2024年1月26日金曜日

鍼灸溯洄集 01 序1

   序・一オモテ(613頁)

鍼灸溯洄集序 

蓋聞醫術來久矣異域有神農黃

本朝有大己貴少彦名命一察藥

草性味原病証治因肇爲之湯液

爲之鍼灸以救蒼生夭札大哉流

其功於無窮矣爾來倭漢以術鳴

  序・一ウラ(614頁)

世者鍼灸湯液並施不偏廢然今

世譚醫多事湯液者不察鍼灸業

鍼灸者不知湯液嗚呼如是居司

命職若蹈虎尾渉于春氷吾友松

悅齋有憂焉遂晝惟夕思博獵群

書摘方藥之餘考鍼灸要處且纂

刺法確論使覧者補瀉迎隨粲然

  序・二オモテ(615頁)

在于目誠可謂勞而有功者乎將

命工刻梓齋抱帙來曰欲得一序

引卷首汝其圖之伯未有以復也

茲又手帖見需必欲得之不能固

辭以一語應焉夫齋之惓惓于是

書非屠龍者之如無益于世雅親

炙此刺法而至鍼灸之奥豈不言

  序・二ウラ(616頁)

㴑洄求源之書安時之刺胎手與

秋夫之愈鬼腰於鍼灸遡洄乎何

有然與否也吾其審於松悅齋云

元禄甲戌夏之季止水亭竹杏伯


  【訓み下し】

『鍼灸溯洄集』序

蓋し聞く,醫術の來たること久し。異域に神農・黃帝有り。

本朝に大己貴(おおあなむち)・少彦名命(すくなひこなのみこと)有り。一つに藥草の性味を察し,病証治因を原(たず)ねて,肇めて之が湯液を爲(つく)り,之が鍼灸を爲(つく)って,以て蒼生の夭札を救う。大なるかな,其の功を無窮に流(し)くこと。爾(それ)より來(この)かた倭漢 術を以て世に鳴る者,

  一ウラ

鍼灸・湯液並び施して偏廢せず。然るに今世 醫を譚する,多くは湯液を事とする者は,鍼灸を察せず。鍼灸を業とする者は,湯液を知らず。嗚呼(ああ),是(か)くの如くにして司命職に居す。虎の尾を蹈み,春の氷を渉るが若し。吾が友 松悅齋 憂うること有り。遂に晝(ひる)惟(おも)い夕(ゆうべ)に思うて、博く群書を獵り、方藥を摘(と)る餘り、鍼灸の要處を考え、且つ刺法の確論を纂(あつ)めて、覧る者をして補瀉迎隨,粲然として

  二オモテ

目に在らしむ。誠に勞して功有る者と謂っつ可し。將に工に命じて梓に刻まんとして,齋 帙を抱えて來たって曰わく,「一序を得て,卷首に引かまく欲す。汝 其れ(之を)圖れ」。伯 未だ以て復すこと有らず。茲(ここ)に又た手ずから帖して需(もと)めらる。必ず(之を)得まく欲す。固辭すること能わず。一語を以て應ず。夫れ齋が是の書に惓惓たる,龍を屠る者の世に益無きが如きには非ず。雅(まさ)に此の刺法に親炙して,鍼灸の奥に至らば,豈に

  二ウラ

㴑洄して源を求むるの書と言わざらんや。安時が胎手を刺すと,秋夫が鬼腰を愈やすと,鍼灸遡洄に於けるや,何ぞ然ると否らざると有らん。吾れ其れ松悅齋に審らかなりと云う。

元禄甲戌 夏の季 止水亭 竹杏伯 叙


  【注釋】

 ○異域:外國。 ○神農:傳說中的太古帝王名。始教民為耒耜,務農業,故稱神農氏。又傳他曾嘗百草,發現藥材,教人治病。也稱 炎帝,謂以火德王。/帝號。中國傳說中上古的帝王,始作耒耜,教民種植五穀,振興農業,口嚐百草,始作方書,以療民疾,為傳說中務農、製藥的創始人,故稱為「神農」。起於烈山,故也稱為「烈山氏」、「炎帝」。 ○黃帝:上古帝王軒轅氏的稱號。姓公孫,生於軒轅之丘,故稱為「軒轅氏」。建國於有熊,也稱為「有熊氏」。時蚩尤暴虐無道,兼併諸侯,黃帝與其戰於涿鹿,擒而誅之,諸侯尊為天子,以取代神農氏,成為天下的共主。因有土德之瑞,故稱為「黃帝」。 ○本朝:わが国の朝廷。転じて、わが国。 ○大己貴:「日本書紀」が設定した国の神の首魁(しゅかい)。「古事記」では大国主神(おおくにぬしのかみ)の一名とされる。「出雲風土記」には国土創造神として見え、また「播磨風土記」、伊予・尾張・伊豆・土佐各国風土記の逸文、また「万葉集」などに散見する。後世、「大国」が「大黒」に通じるところから、俗に、大黒天(だいこくてん)の異称ともされた。大穴牟遅神(おおあなむぢのかみ)。大汝神(おほなむぢのかみ)。大穴持命(おほあなもちのみこと)。精選版 日本国語大辞典 /人々に農業や医術を教えた,とされる。 ○少彦名命:記・紀にみえる神。「日本書紀」では高皇産霊尊(たかみむすびのみこと)の子,「古事記」では神産巣日神(かみむすびのかみ)の子。常世(とこよ)の国からおとずれるちいさな神。大国主神(おおくにぬしのかみ)と協力して国作りをしたという。「風土記」や「万葉集」にもみえる。穀霊,酒造りの神,医薬の神,温泉の神として信仰された。「古事記」では少名毘古那神(すくなびこなのかみ)。デジタル版 日本人名大辞典+Plus  ○原:推究根源。 ○蒼生:草木叢生之處。比喻百姓。 ○夭札:遭疫病而早死。 ○流:留傳、散布。 ○無窮:不盡、無極限。無盡,無限。指時間沒有終結。 ○爾來:自那時以來。從那時以來。 ○鳴世:著名於世。

  一ウラ

 ○偏廢:偏重或廢棄某一方面。舉此而遺彼,重視某人、某事、某物而忽視其他人和事物。 ○譚:言論。同「談」。 ○司命:掌管生命。 ○蹈虎尾:蹈,踏。蹈虎尾比喻非常危險。《書經.君牙》:「心之憂危,若蹈虎尾,涉于春冰。」 ○春氷:春日冰薄而易溶化,比喻極危險。 ○晝惟夕思:形容思念極深。 ○獵:探求、尋求。 ○刺法:以下「刺」字,本書では通じて実際は「剌」に作る。誤字とも言えるが,異体字として扱い,直接「刺」字として翻字した。 ○補瀉:補瀉(reinforcing and reducing),中醫治則治法術語。此處專指針灸補瀉。有兩種含義:一是在針刺得氣的基礎上所施用的手法,即常說的補法和瀉法;一是指針對病證的虛實而運用的治療思想,即常說的實則瀉之,虛則補之。病證補瀉是針灸治病的一種重要思想方法;補瀉手法則是具體操作方法,主要有常用補瀉手法和專用補瀉手法兩種。 ○迎隨:迎隨指針刺補瀉法的區分原則,又用以統稱各式補瀉法。迎:逆;隨:順。一般以順經而刺爲補;逆經而刺爲瀉。《黃帝內經靈樞·九針十二原》:“往者爲逆,來者爲順。明知逆順,正行無問。逆而奪之,惡得無虛?追而濟之,惡得無實?迎之隨之,以意和之,針道畢矣。”【迎隨補瀉】刺法名。《黃帝內經靈樞·小針解》:“迎而奪之者瀉也;追而濟之者補也。”各家註解有以迎隨泛指多種針刺補瀉的總則,各種補瀉法都可稱作迎隨。如《難經》以選穴的補母瀉子爲迎隨;《流注指微賦》以針刺淺深的“補生瀉成”爲迎隨;《醫學入門》將各種補瀉法統屬於迎隨。 ○粲然:形容鮮明、清楚。明白貌;明亮貌。

  二オモテ

 ○刻梓:刻板印刷。舊謂出版印行。 ○齋:本書の著者,松悅齋。 ○引:〔ひかまく〕。「まく」:《推量の助動詞「む」のク語法。上代語》…だろうこと。…しようとすること。 ○圖:策劃、考慮。 ○伯:この序を著わした竹杏伯。 ○帖:「佔」「沾」「怗」にも見えるが,意味から「帖」とした。【手帖】手寫的書信、文章之類。 ○見:被。用在動詞前,表示被動。 ○需:有所欲求。 ○固辭:堅決辭謝。堅辭、再三請辭。 ○惓惓:真摯誠懇。深切思念;念念不忘。 ○屠龍:《莊子‧列御寇》:「朱泙漫學屠龍於支離益 ,單〔=殫〕千金之家,三年技成,而無所用其巧〔朱泙漫向支離益學習屠龍的手藝,耗盡了千金家產,三年學成卻沒有地方施展他的手藝。〕」。後因以指高超的技藝或高超而無用的技藝。 ○雅:正。 ○親炙:親承教誨。謂親受教育熏陶。《孟子.盡心下》:「非聖人而若是乎,而況於親炙之者乎?」朱熹 集注:「親近而熏炙之也」。 ○奥:含義深,不易理解:深奧。奧妙。奧秘。奧旨。

  二ウラ

 ○㴑洄求源:逆流而上,探求源頭。比喻追根究底。/㴑:「溯」の異体字。溯洄:逆流而上。 ○安時之刺胎手:『宋史』方技下・龐安時:嘗詣舒之桐城,有民家婦孕將產,七日而子不下,百術無所效。 安時 之弟子李百全適在傍舍,邀 安時 往視之。纔見,即連呼不死,令其家人以湯溫其腰腹,自為上下拊摩。孕者覺腸胃微痛,呻吟間生一男子。其家驚喜,而不知所以然。安時曰:「兒已出胞,而一手誤執母腸不復能脫,故非符藥所能為。吾隔腹捫兒手所在,鍼其虎口,既痛即縮手,所以遽生,無他術也。」取兒視之,右手虎口鍼痕存焉。其妙如此。 ○秋夫之愈鬼腰於鍼灸:『南史』列傳第二十二・徐文伯:(徐熙)生子秋夫,彌工其術,仕至射陽令。嘗夜有鬼呻吟,聲甚悽愴,秋夫問何須,答言姓某,家在東陽,患腰痛死。雖為鬼痛猶難忍,請療之。秋夫曰:「云何厝法?」鬼請為芻人,案孔穴針之。秋夫如言,為灸四處,又針肩井三處,設祭埋之。明日見一人謝恩,忽然不見。當世伏其通靈。 

 ○元禄甲戌:元禄七年(1695)。 ○季:末了的。農歷七月。 ○止水亭竹杏伯: ○叙:「敘」の異体字。陳述、說明。放於正文之前,用以說明全書要點的。同「序」。


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