2012年1月15日日曜日

『醫説』鍼灸 關聯史料集成 9 鍼鼻生贅 その2

唐 薛用弱撰『集異記』

狄梁公
狄梁公性閑醫藥,尤妙針術。顯慶中應制入關,路由華州闤闠之北,稠人廣衆,聚觀如堵。狄梁公引轡遥望,有巨牌大字云「能療此兒,酬絹千疋。」即就觀之,有富室兒年可十四五,臥牌下,鼻端生贅,大如拳石,根蔕綴鼻,纔如食筯,或觸之,酸痛刻骨,於是兩眼為贅所繩(一作「縋」),目睛翻白,痛楚危亟,頃刻將絶。惻然久之,乃曰「吾能為也。」其父母洎親屬叩顙祈請,即輦千絹置於坐側。公因令扶起,即於腦後下針寸許,仍詢病者曰「針氣已達病處乎?」病人頷之。公遽抽針,而肬贅應手而落,雙目頓亦如初,曾無病痛。其父母親眷且泣且拜,則以縑物奉焉。公笑曰「吾哀爾命之危逼,吾蓋急病行志耳,吾非鬻技者也。」不顧而去。

【倭讀】
狄梁公 性 醫藥に閑(な)れ,尤も針術に妙なり。顯慶中,制に應じて關に入る。路 華州の闤闠の北に由る。稠人廣衆,聚まり觀ること堵の如し。狄梁公 轡(たずな)を引きて遥かに望む。巨牌有り,大字に云う「能く此の兒を療さば,絹千疋を酬いん。」即ち就きて之を觀れば,富室の兒有り,年 十四五可(ばか)り。牌下に臥す。鼻端に贅を生じ,大いさ拳石の如し。根蔕 鼻に綴り,纔(わず)かに食筯の如し。或いは之に觸るれば,酸痛 骨に刻む。是(ここ)に於いて兩眼 贅の繩(一作「縋」)する所と為り,目睛翻白す。痛楚危亟,頃刻に將に絶えんとす。惻然として之を久しくして,乃ち曰く「吾れ能く為(おさ)めん。」其の父母 親屬に洎(およ)ぶまで叩顙して祈請す。即ち千絹を輦(はこ)びて坐側に置く。公因りて扶(たす)け起こさしめ,即ち腦後に針を下すこと寸許(ばか)り。仍りて病者に詢(と)いて曰く「針氣已に病處に達するか?」病人 之に頷く。公遽かに針を抽(ひ)く。而して肬贅 手に應じて落つ。雙目頓(とみ)に亦た初めの如し。曾(すなわ)ち病痛無し。其の父母親眷且つ泣き且つ拜み,則ち縑物を以て奉(たてまつ)る。公笑いて曰く「吾れ爾が命の危逼を哀れむ。吾れ蓋(けだ)し病を急とし/急病を蓋(たつと)びて志を行うのみ。吾れ技を鬻(ひさ)ぐ者に非ざるなり。」顧みずして去る。

【注釋】
○狄梁公:狄仁傑。狄 仁傑(てき じんけつ, 六三〇年(貞観四年)~ 七〇〇年(久視元年))は中国唐代の政治家。高宗・中宗・睿宗・武則天に仕えた。唐代で太宗の時代に続いて安定していたといわれる武則天の治世において最も信頼され、長年に渡って宰相を務めた。
Wikipedia 狄仁傑
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%84%E4%BB%81%E5%82%91
http://zh.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%84%E4%BB%81%E6%9D%B0
百度百科 狄仁傑
http://baike.baidu.com/view/21940.htm


○閑:熟習、通曉。通「嫻」。
○顯慶:顕慶は、唐の高宗李治の治世に使用された元号。六五六(斉明二)年~六六一年(斉明七)年。
○應制:應詔,奉皇帝的詔命。/制:古代帝王的命令。
○關:國境或邊險要塞的出入口。
○路:道路,供人馬舟車等行走的途徑。
○華州:州名。西魏廢帝三年(公元554年)改東雍州置華州,治華山(今陜西省華縣)。長安(西安)の東70kmぐらい。隋大業初廢。唐武德初復置,治鄭縣(華山改,今華縣,元廢入本州)。聖歷後轄境相當今陜西華縣、華陰、潼關等市縣及渭北下邽鎮附近地。後一再改名,轄境歷代屢有變遷,治所在今華縣(曾名華山、鄭縣)。清不轄縣。民國1913年改華縣。
○闤闠:市場。街市;街道。市街。商店街。
○稠人廣衆:人數眾多。/稠人:眾人。/稠:繁﹑多。/廣衆:人數眾多。
○聚:人群。
○觀:察看、審視。
○堵:牆壁。かきね。
○轡:控制牛、馬等牲口的韁繩。たずな。
○遥望:[look into the distance] 向遠處看;看遠方。
○牌:揭示板或標誌。
○大字:通常指一方寸以上的字。相對於小字而言。
○酬:贈與。
○絹:質薄而堅韌的生絲織品。
○疋:量詞。計算布帛類紡織品的單位。同「匹」。
○即:近、靠近、投向。立刻。
○就:凑近,靠近。ちかづく。
○富室:猶富家,富戶。指錢財多的人家。
○可:大約、近似 [about]。ぐらい。
○臥:躺;臥而不眠 [lie]。
○贅:腫瘤。
○拳石:小石塊。
○根蔕:[root and base]∶植株的根和蒂。/蔕:へた。果実または枝や茎につく部分。/花が枝や茎につく部分。うてな。
○綴:連接。
○纔:剛剛 [just]。
○食筯:食箸。/筯:筷子。食用の箸。
○或:もし。仮定の条件をあらわす。
○酸痛:酸麻疼痛。/酸:痠。(疲れあるいは病気で)だるい.だるくて痛む。
○刻骨:[ingrained;deep-rooted;deep-seated] 形容永難忘記。
○於是:表承上啟下的連詞。因此。
○繩:約束、制裁。/縋:用繩索拴住人或物從上往下放[let down (with a rope)]。
○兩眼為贅所繩:両目が贅のためにひっぱられる。/為A所B=AによってBされる。受身の構文。
○目睛:眼珠。亦泛指眼睛。
○翻白:翻白眼。病危状。白目を剥く。
○痛楚:[pain;anguish;suffering] 肉体的痛苦或精神的苦楚。
○危亟(極):危急。
○頃刻:形容極短的時間。まもなく。すぐに。
○將:快要。就要;將要 [will;be going to]。
○絶:停止。暈死。氣絶。竭;尽 [exhaust]。命が絶たれる
○惻然:悲傷的樣子。
○久之:經過一段時間。
○乃:才、始。于是,就。 [then;whereupon]。
○為:治理。治療する。
○洎:到﹑及。
○親屬:因血統、婚姻或收養而與自己有關係的人。如血親、姻親、配偶均屬之。
○叩顙:磕頭(一種以頭著地或近地的跪拜禮)。/叩:磕、觸。如:「叩頭」。/顙:額頭、前額。泛指頭。ぬかづく。
○祈請:泛指請求。祈願。/祈:請﹑求。お願いする。
○即:すぐさま。
○輦:運載。
○坐:席位。通「座」。
○側:旁邊。そば。
○扶:用手支持,使人、物或自己不倒。
○腦後:腦的後部。頭の後部。/あるいは「腦後」は「腦后」で「腦戸」の誤字か。/腦户:在枕骨上,通於腦中。《素問·刺禁論》:「刺頭中腦戶,入腦立死。」
○寸:計算長度的單位。一尺的十分之一。度量衡を見る。
○許:表示約略估計的數量。如:「些許」、「少許」。ぐらい。ほぼ。
○仍:於是﹑因此。
○詢:查問﹑徵求意見。
○針氣:鍼感。
○頷:微微點頭,表示招呼﹑應允或嘉許的意思。
○遽:忽然、突然。遂、就。すぐに。
○抽:引出。ひきぬく。
○肬贅:肉瘤。/肬:疣。皮膚上突起的小肉瘤。/贅:皮膚上的肉疙瘩。
○應手:隨手(無造作に)、順手(物事が順調に運ぶ)。あっさりと。多形容技藝高超嫻熟或做事得法順當。
○頓:立刻、突然。
○亦:已經。リズムを整えることば。無義。
○如初:像原先一樣。[as before] 跟原來一樣。はじめと同様。
○曾:嘗、已經。/動作や事情が予想外であることを示し,ふつう「不」「未」「無」どの打ち消しの語の前に置く。「意外にも」「なんと」と訳す。『漢辞海』
○親眷:血親與姻親的通稱。
○且:表示同時做兩件事情。如:「且歌且舞」、「且戰且走」。~しながら……する。二つの動作や行為が連続して進行することを表す。『漢辞海』
○縑:細緻的絲絹。
○奉:進獻。
○哀:憐憫。愛惜。
○爾:第二人稱代名詞,相當於「汝」、「你」。
○危逼:亦作「 危偪」。 危迫;危急。
○蓋:乃是、實在是。因為,由於 [because]。/動詞だとすると「尚」の意味。たっとぶ。重要に思う。
○急病:來勢急速的疾病[acute disease]。危急のやまい。/急トス。重要視する。重んじる。/「蓋」「急」どちらを動詞とするにしても,この部分の意味は「私はこどもの病気のことをおもんぱかって,好き勝手にやったまでだ。私は医者をして生活しているものではない(から,礼には及ばない)。」
○行志:[act wildly in defiance of the law or public opinion;commit all kinds of outrages] 任意行事,胡作非為。随意志行事。
○鬻技:以技藝謀生(生計を立てる)。/鬻:賣。『莊子』逍遙遊:「今一朝而鬻技百金,請與之。」
○顧:回首、回頭看。

http://baike.baidu.com/view/4525614.htm
名臣狄仁杰

原文
狄梁公(狄仁杰曾被封为梁国公)性闲(通“娴”,熟习)医药,尤妙(擅长)针术。显庆中(显庆年间。显庆是唐高宗年号),应制(奉皇帝诏令)入关(指要进入关中长安),路由(路上经过)华州,癏阓(huán huì,街市。此指华州府的街市)之北,稠人广众聚观如堵(墙)。
狄梁公引辔(拉着马缰绳。辔,pèi)遥望,有巨牌大字云:能疗此儿,酬(答谢)绢千匹。即就(走上前去)观之,有富室儿,年可(约)十四五,卧牌下。鼻端生赘(zhuì,肿瘤),大如拳石,根蒂(底)缀(连着)鼻,才如(就像)食箸(吃饭用的筷子)。或(如果)触之,酸痛刺骨。于是两眼为(被)赘所缒(zhuì,牵连),目睛翻白,痛楚(痛苦)危亟(急),顷刻将绝(死)。恻然久之(恻,伤心),乃曰:“吾能为(治)也。”其父母洎(jì及)亲属,叩颡(磕头。颡,sǎng)祈请,即辇(niǎn,车子)千绢置(放)于坐侧。公因(于是)令(使)扶起,即于脑后下针寸许(左右),乃(就)询(问)病者曰:“针气已达病处乎?”病人颔之。公遽抽针,而瘤赘应手而落,双目登(顿时)亦如初,曾(竞)无病痛。
其父母亲眷且泣且拜(边哭边跪拜),则以缣(jiān,即绢)物焉(送给狄仁杰)。公笑曰:“吾哀(可怜)尔子命之危逼(危险而近于死亡),吾盖(因为)急病行志(急病人之急,为人做好事)耳(罢了),非鬻技(出卖技术。指靠行医为生。鬻,Yù)者也。”不顾(看)而去焉。

译文
狄仁杰爱好医术,特别擅长针灸。显庆年间(他)应皇帝征召入关,路上经过华州街市北面时,看到很多人在围观。
狄仁杰拉住马远远望去,看到一块高大的牌子,上面写着八个大字:能疗此儿,酬绢千匹。狄仁杰立刻走上前去观看。原来是个富家的孩子,年纪约十四五岁,躺在招牌下面。孩子的鼻子下面生了个肿瘤,像拳头那么大,根部连着鼻子,像筷子那么细。如果摸摸它,就感到刺骨的疼痛。因此两只眼睛也被往下拉,两眼翻白。孩子的病情十分危急,气息奄奄。狄仁杰怜悯的看了很久,才说:“我能治疗他。”孩子的父母及亲属叩头请求他医治,并叫人拉来车子,把一千匹绢放在狄仁杰旁边。狄仁杰让人把孩子扶起来,用针在他的脑后扎进去一寸左右,便问孩子:“你的瘤子上有感觉吗?”病孩点点头。狄仁杰立刻把针拔出来,肿瘤就随着手掉了下来,两眼也顿时恢复了正常,病痛全部消失。
孩子的父母及亲戚边哭边磕头,一定要把一千匹绢送给狄仁杰。狄仁杰笑着说:“我是可怜你儿子性命危在旦夕。这是急病人之急,为病人解除痛苦罢了,而不是出卖我的医术。”狄仁杰头也不回的就走了。

1 件のコメント:

  1. 吾蓋急病行志耳
    あるいは,
    吾害急病行之耳(われ急病をおそれにくみてこれを行うのみ)
    蓋は害に通じ,害には,おそれるとか,にくむとかの意味が有る。
    志と之は同音ではないか。そのそも志の上は士ではなく,もとは之らしい。

    これは,読んでるよ,という挨拶,みたいなもの,です。

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