2022年11月11日金曜日

『難経』五輸穴の主治病症とその五行観念に関する分析 00

   趙京生 姜姗

                                            〔中国針灸2022年8月第42卷第8期〕

                                                                                

    【要旨】『難経』は『黄帝内経』に続くもう一つの中国医学理論を著わした典籍であり,主に『黄帝内経』に由来する理論を解釈し発展させたものである。五輸穴は常用される重要な腧穴であり,『難経』が提出した「五輸主病〔五輸穴の主治病症〕」は,鍼灸の腧穴の理論と運用に対して,いずれも後世に重要な影響を与えたが,考証した結果,実際には五行学説から推論された虚構にすぎなかった。その理論構築の源流と方法を深く分析することによって,具体的に主治病症の源を考査して発見し,この理論の誤謬の所在を明確にした。そして『内経』『難経』に見える五輸穴が五季に応ずる根本的な差異を比較し,『黄帝内経』における五輸穴と季節の関係の社会観念的背景を深く探り,さらに理論的演繹法から『難経』五輸穴の主治病症の問題点を検証することによって,その意義と価値に対して理性的な判断をおこない,盲目的な実践を避ける。


 【キーワード】難経;五行学説;内経;鍼灸思想史


 『黄帝八十一難経』(『難経』と略称する)は古くは戦国時代の秦越人(扁鵲)が著わしたものとして伝えられたが,現在では多くの人は成書したのは『黄帝内経』以降で,後漢時代よりは遅くないと考えている。『難経』全体は問題を提起し,それを解析する形式で貫かれており,『黄帝内経』を主とする中国医学の理論をさらに解釈し発展させ,系統化している。中国医学と鍼灸理論,およびその運用に深い影響を与えていて,それは今でもかわりなく,中国医学の経典の一つと見なされている。『難経』は鍼灸の多方面の重要な内容を論述し,現在使用されている主要な理論範疇におよぶ。それには経脈・腧穴・刺法・治則・選穴などが含まれていて,いずれも経典鍼灸理論の核心成分に属する。その中で,理論構築方法の大きな特徴は,五行学説の影響が深く浸透していることである。これによって形成されたいくつかの鍼灸の理法〔筋道と構成ルール〕は,『黄帝内経』と比較して非常に異なる。これについて,一般には『黄帝内経』以降の充実や発展とみなしたり,流派の違いに帰したり,内容自体の限界や欠陥を指摘したりするのみで,深く研究されたことは少ない。

 これらの理論で,「五輸主病」は今日の実践になお普遍的な影響を与えている。五輸穴とは「井穴」「滎穴」「輸穴」「経穴」「合穴」と命名された五種類の穴であり,四肢の肘膝以下に位置し,常用されるる重要な腧穴である。いわゆる「五輸主病」とは,五輸穴が主治する病症に対する理論の総称である。『黄帝内経』のこの部分に関連する論述と比べると,『難経』の「五輸主病」理論は,井・滎・輸・経・合の五類穴を完全に網羅し,主治病症は具体的で形式が整い,後世において五輸穴の臨床運用を指導する重要な原則として尊重されている。また、その理論方法は『難経』における井滎穴の使用法,五輸穴と四時(五季)選穴の対応,および五輸穴の補瀉刺法など多くの内容に関連し,あるいは決定づけた。

 しかしながら,筆者の考証では,立論の方法には問題があるため,『難経』が提出した五輸穴主病は実際には偽の命題であり,その根源は五種類の穴と五行の組み合わせがすべて五行学説から出発していることにあり,満たしているのは五行理論であって,用穴の経験法則ではない。そのため,『難経』の鍼灸の理法の理解認識の角度からも,臨床における実用的な意味の理論的分析の前提からも,その理論構築の方法を分析し,さらにその理論の本質と価値を明確に評価することがいずれも肝要である。


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