2013年6月6日木曜日

家本誠一先生の「古典に見る「癌」の記載」の結論には、いささか驚いた。

『鍼灸OSAKA』109 特集:がんのアプローチ

『漢語大字典』が魯迅の書信を挙げていることから、「現代に至って現われた言 葉であることを示している」。
結論:癌の字も内容も欧米のCANCERの音写であると思われる。

魯迅は、仙台で医学を学んでいるから、日本語の医学書でこの字をおぼえたのであろうか。
「癌」字が近代になってつくられた文字だとしても、漢語の発音はai2である。カン・ガンではない。
「CANCERの音写である」とすると、この字は、日本人がつくった可能性がたかくなるが、それについての言及はない。

「癌」字は、「疒」+「嵒」に分解できる。
㽷・瘟・瘖など、病垂の会意文字は多いので、「嵒」(「岩」に通ずる。石のかたまり)を病(の症状)として表現するために「疒」が加えられたことを想像するのは、それほどむつかしいとは思えない。

『漢語大字典』で「嵒」yan2をひけば、その下に「嵓」字があり、「嵒」と同じ と『正字通』を引用している。さらに、「癌」ai2と同じで、腫瘤として、『本草綱目』を引いている。

病名・症状名を「山+品」であらわす初出に関しては、島田隆司先生がなにかに書いたはずだし(少なくとも出典調べには協力した記憶がある。宋代の外科学書に散見される)、『中華医史雑誌』など、大陸の中医雑誌の定番ネタだと思うが。

参考:
http://naruhodogogen.jugem.jp/?page=0&cid=20

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