鍼灸抜萃大成序
人爲血氣之屬也經絡爲營
衛之街也孔穴爲邪正之府
也醫者明此可以鍼可以灸
若內經斤斤問答亦然乎向
ウラ
雖繡梓鍼灸抜萃布行于世
然尚多缺略謬誤讀者患焉
故今剞劂氏刊之大成㪅補
其略校其誤特從鈐圖簡𠊳
而欲使初學者易通曉於是
二オモテ
乎余嘉其僃而遂弁一言於
其首云爾
旹元祿十一龍集戊寅仲冬丙子
岡本一抱涉筆於洛下攝生堂
【訓み下し】
鍼灸抜萃大成序
人は血氣の屬爲(た)り。經絡は營衛の街爲り。孔穴は邪正の府爲り。醫者 此れを明らかにして、以て鍼す可く以て灸す可し。內經斤斤たる問答の若きも亦た然り。向(さき)に
ウラ
鍼灸抜萃を繡梓して世に布行すと雖も、然れども尚お缺略謬誤多く、讀者 焉(これ)を患(うれ)う。故に今ま剞劂氏 之が大成を刊(けず)り、更に其の略を補し、其の誤りを校(かんが)え、特に鈐圖簡便に從って、初學者をして通曉し易からしめんと欲す。是に於いてか、
二オモテ
余 其の備なるを嘉(よみ)して、遂に一言を其の首に弁(こうむ)らしむと爾(しか)云う。
旹元祿十一龍集戊寅仲冬丙子
岡本一抱 筆を洛下の攝生堂に涉す
【注釋】
鍼灸抜萃大成序
人爲血氣之屬也、經絡爲營衛之 ○街:十字路。経路。 ○也、孔穴爲邪正之 ○府:くら。倉庫。 ○也、醫者明此、可以鍼可以灸、若内經 ○斤斤:明察なる。明らかな。一つ一つ細かいことにこだわる。 ○問答亦然乎、向
ウラ
雖 ○繡梓:(精巧に)出版する。 ○鍼灸抜萃:『日本漢方典籍辞典』:著者未詳の針灸医学書。全三巻、五冊(上、中之上、中之中、中之下、下からなる)。美濃判。延宝四(一六七六)年紀(き)伊(の)国(くに)屋(や)半(はん)兵(べ)衛(え)刊。末尾に写刻体で「右針灸之穴、雖有数多、日々用而在験穴而己、歌之誠愚慮、依短才所記、後学之者加添削而己」とある。本文は和文で平易に針灸の術を説く。著者は無(む)分(ぶん)(御(み)薗(その))の末流であると書かれているが、人物は特定できない。貞享二(一六八五)年岡(おか)田(だ)三(さぶ)郎(ろう)右(え)衛門(もん)刊の異版もある。さらに元禄九(一六九六)年刊の『合(ごう)類(るい)針(しん)灸(きゆう)抜(ばつ)粋(すい)』と題する縦型袖珍本(五巻三冊本、異版も存在する)や、同年刊の『(合類)広(こう)益(えき)針(しん)灸(きゆう)抜(ばつ)粋(すい)』と題する横型袖珍本(李遷校、不分巻一冊本)などもあり、針灸入門書として当時一般に広く流布した。『針(しん)灸(きゆう)重(ちよう)宝(ほう)記(き)』と内容的に密接な関係にある。 ○布行于世、然尚多 ○缺略:欠けているもの。 ○謬誤、讀者 ○患:憂慮する。心配する。 ○焉、故今 ○剞劂氏:出版業者。彫師。「剞劂」は雕刻刀。 ○刊:(削って)修正・改正する。 ○之大成 ○㪅:「更」の異体字。 ○補
其略校其誤、特從 ○鈐:印。判。 ○圖簡 ○𠊳:「便」の異体字。 ○而欲使初學者易通曉 ○於是乎:「於是」におなじ。
二オモテ
余 ○嘉:賛美する。 ○其 ○僃:「備」の異体字。完備している。何でもそろっている。 ○而遂 ○弁:前・上に置く。 ○一言於其 ○首:あたま。はじめ。最初。 ○云爾:語末の助詞。かくのごとし。 ○旹:「時」の異体字。 ○元祿十一 ○龍集:歳次。 ○戊寅:一六九八年。 ○仲冬:旧暦の十一月。 ○丙子:六日。 ○ 岡本一抱 ○涉筆:筆を動かす。 ○於 ○洛下:京都。 ○攝生堂
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