2016年12月26日月曜日

卓廉士先生の『黄帝内経』術数講義:経脈の長さと営気の流注について その1

  古代数術から見た経脈の長さと営気の流注
    卓廉士*1(重慶医科大学中医薬学院、重慶)
      『中国針灸』2008年8月第28巻第8期
                       〔 〕内は訳注。
               *1卓廉士(1952-)、男、教授。研究方向:鍼灸治病の理論。
         
[摘要]秦漢文献中にある数術理論について整理し、国外の学者の古代人類の思考方法についての論述を参考にして、あわせて中医典籍にある経脈の長さと営気の流注に関する記載を対照させ、数術とこれらの記載の間の関係を探究した。その結果、経脈の長さと営気の流注は、数術の原理と完全に符合することがわかった。つまり、経脈の長短寸尺と営気の流注度数は、いずれも数術から演繹されてできたものであり、その目的は天人間の密接にして不可分な感応聯繋を建立することであった。数術を証明するすべがない以上、営気の流注に関する研究についても、現代の実証科学の方法を採用するのはふさわしくない。
[キーワード]十二経脈;営気;子午流注;数学;経脈の長さ

 数術は、術数ともいう。数とは、一、二、三、四、五、六、七、八、九などの数字である。中国古代人の認識では、数の中に術があり、数字の背後は玄妙幽微であり、事物の法則と宇宙そのものの秘密がかくされている。『易経』繫辞上には「參伍以變、錯綜其數、通其變、遂成天下之文、極其數、遂定天下之象〔參伍して以て變じ、其の數を錯綜す。其の變を通じ、遂に天下の文を成す。其の數を極めて、遂に天下の象を定む。(易の変化は、陽爻と陰爻とをさまざまに組み合わせることによって変化する。筮竹の数を入り交じらせたり、それを一箇所にまとめたりする。その変化を推し進めると、天地の文=八卦を形成する。その数をさらに推し進めると、六十四卦ができる。)〕」とある。数字の大小奇偶を通して、さらにその異なる排列組み合わせによって、事物や現象の生成・変化およびそれに内在する原因と法則性を明らかにする。よって数術は、中国古代の哲学のカテゴリーに属すということができる。著名なイタリアの伝道師であるマルティン・マルティニウス(Martin Martinius、中国名は衛匡国、1614-1661)は、その漢学の名著である『中国上古史』の中で、「易学」原理は古代ギリシャのピタゴラス学派と同じであると考え、両者とも「数」を宇宙の本体であるとみなしているが、これはきわめて透徹した見解である。『素問』三部九候論に「天地之至數、合於人形血氣〔天地の至數は、人形の血氣に合す〕」とある。数術は、中医において人体の臓腑・経脈・気血の性状を明らかにし、生命の有機的聯繋を解釈する重要な一環である。しかしながら、この部分の内容はかえってこれまでずっと無視され、曲解されてきており、経脈研究の一大欠陥であるといわざるをえない。筆者の考えでは、中医理論における数術原理を研究し、明らかにすることは、経脈現象の研究に大いに裨益するので、学識不足をかえりみず、以下に述べる次第である。

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