2017年9月22日金曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕44

下十五ウラ
※四花穴の図あり。省略。
廿一 小児門
○遊風の毒、胸腹に入(いる)則(とき)は死(しする)なり。是(この)時急に三稜針を以て紅(あか)き処を乱刺して多く悪(お)血を出(いだ)し、翌日更に紅赤(こうしゃく)の処を見て、右のごとく針刺(しんし)す。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「火丹毒謂遊風、入胸腹則死(即用利鍼、周匝紅處多出惡血、翌日更觀紅赤處、如右鍼刺效)」。〕
〔・遊風:『幼科概論』論小兒之遊風丹毒:此症由娠母過食辛辣煎炙之物,或久卧火炕,内熱熾盛,波及生兒,降生後復感風邪,將血中已蘊之熱毒引起,發爲遊風丹毒。失治能漫延全身,變症百出,亦能致命也。俗云風疹·風疙疸者是。其症象小兒身上忽然紅腫,或分點粒,或成片斷,脹痛發癢,甚至滿身皆有,遊走無定。萬不可用手抓搔,因指甲梢有毒,能引外風,立刻全身皆起,且能起至二層三層。斯時起到何處,何處肌膚即行麻木癢痛。入口内小兒即不能吮乳,到心口上,小兒即心中慌亂,啼不住聲。再甚涕淚皆乾,丹毒轉向裏攻進,侵及神經,筋青鼻煽,痙攣抽搐,立時發措手也。其初跳見白斑,漸透黃色光亮,皮中恍如有水,脹破即流黃水,黃水到處,同樣之症型旋生,濕爛痛癢,名爲水丹。多生腿膝等處,屬脾肺有風熱而濕也。又有頭面身體起赤紅平點,不發熱而乾燥作痛癢,起多即連成雲片,名爲赤遊丹,是血分有火而受風也。又有遍身起扁疙疸與肉皮同色,無熱而微脹痛兼癢,遊走不定,是爲膜冷所致。又名冷丹,由胎毒未能發出肌膚,外受風寒郁遏也。又有腰間紅腫一圈,名纏腰,甚毒火甚更,是心包及内腎有毒熱感風邪而成,其發甚速,頃刻傷生,無法救治也。總之丹毒起于胸腹及于四肢者,其症象順而吉,起于四肢及于胸腹者,症象逆而危,治療之宜急也。今將各項丹症的治法藥方列下,按症之現象,應服何等方劑,即對症與小兒服之,自可應症而癒也。治水丹應用天保採薇湯,此症濕盛,脾氣因之不運化,濕熱郁積成毒,復感外間風邪而起,治法宜用利濕清熱,疏風邪,通脾氣法,使其熱清風去濕開氣通,脾能營運,毒自解也。
『漢方用語大辞典』:赤遊風·赤遊丹ともいう。一種の急性に皮膚にあらわれる風証である。多くは小児に見られ、口唇·眼瞼·耳たぶまたは胸部·背部·手背などに多発する。常に突然発生し、消失も速やかで転移も一定しない。患部の皮膚は紅く炎症を起こし、かつ浮腫は雲のような形で灼熱感がありかゆい。形が風疹のようであれば、さらに大きくなる。発熱·腹痛·嘔吐·吐瀉·便秘などをともなう。一般に背腹よりおこって四肢に流れていくものを順とし、四肢よりおこって胸腹に入るものを逆とする。食物アレルギーなどによって起こる。血分に滞れば赤色を発し、赤遊風·赤遊丹と名付け、気分に滞れば赤色となり、白遊風と名付ける。〕
○驚風には神道に灸七壮より百壮に至る。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「驚風(神道、在第五椎節間、灸七壯至百壯。即效)」。〕
○陰卵(きんだま)偏(かた)く大(おおい)にして、腹に入(いり)たるには、太冲(たいしょう)·独陰(とくいん)・気海·三陰交·関元を治(ぢ)すべし。
〔・偏(かた)く:「く」は、繰り返し記号が短くなっている形。パソコンで縦書きでは「〳〵」をつかう。読みは「カタカタ」。一方。かたほう。〕
〔『鍼灸經驗方』獨陰二穴:「在足大指次指內中節橫紋當中。主胸腹痛及疝痛欲死。男左女右」。『鍼灸大成』獨陰二穴「在足第二指下,橫紋中是穴,治小腸疝氣,又治死胎,胎衣不下,灸五壯」。〕
〔『鍼灸經驗方』小兒:「陰卵偏大入腹(太冲·獨陰·氣海·三陰交·關元)」。〕
○雀目(とりめ)には、手の大指(おおゆび)の甲(つめ)の後(うしろ)の第一の節の内の橫紋(よこすじ)
下十六オモテ~十八オモテ
の頭(かしら)白肉の際(あいだ)に各(おのおの)灸一壮(ひ)。肝兪(かんのゆ)に九壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「雀目(手大指甲後、第一節內橫紋頭白肉際各)灸一壯。肝兪(九壯)」。〕
○児(こ)生(むま)れて一七日の内啼(なく)こと多く、客風(カクフウ/かぜ)臍(へそ)に中(あた)りて、心脾に至るには、神門·合谷·太冲(たいしょう)·列缺、各灸七壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「兒生一七日內多啼客風中於臍、至心脾(合谷·太冲·神門·列缺七壯。承漿七壯)」。〕
○先に驚(おどろき)て後(のち)に啼(なく)ことの噪(さわが)しきには、百会に七壮。齦交·間使に五壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「先驚後啼(百會七壯。間使·齦交)」。〕
○浮腫(フシュ/うき)ありて気促するには、水分に三壮、三陰交に三十壮。脾兪(ひのゆ)に三壮。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「浮腫(水分三壯。三陰交三十壮。脾兪三壯)」。〕
○乳(ち)を吐(はく)には、中庭。亶中(だんちゅう)の下(しも)一寸六分に灸すること五壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「吐乳(中庭、在亶中下一寸六分、灸五壯)」。〕
○四五歳まで言(もの)いわざるには、心兪(しんのゆ)、足の内踝(うちくるぶし)の尖(とがり)の上(うえ)に各々(おのおの)灸すること三壮。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「四五歳不言(心兪·足内踝尖上各灸三壯)」。〕
○臍(へそ)の腫(はれ)るには、臍(へそ)に対する背骨(せほね)の上(うえ)に灸三壮、或(あるい)は七壮。奇効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「臍腫(灸對臍脊骨上、灸三壯、或七壯)」。〕
○小便通ぜざるには、百会に七壮。湧泉に三壮。胞門に五十
下十六ウラ~十八ウラ
壮。而(しこう)して後(のち)、芭豆(はず)の肉を搗(つき)て、餅となし、臍(へそ)の中(なか)に填(うめ)て灸五七壮。妙。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「小便不通(百會七壯。營衝各三壯。丹田二七壯。湧泉三壯。胞門五十壯。又用巴豆肉、搗作餅、或炒鹽安填臍中。灸五七壯)」。〕
〔『鍼灸經驗方』大小便不通:「膀胱兪三壯。丹田二七壯。胞門五十壯。營衝在足内踝前後陷中、三壯。經中穴、在臍下寸半兩傍各三寸。灸百壯。大腸兪三壯」。〕
○口(くち)噤ずるには、然谷を治(ぢす)べし。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「口噤(然谷)」。〕
○善驚(おどろく)には、然谷。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「善驚(然谷)」。〕
○多く哭(なく)には、百会。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「多哭(百會)」。〕
○遺尿(イニョウ/よばり)には、気海に百壮。太敦に三壮。妙効あり。
〔『鍼灸經驗方』小兒:「遺尿(氣海百壯。大敦三壯)」。〕
○夜々(よなよな)魘(ゆめ)を見、悎(おび)へ、或(あるい)は自汗し、驚き悸(むなさわ)ぎし、或(あるい)は詈(ののし)りて息(やま)ず。又は譫語(うわこと)をいふには、心兪(しんのゆ)に百壮。腰眼·大陵·湧泉·後谿等(とう)に三壮。即効あり。
〔・悎(おび)へ:書いてあるのは、忄+牛+繰り返し記号(「渋」字の右下の部分)。本来なら「忄+犇」と翻字すべきだが、そのような文字はないようなので、誤字ととらえ、意味にあわせて「悎」とした。〕

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