★大原則:白文→現代語訳→書き下し文。
現代語訳を作成したうえで,それに対応するように,原文にある漢字を使用して古典(訓読)文法にしたがって書き下し文をつくる。
★この順番を間違えてはいけない。
大前提:古代漢語の語法と常識,および日本古文文法の知識が基礎としてある程度必要であるが,これについては省く。
・現代語訳ができなければ,書き下し文の正しさは保証されない。
・意味がわからなければ,現代語訳はできない。
=現代語訳するためには,語(句)の意味を把握しなければならない。
・知らない,理解できない漢字・熟語は,辞書をひいて意味を確かめる。
・漢字にも当然のことながら,多義語がある。その文脈にふさわしい意味を見つけなければならない。
・既知の漢字でも,自分が知らない意味がある,知らない用法がある。
その可能性をつねに念頭に置かなければならない。
・慣用句等には,語法的には理解しがたいものもある。
・辞書を引く労力を惜しんではならない。
・手持ちの辞書に出ていなくとも,インターネットをつかって膨大な用例等が検索できる。
それによって,多くの場合,意味が類推できる。
場合によっては,原文の誤字・脱字等にも気づくことができる。
例:霊素作俑。
後藤艮山『六気弁』背腹陰陽説(背中側は陰であり,腹側が陽であるという艮山の説)より。
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000766
5コマ目。
・霊素=『霊枢』と『素問』。辞書をひいても掲載されていないかも知れないが,医学古典の読者であれば,常識の範疇に属する。
・俑:殉葬するための木偶。ひとがた。
★単純に見た目から「霊素 俑を作る」と書き下すことはできても,書物が木偶人形を作ることはありえないから,意味不明である。そのため,あるひとは「霊素 俑に作る」と書き下した。
しかし,たとえば『漢辞海』を引けば,「俑」字のところに,意味は書いてないが,その用例として「作俑」が掲載されている。それで「作」字で始まる熟語「作俑」を調べれば,意味が判然とする。
・参考:『支那文を讀む爲の漢字典』「俑」字:「不善の端を開く」を「作俑」といふ。
https://www.seiwatei.net/chinakan/chinakan.cgi
このことばの出典である『孟子』梁恵王上を(注釈つきで)読めば,さらにいいたいことがより深く理解できよう。
なお,「俑を作る」は,大きめの日本語辞典にも出ていることばである。
日本語の知識が豊富であれば,あるいは辞書を引く手間を惜しまなければ,「俑に作る」という書き下し文にはならないはずである。
★白文:霊素作俑
→【意訳】『黄帝内経』は悪しき前例を作った/良くないことを始めた。
→【書き下し文】霊素 俑を作る。
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