小学館『古語大辞典』から
なほ・す【直す】
②元の状態にする。元どおりにする。「汝は医師(くすし)ぢゃといふ程に、この腰を――いてく
れい」〈虎明本狂言・雷〉。
なほ・る【直る】
②元どおりになる。回復する。「二、三日過ぎぬれば、たれもたれも心地――りにたり」〈宇治拾
遺・三・一六〉。
この用例をみて、漢字をあてるとしたら、「直」以外は不可といえるでしょうか。
で、「なおる」「なおす」に相当する漢字ですが、もちろん「直」だけではありません。
『日本国語大辞典』には
「堪(ナホルコト)難し」
「貴郎とのお間(なか)も和熟(ナホ)る様に骨を折りませう」
「機嫌が復(ナホ)らんのは」
「天運(しあわせ)の順還(ナヲル)事があれば」
「其の枉(まか)れるを矯(ナホサム)として」
「体に瘢の跡無く由(ナヲシ)脹壊せ未」(※最後の「未」は「ず」と読むのかも)
など、いろいろな「なおる・なおす」がでています。「直」ばかりでなく。
『大漢和辭典』凡例:字義の解說は先づ訓義を簡單にゴシック體で示し、更に明朝體を用ひて細說した。
・治:をさめる(ゴシック)。その下分類チ.なほす。療治する。(以上、明朝体)
さて、『大漢和辭典』の字訓索引を引くと、「なおる」という項目がありません。
「なおす」はたった一字だけで、今まで一度もお目にかかったことのない漢字です。
なぜなのでしょう。
『古漢語常用字字典』は,現代中国の人が,古漢語を読むときに手軽に用いる,まあまあ信用に足る工具書であるとして:
返信削除①治理,管理。
②治理得好,太平。
③治所。
この①に,(又)として,「處理其他事情」として,「慾處」、「醫治」、「研究」などの義が有り,「治罪」、「治病」、「治學」などと用いられる,とある。
これと上に菉竹さんが書いてくれた内容を考え合わせると,漢字「治」には,「元の状態にする、元どおりにする;元どおりになる、回復する」なんぞという意味は無いんじゃないか。
「管理して悪化しないようにする」……だけ?!
漢和辞典を引いて,ああこれこれ,とやるのは拙いんじゃ無いか。どうしたって,中国人と日本人の思うこと,古代人と現代人が考えることは,鶍の嘴。鶍にしてみれば,くいちがったって,ついばむに支障は無い,のかも知れないけど。
妙なところまで来ちゃったけど、「治」というのは管理する、処理するであって、回復させるとはやや違う、ということですか。
削除そうなると、例えば癌を「治」することを目標とする医学と、無かったことにしたい医学とは違う、ということになりませんか。
『大漢和字典』の字訓索引で,「なおす」を引くと出てくる字というのは,どんな形ですか。
返信削除『大漢和辭典』4卷609頁(麻垂れに凡)
返信削除��
U+2A392
部首:麻+ 3筆 = 共14筆.
康熙字典: 頁1515第03 漢語大字典: 卷7頁4723第04
左上:广,右下:梵。
國語發音:shuò ㄕㄨㄛˋ
《康熙字典·麻部·三》��:《篇韻》尸灼切,音爍。治病也。
《字彙》尸灼切,音爍。治病。
http://ctext.org/dictionary.pl?if=gb&char=%F0%AA%8E%92
何だか得体の知れない字ですね。
削除『康煕字典』にも『漢語大字典』にも用例は無いみたい。
そもそも,麻に凡なのに,音爍なんて。
療の『説文解字』における本字は𤻲。
『集韻』によれば,𤻲にはリョウの他に式灼切も有るらしい。
ここらが関係しているとは思うんだが。