2012年8月8日水曜日

『醫説』鍼灸36 因灸滿面黒氣

有人因灸三里、而滿面黒氣。醫皆以謂腎氣浮面、危候也。有人云‥腎經有濕氣、上蒸於心、心火得濕、成煙氣、形於面。面屬心、故心腎之氣常相通、如坎之外體即離、離之外體即坎、心腎未常相離也。耳屬水、其中虚、則有離之象。目屬火、其中滿、則有坎之象。抑可見矣。以去濕藥治之、如五苓散、防己、黄蓍之類、皆可用。(醫餘)

  【倭讀】
人の三里に灸するに因りて、滿面 黒氣する有り。醫 皆な以謂(おもえら)く腎氣 面に浮く、危候なり、と。有る人云う「腎經に濕氣有り。上りて心を蒸す。心火 濕を得て、煙氣と成り、〔煙と成り、氣、〕面に形(あら)わる。面は心に屬す。故に心腎の氣 常に相通ずること、坎の外體は即ち離、離の外體は即ち坎の如し。心腎未だ常には相離れざるなり。耳は水に屬す。其の中虚すれば、則ち離の象有り。目は火に屬す。其の中滿つれば、則ち坎の象有り。抑(そも)そも見るべし。濕を去るの藥を以て之れを治す。五苓散、防己、黄蓍の類の如し。皆な用いるべし。(『醫餘』)

  【注釋】
○滿面:滿臉。
○有人:泛指有某人。
○以謂:猶云以為,認為。
○腎氣:中醫以為五臟各有氣,腎氣為先天之根本,關系人的生長髮育和壽夭。/腎精化生之氣。指腎臟的功能活動。腎氣由腎陽蒸煦腎陰所產生,主要表現在生殖、生長和發育機能的活動。
○危:病重。
○候:事物的情況或徵兆。如:「症候」、「徵候」。
○腎經:足少陰腎經簡稱。
○濕氣:自然界中氣候因素之一。濕邪。
○蒸:熱氣上升。燒煮 [steam]。
○煙:物質燃燒時所產生的氣狀物。說文解字:「煙,火氣也。」
○氣:物體三態之一,有別於固體、液體,沒有固定的形狀、體積,能自由流散的物體。中醫指充塞於人體中的一種生物能。
○形:表現、顯現。如:「喜形於色」、「形之於外」。
○面:臉部。
○心腎之氣常相通:交通心腎:治療學術語。指一種治法。心屬火而藏神,腎屬水而藏精。若腎陰不足,或心火獨亢,則心腎水火不相制約,失于協調,稱之為心腎不交。症見心悸怔忡,頭暈失眠,健忘遺精,耳聾耳鳴,腰膝酸軟,小便短赤,潮熱盜汗,舌紅無苔,脈細數。
○如:假若。如同﹑好像。
○坎之外體即離、離之外體即坎:『周易』を参照。坎212の陰陽を逆にした形が離121。坎は水であり、離は火である。
○心腎未常相離也。耳屬水、其中虚、則有離之象。目屬火、其中滿、則有坎之象。抑可見矣。以去濕藥治之、如五苓散、防己、黄蓍之類、皆可用。
○醫餘:未詳。『本草綱目』卷一上、引據古今醫家書目に「醫餘録」あり。また『景岳全書』卷三十五、雜證謨、諸蟲、蚘蟲に「醫餘曰」の記事あり。

  『醫説』鍼灸 了

5 件のコメント:

  1. コメントが上手く書き込めないと,メールが有ったので,代理で書き込みます。本当は十元さんの投稿です。

    有人:泛指有某人。
    ならば、「人~~有り」は読み方をしては苦しくないか。
    単純に「有る人、三里に灸するにより、面に黒気みつ」が、良いかと思います。いかん。

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  2. 下の「有人云‥腎經有濕氣」の「有人云」は,「有る人云う」と訓んでますね。

    十元さんの上記の訓みも疑問です。「有人」は患者でしょう。その患者に対して「やったこと」と「どうなったか」を述べる。「因灸三里」が原因で,「滿面黒氣」が結果。その間を「而」でつなぐ。四字句をつなぐ。「有る人(に),三里に灸するに因り(=灸したところ),而して満面が黒気す(≒顔中に黒い気があらわれた)」でいいと思います。所詮は多国語ですから,多少のぎこちなさはしょうがない。「而して」なんぞは,本当は前につけて「~に因りて,」と訓みたいところ。その間を「而」でつなぐ,なんて言ったから無理矢理です。

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    1. あ~あ,失敗,「多国語」はもちろん「他国語」の誤りです。

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  3. 十元8/11/2012

    コメントは、「有人」に対して、「人~~有る」ではなく、「有人ユウジン」(こういう患者がいた)ではないか、というものです。以下の文章については、神麹斎の読み方で良いかと思います。

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  4. 「有人」は,「こういう患者がいた」でいいと思います。というか中国人に,「こういう患者がいた」か「ある人」かと問うても,困らせるだけじゃないかな。ただ,「有人云」は「ある治療家が云うには」じゃなかろうか。

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