2017年9月1日金曜日

仮名読十四経治方 〔翻字〕23

二十 耳病(ニビョウ/みみのやまい)門
経に曰く、耳塞(ふさが)り噪(さわぐ)ものは、九竅(キュウキョウ/ここつのあな)通ぜざれはなり。心神(しんじん)最も竅(あな)に通ず。故(ゆえ)に心(しん)病(やむ)ときは、先(まつ)耳噪(さわい)で鳴り、遠声(エンセイ/とおくきく)聴(きく)ことあたはず。
〔・ここつのあな:「ここノつのあな」の省略であろう。〕
〔『鍼灸經驗方』耳部:耳者屬腎。左主氣,右主血。耳塞噪者,九竅不通。○又曰:心主竅,心氣通耳,氣通于腎。故心病,則耳噪而鳴,不能聽遠聲。〕
△或(あるい)は又(また)精虚して耳(みみ)聾(つぶ)れ鳴(な)あり、又(また)虚火逆(のぼ)り、痰気 耳の中に鬱(うつ)し、或(あるい)は閉(とぢ)、或(あるい)は鳴り、気鬱し、痞満(ヒマン/つかえ)し、
〔・鳴(な)あり:「鳴(なる)あり」の省略とも思えるが、「鳴(な)り」の誤りか。〕
二十九ウラ
痰盛(さかん)に咽(のど)の中(うち)快(こころ)よからぬあり。又(また)厚味(こうみ)を常に食し、胃火盛(さかん)にして、両(りょう)耳(に)聾(つぶる)もの、或(あるい)は瘡毒(そうどく)愈(いえ)て後(のち)、余毒(よどく)にて耳聾(みいしい)るあり。針灸(しんきゅう)の全く治(ぢ)すること能はずといへども、一二を載(の)す。
○耳鳴り、耳痛(いたみ)で響き、頭(かしら)にこたへ、或(あるい)は目(め)睡(ねふ)りて、輒(すなわ)ち神(しん)寢(いね)がたく、昼夜大(おおい)に苦しんで止(やま)ざるには、葦(あし)の筒(つつ)の長さ五寸ばかりなるを耳の孔(あな)に挿(さし)はさみ、偖(さて)索麪(そうめん)の粉(こ)を水に𩜍(ね)り、泥のごとくして、彼(かの)耳に挿入(さしいり)たる箇(つつ=筒)の四畔(ぐるり)を蜜封(ミツフウ/みつにてふたす)し、外(そと)に出(いで)たる筒(つつ/「厳密には竹+冂+古」と書いてある)の頭(かし)らに艾(もぐさ)を置き、灸すること七壮(ななひ)。左り痛(いたむ)ときは右に炷(すえ)、右若(も)し痛(いたむ)ときは左に炷(すゆ)べし。妙駮(みょうこう)あり。妙(みょう)。
〔・駮:音は「ハク」。意味もあわない(傳說中的猛獸。駁正、非難。矛盾、違逆。辯論、提出異議。顏色雜亂。雜亂)。三十一オモテに「駮(しる)し」とある。「験」または「效」の誤字であろう。〕
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳痛耳鳴:「以葦筒長五寸切斷、一頭插耳孔、以泥糆密封于筒之四畔、而外出筒頭、安艾。灸七壯。左取右、右取左。又方:取蒼朮以四棱鍼銷、穿孔如竹筒。一如右葦筒法、灸三七壯。有大效」。〕
○耳鳴(みみなり)て遠く聴(きく)こと能(あた)はざるには、心兪(しんゆ)に三十
三十オモテ
壮(ひ)より五十壮(ひ)に至る。
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳鳴不能聽遠:「心俞三十壯」。〕
○耳聾(みみしい)たるには、先(まづ)百会の穴(けつ)を刺し、次に中渚・後谿(こうけい)・下(しも)三里・合谷・腕骨・崑崙等(とう)に針(はり)を久しく留(とど)む。腎兪(しんゆ)に二七十四壮(ひ)より年(とし)に随(したがい)て壮(かず)を為(なす)に至る。
〔『鍼灸經驗方』耳部・耳聾:「先刺百會、次刺合谷・腕骨・中渚・後溪・下三里・絕骨・崑崙。並久留針。腎俞二七壯、至隨年、為壯」。〕
○五臓虚乏し、心神労(つか)役(れ)て、体(たい)羸(やせ)痩(やせ)て耳聾(みみしい)たるには、腎兪(じんゆ)に二十一壮。心兪(しんゆ)に三十壮。日(ひ)を遂(お)ふて治(ぢ)すべし。
〔『鍼灸經驗方』耳部・虛勞羸瘦耳聾:「腎俞三七壯。心俞三十壯」。〕
○諸(もろもろ)の虫(むし)、若し耳に入(いら)ば、藍(あい)の汁を一滴(イッテキ/ひとしづく)下(くだ)してよし。又は蔥(ひともじ)の汁を内(いる)るもよし。
〔・ひともじ:葱(ねぎ)の女房言葉。〕
○蚰蜒(げしげし?)の耳に入(いる)に塩少(すこし)ばかりを耳の内に搽(ひね)れば、即(すなわち)化(け)し水(みづ)となる。妙。
〔・蚰蜒(げしげし?):ふりがな不明。一字目に濁点があり、次に一字の繰り返し記号があり、つぎにその二字分繰り返し記号があるようにみえる。意味からするとナメクジのようだが、「蚰蜒」はムカデの一種。/・搽:敷、塗抹。/・搽:敷、塗抹。〕
○蜈蚣(むかで)耳に入(いる)には、鶏(にわとり)の肉を以て耳の辺(へん)に置(おけ)ば、自(おのづか)ら出(いづ)る。又猫の小便を灌(そそげ)ば、即ち出(いづ)る。猫の牙に生姜(しょうが)を摺(す)り付(つく)れは、小便、其(その)侭(よく)する
三十ウラ
するものなり。
〔・するする:「する」は重ねる必要はなかろう。/・儘(侭)は盡(尽)に同じ。〕
〔『外科大成』:卷三分治部下(小疵)・耳部:「蟲入耳者,以薑擦猫鼻,猫尿自出」。若干本文とは異なるが、ともかく猫の小便を得るには、ショウガが有効のようだ。〕

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