2016年12月21日水曜日

季刊内経205号61頁~

61頁下段:胞脉閉也(ほうみゃくとづなり)
・「なり」は活用語の連体形につく。「閉づ」は上二段活用で、連体形は「とづる」→「とづるなり」。
・「胞」を歴史的仮名遣いであらわせば「ハウ」。
63頁上段:雷公侍坐(ざしてじす)
66頁上段:「ざしてじす」のままでよい。
・63頁で、「ジしてザす」ではなかろうかとおもったが,二度くりかえしているので、著者は「侍」を「ザ」と、「坐」を「ジ」と発音するとおぼえているのであろう。
63頁下段:項如抜、脊痛、腰似折(うなじぬくるがごとく、こしをるるにに」
・背骨の痛みは、どこへ行った?
63頁上段:其民不衣(そのたみきず)
・日本語として、「なにを」をぬかして、「着る」「着ない」と訓むのは、「衣」の意味を十分表出していないようにおもえる。
63頁下段:臑似折(だうをるるににる)(『霊枢』經脉第十)
・経穴「LI14(臂臑)」を「ヒジュ」と、鍼灸業界では言っている以上、「臑」を「ジュ」と読まないわけを付け加えてほしかった。
・書名と篇名ですが、『霊枢』経脈か、『靈樞』經脉か、文字遣いを常用漢字か、旧字体を使用するか、どちらか一方に統一した方がいいのではないでしょうか。
63頁下段:其血滑(そのちなめりて)
・著者は、おそらく(知っているかどうかは別にして)文部省が明治45年に出した『漢文に関する文部省調査報告』を基準として、「来る」や「死ぬ」は使わないといっているのだと思うが、「滑」を「なめる」と、『漢辞海』はもちろん、『大漢和辭典』も載せていない訓を使用しているのは、一方で従来の訓にとらわれる必要もないと主張しているようにも読める。
63頁下段:出づ=いづ(×でづ)
・著者は過去に「出」の終止形を「でづ」と認識していたのでしょう。普通のひとは、たぶん「でづ」と聞いたら、「出ない」という意味だと理解すると思いますが。わたくしなら「(×でる)」とするところです。
64頁上段:其民食魚而嗜鹹(……かむをたしなみ)
・ガムをかむのを不作法だから、つつしみなさい、ということか、それとも嚙むことを愛好しているということか、とまじめに思った。そうか、「鹹」の歴史的仮名遣いは「カム」なのか。
64頁下段:陽入之陰則靜.陰出出之陽則怒(すなはちしづけし……すなはちいかる)
・「出」字、一つ多い。「しづけし」は形容詞。「いかる」は動詞。これと対比すると、「靜」は動詞で、「しずかになる」という意味で、「しづまる」と訓んだほうがいいのではないか。
66頁下段:長面、大肩背、直身(ながきつら、なほきみ)
・大肩背は、どこへいった?
69頁下段:余意以為(よいにおもえらく)
・「以為」=「思」としてよんでいるのなら「おもへらく」

以上は、ついでです。
以下,情報提供。
65頁上段で、古田島さんが「うらむ」と「しのぶ」は、未然形は(奈良時代からの)上二段活用「うらみず」「しのびず」となり、その他は四段活用をするという活用の特殊なものをあげている。
そして著者は、他の未然形接続、たとえば使役の「使」(しむ)のときはどうなるか知りたいという。
・こたえ:上二段活用します。
『論語』微子に「君子不施其親,不使大臣怨乎不以」とある。「大臣ヲシテ怨ミしめず」と伝統的には読まれている。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2599286?tocOpened=1
ここの35コマ目。
ただし,「うらましめず」と訓んでいる本もあります。

3 件のコメント:

  1. 今後,かくのごとき説明をなされるならば,読み難きことはなはだしいので,
    オンドクされるカンジは,カタカナでヒョウキされることをセツにのぞむ。

    以下,余談:侍坐
    著者は、「会議」を「会して議する」とか「あひてはかる」というように訓むのが好きなのかもしれない。
    「侍坐」を、著者は『内経』でしか見たことがないのかもしれないが、日本では過去において熟語として認識されていることである。その証拠に、中日辞典でも、日本語の説明として使われているし、国語辞典には「侍坐(する)」という項目がある。

    中日辞典:日本語訳:侍坐する,侍座する
    日本語での説明:侍坐する[ジザ・スル]高貴な人のそばに座る
    http://cjjc.weblio.jp/content/%E4%BE%8D%E5%9D%90

    デジタル大辞泉:じ‐ざ【侍×坐】 の意味
    [名](スル)主人・客など上位の人に従ってそばに座ること。
    http://dictionary.goo.ne.jp/jn/95931/meaning/m0u/

    『福澤全集』英国議事院談 巻之二 675頁「之に侍坐し,上院の議長「ロルド、カンセル」は……
    https://books.google.co.jp/books?id=zmJKAAAAIAAJ&pg=RA11-PA15&lpg=RA11-PA15&dq=%E5%9D%90%E3%81%97%E3%81%A6%E4%BE%8D%E3%81%99&source=bl&ots=PDBrklRynl&sig=boEUQIU0eXtJ-y5DPIG4qBohFBE&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjczOL21IbRAhWLi7wKHXR2DOUQ6AEIVjAJ#v=onepage&q=%E5%9D%90%E3%81%97%E3%81%A6%E4%BE%8D%E3%81%99&f=false

    「侍坐」の使い方、ほかの品詞の結びつき
    http://collocation.hyogen.info/word/%E4%BE%8D%E5%9D%90

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  2. 補足:
    食ふ=くらふ
    ・発音は「くろう」。動詞のウ音便。「食(くら/「くろ」と発音)ウテ」が正しく「食フテ」はあやまり。

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  3. p63 下段
    目似脱、項如拔、脊痛、腰似折、髀不可以曲、膕如結、踹如裂
    (目脱するに【に】、項抜くるがごとく、腰折るるに【に】、~)

    不可以顧、肩似拔、臑似折
    (~肩抜くるに【に】、臑折るるに【にる】)

    の例文ですが、上文の【にる】は、意味の伝達および前後との調和においては、【ごとし】として読む方がすぐれているように思いますので、【にる】の用例としては、できれば別の文章を挙げられるとよかったのではないでしょうか。

    全編を通して先人の訳文は参考になさっていないようですが、東洋学術版では上文によみがなをふり、【ごとし】で読んでいます。


    また、その次の【いる】の例文は、前後の文を示すと

    黄帝曰、刺血絡而仆者、何也。血出而射者、何也。…
    血氣倶盛、而陰氣多者、其血滑、刺之則射。
    陽氣畜積、久留而不寫者、其血黒以濁、故不能射。

    ですので、これらの「射」字をみな【いる】と読むのでは、文意が通じにくいかと思います。一般的ではないかもしれませんが、文中の「寫」字と通用する部分(*)も考慮して、ある種の術語として【しゃス】と読まざるを得ないのではないでしょうか。したがって、こちらも【いる】の用例として適当かどうか、疑問です。
    (*内経中では、「射」は血液に対して、「寫」は血液を含むより広い対象にと使い分けられているようです)


    その他、菉竹先生のご指摘以外にも、個人的に違和感を覚えた訳文がいくつかありましたが、講師に指導するほどの知識もないので、用例に関する部分のみ指摘しました。

    rice valley先生、これからも頑張ってください。


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