2017年10月9日月曜日

灸所抜書之秘伝 その1

 京都大学図書館富士川文庫所蔵(キ/93) 『臨床鍼灸古典全書』八
 ※基本的に常用漢字を使用する。句読点をつける。一部、濁点をおぎなう。「すへし」はみな「すべし」であろう。〔〕内は原文にあるふりがな。カタカナにした。()内は補足。見当違いがあるかもしれない。未校正。

一、百会〔ヒャクエ〕の穴は、前のかみはへきわ(髪生え際)より五寸上なり。づつう(頭痛)、めまひ(目眩)、こころ(以下、「(心)煩驚悸」「(心)神恍惚」などを脱するか)、小児の驚癇、だつこう(脱肛)の出(いづ)るによし。三火あるひは五火、毎日七日すべし。一度に五火よりすごすべからず。
二、上星(ジャウセイ)の穴は、前のかみはへぎわ(髪生え際)より一寸上なり。づふう(頭風)、たちくらみによし。三火か五火ほどすべし。
三、天突(テントツ)の穴は、のどの下にたかきほね(高き骨)あり。これを結喉といふ。その下三寸、天突の穴なり。たん(痰)、せんそく(喘息)、口の中にか(苦)きによし。七火ほどすへし。
  ※図(正面と背面)あり。省略す。
四、花蓋〔クワカイ〕の穴は、天突の下二寸なり。せき(咳)出て、むねくる(胸苦)しきによし。七火ほどすへし。
五、玉堂(キョクタウ)の穴は、天突の下四寸なり。かく(膈/食物がつかえて吐く病)、むね(胸)の中いた(痛)むによし。七火か十三火にてもすへし。
六、膻中(ダンチウ)の穴は、りやうほう(両方)の乳〔チ〕のまんなか(真ん中)なり。むねひゑ(胸冷え)、かく(膈)、ぜんそく(喘息)によし。二十、三十にてもすへし。
七、鳩尾(キウビ)の穴は、蔽骨(ヘイコツ)の下五分なり。これはきんきう(禁灸)の穴なれども、てんかん(癲癇)、きやうき(驚悸)には、三火すへし。
八、巨闕(コケツ)の穴は、鳩尾の下一寸なり。むねいた(胸痛)み、くわくらん(霍乱)、ときやく(吐逆)、はらくた(腹下)るによし。七火、十三火すへし。
九、上脘〔クワン〕の穴は、鳩尾の下二寸なり。むなさはき(胸騒ぎ)、ときやく(吐逆)、ふしよく(不食/食欲不振)、よくはらは(腹脹)るによし。三十か五十すへし。
十、中脘(チウクワン)の穴は、臍(ヘソ)の上四寸なり。はらいた(腹痛)み、くわくらん(霍乱)、しよく(食)をこなさず、はらは(腹脹)り、むしな(虫鳴)きてうこ(動)くによし。三十、五十にてもすへし。
十一、建里(ケンリ)の穴は、臍の上三寸なり。はらは(腹脹)り、ふしよく(不食)、むししやく(虫積=臍の周囲にかたまりがあり、面青、清水を吐く)、かんけ(疳下=全身がやせ、腹がふくれる小児の病)によし。三十も五十もすへし。
十二、下脘(ケクワン)の穴は、臍の上二寸なり。くわくらん(霍乱)、はらいた(腹痛)み、あけつくだしつ(上げつ下しつ)するによし。三十か五十すへし。
十三、気海(キカイ)の穴は、臍の下五分なり。ほがみ(小腹=下腹部)いた(痛)み、くわくらん(霍乱)、ときやく(吐逆)やます(止まず)、ひさ(久)しく瀉(シヤ)ししぶ(渋)り、元気(ケンキ)おとろへ(衰え)、しやくり(シャックリ=呃逆)や(止)まざるによし。十五も二十もすへし。
十四、石門(セキモン)の穴は、臍の下二寸なり。じんしゃく(石門の主治に「疝積」あり。腎積=奔豚)、ほがみ(下腹部)かたく、すんばく(寸白=人体の寄生虫)のいた(痛)み、すいしゆ(水腫)、ちやうまん(脹満)、婦人崩漏〔ホウロウ〕(子宮出血)、帯下〔ダイケ〕(おりもの。こしけ)によし。三十か五十すへし。婦人此所(ここ)にきう(灸)すれば、なが(長)くくわいにん(懐妊)せず。
十五、幽門〔ユウモン〕の穴は、巨闕〔コケツ〕のりやうばう(両傍)各〔オノオノ〕五分にあり。はら(腹)つねにいた(痛)み、ふしよく(不食)するによし。三十すへし。
十六、通谷〔ツウコク〕の穴は、上脘のりやうばう(両傍)各五分にあり。むね(胸)の下にしやく(積)ありていた(痛)み、しよく(食)こなさぬによし。三十か五十ほどすへし。
十七、三陰交〔サンインコウ〕の穴は、内くるぶし(踝)上三寸、ほね(骨)のうしろなり。あしいた(足痛)み、せうべん(小便)しぶり、すんはく(寸白)にもよし。三十ほどすへし。
十八、陰蹻(インキヤウ)の穴は、内くるぶし(踝)の下のくぼ(凹)みなり。疝気〔センキ〕にわかにお(起)こり、ほかみ(ほがみ/小腹)いた(痛)み、小へんしぶ(便渋)り、あしやせほそく(足痩せ細く)、てんかん(癲癇)夜おこり、婦人月水〔グワツスイ〕(月経)ととのをらざる(調おらざる/ととのおる=調和がとれる)によし。十四五火すへし。

0 件のコメント:

コメントを投稿