2012年9月22日土曜日

『黄帝八十一難經輯釋備考』その3

例言十則
一經文一據集註本其有同異者直就其下註之某
 書作某之類是也
一凡所纂輯之諸註家不拘年代之前後一順經文
 之次故一章中或有再三重出者一〃註其下又
 其文義冗長者節録要義亦註其下
一諸註家並舉其書名其易混者註上加其姓呂註
 紀註之類是也
一註中之經穴不厭煩瑣必附探穴之法以便撿査
一經文有別義可以備參攷者毎章之末二字低書
 之又加註脚則小字雙行書其間附以愚見者加
 圏子分之註中亦然
一註中所引文與原書小異而義難通者則據本書
 而註其下亦加圏子識之
一凡據前後之文例以改字者亦加圏而註意改字
一章末二字低者多係餘義註脚皆準前
一攷證得一則不必多引
一纂輯諸註家別録其名如引用書目則不過數十
 部故不枚舉

  【訓讀】
例言十則
一、經文一に集註本に據る。其の同異有る者は、直ちに其の下に就けて之を註す。「某書作某」の類、是れなり。
一、凡そ纂輯する所の諸註家、年代の前後に拘わらず、一に經文の次に順う。故に一章中、或いは再三重出する者有れば、一一其の下に註す。又た其の文義の冗長なる者は、要義を節録し、亦た其の下に註す。
一、諸註家並びに其の書名を舉ぐ。其の混じり易き者は、註の上に其の姓を加う。「呂註」「紀註」の類、是れなり。
一、註中の經穴は、煩瑣を厭わず、必ず探穴の法を附して、以て撿査に便にす。
一、經文に別義の以て參攷に備う可き者有れば、毎章の末に、二字低く之を書す。又た註脚を加うるときは、則ち小字雙行もて其の間に書す。附するに愚見を以てする者は、圏子を加えて之を分かつ。註中も亦た然り。
一、註中、引く所の文、原書と小異して義通じ難き者は、則ち本書に據りて、其の下に註し、亦た圏子を加えて之を識(しる)す。
一、凡そ前後の文例に據り、以て字を改むる者は、亦た圏を加えて、意を改字に註す。
一、章末の二字低き者は、多く餘義に係る。註脚は皆な前に準ず。
一、攷證、一を得れば、則ち必ずしも多く引かず。
一、諸註家を纂輯し、別に其の名を録す。引用書目の如きは、則ち數十部に過ぎず。故に枚舉せず。

  【注釋】
○例言:凡例。書籍の前にあり、記述方式、読み方の注意などを説明した文章。 ○則:段落などを数える単位。 
○經文:『難経』の本文。 
○集註本:『王翰林黄帝八十一難経集注』。現存する刊本としては、慶安本がもっとも古い。ほかに濯纓堂本あり。鈔本では、森立之旧蔵本があり、室町後期の筆写とされる(東洋鍼灸専門学校蔵、北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部影印刊行)。王翰林は、北宋の王惟一。編者の王九思は、明代のひととする説と北宋のひととする説あり。引用されている注釈者については、詳しくは『難経古注集成』(オリエント出版社)所収の篠原孝市先生の解説などを見られたし。 
○同異:異同。異なったところ。ちがい。 
○圏子:圈點。文字のわきにつける、まる印。文章中で特に注意をうながすところなどにつける。 
○得一:絶対的な意義をえる。『老子』三十九章「昔之得一者。天得一以清。地得一以寧。神得一以靈。谷得一以盈。萬物得一以生。侯王得一以為天下貞。」王弼註:「一、數之始而物之極也。各是一物之生、所以為主也。物皆各得此一以成。」

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