)に苦しんで止(やま)ざるには、葦(あし)の筒(つつ)の長さ五寸ばかりなるを耳の孔(あな)に挿(さし)はさみ、偖(さて)索麪(そうめん)の粉(こ)を水に𩜍(ね)り、泥のごとくして、彼(かの)耳に挿入(さしいり)たる箇(つつ=筒)の四畔(ぐるり)を蜜封(ミツフウ/みつにてふたす)し、外(そと)に出(いで)たる筒(つつ/「厳密には竹+冂+古」と書いてある)の頭(かし)らに艾(もぐさ)を置き、灸すること七壮(ななひ)。左り痛(いたむ)ときは右に炷(すえ)、右若(も)し痛(いたむ)ときは左に炷(すゆ)べし。妙駮(みょうこう)あり。妙(みょう)。
〔・駮:音は「ハク」。意味もあわない(傳說中的猛獸。駁正、非難。矛盾、違逆。辯論、提出異議。顏色雜亂。雜亂)。三十一オモテに「駮(しる)し」とある。「験」または「效」の誤字であろう。〕
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳痛耳鳴:「以葦筒長五寸切斷、一頭插耳孔、以泥糆密封于筒之四畔、而外出筒頭、安艾。灸七壯。左取右、右取左。又方:取蒼朮以四棱鍼銷、穿孔如竹筒。一如右葦筒法、灸三七壯。有大效」。〕
○耳鳴(みみなり)て遠く聴(きく)こと能(あた)はざるには、心兪(しんゆ)に三十
三十オモテ
壮(ひ)より五十壮(ひ)に至る。
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳鳴不能聽遠:「心俞三十壯」。〕
○耳聾(みみしい)たるには、先(まづ)百会の穴(けつ)を刺し、次に中渚・後谿(こうけい)・下(しも)三里・合谷・腕骨・崑崙等(とう)に針(はり)を久しく留(とど)む。腎兪(しんゆ)に二七十四壮(ひ)より年(とし)に随(したがい)て壮(かず)を為(なす)に至る。
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳聾:「先刺百會、次刺合谷・腕骨・中渚・後溪・下三里・絕骨・崑崙。並久留針。腎俞二七壯、至隨年、為壯」。〕
○五臓虚乏し、心神労(つか)役(れ)て、体(たい)羸(やせ)痩(やせ)て耳聾(みみしい)たるには、腎兪(じんゆ)に二十一壮。心兪(しんゆ)に三十壮。日(ひ)を遂(お)ふて治(ぢ)すべし。
〔『鍼灸經驗方』耳部・虛勞羸瘦耳聾:「腎俞三七壯。心俞三十壯」。〕
○諸(もろもろ)の虫(むし)、若し耳に入(いら)ば、藍(あい)の汁を一滴(イッテキ/ひとしづく)下(くだ)してよし。又は蔥(ひともじ)の汁を内(いる)るもよし。
〔・ひともじ:葱(ねぎ)の女房言葉。〕
○蚰蜒(げしげし?)の耳に入(いる)に塩少(すこし)ばかりを耳の内に搽(ひね)れば、即(すなわち)化(け)し水(みづ)となる。妙。
〔・蚰蜒(げしげし?):ふりがな不明。一字目に濁点があり、次に一字の繰り返し記号があり、つぎにその二字分繰り返し記号があるようにみえる。意味からするとナメクジのようだが、「蚰蜒」はムカデの一種。/・搽:敷、塗抹。/・搽:敷、塗抹。〕
○蜈蚣(むかで)耳に入(いる)には、鶏(にわとり)の肉を以て耳の辺(へん)に置(おけ)ば、自(おのづか)ら出(いづ)る。又猫の小便を灌(そそげ)ば、即ち出(いづ)る。猫の牙に生姜(しょうが)を摺(す)り付(つく)れは、小便、其(その)侭(よく)する
三十ウラ
するものなり。
〔・するする:「する」は重ねる必要はなかろう。/・儘(侭)は盡(尽)に同じ。〕
〔『外科大成』:卷三分治部下(小疵)・耳部:「蟲入耳者,以薑擦猫鼻,猫尿自出」。若干本文とは異なるが、ともかく猫の小便を得るには、ショウガが有効のようだ。〕