2017年10月11日水曜日

灸所抜書之秘伝 その2

せ中(背中)
一、後頂〔ゴチャウ〕の穴は、前のかみのはへぎわ(髪の生え際)より六寸五分上にあり。頭おも(重)く、まなこ(眼)くらむによし。五火。
二、肩井〔ケンセイ〕の穴は、かた(肩)の上二骨のあいだに三指をならべて、中指〔チウシ〕のところなり。くでん(口伝)あり。かたひちいた(肩臂痛)み、手あがらず、ならびにしわぶき(咳き=せき)いで(出で)、気つか(疲)れやすきによし。五十も百もすへし。
三、大杼〔ダイチヨ〕の穴は、第〔タイ〕一のほね(骨)のりやうばう(両傍)一寸半〔ハン〕つつなり。づつう(頭痛)、たちくらみ、くび(首)のすじこわる(筋強る/こわる=かたくなる。こわばる)に吉(よし)。五十すへし。
四、風門〔フウモン〕の穴は、第二のほね(骨)のりやうばう(両傍)一寸半つつにあり。づつう(頭痛)、たちぐらみ(立ちくらみ)、はなぢ(鼻血)出る(いづる)によし。五十か百もすへし。
五、肺兪〔ハイノユ〕の穴は、第三のほね(骨)の下りやうばう(両傍)一寸半つつ。ぜんそく(喘息)、たん(痰)、むね(胸)のうちくる(内苦)しみ、とけつ(吐血)、ろうさい(癆瘵≒肺結核)によし。五十、百もすへし。
六、膏肓〔コウクワウ〕(「膏音」と書いてある)の穴は、第四のほね(骨)の下、りやうばう(両傍)三寸つつなり。あるひは三寸半のさた(沙汰)あり。くでん(口伝)あり。ろうさい(癆瘵)、身やせつかれ(痩せ疲れ)、じやうき(上気=肺気上逆/あるいは頭に血が上ってぼうっとする)しやすく、たん(痰)つかへ、むねくる(胸苦)しみ、くびすしせなか(首筋背中)ひきつり、まなこ(眼)にち(血)さすに吉(よし)。百、二百も、おほきとき(多き時)は三、四百にもいたるべし。
七、譩譆〔イキ〕の穴は、第六のほね(骨)下、りやうばう(両傍)三寸つつなり。ろうさい(癆瘵)、おこり(瘧/「起こり」とも考えられるが、譩譆の主治に瘧疾あり)、ひさ(久)しくおちかね(落ちかね=なおらない/おちる=病気、憑き物などが除かれる)、むねくる(胸苦)しきによし。五十にても百にてもすへし。
八、膈兪〔カクユ〕の穴は、第七のほね(骨)の下、りやうはう(両傍)一寸半つつにあり。むねはらいた(胸腹痛)み、せなかおも(背中重)く、ときやく(吐逆)し、つね(常)にふしよく(不食)し、気きよ(虚)して、ふ(臥)すことをこの(好)むものによし。三十か五十よりす(過)ごすべからす。
九、肝兪〔カンノユ〕の穴は、第九のほね(骨)の下、りやうばう(両傍)一寸半つつにあり。わきいた(脇痛)み、はらはり(腹脹)、め(目)にまけ(目気。膜=そこひ。内障眼)い(出)で、気さかのほ(逆上)りて、はらた(腹立)て、せき(咳)出て、とけつ(吐血)するによし。百ほと(程)もすへし。
十、脾兪(ヒノユ)の穴は、第十一のほね(骨)の下、りやう(両)方一寸半つつに有(あり)。はらは(腹脹)り、くた(下)り、しぶ(渋)りて、と(止)まりかね、しよく(食)をこなさず、あるひはよくしよく(食)してや(痩)せ、ふくちう(腹中)にしやく(積)あつていた(痛)み、たい(体)よだる(弥怠/よだるし=非常に疲れてだるい)くして、かりそめにも(≒わずかでも)ふ(臥)すことをこの(好)み、ならびに小児〔セウニ〕の五かん(疳)、やせ(痩)おとろ(衰)へたるによし。百、二百もすへし。此(この)穴、くでん(口伝)あり。
十一、腎兪(ジンノユ)の穴は、第十四のほね(骨)の下、りやうはう(両傍)一寸半なり。こしいた(腰痛)み、らうさい(癆瘵)、じんきよ(腎虚)して、はらしぶ(腹渋)りくた(下)り、ほかみ(下腹)ひ(冷)ゑてな(鳴)り、じんきよ(腎虚)のりんびやう(淋病)によし。百、二百ほともすへし。
十二、志室〔シシツ〕の穴は、第十四のほね(骨)の下、りやうはう(両傍)三寸つつ也。わきいた(脇痛)み、ひきつり、こしいた(腰痛)み、しよく(食)こなさぬによし。五十、百ほとすへし。
十三、小腸〔せうちやう〕兪は、第十八のほね(骨)の下、りやうはう(両傍)一寸半つ(たぶん「つにあり」「つなり」などを脱する)。りんびやう(淋病)、ほかみ(下腹)いた(痛)み、こしいた(腰痛)み、せうへん(小便)しろ(白)くにこ(濁)るに、五十【?。「十」の部分に汚れあり。前後文による推定】、百もすへし。
十四、膀胱兪〔ボウケウユ?〕は、第十九の下、りやうはう(両傍)一寸半にあり。せうべん(小便)しげ(繁)く、ほがみ(下腹)いた(痛)み、こしひざ(腰膝)しびるゝによし。五十、百もすへし。
十五、章門〔しやうもん〕の穴は、へそ(臍)のとを(通)り、季肋〔キロク〕のはし(端)なり。よこ(横)にふ(臥)して、下のあし(足)をのへ(伸べ)、上のあし(足)をかゝ゛め(屈め)、ひち(臂=うで=上肢)をあげて(挙上して)と(取)る。しやく(積)、わき(脇)のした(下)にありて、ひだり(左)のわき(脇)にかたまり(塊)あるによし。五十、百までもすへし。
十六、曲池〔キョクチ〕の穴は、ひぢ(肘)のお(折)りめ(目)のかしら(頭)にあり。ちうぶう(中風)、かた(片)身かなわす(半身が麻痺して動作が思いどおりにならなく)、ひぢやせ(臂=上肢が細くなり)、いた(痛)むによし。三十、五十にいた(至)るへし。
十七、手三里〔テノサンリ〕は、曲池の下二寸、ひち(肘)をねち(捻)て、肉〔ニク〕のくぼ(凹)きところ(所)なり。くでん(口伝)あり。ひぢ(肘・臂=うで・上肢)のいた(痛)みによし。三十、五十もすへし。
十八、風市〔フウジ〕の穴は、もゝ(腿)のそと(外)のまんなか(真ん中)、立(たち)て、両手をひと(等)しくさ(下)げ、中指のさき(尖端)あ(当)たるところ(所)なり。ももはぎしび(腿脛痺)れいた(痛)み、ぎやうぶ(行歩)かないかたき(歩行困難)によし。年のかず(数)すへし。あるひは五十、百にいた(至)るへし。
三里の穴、ひさ(膝)の下三寸ほね(骨)のそと(外)、大すじ(筋)の内にあり。一説には、膝眼〔シツカン〕の下三寸とあり。気のぼ(上)り、目くらみ、胃〔イ〕きよ(虚)してふしよく(不食)するに三十、五十程。凡〔オヨソ〕人三十以上にはかなら(必)ず三里をきう(灸)すへし。しか(然)らされは、気上(のぼっ)て眼あきらかならす(明らかならず=眼がよく見えなくなる)。また膏肓・四花・百会をきう(灸)してのち(後)、かならす(必ず)三里にすへし。上の熱をひ(引)き下すなり。

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