李王公主患喉癰數日,痛腫,飲食不下。纔召到醫官,言須鍼刀開,方得潰破。公主聞用鍼刀,哭不肯治。痛逼,水穀不入。忽有一草澤醫,曰:某不使鍼刀,只用筆頭蘸藥癰上,霎時便潰。公主喜,遂令召之。方兩次上藥,遂潰出膿血一盞餘,便寬。兩日瘡無事。令傳〔一本作「供」〕其方。醫云:乃以鍼繋筆心中,輕輕劃破,其潰散爾,別無方。言醫者意也,以意取效爾。(名醫録)
【倭讀】
筆鍼 癰を破る
李王公主 喉癰を患うこと數日,痛み腫れ,飲食下らず。纔かに召して醫官を到らしむ。言う,「鍼刀を須(もち)いて開かば,方(まさ)に潰破するを得ん」と。公主 鍼刀を用いることを聞き,哭して治するを肯ぜず。痛み逼って,水穀入らず。忽ち一の草澤醫有り,曰く,「某(それがし) 鍼刀を使わず,只だ筆頭を用いるのみ。藥を癰上に蘸(たら)さば,霎時に便ち潰(つい)えん」と。公主喜びて,遂に之を召せしむ。方(まさ)に兩次 藥を上(たてまつ)れば,遂に潰えて膿血を出だすこと一盞餘り。便ち寬(ゆる)し。兩日にして瘡 無事なり。其の方を傳えしむ(供せしむ)。醫の云く,「乃ち鍼を以て筆心の中に繋ぎ,輕輕に劃破し,其れ潰散するのみ。別に方無し」と。醫は意なりと言う。意を以て效を取るのみ。(『名醫録』)
【注釋】
○筆鍼‥筆鍼で,筆鍼を使って。
○李王‥
○公主‥天子或國王的女兒。
○患‥得,遭逢。如‥「患病」。
○喉癰‥病名。系指咽喉各部發生之癰瘍。見《諸病源候論》卷三十。根據癰發生部位之不同,又可分為喉關癰,裏喉癰,夾喉癰,上腭癰,頜下癰,舌喉癰,外喉癰等。詳見各有關條。其病因主要有三個方面‥其一是六府不和,氣血不調,肺胃熱蘊,風熱痰火之氣上沖咽喉;二是過食辛辣醇酒厚味;三是七情鬱結。喉癰的主要症狀是咽喉腫起,疼痛甚劇,焮紅漫腫,吞咽呼吸受累等。治療時總的原則是散表清熱,解毒消腫,用銀翹散,清咽利膈散,仙方活命飲等加減,也可外吹冰硼散。膿成時要刺破排膿,也可經常用銀花,薄荷等煎水漱口。
○飲食‥食物,飲料之類的東西。
○下‥由高至低,降落。進入。
○纔‥方,始,剛剛。才。わづかに(わずかに)。
○召‥呼喚,特指上對下的呼喚。如‥「召喚」招致,引來。
○到‥抵達,到達。
○醫官‥軍隊中或政府機關僱用的醫生。
○須‥用。
○開‥啟,張。割,剖。
○方‥才,始。正,適。將。
○潰破‥猶打破,擂(搥打,敲擊)破。/潰‥突破。
○破‥毀壞,使碎裂。剖開,劈開。
○哭‥因傷心或激動而流淚,甚至發出悲聲。
○不肯‥不願意。
○逼‥威脅,強迫。接近,迫近。非常。狹窄。きわめて(異常に)。
○水穀‥水と穀物。泛指食物。飲食物。
○忽‥突然。
○草澤醫‥江湖(民間)醫生。
○某‥我,自稱之詞。
○鍼刀‥はさみ。鍼と刀。
○只‥僅。
○筆頭‥筆尖,筆端。
○蘸‥把東西沾上液體或黏附其他物質。サン ひたす。つける。
○癰‥ヨウ ユ はれもの。
○霎時‥極短的時間。/霎‥しばし。
○便‥即,就。
○遂‥就,於是。
○令‥使,讓。發布命令。
○方‥正,適。才,始。
○次‥量詞。計算動作回數的單位。
○上藥‥塗抹藥品。これによれば単に「ぬる」と訓じてよい。施す(訓:くわう)。/たてまつる。
○盞‥小而淺的杯子。サン セン さかづき。
○寬‥ひろい ゆるやか。鬆,不緊。
○兩日‥ふつか。
○無事‥沒有變故。多指沒有戰事,災異等。健康で元気なこと。つつがないこと。
○方‥治病的藥單,配藥的單子。如‥「藥方」。
○乃‥竟,居然。語助詞。用於發語或轉折。
○繫‥綁,扣,結。聯綴,連接。
○筆心‥裝於鉛筆,原子筆等內部,可供書寫的固體鉛蕊或液態油墨。或作「筆芯」。
○輕輕‥動作細小,小心(注意深く)。
○劃‥用刀子或其他利器從物體表面拖拉(引っ張る )而過。きりさく。
○其‥他,他們。用於第三人稱。
○潰散‥潰敗,逃散。被打垮(打ち崩す/突き壊す.たたきつぶす)而逃散。
○爾‥如此,而已。
○別‥特殊,與眾不同。
○無方‥無定例,無定規。特別な方法があるわけではない。
○言‥最後まで,草澤醫の言か?
○醫者意也‥『後漢書』方術列傳/郭玉「醫之為言意也」。『外臺秘要方』卷十八・脚氣服湯藥色目方一十九首「陶隱居云,醫者意也」。『備急千金要方』卷一・診候第四「張仲景曰……故曰醫者意也」。『舊唐書』列傳 方伎/許胤宗「醫者意也」。医術は,心遣いが大切。
○意‥意思。見解,看法。內心,胸襟。考慮。こころ おもひ。心遣い。
○取效‥收效。
○名醫録‥『宋史』藝文志「甘伯宗歷代名醫錄七卷」。王旭光 張宏校注:指宋代黨永年撰『神秘名醫錄』,書凡二卷,今存,何時希在『中國歷代醫家傳錄』中說撰于宋煕寧十年丁巳(1077年)。又『神秘名醫錄』題此條作「醫工以筆頭蘸藥治公主喉癰」,張杲錄入『醫說』時改題作「筆鍼破癰」。張杲『醫說』引『神秘名醫錄』内的諸條文字,對原標題多有改動。/『神秘名醫錄』は未見。『中國中醫古籍總目』によれば,明嘉靖32年癸丑(1553)西川成都府黃魯曾刻本が中國中醫科學院圖書館に,中華醫史學會鈔本が上海中醫藥大學圖書館にある。
・明の陳耀文の類書『天中記』卷四十に「筆頭蘸藥」と題してほぼ同文が見える。
筆頭蘸藥。李王公主患喉癰数日,痛腫,飲食不下。纔召到名醫,言煩鍼刀開,方得潰破。公主聞用鍼刀,哭不肯治。痛逼,水穀不入。忽有草澤醫,曰:某不使鍼刀,只用筆頭蘸藥癰上,霎時便潰。公主喜,令召之。方兩次上藥,遂潰出濃血一盞餘。便覺兩日瘡無事。令供其方。醫云:乃以鍼繫筆心中,輕輕劃破其潰散耳,别無方。言醫者意也,以易取效耳。〔名醫録〕
ちょっと気になる。
返信削除「兩次上藥」は,二度薬を施せば,塗れば,だと思う。
「便寬」は,すなわち寛解す,じゃないですか。
閉鎖した以前のBLOG「醫説 鍼灸」のほうが良いということですかな。
削除http://plaza.umin.ac.jp/~daikei/isetsu.html の『醫説』鍼灸10