2016年11月7日月曜日

卓廉士先生の『素問』標本病伝論(65)講義 その8

「小大不利.治其標」――すなわち小便が癃閉〔排尿障害〕し、気が膀胱に結ぼれ、あるいは大便が秘結〔便秘〕し、気が大腸に結ぼれたときは〔気結=気のはたらきが鬱滞した状態〕、腹部にある募穴の天枢・関元および曲骨・中極・水道・腹結・気穴など標部に位置する腧穴を急いで取って二便を通利すべきである。「小大利.治其本」とは、すなわち大小便が通利〔阻滞なく流れる〕していれば、下肢の本部にあたる腧穴を取って、疾病の病機〔疾病の発生原因とその変化の機序〕に焦点をあてて治療をおこなうべきである。

「病発而有餘」の実証については、「先治其本.後治其標」すべきである。――先に四肢末端にある本部の腧穴を刺して抜本的な対策を講じ、ついで頭面胸腹などにある標部の腧穴をもちいて、兼症をとりのぞく。「病発而不足」という虚証については、「先治其標.後治其本」しなければならない。――先に標部にある慢性疾患の治療にすぐれた背兪穴と募穴を取って臓腑の気を補益し、さらに本部の腧穴を取り、四肢末端の陽気をたすけて経脈の気を恢復させる。

上述の先病と後病から判断すると、先病は原発性の病巣であることが多く、疾病の病機がある場所であることが多い。後病は、兼症あるいは続発性〔二次性〕病症であることが多い。そのため、おおくの情況下では、先病を先に治療する方法がとられる。とりわけ複雑な症状に遭遇したときは、なおさらこのようにしたほうがよい。たとえば、張家山漢簡『脈書』に「治病之法、視先発者而治之」〔病気の治療法は、先に発病したものを観察して、それを治療する〕とある。先病先治は、非常に古い思想のひとつである。この思想は、『霊枢』終始(09)にも「治病者.先刺其病所従生者也.……病先起于陰者.先治其陰.而後治其陽.病先起于陽者.先治其陽.而後治其陰」〔二「于」字、『霊枢』になし。筆者が補ったものか。【現代語訳】これらの病証の治療には、疾病の初発部位から刺鍼すべきです。……陰経から始まった疾病は、先に陰経を治療し、後に陽経を治療すべきです。陽経から始まった疾病は、先に陽経を治療し、後に陰経を治療すべきです〕と、示されている。

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