2026年9月19日土曜日

13-2 【意訳】江戸時代鍼灸文献序跋集 主治針法

 13-2 主治針法  著者未詳

    京大富士川文庫所蔵(シ/八〇) 

     https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00003001

    三巻本。以下の序は,巻之下の末尾に綴じられている。


主治鍼法之序

夫醫之治病猶人之治水水

之行于天地猶血氣之行于

人身也或為四氣七情所干

則經脉流注交際之處或塞

或壅或溢焉皆害ヲナシ病

トナルニ至氣血之凝滯取

其和平主治者鍼法耳而鍼

ヲ刺テ病シルシ速ナル經

穴圖章訓釋而以便準量取

  ウラ

穴目之曰主治鍼法ワケテ

為三卷雖一言半句私ノ言

アラズ皆醫學入門十四經

發揮鍼灸聚英其外諸家之

説トツテヌキガキシテ門

弟子シメス懷中秘而他見

スルコトナカレト云尒

 旹

延寶五丁巳歳孟夏良辰


  【訓み下し】

主(シユ)治(ジ)鍼(シン)法(ハウ)の序(シヨ)

夫れ醫の病を治(ジ)すること猶お人の水を治むるがごとし。水の天地を行くことは、猶お血氣の人身を行くがごとし。或いは四氣七情の為に、干(ヲカ)さるるときんば、經脉流注交際の處、或いは塞がり、或いは壅ぎ、或いは溢る。皆な害をなし、病となるに至る。氣血の凝滯、其の和平(クワヘイ)を取る。主治は、鍼法のみ。而して鍼を刺して病にしる(著)し。速(スミヤ)かなる經穴圖章、訓釋(キンセキ)して以て準量して

  ウラ

穴を取るに便りす。之を目(ナツ)けて、主治鍼法を曰う。わ(分)けて三卷と為(す)。一言半句と雖も、私(ワタクシ)の言(コトバ)にあらず。皆な醫學入門、十四經發揮、鍼灸聚英、其の外諸家(シヨケ)の説をと(取)って、ぬ(抜)きが(書)きして、門弟子(テイシ)にしめ(示)す。懷中に秘して他見することなかれと爾(シカ)云(イフ)。

 旹

延寶五丁巳歳 孟夏良辰


 【注釋】

 ○シルシ‥顕著である。効果がある。 ○醫學入門‥明・李梃撰。 ○十四經發揮‥元・滑壽撰。 ○鍼灸聚英‥明・高武撰。 ○尒‥「爾」の異体。 ○旹‥「時」の異体。 ○延寶五丁巳歳‥一六七七年。 ○孟夏‥夏季のはじめの月。旧暦四月。 ○良辰‥吉日。


主(シユ)治(ジ)鍼(シン)法(ハウ)の序(シヨ)

夫れ醫の病を治(ジ)すること猶お人の水を治むるがごとし。

 【意訳】医者が病を治療することは,人が治水するのと同じようなものである。

水の天地を行くことは、猶お血氣の人身を行くがごとし。

 【意訳】水が天地をめぐることは,血気が人体をめぐるのと同じようなものである。

或いは四氣七情の為に、干(ヲカ)さるるときんば、經脉流注交際の處、或いは塞がり、或いは壅ぎ、或いは溢る。

 【意訳】(春夏秋冬の)温・熱・冷・寒に代表される外因や,喜・怒・憂・思・悲・恐・驚などの感情に代表される内因によって人体がおかされると,経脈が流れて交わるところが,塞がったり,遮られたり,あふれたりする。

皆な害をなし、病となるに至る。

 【意訳】いずれの場合でも,障害が生じて,発病することになる。

氣血の凝滯、其の和平(クワヘイ)を取る。

 【意訳】気血の凝りとどこおったものは,調和平安を求める。

主治は、鍼法のみ。

 【意訳】治療をつかさどるのは,鍼法だけである。

而して鍼を刺して病にしる(著)し。

 【意訳】鍼を刺して病に効果が顕著である。

速(スミヤ)かなる經穴圖章、訓釋(キンセキ)して以て準量して穴を取るに便りす。

 【意訳】時間がかからない経穴に関する図示・説明で位置を計測することによって,取穴の便宜をはかった。

之を目(ナツ)けて、主治鍼法を曰う。

 【意訳】書名を『主治鍼法』と名付けた。

わ(分)けて三卷と為(す)。

 【意訳】上中下の三巻に分けた。

一言半句と雖も、私(ワタクシ)の言(コトバ)にあらず。

 【意訳】片言隻句であっても,個人的な見解を入れたところはない。

皆な醫學入門、十四經發揮、鍼灸聚英、其の外諸家(シヨケ)の説をと(取)って、ぬ(抜)きが(書)きして、門弟子(テイシ)にしめ(示)す。

 【意訳】すべては,『医学入門』『十四経発揮』『鍼灸聚英』,その他,多くの鍼灸家の説を採用して,必要な部分を抜き出し,弟子たちに示したものである。

懷中に秘して他見することなかれと爾(シカ)云(イフ)。

 【意訳】ふところの中にしまって,決して他人には見せてはいけない。

 旹

 【意訳】これを記した時は,

延寶五丁巳歳 孟夏良辰

 【意訳】延宝五年(1677) 四月吉日

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