2011年10月29日土曜日

『醫説』鍼灸 關聯史料集成 2 明堂 その4

臣聞聖人之有天下也(1),論病以及國,原診以知政(2)。王澤不流(3),則姦生於下(4),故辨淑慝以制治(5);真氣不榮(6),則疢動於體(7),故謹醫砭以救民(8)。昔我聖祖之問岐伯也(9),以為善言天者,必有驗於人(10)。天之數十有二,人經絡以應之(11);周天之度三百六十有五(12),人氣穴以應之(13)。上下有紀(14),左右有象(15),督任有會(16),腧合有數(17)。窮妙于血脈(18),參變乎陰陽(19),始命盡書其言(20),藏於金蘭之室(21)。洎雷公請問其道(22),迺坐明堂以授之(23),後世之言明堂者以此(24)。由是閞灸鍼刺之術備焉(25),神聖工巧之藝生焉(26)。若越人起死(27),華佗愈躄(28),王纂驅邪(29),秋夫療鬼(30),非有神哉,皆此法也。

【訓讀】
臣聞くならく,聖人の天下を有(たも)つや(1),病を論じて以て國に及び,診を原(たず)ねて以て政(まつりごと)を知る,と(2)。王澤流れざれば(3),則ち姦,下に生ず(4),故に淑慝を辨じて以て治を制す(5)。真氣榮せざれば(6),則ち疢(やまい),體に動ず(7),故に醫砭を謹んで以て民を救う(8)。昔我が聖祖の岐伯に問うや(9),以て善く天を言う者は,必ず人に驗有りと為す(10)。天の數十有二,人の經絡以て之に應ず(11);周天の度三百六十有五(12),人の氣穴以て之に應ず(13)。上下に紀有り(14),左右に象有り(15),督任に會有り(16),腧合に數有り(17)。妙を血脈に窮め(18),變を陰陽に參じえ(19),始めて命じて盡く其の言を書し(20),金蘭の室に藏せしむ(21)。雷公,其の道を請いて問うに洎(およ)んで(22),迺(すなわ)ち明堂に坐して以て之を授く(23)。後世の明堂と言う者は此れを以てなり(24)。是れに由り閞灸鍼刺の術備わり(25),神聖工巧の藝生ず(26)。越人,死を起こし(27),華佗,躄を愈(いや)し(28),王纂,邪を驅し(29),秋夫,鬼を療するが若きは(30),神有るに非ざるや,皆な此の法なり。

【註釋】
(1)聖人:聖明なる帝王を指す。 有:統治する。 【譯】臣(わたくし)は以下のように聞いております。古代の聖人が天下を統治していたとき,
(2)「論病」二句:『漢書』藝文志:「其善者,則原脈以知政,推疾以及國(其の善き者は,則ち脈を原ねて以て政を知り,疾を推して以て國に及ぶ)。」高明なる醫生は病情を診察分析して,國情政事まで推論できるという意。「原」は,探究する。動詞。『國語』晉語八:「文子曰:醫及國家乎?對曰:上醫醫國,其次疾人,固醫官也(文子曰く:「醫は國家に及ぶか。」對えて曰く:「上醫は國を醫(いや)し,其の次は疾人,固(もと)より醫官なり。」/上級の医者は国家もいやし、その次が病人である。これが本来の医官である)。」韋昭注:「其の淫惑を止む,是れ國を醫すと為す。」『左傳』昭公元年:「晉侯求醫於秦,秦伯使醫和視之,曰:「『疾不可為也,是謂近女室,疾如蠱。非鬼非食,惑以喪志。良臣將死,天命不佑(晉侯 醫を秦に求む。秦伯 醫和をして之を視しむ。曰く:「疾 為(おさ)む可からざるなり。是を女室に近づき,疾 蠱の如しと謂う。鬼に非ず食に非ず,惑いて以て志を喪う。良臣將に死なんとし,天命も佑(たす)けず」。)」漢·王符『潛夫論』思賢:「上醫醫國,其次醫疾。夫人治國,固治身之象。疾者,身之病;亂者,國之病也(上醫は國を醫し,其の次は疾を醫す。夫れ人の國を治するは,固(もと)より身を治むるの象なり。疾なる者は,身の病なり。亂なる者は,國の病なり)。」 /○原:もとづく。 【譯】病情を論述して國情を推論し,病の診察方法を探究して/に基づいて/政を治める方法を知り得る,と。
(3)王澤不流:賢君の道德教化が傳播されない。澤:恩澤。ここでは道德教化を指す。「流」は,傳播。 【譯】もし聖王の恩澤が流布しないと,
(4)姦:「奸」の異體字。奸邪,邪惡。 【譯】邪惡が天下に生まれる。
(5)淑:善良。慝(tè特):邪惡。 /○辨:分别する。 ○制治:統治する。政務をおこなう。『尚書』周官:「制治于未亂,保邦于未危。」孔穎達正義:「治謂政教。邦謂國家。治有失則亂,家不安則危。恐其亂則預為之制,慮其危則謀之使安,制其治於未亂之前,安其國於未危之前。」 【譯】ゆえに善惡を判別して統治する。
(6)榮:充盛。 /○真氣:真元の氣。『素問』上古天真論:「恬惔虛無,真氣從之(恬惔虛無なれば,真氣,之に從う)。」 また正氣,「邪氣」と相對していう。『靈樞』邪客:「如是者,邪氣得去,真氣堅固,是謂因天之序(是(かく)の如ければ,邪氣去るを得,真氣堅固なり,是れを天の序に因ると謂う)。」  【譯】もし真氣がさかんでないと,
(7)疢(chèn襯):疾病。 【譯】病氣が體內で發生する。
(8)謹:謹しみ守る。注意する。重視する。動詞として用いられている。 醫砭:ひろく醫術を指す。  【譯】ゆえに医術を重視して民衆を救濟する。
(9)聖祖:黃帝を指す。 【譯】むかし我らが聖祖黃帝が岐伯に(醫學のことを)質問したとき,
(10)「善言」二句:『素問』舉痛論:「善言天者,必有驗於人;善言古者,必有合於今(善く天を言う者は,必ず人に驗する有り。善く古を言う者は,必ず今に合する有り)。」,また『素問』氣交變大論:「善言天者,必應於人;善言古者,必驗於今(善く天を言う者は,必ず人に應あり。善く古を言う者は,必ず今に驗あり)。」 【譯】天道を語ることに長じていれば,人體においても效き目がある/檢證できる。
(11)「天之數」二句:人の十二經脈は,天の十二ヶ月に相應ずるを指す。『靈極』陰陽繋日月』:「足之十二經脈,以應十二月。」にもとづく。有,「又」に通ず。 【譯】天の數は十二であり,人の經絡はそれに應じている。
(12)「周天」句:地球が太陽を一周繞る三百六十五度をいう。『後漢書』顯宗孝明帝紀:「見史官,正儀度(史官を見て,儀度を正す)。」李賢注:「儀謂渾儀,以銅為之,置於靈臺,王者正天文之器也。度,謂日月星辰之行度也。史官即太史,掌天文之官也(儀とは,渾儀〖天體の運行を觀測する儀器。渾天儀〗を謂う。銅を以て之を為(つく)り,靈臺〖天子が天文や氣象を觀察する物見臺〗に置き,王者の天文を正すの器なり。度とは,日月星辰の行度〔運行の度數〕を謂うなり。史官は即ち太史,天文を掌るの官なり)。」 【譯】天を周る度數は三百六十五度であり,
(13)「人氣穴」句:人は三百六十五個のツボで天と相應することを指す。氣穴は,即ちツボ。『靈樞』邪客:「歲有三百六十五日,人有三百六十五節。」 【譯】人の腧穴は,それに相應じている。
(14)上下:天地を指す。 紀:綱紀。法度。 【譯】天地には要綱法度があり,/人體の氣血の上下の運行には一定の法則があり,
(15)左右:四方を指す。 象:物象;跡象。 【譯】四方には物體の形象がある。/人の經絡のめぐりには左右に一定の軌跡がある。
(16)督任:督脈と任脈。 會:交會。 【譯】督脈、任脈には交わり會するところがあり,
(17)腧合:腧穴と合穴。 數:定數。 /○腧:「兪」に通ず。五行穴のひとつ。 【譯】兪穴、合穴には定まった數がある。
(18)窮妙:微妙な道理を窮める。窮は,形容詞が動詞として用いられている。 【譯】血脈の微妙な道理をきわめ,
(19)參變:變化を參合する。參は,參合(驗證相合/綜合觀察/綜合參考),比較する。 【譯】陰陽の變化を比較參考にし,
(20)其言:黃帝、岐伯の鍼灸に関係する言論を指す。 【譯】それからはじめて黃帝は命令して、その鍼灸醫學に関連する言論をすべて記載させ,
(21)金蘭之室:古代の帝王が貴重な文書を收藏する場所。金蘭:本は友情の契合(意氣投合)すること。金は堅さを喻え,蘭は香を喻える。『周易』繋辭上:「二人同心,其利斷金;同心之言,其臭如蘭(二人 心を同じうすれば,其の利(と)きこと金を斷つ。同心の言は,其の臭(にお)い蘭の如し/君子の道は……初めは不同なようでも,最後には通い合うものである。この二人が心を合わせれば,その銳利さは金をも断ち切れる。心を合わせたものの言葉は,蘭のごとく香しい)。」ここの「金蘭」は貴重なもののたとえ。 /『素問』氣穴論(58)「今日發蒙解惑。藏之金匱,不敢復出。乃藏之金蘭之室,署曰氣穴所在(今日蒙を發(ひら)き惑を解けり。之を金匱に藏して,敢えて復た出ださず。乃ち之を金蘭の室に藏し,署して氣穴の在る所と曰う)。」 【譯】金蘭の室に收蔵した。
(22)洎(jì記):及ぶ。到る。 /○請問:ひとに質問するときの敬辭。 【譯】雷公が鍼灸醫學についておうかがいすると,
(23)迺:「乃」の異體字。 明堂:古代の天子が政教を宣明する場所。凡そ朝會および祭祀、慶賞、選士、養老、教學等の大典は,ひとしくこの場所で舉行される。古樂府『木蘭詩』:「歸來見天子,天子坐明堂(歸り來たりて天子を見れば,天子 明堂に坐す)。」 【譯】そこで黃帝は明堂に坐し,鍼灸醫學を雷公に傳授した。
(24)以:依據する。雷公が人の經絡血脈を問うたとき,黃帝は明堂に坐して之を授けたと傳えられる。ゆえに後世の醫家は人體の經絡腧穴の圖を稱して明堂圖という。 /『素問』著至教論(75):「黃帝坐明堂,召雷公而問之曰:子知醫之道乎?」 【譯】後世に經穴圖を明堂圖,經穴學書を明堂經というのは,このことに基づく。
(25)閞(guān關):すなわち「關」字。鍼灸もまた「關灸」という。『史記』扁鵲倉公列傳』:「形弊者不當關灸、鑱石及飲毒藥也(形弊(つか)るる者は當に關灸、镵石及び毒藥を飲む/ましむ/べからざるなり)。」 『老子』二十七章:「善𨳲(閉)無閞(關)楗而不可開(善く閉ずるものは關楗無くして,而も開く可からず/門を閉ざすのにすぐれたものは,かんぬきは必要ないが,〔閉めた扉は〕開けられない)。」 /○閞:門柱上の斗拱(ますがた。建物の柱の上にあって,梁、棟木をささえるもの)。 ○關:かかわる。 形弊(つか)るる者は當に灸镵石及び毒藥を飲むに關するべからざるなり(體力の衰えた者は,灸、鍼、砭石をしたり劇藥を飲む/ませる/べきではない)。 /○關:門を閉ざす橫棒。かんぬき。つらぬく。一說,「つらぬく」から引伸して孔穴。一説,關節孔穴。 形弊(つか)るる者は當に關灸、镵石し,及び毒藥を飲む/ましむ/べからざるなり(體力の衰えた者は,關節孔穴に灸や、鍼刺、砭石をしたり,劇藥を飲む/ませる/べきではない)。/『扁倉傳割解』:「關灸之關,猶『靈樞』所謂關刺之關,謂行灸於關節孔穴也。」『扁鵲倉公傳彙攷』元堅附桉:「關灸之關,疑譌。滕〔惟寅(淺井圖南)『割解』〕以官鍼篇關刺之關,釋之,難從。」 【譯】これによって,關灸鍼刺(施灸刺鍼)の技術が完備し,
(26)神聖工巧:望、聞、問、切をいう。『難經』六十一難:「望而知之謂之神,聞而知之謂之聖,問而知之謂之工,切脈而知之謂之巧。」また『素問』至真要大論:「工巧神聖」:王冰註:「針曰工巧,藥曰神聖。」 【譯】望聞問切という四診の技能がうまれた。
(27)越人起死:秦越人が鍼術をもちいて虢の太子を蘇生させたことを指す。『史記』扁鵲傳を参照。 /扁鵲傳:其后扁鵲過虢。虢太子死,扁鵲至虢宮門下,問中庶子喜方者曰:“太子何病,國中治穰過於眾事?”中庶子曰:“太子病血氣不時,交錯而不得泄,暴發於外,則為中害。精神不能止邪氣,邪氣畜積而不得泄,是以陽緩而陰急,故暴蹷而死。”扁鵲曰:“其死何如時?”曰:“雞鳴至今。”曰:“收乎?”曰:“未也,其死未能半日也。”“言臣齊勃海秦越人也,家在於鄭,未嘗得望精光侍謁於前也。聞太子不幸而死,臣能生之。”中庶子曰:“先生得無誕之乎?何以言太子可生也!臣聞上古之時,醫有俞跗,治病不以湯液醴灑,镵石撟引,案扤毒熨,一撥見病之應,因五藏之輸,乃割皮解肌,訣脈結筋,搦髓腦,揲荒爪幕,湔浣腸胃,漱滌五藏,練精易形。先生之方能若是,則太子可生也;不能若是而欲生之,曾不可以告咳嬰之兒。”終日,扁鵲仰天嘆曰:“夫子之為方也,若以管窺天,以郄視文。越人之為方也,不待切脈望色聽聲寫形,言病之所在。聞病之陽,論得其陰;聞病之陰,論得其陽。病應見於大表,不出千里,決者至眾,不可曲止也。子以吾言為不誠,試入診太子,當聞其耳鳴而鼻張,循其兩股以至於陰,當尚溫也。”中庶子聞扁鵲言,目眩然而不瞚,舌撟然而不下,乃以扁鵲言入報虢君。虢君聞之大驚,出見扁鵲於中闕,曰:“竊聞高義之日久矣,然未嘗得拜謁於前也。先生過小國,幸而舉之,偏國寡臣幸甚。有先生則活,無先生則棄捐填溝壑,長終而不得反。”言末卒,因噓唏服臆,魂精泄橫,流涕長潸,忽忽承睫,悲不能自止,容貌變更。扁鵲曰:“若太子病,所謂‘尸蹷’者也。夫以陽入陰中,動胃繵緣,中經維絡,別下於三焦、膀胱,是以陽脈下遂,陰脈上爭,會氣閉而不通,陰上而陽內行,下內鼓而不起,上外絕而不為使,上有絕陽之絡,下有破陰之紐,破陰絕陽,(之)色[已]廢脈亂,故形靜如死狀。太子未死也。夫以陽入陰支蘭藏者生,以陰入陽支蘭藏者死。凡此數事,皆五藏蹙中之時暴作也。良工取之,拙者疑殆。”扁鵲乃使弟子子陽厲鍼砥石,以取外三陽五會。有閒,太子蘇。乃使子豹為五分之熨,以八減之齊和煮之,以更熨兩脅下。太子起坐。更適陰陽,但服湯二旬而復故。故天下盡以扁鵲為能生死人。扁鵲曰:“越人非能生死人也,此自當生者,越人能使之起耳。”
(28)華佗愈躄:華佗が灸法をもちいて跛足をなおしたことを指す。『三國志』華佗傳 裴松之注の引用する『華佗別傳』に見える。躄は,跛足。 / 『三國志』魏書 卷二十九 方技傳第二十九 華佗傳注引ける佗別傳に曰く:「有人病兩脚躄不能行,轝詣佗,佗望見云:『己飽針灸服藥矣,不復須看脈。』便使解衣,點背數十處, 相去或一寸,或五寸,縱邪不相當。言灸此各十壯,灸創愈即行。後灸處夾脊一寸,上下行端直均調,如引繩也(人有り,兩脚の躄を病みて行くこと能わず,轝(こし)もて佗に詣(いた)る。佗望み見て云う:『己れ/已に針灸服藥に飽く。復た脈を看るを須(もと)めず/須(ま)たず』と。便ち衣を解かしめ,背に點すること數十處, 相去ること或いは一寸,或いは五寸,縱邪(ななめ)相當らず。此に各十壯を灸し,灸の創(きず)愈ゆれば即ち行かんと言う。後に灸する處は脊を夾(はさ)むこと一寸,上下行(なら)ぶこと端直均調にして,繩を引く〔大工が墨繩で線を引く〕が如きなり)。」
(29)王纂驅邪:『太平御覽』卷七百二十二の引用する劉敬叔『異苑』に云う:「縣人張方女暮宿廣陵廟門下,夜有物假作其壻,來魅惑成病。纂為治之,始下一針,有獺從女被內走出,病遂愈。」王纂は,北宋醫家,鍼術が巧みなことで著名。 /劉敬叔『異苑』卷八:「元嘉十八年,廣陵下市縣人張方女道香,送其夫壻北行。日暮,宿祠門下。夜有一物,假作其壻來云:「離情難遣,不能便去。」道香俄昏惑失常。時有海陵王纂者,能療邪。疑道香被魅,請治之。始下一針,有一獺從女被內走入前港。道香疾便愈(元嘉十八〔441〕年,廣陵下市縣の人,張方が女(むすめ)道香,其の夫壻〔婿〕の北に行くを送る。日暮れて,祠門の下に宿る。夜に一物〔もののけ〕有り,其の壻に假し〔裝い〕作(いつわ)り,來たりて云う:「離情遣り〔紛らわせ〕難く,便ち去ること能わず」と。道香俄かに昏惑〔意識朦朧と〕して常を失す〔舉動、精神狀態が常軌を逸す〕。時に海陵の王纂なる者有り,能く邪を療す。道香の魅〔惑〕せらるるを疑い,之を治せんことを請う。始めて一針を下せば,一獺〔カワウソ/ラッコ〕有り,女の被內〔ふとん〕從り走りて前の港に入る。道香の疾(やまい),便ち愈ゆ)。」元·王國瑞『扁鵲神應鍼灸玉龍經』註解標幽賦:「王纂針交兪,而妖精立出。」 ○交兪:場所,未詳。 ○妖精:妖怪變化。
(30)秋夫療鬼:『南史』張融傳:「夜有鬼呻吟聲,甚悽愴。秋夫問:‘何須?’答言:‘姓某,家在東陽,患腰痛死,雖為鬼,痛猶難忍,請療之。’秋夫云:‘何厝(cuò措)法?’鬼請為芻,案孔穴針之。秋夫如言,為灸四處,又針肩井三處,設祭埋之。明日,見一人謝恩,忽然不見。當世伏其通靈〔夜,鬼の呻吟する有り,聲,甚だ悽愴たり。秋夫問う:‘何の須(もと)むるところぞ?’答えて言う:‘姓は某〔『醫説』鍼灸作「我姓斛,名斯」〕,家は東陽に在り,腰痛を患い死なんとす。鬼〔靈〕と為ると雖も,痛み猶お忍び難し。之を療するを請う。’秋夫云う:‘何をか法を厝〔措置〕せん?’鬼,芻(人)〔藁人形〕を為(つく)り,孔穴を案〔考查、察辦。依據、依照〕じて之に針するを請う。秋夫,言の如くし,〔幽鬼の〕為に灸すること四處,又た肩井三處に針し,祭を設けて〔祭壇を設置して供物を捧げ〕之を埋む。明日,一人の恩を謝するを見る。忽然として見えず。當世,其の通靈〔神靈に通じ,鬼神と相通ずる〕に伏〔信服〕す〕。」秋夫は,南朝宋代の醫家徐秋夫で,醫術に精通していた。 /『普濟方』卷四百九 流注指微鍼賦:「秋夫療鬼而馘效魂免傷悲」。注:「昔宋徐熈,字秋夫,善醫方,方為丹陽令,常聞鬼神吟呻甚悽若。秋夫曰:汝是鬼,何須如此?答曰:我患腰痛死,雖為鬼,痛苦尚不可忍,聞君善醫,願相救濟。秋夫曰:吾聞鬼無形,何由措置?鬼云:縳草作人,予依入之,但取孔穴鍼之。秋夫如其言,為鍼腰腧二穴,肩井二穴,設祭而埋之。明日見一人來,謝曰:蒙君醫療,復為設祭,病今已愈,感惠實深。忽然不見。公曰:夫鬼為陰物,病由告醫,醫既愈矣。尚能感激况於人乎。鬼姓斛,名斯。」著者未詳『凌門傳授銅人指穴』に「秋夫療鬼十三穴歌」あり。曰く「人中神庭風府始,舌縫承漿頰車次,少商大陵間使連,乳中陽陵泉有據,隱白行間不可差、十三穴是秋夫置」。

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