2019年11月14日木曜日

医学古典文献電子書斎術(3)

2) 京都大学

京都大学貴重資料デジタルアーカイブ(富士川文庫、近衛文庫、その他)
●富士川文庫

説明は以下をお読み下さい。

はじめに、富士川游(ふじかわ ゆう=1865~1940)先生の略歴を簡単にご紹介致します。
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広島県生まれ。
広島医学校卒。
ドイツ留学後、日本医学史の研究、史料の収集に努めた。
代表作は『日本医学史』(明治37年)、『日本疾病史』(明治44年)。
これは国会図書館の近代デジタルライブラリーで見られます。

京都帝大、九州帝大、慶応大学医学部にて医学史を講義。
日本医史学会理事長。
医学史編集にあたり全国各地から集めた4,340余部、9,000余冊の集書は京都帝国大学に寄贈。
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富士川先生の蔵書は京都大学、慶応大学、東大、日大に分散されていますが、富士川文庫デジタル連携プロジェクト試行版Webサイトによれば、

<公開資料件数> 2019年4月現在
 京都大学:   4,711件
 慶應義塾大学: 782件(今後約700件を順次追加予定)
 東京大学:   172件

という膨大な資料が現在、閲覧できるわけです。
なおかつ公開資料は継続中で現在進行形です。

20年くらい前は京大・富士川文庫資料は100冊以上Web公開していましたが、多くは館内のみ閲覧可でWeb非公開。
外部の人はただ目録をながめているだけでした。
なぜこんなに閲覧可能になったのかというと、文科省のプロジェクトがあったからです。
実際はこのプロジェクトだけでこれだけの公開がなされたわけではありませんが、まず文科省のプロジェクトの概要を紹介致します。

〈日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画〉
「本計画は、人間文化研究機構国文学研究資料館が中心となって、国内外の大学等と連携し、歴史的典籍(奈良時代以降、江戸時代末までに日本人によって著述された書物)約30万点を画像データ化し既存の書誌情報データベースと統合して「日本語の歴史的典籍データベース」を作成し、さらに国際共同研究ネットワークを構築するものである。用いるデータベースは歴史的典籍の学術研究に関する我が国で最大唯一のデータベースとなる。また、研究分野は国文学のみならず人文科学全体、さらには自然科学系の諸分野に及ぶ。事業期間は、平成26 年度から平成35 年度の10 年間を予定している。」

という壮大な計画です。

ちなみに、京都大学図書館で検索するさいに、注意が一つあります。
漢字の旧字体、新字体が混在してデータベースができているので、新字体で検索して出てこなければ旧字体を使うと出てくることがあります。

例えば、夏井透玄著の『経脈図説』を探そうとして出てきません。
旧字体の『經脈圖説』ならば出てきます。
「霊枢」を「靈樞」「靈枢」「霊樞」で調べてみるなど、試みていくと検索してくれることがあります。

『霊枢』等も15件検索されますが、別に『靈樞』でしか探せない本が1件あります。

参考までに国会図書館の検索ではどうなるか試してみますと、『霊枢』でも『靈樞』でも同じように検索してくれます。
新字体・旧字体混在の『靈枢』でも同じ結果が得られます。
『内経』(日本のJISコード)でも『內經』(中国語コード)でも同じように検索してくれます。
サーバーの検索エンジンが新旧の字体を自動的に変換してくれるシステムに作ってあるからです。

京大・富士川のおすすめは多数ありますが、
内経研究では『霊枢講義』(Web書名では『黄帝内経霊枢 24巻首1巻』)(渋江抽斎)、

経脈経穴研究では『経脈図説』(夏井透玄) *經脈圖説で検索
鍼灸専門書は『鍼灸枢要』(山本玄通)がおすすめです。


参考までに前回の説明の続きをお話します。
新日本古典籍総合データベースhttps://kotenseki.nijl.ac.jp/)ですが「霊枢」で調べても、渋江抽斎の霊枢講義は出てきませんでしたが、京大富士川では出てきます。

また、逆に新日本古典籍総合データベース(https://kotenseki.nijl.ac.jp/)で「経脈図説」で調べてみると、經脈圖説でなくても検索してくれます。

ちなみに、オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』69巻、341冊のうち、149冊が富士川文庫資料です。

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