2010年8月18日水曜日

考えすぎ

峰潔(大村藩士,文久二年に上海へ渡航)の『清国上海見聞録』(『幕末明治中国見聞録集成』第11巻所収)に次のような一節がある。

豹ノ一班(ママ)ヲ見テ其ノ全体ヲ見サレハ固ヨリ其美ヲ知ルコト能ハス。然レトモ名医ハ一手ノ脉ヲ察シテ心腹ノ病ヲ知ル。抑清国ノ病ハ特ニ腹心ニアルノミナラス,面目ニアラワレ,四躰ニアフレ,一指一膚モ痛マサル所ナキナリ。……

大清帝国の末期を目の当たりにして,上海という帝国の一部を見て全体の状態を表現するのに,脈診をたとえとしている。

こういう文章を目にすると,ついコンテキストを忘れて,ここでの「膚」は「はだ」のことではなく,「夫」「扶」とも表記されて,指四本の幅のことで,『備急千金要方』に出ていたのだろうか,などと,思考がどんどん横道にそれて行ってしまう。

冷静に読み直せば,「一本の指,一片の皮膚」という意味であるはずなのだが,いろいろなバイアスが交錯して,素直に読み進めない。

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