2012年5月7日月曜日

『醫説』鍼灸 關聯史料集成 24 灸欬逆法 その2

『壽世保元』卷十 灸法門
  一論灸遠年咳嗽不愈者。將本人乳下。大約離一指頭。看其低陷之處。與乳直對不偏者此名為直骨穴。如婦人即按其乳。頭直向下。看其乳頭所到之處。即是直骨穴之地位。灸艾三炷。其艾只可如赤豆大。男灸左。女灸右。不可差錯。其嗽即愈。否則其病再不可治。

  【訓讀】(おおむね和刻本による)
  一に論ず、遠年咳嗽して愈えざる者に灸するを。本人の乳下を將(もっ)て、大約離るること一指頭。其の低く陷むの處を看て。乳と直對して偏ならざる者、此れを名づけて直骨穴と為す。婦人の如きは即ち其の乳を按じ、頭直ちに下に向け、其の乳頭の到る所の處を看る。即ち是れ直骨穴の地位なり。灸すること艾三炷。其の艾只だ赤豆大の如くす可し。男は左に灸し、女は右に灸す。差錯す可からず。其の嗽即ち愈ゆ。否(しから)ずんば則ち其の病再び治す可からず。

  【注釋】
○差錯:錯誤。


  『經穴彙解』卷之七
直骨 灸遠年咳嗽不愈者。將本人乳下大約。離一指頭。看其低陷之處。與乳直對。不偏者。此名為直骨穴。如婦人。即按其乳頭直向下。看其乳頭所到之處。即是直骨穴之地位。灸艾三炷。其艾只可如赤豆大。男灸左。女灸右。不可差錯。其嗽即愈。如不愈。則其病再不可治矣。(壽世保元○菉竹堂簡便方同。)按乳根也。

 【訓讀】(訓点による)
直骨 遠年咳嗽愈えざる者に灸す。本人の乳下大約を將て、離るること一指頭。其の低陷の處を看て、乳と直對し、偏せざる者、此の名を直骨穴と為す。婦人の如きは、即ち其の乳頭を按じて直ちに下に向け、其の乳頭到る所の處を看る。即ち是れ直骨穴の地位。艾三炷を灸す。其の艾只だ赤豆の大の如くす可し。男は左に灸し、女は右に灸す。差錯す可からず。其の嗽即ち愈ゆ。如(も)し愈えずんば、則ち其ち病再び治す可からず。(壽世保元○菉竹堂簡便方同。)按ずるに乳根なり。
  

  濱添圀弘著『鍼灸医学 奇穴編』直骨(じきこつ)(乳根・乳頭下・両乳下・飜意・屈乳)は、出典を『肘后備急方』とするが未詳。
  あるいは『肘後備急方』卷三 治卒上氣咳嗽方第二十三「又方 灸兩乳下黒白肉際各百壯,即愈。亦治上氣。灸胸前對乳一處,須隨年壯也。」がここにあたるか。
 郝金凱著、木田洋 他訳『針灸奇穴辞典』直骨(ちよくこつ)は出典を『備急千金要方』とするが、未詳。
 あるいは『備急千金要方』卷十八(大腸腑)欬嗽第五「論曰:凡上氣,多有服吐藥得差。亦有針灸得除者,宜深躰悟之。嗽灸兩乳下黒白際,各百壯,即差。」がここにあたるか。
 なお、『經穴彙解』は「兩乳下黒白際」の穴を「乳下」穴として別にあげる。
 王德深主編『中国針灸穴位通鑑』直骨は、用例として『壽世保元』と『鍼灸集成』をあげる。

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