2024年1月28日日曜日

鍼灸溯洄集 03  序3

   序・五オモテ(621頁)

鍼灸遡洄集書題  

夫醫道者至廣而助化育其爲術

者雖屬方技實通三才之理也所

以人有經脈十二者猶地有河海

川流由此而觀之學醫者不可有

不明乎經絡焉外感寒熱溫凉內

傷喜怒憂思非決凝開滯豈謂醫

  序・五ウラ(622頁)

也且鍼之爲術也其要易陳而難

入粗者守形良者守神神乎空中

之機清靜以微其來也不可迎其

往也不可追知機者不可掛以髮

矣然近代鍼行之者忽之不求其

源猶從俗流滔滔皆是也我固湯

液者流而世以方藥爲業刻意素

  序・六オモテ(623頁)

靈其暇涉獵歷代鍼灸之書亦有

年聖賢至論布在方策矣雖然初

學之士望洋而向若患在不約哉

嗚呼於鍼道也補瀉迎隨之因不

一治亦然是以忘固陋遡洄其原

嘗集節要之略爲一書題以鍼灸

遡洄集其論之中如夫本經十二

  序・六ウラ(624頁)

十五絡時日之人神艾葉之制法

者先輩之言分明焉故不贅也此

書之編也非敢好言者欲施之於

一二之子弟是以不顧文辭之卑

蕪不惜豫得之私說以雜著於其

中間且夫如不可傳以言之條者

書口傳或口授二字於其下以識

  序・七オモテ(625頁)

別焉爲恐其傳寫之役故命剞劂

氏而禆之刻梓如四方之士者我

豈敢乎哉君子謂不復古禮不變

今樂而欲至治者遠矣予亦曰不

復古醫不變今醫而欲十全者難

矣云爾 旹

元祿七甲戌季夏既望浪華散人

  序・七ウラ(626頁)

高津松悅齋敬節於東武寓舎誌


  【訓み下し】

『鍼灸遡洄集』書題

夫れ醫の道は,至廣にして化育を助く。其の術爲(た)る者,方技に屬すと雖も,實に三才の理に通ず。人に經脈十二有る所以の者は,猶お地に河海川流有るがごとし。此れに由って之を觀れば,醫を學ぶ者は,經絡を明らめずんば有る可からず。外 寒熱溫凉に感じ,內 喜怒憂思に傷(やぶ)られ,凝を決(さく)り滯を開くに非ずんば,豈に醫と謂わんや。

  五ウラ

且つ鍼の術爲(た)るや,其の要は陳べ易く入り難し。粗は形を守る。良は神を守る。神なるかな,空(こう)中の機は,清靜にして以て微なり。其の來たるや,迎う可からず。其の往くや,追う可からず。機を知る者は,掛くるに髮を以てす可からず。然るに近代鍼行の者は,之を忽(ゆるが)しにし,其の源を求めず,猶お俗流に從って,滔滔として皆な是(し)なり。我れ固(もと)湯液者(しゃ)流にして,世々(よよ)方藥を以て業と爲す。意を『素』

  六オモテ

『靈』に刻んで,其の暇(いとま)歷代鍼灸の書に涉獵すること,亦た年有り。聖賢の至論,布(し)いて方策に在り。然りと雖も,初學の士 洋に望み若に向かい,患い約ならざるに在り。嗚呼,鍼道に於けるや,補瀉迎隨の因,一ならず。治も亦た然り。是こを以て固陋を忘れて其の原(みなもと)に遡洄して,嘗て節要の略を集めて,一書に爲す。題するに『鍼灸遡洄集』を以てす。其の論の中(うち),夫(か)の本經十二,

  六ウラ

十五絡,時日の人神,艾葉の制法の如きは,先輩の言(こと) 分明なり。故に贅せず。此の書の編なり。敢えて言を好む者には非ず。之を一二の子弟に施さんと欲して,是こを以て文辭の卑蕪を顧みず,豫じめ得るの私說を惜まず,以て其の中間に雜著す。且つ夫れ傳うるに言を以てす可からざるの條の如きは,「口傳」或いは「口授」の二字を其の下(しも)に書して,以て識別(しべつ)す。

  七オモテ

其の傳寫の役を恐るるが爲なり。故に剞劂の氏に命じて,而して之をして梓に刻ましむ。四方の士の如きは,我れ豈に敢えてせんや。君子の謂えり,古禮に復(かえ)らずんば,今樂を變ぜずして,至治を欲する者は遠し,と。予も亦た曰わん,古醫に復らずんば,今醫を變ぜずして,十全を欲する者難しと爾(し)か云う。 旹に

元祿七甲戌季夏既望 浪華の散人 高津松悅齋敬節 東武の寓舎に於いて誌(しる)す



  【注釋】

鍼灸遡洄集書題

 ○化育:化生長育。教化培育。天地生成萬物。 ○方技:醫藥及養生之類的技術。 ○三才:天、地、人。 ○決凝開滯:『針經指南』標幽賦:「觀夫九針之法,毫針最微,七星上應,眾穴主持。本形金也,有蠲邪扶正之道;短長水也,有決凝開滯之機」。本文,行針總論を参照。/決:訓「さくる」=溝などを掘る。掘って穴を開ける。しゃくる。 

  五ウラ

 ○其要易陳而難:『靈樞』九鍼十二原:「小鍼之要,易陳而難入。麤守形,上守神。神乎神,客在門。未覩其疾,惡知其原?刺之微在速遲。麤守關,上守機,機之動,不離其空。空中之機,清靜而微。其來不可逢,其往不可追。知機之道者,不可掛以髮」。 ○滔滔:水流滾滾不絕的樣子。形容混亂。《論語.微子》:「滔滔者天下皆是也,而誰以易之〔壞人壞事象洪水一樣泛濫,誰和你們去改變?/天下到處像洪水彌漫一樣紛亂,有誰能改變得了呢?〕」。『集注』:「言天下皆亂,將誰與變易之」。 ○刻意:潛心致志;用盡心思。克制意志不放縱。 ○素:『素問』。

  六オモテ

 ○靈:『靈樞』。 ○涉獵:調査・研究などのために、たくさんの書物や文書を読みあさること。 ○有年:多年。 ○望洋:仰視。【望洋興歎】仰視著海洋發出感嘆。語本《莊子.秋水》:「河伯始旋其面目,望洋向若而歎。」後比喻因眼界大開而驚奇讚嘆或因能力不及而感到無可奈何。 ○約:簡要、精練。 ○補瀉:補瀉(reinforcing and reducing),中醫治則治法術語。此處專指針灸補瀉。有兩種含義:一是在針刺得氣的基礎上所施用的手法,即常說的補法和瀉法;一是指針對病證的虛實而運用的治療思想,即常說的實則瀉之,虛則補之。病證補瀉是針灸治病的一種重要思想方法;補瀉手法則是具體操作方法,主要有常用補瀉手法和專用補瀉手法兩種。 ○迎隨:迎隨指針刺補瀉法的區分原則,又用以統稱各式補瀉法。迎:逆;隨:順。一般以順經而刺爲補;逆經而刺爲瀉。《黃帝內經靈樞·九針十二原》:“往者爲逆,來者爲順。明知逆順,正行無問。逆而奪之,惡得無虛?追而濟之,惡得無實?迎之隨之,以意和之,針道畢矣。” 

  六ウラ

 ○十五絡:十五絡脈又稱十五絡、十五別絡。出《黃帝內經靈樞·經脈》。絡脈之絡即網絡,絡脈是指經脈分出網絡全身的支脈。與經相對。 ○時日之人神:人神指古代鍼灸宜忌的一種說法。人神按時巡行各部,其所在部位,忌用鍼灸。《黃帝蝦蟆經》:“神所藏行,不可犯傷。”意爲人神在人體按時巡行各部,其所在部位,不宜鍼灸。有“九部旁通人神”、十二部人神、“行年人神”、六十甲子日入神、月內逐日入神、十(天干)日入神、十二(地支)日人神、十二時入神、四季入神、五臟入神等說。見《千金翼方》、《普濟方》、《鍼灸大成》等。 ○艾葉之制法:夏季花未開時採收,除去雜質,曬乾。《綱目》:「凡用艾葉,須用陳久者,治令細軟,謂之熟艾,若生艾灸火,則傷人肌脈」。 ○好言:好話。 ○卑:低下、低微。簡陋。品格低劣。 ○蕪:雜亂。 ○識別:加標記使有區別。

  七オモテ

 ○剞劂氏:指刻板印書的經營人。 ○禆:「裨」の異体字。ここでは「俾」字の意で用いられている。使。 ○四方:東、南、西、北。泛指四處各地。【四方志】《左傳‧僖公二十三年》: “﹝姜氏﹞謂公子(重耳)曰:‘子有四方之志,其聞之者,吾殺之矣。’”後以“四方志”指經營天下或安邦定國的遠大志向。 ○豈敢:怎麼敢。意謂不敢。 ○不復古禮不變今樂而欲至治者遠矣:周敦頤『周子通書』樂上:「不復古禮,不變今樂,而欲至治者遠矣」。

 ○旹:「時」の異体字。 ○元祿七甲戌:元禄七年(1695)。 ○季夏:夏季的第三個月,即農曆六月。 ○既望:陰曆十五為望,十六為既望,古時稱「既望」之時間則較長,或指十四、十五至二十三、二十四之時段。/周曆以每月十五、十六日至廿二、廿三日為既望。 後稱農曆十五日為望, 十六日為既望。 ○浪華:大阪市付近の古称。 ○散人:疏散無用的人。不為世所用之人。唐宋以後,隱退的文人儒士多自號散人。《役に立たない人、無用の人の意》文人・墨客(ぼっかく)が雅号に添えて用いる語。 ○高津松悅齋敬節:*印形黒字「是道庵」,白字「敬節」。 ○東武:江戸の異称。武蔵(むさし)国の異称。 ○寓舎:寓舍。住所。 ○誌:記錄、記載。

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