2024年3月4日月曜日

鍼灸溯洄集 38 卷中(5)痺症[附痛風]

   卷中・七ウラ(690頁)

(5)痺症[附痛風] /【訓】痺症[附(つけた)り:痛風]

痺論歧伯曰風寒濕之三氣雜至合而為痺。

  【訓み下し】

痺論に歧伯の曰わく,「風寒濕の三氣雜(まじ)わり至り合(がっ)して痺と為る」。

  【注釋】

 ○痺論:『素問』痺論(43)。 ○歧:「岐」の異体字。

 ◉『素問』痺論:「黃帝問曰:痺之安生。歧伯對曰:風寒濕三氣雜至,合而為痺也」。


○骨痺者足攣不能伸歩身僂不能直居

  【訓み下し】

○骨痺は,足攣し伸歩すること能わず,身僂(かが)まり,直(ただ)ちに居(い)ること能わず。

  【注釋】

 ◉『醫宗必讀』卷10・痹:「腎痹者,善脹,尻以代踵,脊以代頭」。[注:腎者胃之關,腎氣痹則陰邪乘胃,故善脹。尻以代踵,足攣不能伸也,脊以代頭,身僂不能直也,腎脈入跟中,上腨內,出膕內廉,貫脊屬腎。故為是病。]


○筋痺者夜臥則驚多飲小便數

  【訓み下し】

○筋痺は,夜臥(ふ)して(則ち)驚き,多く飲して小便數(さく)。

  【注釋】

 ○筋痺:病名。語出『素問』痹論。指以筋的症状為主的痹證。臨床表規為筋脈拘急,關節疼痛而難以伸張。因筋聚於關節,風寒濕,邪氣侵於筋所致。『素問』長刺節論:「病在筋,筋攣節痛,不可以行,名曰筋痹」。

 ◉『素問』痺論:「肝痺者,夜臥則驚,多飲數小便,上為引如懷」。


○脉痺者脉不通煩則心下皷暴上氣而喘嗌乾善噫

  【訓み下し】

○脈痺は,脈 通ぜず,煩する則(とき)は心下皷し,暴(にわ)かに上氣して喘し,嗌(のど)乾き善(この)んで噫(あい)す。

  【注釋】

 ○脉痺:病名。風寒濕邪阻滯血脈所致的痹症。出『素問』痹論。證見皮膚變色,皮毛枯萎,肌肉頑痹等。凡是指以血脈症状為主的痹證。臨床表現為有不規則的發熱,肌膚有灼熱感、疼痛、皮府或見紅斑,多因血虛,以寒濕邪留滯血脈所致。

 ◉『素問』痺論:「心痺者,脈不通,煩則心下鼓,暴上氣而喘,嗌乾善噫,厥氣上則恐」。 ○皷:「鼓」の異体字。 ○


○肌痺者四支解墯發咳嘔汁上爲大塞

  【訓み下し】

○肌痺は,四支(てあし)解墯し,咳(がい)を發し,嘔汁 上(のぼ)って大塞を爲す。

  【注釋】

 ○肌痺:病名。寒濕侵襲肌膚所致的痹症。又名著痹、濕痹。『素問』長刺節論:「病在肌膚,肌膚盡痛,名曰肌痹,傷於寒濕」。

 ◉『素問』痺論:「脾痺者,四支解墯,發欬嘔汁,上為大塞」。


○皮痺者煩滿喘而嘔桉後世醫正不考內經爲一哀哉

  【訓み下し】

○皮痺は,煩滿喘して嘔す。案ずるに後世の醫 正に『內經(だいきょう)』を考えず,一と爲す。哀しいかな。

  【注釋】

 ○皮痺:病名。指皮膚症状為主要特徵之痹證。出『素問』痹論。『張氏醫通』卷六:「皮痹者,即寒痹也。邪在皮毛,癮疹風瘡,搔之不痛,初起皮中如蟲行狀」。多因脾腎陽虛,衛不能外固,風寒濕邪乘虛郁留,經絡氣血痹阻,營衛失調而成。

 ○桉:「案」の異体字。また「按」に通ず。

 ◉『素問』痺論:「肺痺者,煩滿喘而嘔」。 


  卷中・八オモテ(691頁)

○痛風者血氣風濕痰火皆令作痛或當風取凉臥濕地雨汗濕衣蒸軆而成痛風

  【訓み下し】

○痛風は,血氣風濕痰火は,皆な痛みを作(な)さしむ。或いは風に當たる,凉を取り,濕地に臥(ふ)し,雨汗 衣を濕(うるお)し,軆(たい)を蒸(くん)じ,痛風と成る。

  【注釋】

 ○凉:「涼」の異体字。 ○軆:「体・體」の異体字。 

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「痛風者,遍身骨節走注疼痛也。謂之白虎歷節風,都是血氣、風濕、痰火,皆令作痛。或勞力,寒水相搏;或酒色醉臥,當風取凉;或臥卑濕之地;或雨、汗濕衣蒸體而成」。

 ◉『病名彙解』痛風:「遍身骨節走り注ぎ疼痛するなり。皆氣血風濕痰火のなす所なり。其はなはだしきものを白虎歷節風と云り」。

  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/170?ln=ja


○遍身壯熱骨節疼痛者風寒也

  【訓み下し】

○遍身壯熱,骨節疼痛は,風寒なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「遍身壯熱、骨節疼痛者,是風寒也」。


○遍身疼痛属濕痰

  【訓み下し】

○遍身疼痛は,濕痰に属す。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「遍身疼痛屬濕痰者,宜除濕化痰也」。


○遍身走痛日輕夜重者血虗也

  【訓み下し】

○遍身走痛して,日(ひる)輕く夜重きは,血虛なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「遍身走痛,日輕夜重者,是血虛也」。


○肢節腫痛者濕痛者皆火邪也

  【訓み下し】

○肢節腫痛は,濕痛は,皆な火邪なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「肢節腫痛者,腫是濕、痛是火也〔肢節腫れ痛む者,腫れは是れ濕にして,痛みは是れ火なり〕」。これを誤読したか?


○兩手疼痛痲痺者風痰也

  【訓み下し】

○兩手 疼痛・痲痺する者は,風痰なり。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷5・痛風:「兩手疼痛、麻痹者,是風痰也」。


○風痺臑肘攣手臂不得舉尺澤[肘中約紋上動脉中]陽輔[足外踝上四寸絕骨端三分]深刺

  【訓み下し】

○風痺,臑肘攣,手臂 舉ぐることを得ず,尺澤[肘中の約紋の上(かみ),動脈の中(うち)]・陽輔[足の外踝(とくるぶし)の上(かみ)四寸,絕骨(ようじほね)の端三分]深く刺す。

  【注釋】

 ○風痺:病名。以疼痛遊走不定為特徵痹證。見『靈樞』壽夭剛柔。又名行痹、筋痹。『素問』痹論:「風寒濕三氣雜至,合而為痹也。其風氣勝者為行痹」。『雜病證治準繩』:「風痹者,遊行上下,隨其虛邪與血氣相搏,聚於關節,筋脈弛縱而不收」。

 ○絕骨:人體部位名。在外踝直上三寸許的腓骨凹陷處。『靈樞』經脈:「膽足少陽之脈……直下抵絕骨之端。」腓骨在此突然陷下如盡,故名。/ようじほね:楊枝骨。

 ◉『鍼灸聚英』尺澤:「肘中約紋上動脉中……風痹,臑肘攣,手臂不得舉」。『銅人腧穴鍼灸圖經』にも同様の主治証あり。

 ◉『鍼灸聚英』陽輔:「(一名分肉)足外踝上四寸。輔骨前,絕骨端三分,去丘墟七寸」。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・痹厥:「風痹尺澤陽輔區」。

 ◉『神應經』諸風部・風痹:「天井 尺澤 少海 委中 陽輔」。


○痰痺灸鬲俞[七推下相去脊中各二寸]

○痰痺,鬲の俞に灸す[七推の下(しも),脊中(せなか)を相い去ること各二寸]。

  【注釋】

 ○痰痺:未詳。参考:痰瘀痹阻證,中醫病證名。是指平素體虛,外感痰邪,滯留肢體筋脈、關節、肌肉,經絡閉阻所表現出來的肌肉關節刺痛,固定不移,舌質紫暗或有瘀斑,舌苔白膩,脈弦澀一類病證。本病證見於痹證,相當於西醫病名風濕性關節炎、類風濕性關節炎、反應性關節炎、肌纖維炎、強直性脊柱炎、痛風、增生性骨關節炎。

 ○本書での背部膀胱経の中行(脊中)からの距離については,『鍼灸溯洄集』30(26)「同身量尺寸法」の(26の4)「背部橫寸法」を参照。また『神應經』折量法を参照。/背兪穴の読み方は,江戸時代においては,臓腑名のあとに「心ノ兪」のように,「の」を入れることが多い。

 ◉『類經圖翼』膈俞:「在第七椎下,去脊中二寸,正坐取之」。

 ◉『神應經』穴法圖:「膈俞 在第七椎下,兩旁各二寸」。

 ◉『神應經』痺厥部:「積癖痰痺:膈俞」。

 ◉『鍼灸聚英』鬲俞:「七椎下,兩旁相去脊中一寸五分。正坐取之」。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・痺厥:「積癖痰痺治膈俞」。


○寒痺腰膝痛蹇膝不得轉側伸縮委中[膕中央約文動脉陷]曲池列缺環跳風市[穴處出中風]深刺

○寒痺,腰膝痛み蹇(な)え,膝 轉側伸縮することを得ず,委中[膕の中央(まんなか),約文(もん)動脈の陷]・曲池・列缺・環跳・風市[穴處出中風]深く刺す。

  【注釋】

 ○寒痺:寒痹,病名。一名痛痹、骨痹。指寒邪偏重的痹證。『靈樞』賊風:「嘗有所傷於濕氣,藏於血脈之中、分肉之間,久留而不去,若有所墮墜,惡血在內而不去,卒然喜怒不節,飲食不適,寒溫不時,腠理閉而不通;其開而遇風寒,則血氣凝結,與故邪相襲,則為寒痹」。『靈樞』壽夭剛柔:「寒痹之為病也,留而不去,時痛而皮不仁」。『證治準繩』雜病:「寒痹者,四肢攣痛,關節浮腫」。

 ○蹇:跛腳、行動不便。遲鈍、不流利。あしなえ。/「蹇」字:実際は「足」の部分を「豆」と書いている。「足」は「𠯁」のようにも書かれたので,「𠯁」を「豆」に書き誤ったか。

 ◉『鍼灸聚英』委中:「(一名血郄)○膕中央約文動脉陷中。令人面挺伏地臥取之」。

 ◉『鍼灸聚英』環跳:「……半身不遂,腰膝痛蹇,膝不得轉側伸縮」。

 ◉『神應經』痺厥部:「身寒痺:曲池 列缺 環跳 風市 委中 商丘 中封 臨泣」。


  卷中・八ウラ(692頁)

○脚膝痠痛曲泉[膝股上內側輔骨下陷中屈膝橫文頭取之]三里[膝下三寸䯒骨外廉舉足取之]陽陵泉[膝下一寸䯒骨外廉陷中蹲居取之]委中[穴處出上]深刺宜久留膝胻股腫解谿[冲陽後一寸五分腕上陷]委中三里陽輔[穴處出之]淺刺

  【訓み下し】

○脚(あし)膝痠(しび)れ痛むに,曲泉[膝股(しつこ)の上(かみ)內側輔骨の下(しも)の陷(くぼ)み中,膝を屈(かが)め,橫文(おうもん)頭(かしら)に之を取る]・三里[膝の下(しも)三寸,䯒骨(はぎほね)の外廉(そとかど),足を舉げ之を取る]・陽陵泉[膝の下(しも)一寸,䯒骨(わきほね)の外廉(そとかど)の陷中,蹲居して之を取る]・委中[穴處 上に出づ]深く刺す。久しく留むるに宜し。膝胻(はび)股(もも)腫るるに解谿[冲陽(しょうよう)の後(しりえ)一寸五分,腕上の陷]・委中・三里・陽輔[穴處 之〔上〕に出づ]淺く刺す。

  【注釋】

 ○䯒骨:添え仮名「ワキホネ」。卷中21ウラ(718頁)は「ハキホネ」=はぎ(脛)ほね。「䯒」が「骹」の異体字であれば,脛骨近腳處較細的部分,亦指腳。「胻」の異体字であれば,小腿。いずれにせよ,「ワキ」は「waki」ではなく「はぎ」と読むと思われる。

 ○痠痛:痛時且覺酸軟;又酸又痛。痠軟疼痛。也作「痠疼」。 

 ○[穴處出之]:「之」は「上」の誤りであろう。/

 ◉『神應經』手足腰腋部:「脚膝痛:委中 三里 曲泉 陽陵 風市 崑崙 解谿」。

 ◉『神應經』手足腰腋部:「膝胻股腫:委中 三里 陽輔 解谿 承山」。

 ◉『鍼灸聚英』曲泉:「膝股上內側,輔骨下,大筋上,小筋下陷中。屈膝橫文頭取之。……膝關痛。筋攣不可屈伸。……䯒腫。膝脛冷疼」。

 ◉『鍼灸聚英』三里:「膝下三寸,䯒骨外廉大筋內宛宛中,兩筋肉分間,舉足取之。極重按之,則趺上動脈止矣。又云:犢鼻下三寸。……膝䯒痠痛……膝痿寒熱」。

 ◉『鍼灸聚英』陽陵泉:「膝下一寸,䯒外廉陷中。蹲坐取之」。「居」に作る鍼灸書,見当たらず。意味は「蹲踞〔しゃがむ〕」で,あろう。 


○脚胻痲木者環跳風市[穴處出上]深刺

  【訓み下し】

○脚(あし)胻(はぎ)痲木(まもく)は,環跳・風市(ふうじ)[穴處 上に出づ]深く刺す。

  【注釋】

 ○痲木:「麻木」におなじ。『病名彙解』麻木:「しびるることなり……」。以下,原文を参照。  https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100232367/211?ln=ja

 ◉『神應經』手足腰腋部:「風痺,脚胻麻木:環跳 風市」。


○周痺吐食肝俞[九推下相去脊中各二寸]膽俞[十推下去脊中各二寸]腎俞[十四推下去脊中各二寸]灸之

  【訓み下し】

○周痺吐食は肝の俞[九の推〔椎〕の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]・膽の俞[十の推〔椎〕の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]・腎の俞[十四の推〔椎〕の下(しも),脊中を相い去ること各二寸]之を灸す。

  【注釋】

 ○周痺:周痹是病名。痹證之及於全身者。為風寒濕邪乘虛侵入血脈、肌肉所致。『靈樞』周痹:「周痹者,在於血脈之中,隨脈以上,隨脈以下,不能左右,各當其所」。「此內不在臟,而外未發於皮,獨居分肉之間,真氣不能周,故命曰周痹」。『醫學正傳』卷五:「因氣虛而風寒濕三氣乘之,故周身掣痛麻木並作者,古方謂之周痹」。證見周身疼痛,上下遊行,或沈重麻木,項背拘急,脈濡澀等。

 ◉『神應經』穴法圖:「肝俞 在第九椎下,兩旁各二寸。腎俞 在第十四椎下,與臍平,兩旁各二寸」。『神應經』には,膽俞はみえない。

 ◉『鍼灸聚英』鬲俞:「主心痛周痺,吐食翻胃」。

2024年2月29日木曜日

鍼灸溯洄集 37 卷中 治法(4)中風

   卷中・五ウラ(686頁)

  治法 /【訓】治法(ぢほう)

(4)中風  /【訓】中風(ちゅうぶう)

中風者有真中有類中之分真中外來風邪乘虛

而入凢口開手撒眼合遺尿吐沫直視喉鼾睡而

    卷中・六オモテ

面赤如粧汗綴如珠痰喘作聲必死也

  【訓み下し】

中風は,真中有り,類中の分かち有り。真中は外來(げらい)の風邪 虛に乘じて入る。凡そ口開き,手撒(ひろ)がり,眼(まなこ)合わせ,遺尿し,沫(あわ)を吐き,直視(ぢきし)し,喉鼾睡して,面(おもて)赤く粧(よそお)うが如く,汗綴(つづ)いて珠(たま)の如し,痰喘 聲を作(な)すは,必ず死す。

  【注釋】

 ○岡本一抱『(万病回春)病因指南』

  https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000707

  中風:12/247コマ目  類中風:18/247コマ目

 ○凢:「凡」の異体字。 ○撒:放開、散放。 ○合:關閉、合攏。 ○遺尿:一種不自主的排尿現象。岡本一抱『万病回春指南』(以下,『指南』)卷2・病名彙攷:「遺尿:遺溺とも云。小便自(おのづから)出て覚(おぼえ)ざる也。遺尿失禁と云も同事也」。 ○吐沫:吐出白沫。 〇直視:指患者在神志不清的情況下,兩眼向前凝視,目睛無神的症状。常與其他腦神經症同時發生。多由肝風內動所致。見於中風、驚風、癲癇等病。 ○喉:『萬病回春』『醫學正傳』によれば,この下「如」字を脱す。 ○鼾睡:いびきをかいて眠ること。[sound,snoring sleep] 熟睡時發出鼾聲。/喉(のど) 鼾睡するが如し。 ○粧:「妝」の異体字。婦女用脂粉修飾容貌。/『指南』面赤如粧:「顏色赤光だちて,女のけさうせる皃の如し。多くは陰虚の熱に因る」。 ○綴:連結。如:「連綴」。 

 ◉龔廷賢『萬病回春』(1588年刊)卷2・中風・真中風證:「中風者,有真中風、有類中風之分。真中風者……腠理不密,風邪乘虛而入」。

 ◉『萬病回春』卷2・中風:「凡口開手撒、眼合遺尿、吐沫直視、喉如鼾睡、肉脫筋骨痛、發直、搖頭上攛、面赤如粧、汗綴如珠、痰喘作聲,皆不治也」。

 ◉虞摶(1438~1517)『醫學正傳』卷1・中風・方法:「凡中風,口開手撒,眼合遺尿,吐沫直視,喉如鼾睡,肉脫筋痛髮直,搖頭上竄,面赤如狂,汗綴如硃,皆為中風不治之證也」。


〇類中者七情因風濕痰火也

  【訓み下し】

〇類中は,七情に風濕痰火に因る。

  【注釋】 

 ◉『醫學正傳』卷1・醫學或問・中風・論:「盡因風濕痰火挾虛而作」。

 ◉『萬病回春』卷2・類中風:「類中風者,則常有之。有中寒、中暑、中濕、中火、中氣、食厥、勞傷、房勞、痰厥、血暈、中惡卒死等症,皆類中風者甚多」。


○初痲木疼痛風濕也

  【訓み下し】

○初め痲木疼痛は,風濕なり。

  【注釋】

 ○痲木:失去感覺。/痲:知覺喪失或變得遲鈍。通「麻」。 

 ◉『萬病回春』卷2・中風:「初中風邪,麻木疼痛者,風濕氣也」。


○右半身不遂手足癱瘓者属氣虛與痰也

  【訓み下し】

○右半身遂(かな)わず,手足癱瘓は氣虛と痰とに屬す。

  【注釋】

 ○半身不遂:身體一側麻痺癱瘓失去自主的能力,多屬中風或脊椎受損的後遺症。也稱為「偏廢不仁」、「偏風」、「偏癱」、「偏枯」。/偏癱又叫半身不遂,是指一側上下肢、面肌和舌肌下部的運動障礙,它是急性腦血管病的一個常見症状。輕度偏癱病人雖然尚能活動,但走起路來,往往上肢屈曲,下肢伸直,癱瘓的下肢走一步劃半個圈,我們把這種特殊的走路姿勢,叫做偏癱步態。嚴重者常臥床不起,喪失生活能力。 ○癱瘓:たんかん。「病むさま」の場合は「タんタん」と双聲でよむ〔『漢辞海』第4版〕。添え仮名は「ナンクハン」。神經機能發生障礙,肢體麻痺、不能行動的病症。也稱為「風癱」。/癱瘓,病證名。又名癱瘓風。見『外台秘要』卷十四。指肢體痿弱不用的病證。 ○痰:『萬病回春』によれば「濕痰」。 

 ◉『萬病回春』卷2・中風・加減潤燥湯:「右半身不遂、手足癱瘓者,屬氣虛與濕痰也」。


○手足癱瘓口喎語澁属血虛而火盛也

  【訓み下し】

○手足癱瘓,口喎(ゆが)み語澁るは,血虛と火盛とに屬す。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・中風・加味大補湯:「中風手足癱瘓、口喎語澀等症,屬血虛而火盛者,宜清補也(宜後方)」。/「血虛して火盛なるに屬す」と訓むべきであろう。


○手足癱瘓舌強蹇言属虛熱也

  【訓み下し】

○手足癱瘓,舌強ばり蹇言は虛熱に屬す。

  【注釋】

 ○蹇:遲鈍、不流利。北周・庾信『謝滕王集序啟』:「言辭蹇吃,更甚揚雄」。「謇」(口吃、說話不順利)に通ず。どもる。発音がなめらかでないさま。 

 ◉『萬病回春』卷2・中風・奪命還真丹:「中風手足癱瘓、舌強言蹇等症,屬虛熱者,宜滋補也(宜後方)」。


○手足癱瘓半身痿弱不能動属虛寒也

  【訓み下し】

○手足癱瘓,半身痿弱,動くこと能わざるは,虛寒に屬す。

  【注釋】

 ◉『萬病回春』卷2・中風・健步虎潛丸:「中風手足癱瘓、半身痿弱不能動履等症,屬虛寒者,宜溫補也」。


○半身不遂患偏風肩髃[肩端上兩骨之間擧臂取之]曲池[肘橫紋頭]列缺[去腕上側一寸五分]三里[曲下二寸]合谷[手大指次指歧骨間陷中]陽陵泉[膝下一寸外廉兩骨]淺刺

  【訓み下し】

○半身遂(かな)わず,偏風を患(うれ)う。肩髃[肩端(けんたん)の上(かみ),兩骨の間(あいだ),臂(ひじ)を擧げて之を取る]曲池[肘(うで)の橫紋の頭(かしら)]列缺[腕(わん)を去る上(かみ)の側(かたわら)一寸五分]三里[曲下二寸]合谷[手の大指(ゆび)の次の指の歧(ちまた)骨の間の陷中]陽陵泉[膝下(しっか)一寸外廉兩骨]淺く刺す。

  【注釋】

★経穴の位置について:以下,同一穴でも説明が一定していない。省略した表現が多い。

 ○列缺[去腕上側一寸五分]:『鍼灸聚英』列缺:「去腕側上一寸五分」。

 ○三里[曲下二寸]:『鍼灸聚英』(手)三里:「曲池下二寸」。以下「曲下」という記載多し。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・風:「半身不遂患偏風。肩髃曲池列缺同。陽陵泉兮手三里。合谷……」。

 ★『鍼灸聚英』雜病歌は,『神應經』をもとにして作られている。


○右瘓左合谷三里陽谷[手腕外側兌骨下陷]陽輔[外踝上四寸]崑崙[外踝後跟骨上]目載上刺絲竹空[眉骨後陷]

  【訓み下し】

○右瘓に左の合谷・三里・陽谷[手の腕(わん)の外の側(かたわら),兌骨の下(しも)の陷]陽輔[外踝の上(かみ)四寸]崑崙[外踝の後(あと),跟骨(きびすほね)の上(かみ)]目(め)載(たい)〔戴〕上 絲竹空[眉の骨の後ろの陷]を刺す。

  【注釋】

 ○載:添え仮名によれば,「戴」の誤字。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・風:「左癱右瘓曲池先,陽谷合谷及中渚,三里陽輔崑崙痊……目戴上治絲竹空」。


  卷中・六ウラ(688頁)

○脊反折風府[腦戸下一寸半]瘂門[頂入髮際五分陷中]深刺

  【訓み下し】

○脊(せなか)反折に風府[腦戸下一寸半]瘂門[頂(うなじ)(項)の髮の際(はえぎわ)に入る五分の陷中]深く刺す。

  【注釋】

★原文には○なし。補った。

 ○頂:本書では「項」が多く「頂」字で表記されている。また,逆もあり。 

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・風:「脊反折兮治風府。並治瘂門真有補」。


    桉經曰春夏刺淺秋冬刺深肥人刺深

瘦人刺淺肌肉淺薄窌穴刺淺艾少肌肉深厚窌

穴刺深艾多又春與夏不同秋與冬不同肥瘦有

適中者有太肥而壅腫者有太瘦而骨立者以意

消息不可犱一論也今爰曰淺五分以下曰深五

分以上也後倣之

  【訓み下し】

案ずるに,「經に曰わく,〈春夏は刺(し)淺し,秋冬は刺深し。肥人(にん)刺深く,瘦人(にん)刺淺し〉。肌肉淺薄(ばく)の窌穴は刺淺く艾(がい)も少なし。肌肉深厚の窌穴は刺深く艾も多し。又た春と夏と同じからず,秋と冬と同じからず。肥瘦 適中の者有り,太(はなは)だ肥えて壅腫の者有り,太だ瘦せて骨立つ者有り。意〔こころ?/こう?〕を以て消息して,一(いつ)を執(と)って論ず可からず」。今ま爰(ここ)に淺しと曰うは五分以下,深しと曰うは五分以上なり。後ち之に倣え。

  【注釋】

 ○桉:同「案」。考查、察辦。通「按」。 ○經曰:『鍼灸聚英』巻1・手太陰肺經の末:「經曰:〈春夏刺淺, 秋冬刺深,肥人刺深,瘦人刺淺〉。故在春夏與瘦人,當從淺刺,秋冬與肥人。 當從深刺,又曰:〈陷下則灸之〉。陷下不甚者,灸當從少,陷下甚者,灸當從多, 又寒涼之月,火氣衰,灸當從多,溫暑之月,火氣旺,灸當從少,又肌肉淺薄窌穴,刺淺艾少,肌肉深厚窌穴,刺深艾多,又春與夏不同,秋與冬不同,肥瘦有適中者,有過壅腫者,有太瘦而骨立者,以意消息,不可執一論也。又大人與小兒,刺淺深,艾多少不同,又人頭面及小兒宜毫鍼,艾炷如小麥也」。 ○春夏刺淺秋冬刺深:『難經』七十難曰:「經言春夏刺淺,秋冬刺深者,何謂也?然:春夏者,陽氣在上,人氣亦在上,故當淺取之;秋冬者,陽氣在下,人氣亦在下,故當深取之」。 ○肥人刺深瘦人刺淺:『靈樞』終始:「春氣在毛,夏氣在皮膚,秋氣在分肉,冬氣在筋骨。刺此病者,各以其時為齊。故刺肥人者,(以)秋冬之齊,刺瘦人者,以春夏之齊」。 ○窌穴:泛指穴位。『鍼灸聚英』凡例:「此書以經絡窌穴類聚為一卷」。 ○有適中者:訓点にしたえば「適中有り者」となるが,後文および和刻本『鍼灸聚英』にしたがい,改めた。 ○壅腫:因血管堵塞等原因而引起的腫脹。漢 董仲舒『春秋繁露‧五行順逆』:「則民病血壅腫,目不明」。【臃腫】毒瘡。『戰國策』韓策三:「人之所以善扁鵲者,為有臃腫也」。【癰腫】膿瘡。即惡性腫毒。漢・王充『論衡』感虛:「夫山崩壅河,猶人之有癰腫,血脈不流也」。 ○骨立:形容身體非常瘦弱。 ○意:意思。見解、看法。添え仮名は「コヽワ」に見える。「コウ」か「ココロ」か。 ○消息:消長,增減;盛衰。變化。斟酌。 ○犱一:【執一】固執一端,不知權變。/犱:「執」の異体字。○


○口眼喎斜太淵[掌後陷中]列缺申脉[外踝下五分陷]二間[食指本節前內側陷]內庭[足大指次指外間陷]行間[足大指縫間動脉應手陷]淺刺

  【訓み下し】

○口眼喎斜に太淵[掌(じょう)後の陷中]・列缺・申脈[外踝の下(しも)五分の陷]・二間[食指の本節(もとふし)前(まえ)內側(そく)の陷]・內庭[足の大指(ゆび)の次の指の外間(かん)の陷]・行間[足の大指(ゆび)の縫(ぬいめ)の間(あいだ),動脈 手に應ず,陷]淺く刺す。

  【注釋】

★列缺に位置情報なし。おそらく既出のため,省略。

 ◉『鍼灸聚英』卷8・雜病・風:「口眼喎斜治太淵,列缺申脈與二間,內庭行間地五等,水溝頰車合谷連,復有通谷不可失,十一穴治病即痊」。  ◉『神應經』諸風部:「口眼喎:列缺 太淵 二間 申脈 內庭 行間 通谷 地倉 水溝 頰車 合谷」。


○口噤不可開失音牙關頷頰腫頰車[耳下曲頷端近前陷開口有空]承漿[唇稜下陷開口取之]合谷淺刺

  【訓み下し】

○口噤,開く可からず,失音(しついん),牙關(げかん),頷頰腫れるに,頰車[耳の下,曲頷の端(はし),前に近き陷(くぼみ),口を開(ひら)けば空(あな)有り]・承漿[唇の稜下(とがりした)の陷,口を開いて之を取る]・合谷,淺く刺す。

  【注釋】

 ○失音:由於喉部肌肉或聲帶發生病變所引起嗓音低弱、喑啞的病症。/聲音嘶啞或不能發聲,古稱喑。須辨外感、內傷、得病新久,證之虛實寒熱。『諸病源候論』風病諸候:「皆由風邪所傷,故謂風失音不語」。 ○牙關:上下牙齒咬合的部分。 ○頷:下巴。あご。 ○頰腫頰車[耳下曲頷端近前陷:『鍼灸聚英』卷1・足陽明經穴にこの下「中」字あり。経穴の位置については,省略された説明が多い。以下,基本的に指摘しない。

 ◉『鍼灸聚英』雜病・風:「凡人口噤不可開,頰車承漿合谷該」。


  卷中・七オモテ(689頁)

○手足不舉痛麻拘攣連眼腫赤痛頭旋臨泣[足小指次指本節後間陷]淺刺久留功

  【訓み下し】

○手足舉がらず,痛み麻(しび)れ,拘攣 眼に連なり,腫れ赤く痛む,頭旋(づせん)に臨泣[足の小指の次の指の本節(もとふし)の後ろの間,陷(くぼみ)]淺く刺す。久しく留めて功(しるし)あり。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』八法八穴歌:「手足中風不舉,痛麻發熱拘攣,頭風痛腫項腮連,眼腫赤痛頭旋,齒痛耳聾咽腫,浮風搔癢筋牽,腿疼脇脹肋肢偏,臨泣鍼時有驗」。


○主血虛氣虛火與濕痰風市[膝上外廉兩筋中]風池[耳後髮際陷中按之引於耳中]環跳[髀樞後宛宛中]深刺神闕[臍中]百會[頂中央旋毛中可容豆直兩耳尖]曲池肩髃可灸刺

  【訓み下し】

○血虛・氣虛と火と濕痰と主る。風市[膝の上(かみ)外廉(そとかど)兩筋の中(うち)]・風池[耳の後(しりえ)の髮際の陷中。之を按(お)せば耳の中(なか)に引く]・環跳[髀樞の後(しりえ),宛宛たる中(なか)]。深く刺す。神闕[臍の中(なか)]・百會[頂きの中央(まんなか),旋毛(つぢけ)の中(なか),豆を容る可し。直ちに兩の耳の尖り]曲池・肩髃,灸刺す可し。

  【注釋】

 ★「風市」に「フウチ」と添え仮名あり。「風池」の影響か。

 ◉『鍼灸聚英』治例・雜病・風:「大率主血虛氣虛,火與濕,多痰。中風,神闕、風池、百會、曲池、翳風、風市、環跳、肩髃,皆可灸之,以鑿竅疏風。又鍼以道氣」。


○偏風口喎目不得閉失音不語飲水不收水漿漏地倉[夾口吻旁四分]大迎[曲頷前一寸三分骨陷中]翳風[耳後尖角陷中按之引耳中痛]淺刺

  【訓み下し】

○偏風口喎,目 閉づるを得ず,失音(しついん)語らず,飲水收めず,水漿漏れるに,地倉[口吻を夾(さしはさ)み旁ら四分]・大迎[曲頷の前一寸三分,骨の陷中]・翳風[耳後(にご)尖角の陷中,之を按す,耳中(にちゅう)に引いて痛む]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』地倉:「……主偏風口喎,目不得閉,脚腫,失音不語,飲水不收,水漿漏落,眼瞤動不止,瞳子癢。遠視䀮䀮,昏夜無見……」。

 ◉『鍼灸聚英』大迎:曲頷前一寸三分骨陷中動脈。又以口下當兩肩是穴。……主風痙口瘖瘂,口噤不開,唇吻瞤動,頰腫牙疼,寒熱,頸痛瘰癧,舌強舌緩不收,不能言,目痛不得閉。

 ◉『鍼灸聚英』翳風:「耳後尖角陷中,按之引耳中痛。……主耳鳴耳聾,口眼喎斜,脫頷頰腫,口噤不開,不能言,口吃,牙車急,小兒喜欠」。


○肘不能屈中渚[手小指次指本節後間陷]腕骨[手外側腕前起骨下]淺刺

  【訓み下し】

○肘(うで)屈(かが)むこと能わず。中渚[手の小指次の指本節(もとふし)の後ろの間陷(くぼみ)]・腕骨[手の外の側(かたわら),腕前(わんぜん)起骨の下(しも)]淺く刺す。

  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』中渚:「手小指次指本節後間陷中,在腋門下一寸。……主:……肘臂痛,手五指不得屈伸」。

 ◉『鍼灸聚英』雜病歌・風:「肘不能屈治腕骨」。


○偏腫內關[掌後去腕二寸兩筋間]冲陽[足跗上五寸]深刺

  【訓み下し】

○偏腫。內關[掌後,腕を去る二寸,兩筋の間]・冲陽(しょうよう)[足の跗(こう)の上(かみ)五寸]深く刺す。

  【注釋】

 ○偏腫:『神應經』諸風部:「偏腫:列缺・冲陽。身体反折:肝兪。中風肘攣:內關」。

 ○冲陽:衝陽。


  卷中・七ウラ(690頁)

○中風瘖瘂支溝[腕後臂外三寸兩骨間陷]間使[掌後三寸兩筋間陷]靈道[掌後一寸五分]隂谷[膝下內輔骨後]口噤不開頰車[耳下曲頷端近前陷中開口有空]承漿[唇稜下陷中]合谷深刺

  【訓み下し】

○中風(ちゅうふ),瘖瘂。支溝(しごう)[腕(わん)の後ろ,臂(ひじ)の外(ほか)三寸,兩骨の間の陷]・間使[掌後三寸兩筋の間の陷]靈道[掌後一寸五分]・隂谷[膝の下(しも),內輔骨の後ろ]。口噤(つぐ)み開かず。頰車[耳の下(しも),曲頷の端(はし),前に近き陷中,口を開けば空(あな)有り]・承漿[唇稜の下(しも),陷中]合谷,深く刺す。

  【注釋】

 ◉『神應經』諸風部:「瘖瘂:支溝 間使 合谷 魚際 靈道 隂谷 復溜 然谷 通谷。口噤不開:頰車 承醬(ママ) 合谷」。

2024年2月24日土曜日

鍼灸溯洄集 36 卷中(3)井滎俞經合穴

   卷中・三ウラ(682頁)

(3)井榮(ゑい)俞經合穴

 【注釋】「榮(ゑい)」:古くから通行した表記ではあるが,意味からすれば「滎」とすべきもの。『說文解字』滎:「絕小水也」。『說文解字注』:「絕小水者,極小水也」。音は「ケイ」。「エイ」の音もあるが,河川名。


井[所出]。/【訓】[出づる所]。 榮(ゑい)[所流]。/【訓】[流るる所]。 俞[所注]。/【訓】[注ぐ所]。 原[所過]。/【訓】[過(す)ぐる所]。

經[所行]。/【訓】[行く所]。 合[所入]。/【訓】[入(い)る所]。


手太隂肺少商井木[大指端內側去爪甲角]。 /【訓】手の太陰肺少商井木[大指の端(はし),內側(うちかたわら),爪の甲の角(かど)を去る]。 

魚際榮火[大指本節後陷]。 /【訓】魚際榮(ゑい)火[大指本節(もとふし)の後(あと)の陷]。

 【注釋】禁灸穴では,[大指の本節(せつ)の後(しりえ),內側(ないそく)の陷]に作る。「本節後」「內側」の訓は一定していない。

太淵俞土[掌後陷中]。 /【訓】太淵俞土[掌後の陷中]。

經渠經金[寸口陷中]。 /【訓】經渠經金[寸口の陷中]。

尺澤合水[肘中約文上動脉中]。 /【訓】尺澤合水[肘中(ちゅうちゅう)約文(やくもん)の上(かみ),動脈の中(なか)]。


手少隂心少衝井木[手少指內廉端去爪甲角]。 /【訓】手の少陰心少衝井木[手の少指の內廉の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。

 【注釋】「少指」:「小指」。以下,おなじ。 

少府榮火[少指本節後骨縫陷中]。 /【訓】少府榮火[少指本節(もとふし)の後(しりえ)の骨縫の陷中]。

  卷中・四オモテ (682頁)

神門俞土[掌後銳骨端之陷中]。 /【訓】神門俞土[掌後(じょうご)銳骨の端(はし)の陷中]。

靈道經金[掌後一寸五分]。 /【訓】靈道經金[掌後(じょうご)一寸五分]。

少海合水[肘內廉節後大骨外去肘端五分屈肘向頭得之]。 /【訓】少海合水[肘(ちゅう)の內廉,節後(せつご)大骨(こつ)の外(ほか),肘端を去ること五分,肘(ひじ)を屈(かしら)に頭(こう)に向かえ,之を得]。

 【注釋】[屈肘向頭]:「肘(ひじ)を屈(かが)め,頭(こうべ)に向かえ」か。本書では「肘」を「ひじ」だけでなく,以下の「曲澤」穴に見られるように「うで」と読むことが多い。


  卷中・四オモテ(683頁)

手厥隂心主中冲井木[手中指端去爪甲角]。 /【訓】手の厥陰(けついん)心主中冲井木[手の中指の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。 

 【注釋】「中冲」:「中衝」におなじ。/「冲」は,沖の異体字で,「衝」に通ず。

勞宮榮火[掌中央動脉]。 /【訓】勞宮榮火[掌(たなごころ)の中央,動脈]。

太陵俞土[掌后骨下兩筋間陷]。 /【訓】太陵俞土[掌后(じょうこ)骨の下(しも),兩筋の間(あいだ)の陷(くぼみ)]。

 【注釋】「太陵」:「大陵」におなじ。『鍼灸甲乙経』などに見える。

間使經金[掌後三寸兩筋間陷]。 /【訓】間使經金[掌後三寸,兩筋の間の陷]。

曲澤合水[肘內廉下陷屈肘得之]。 /【訓】曲澤合水[肘(ちゅう)の內廉の下(しも)の陷(くぼみ),肘(うで)を屈(かが)めて之を得]。


足大隂隱白井木[足大指端內側去爪甲角]。 /【訓】足の大陰隱白井木[足の大指の端(はし)內側,爪の甲の角(かど)を去る]。

 【注釋】「大隂」:「太陰」におなじ。

大都榮火[足大指本節後內側陷中]。 /【訓】大都榮火[足の大指の本節の後(しりえ),內側の陷中]。

大白俞土[足大指內側內踝前核骨下陷中]。 /【訓】大白俞土[足の大指の內側內踝の前,核骨の下(しも)の陷中]。

 【注釋】「大白」:「太白」におなじ。

商丘經金[足內踝骨下微前陷]。 /【訓】商丘經金[足の內踝の骨の下(しも),微(すこ)し前の陷(くぼみ)]。

隂陵泉合水[膝下內側輔骨下陷伸足取之]。 /【訓】陰陵泉合水[膝の下(しも),內側輔骨の下(しも)の陷,足を伸べ之を取る]。


足少隂腎湧泉井木[足心陷中]。 /【訓】足の少陰腎湧(ゆ)泉井木(せいぼく)[足心の陷中(くぼみ)]。

然谷榮金[足內踝前起大骨下陷中]。 /【訓】然谷榮金[足の內踝の前,起こる大骨の下(しも)の陷中]。

 【注釋】起大骨:舟状骨。「起こる」は,「隆起した」の意。

太谿俞土[足內踝後跟骨上動脉陷]。 /【訓】太谿(げい)俞土[足の內踝の後(しりえ),跟骨の上(かみ),動脈の陷]。

復溜經金[足內踝上二寸筋骨陷中]。 /【訓】復溜經金[足の內踝の上(かみ)二寸,筋骨の陷中]。

隂谷合水[膝下內輔骨後大筋下小筋上按之應手屈膝得之]。 /【訓】陰谷合水[膝の下(しも),內輔骨の後(しりえ),大筋の下(しも),小筋の上(かみ),之を按(お)して手に應ず,膝を屈(かが)めて之を得(う)]。

  卷中・四ウラ(684頁)

足厥隂肝大敦井木[足大指端去爪甲角]。 /【訓】足の厥陰(けついん)肝大敦井木(ぼく)[足の大指の端(はし),爪甲の角を去る]。

行間榮火[足大指縫間動脉應手陷]。 /【訓】行間榮火[足の大指の縫間,動脈 手に應ず。陷]。

大冲俞土[足大指本節後二寸]。 /【訓】大冲俞土[足の大指の本節の後(あと)二寸]。

 【注釋】「大冲」:太衝におなじ。/「冲」:「沖」の異体字で,「衝」におなじ。/「後」:「あと」「しりえ」の両読あり。

中封經金[足內踝骨前一寸筋裏陷]。 /【訓】中封經金[足の內踝の骨の前一寸,筋裏の陷]。

曲泉合水[膝股上內側輔骨下大筋上小筋下陷屈膝橫紋頭取之]。 /【訓】曲泉合水[膝股(しつこ)の上(かみ),內側輔骨の下(しも),大筋の上(かみ),小筋の下(しも)の陷,膝を屈(かが)めて橫紋の頭(かしら),之を取る]。


手陽明大腸商陽井金[手大指次指内側去爪甲角]。 /【訓】手の陽明大腸商陽井金[手の大指の次指内側,爪甲の角を去る]。

二間榮水[食指本節前內側陷]。 /【訓】二間榮水[食指の本節の前,內側の陷]。

三間俞木[食指本節後內側陷]。 /【訓】三間俞木[食指の本節の後(しりえ),內側の陷]。

合谷原[手大指次指歧骨間陷中]。 /【訓】合谷原(げん)[手の大指の次指歧骨の間の陷中]。

 【注釋】「歧」:「岐」の異体字。

陽谿經火[腕中上側兩筋間陷]。 /【訓】陽谿經火[腕(わん)中(ちゆう)上側,兩筋の間の陷]。

 【注釋】「陽谿」:「陽溪・陽渓」におなじ。/「腕」:前臂與手掌相連的關節部位。如:「手腕」、「扼腕」。てくび。また「腕」の添え仮名は「ハン」。「わん」と発音するのだろう。

曲池合土[肘外輔骨屈肘曲骨之中]。 /【訓】曲池合土[肘(うで)の外輔骨,肘を屈(かが)め曲骨の中(うち)]。


手太陽小腸少澤井金[手小指端外側去爪甲角]。 /【訓】手太陽小腸少澤井金[手の小指の端(はし),外側,爪甲の角を去る]。

前谷榮水[手小指外側本節前陷中]。 /【訓】前谷榮水[手の小指外側の本節の前,陷中]。

後谿俞木[手小指外側本節後陷中握拳取之]。 /【訓】後谿(こうけい)俞木(ぼく)[手の小指の外側,本節の後(しりえ)の陷中,拳(こぶし)を握り之を取る]。

腕骨原[手外側腕前起骨下陷中]。 /【訓】腕骨原[手の外側の腕(わん)の前,起こる骨の下(しも),陷中]。

陽谷經火[手外側腕中銳骨下陷中]。 /【訓】陽谷經火[手の外側,腕の中,銳骨の下(しも)の陷中]。

少海合土[肘內大骨外去肘端五分]。 /【訓】少海合土[肘(うで)の內(うち),大骨の外(ほか),肘端を去る五分]。

 【注釋】「少海」は,「小海」とすべきもの。『鍼灸聚英』の誤りを継承していると思われる。『鍼灸聚英』は太陽小腸経の「しょうかい」と少陰心経の「しょうかい」を,両方とも「少海」に作る。和刻本『鍼灸聚英』卷2・手太陽小腸經穴の「少海」穴,および卷4末の「五藏六府井滎俞原經合」の表を参照。


  卷中・五オモテ (685頁)

手小陽三焦關衝井金[手小指次指之端去爪甲角]。 /【訓】手の小(少)陽三焦關衝井金[手の小指次指の端,爪の甲の角を去る]。

 【注釋】「小陽」:「少陽」の誤り。

液門榮水[手小指次指間陷中握拳取之]。 /【訓】液門榮水[手の小指次指の間の陷中,拳(こぶし)を握り之を取る]。 

中渚俞水[手小指次指本節後間陷]。 /【訓】中渚俞水(ぼく)(木)[手の小指の次指本節の後(しりえ)の間の陷]。

 【注釋】「俞水」:「水」字に「ホク」の添え仮名(ぼく=木)。

陽池原[手表腕上陷中從指本節直摸下至腕中心]。 /【訓】陽池原[手の表(ほか),腕(わん)の上の陷中,指の本節(もとふし)從(よ)り直ちに摸(さぐ)り下って腕(わん)中の心(しん)に至る]。

支溝經火[腕後臂外三寸兩骨間陷]。 /【訓】支溝經火[腕後,臂(ひじ)の外(ほか)三寸,兩骨の間の陷]。

天井合土[肘外大骨後肘上一寸輔骨上兩筋叉骨𦉋中屈肘拱胸取之]。 /【訓】天井合土[肘の外(ほか),大骨の後(しりえ),肘(うで)の上(かみ)一寸,輔骨の上(かみ),兩筋叉骨の罅(すきま)の中(うち),肘(うで)を屈(かが)めて胸を拱(こまぬ)いて之を取る]。

 【注釋】

 ○「𦉋」:「罅」の異体字。裂縫;縫隙 [crack]。


足少陽膽竅隂井金[足小指次指之端去爪甲之角]。 /【訓】足の少陽膽竅陰井金[足の小指次指の端(はし),爪甲の角を去る]。

夾谿榮水[足小指次指歧骨間本節前陷]。 /【訓】夾谿榮水[足の小指次指の歧(ぎ)骨の間,本節(もとふし)前の陷]。

 【注釋】「夾谿」:「侠渓・俠溪・俠谿」におなじ。

臨泣俞木[足小指次指本節後間陷]。 /【訓】臨泣俞木[足の小指次指の本節(もとふし)の後(しりえ)の間の陷]。

丘墟原[足外踝下如前陷中]。 /【訓】丘墟原[足の外踝の下(しも),前に如(ゆ)く陷中]。

陽輔經火[足外踝上四寸輔骨前絶骨端]。 /【訓】陽輔經火[足の外踝の上(かみ)四寸,輔骨の前,絶骨の端(はし)]。

陽陵泉合土[膝下一寸䯒外廉陷中]。 /【訓】陽陵泉合土[膝下(しっか)一寸,䯒の外廉の陷中]。


足陽明胃厲兌井金[足大指次指之端去爪甲角]。 /【訓】足の陽明胃厲兌井金[足の大指次指の端(はし),爪甲の角を去る]。

內庭榮金[足大指次指外間陷]。 /【訓】內庭榮金[足の大指次指の外間(がいかん)の陷]。

陷谷俞木[足大指次指外間本節後陷中去內庭二寸]。 /【訓】陷谷俞木[足の大指次指の外間の本節(もとふし)後(しりえ)の陷中,內庭を去る二寸]。

  卷中・五ウラ(686頁)

衝陽原[足跗上五寸去陷谷三寸骨間動脉]。 /【訓】衝陽原[足の跗上五寸,陷谷去ること三寸,骨間動脈]。

觧谿經火[冲陽後一寸五分腕上陷]。 /【訓】解谿經火[冲陽の後(しりえ)一寸五分,腕上の陷]。 

 【注釋】「觧」:「解」の異体字。「冲」:「衝」の異体字。『鍼灸聚英』解谿:「衝陽後一寸五分,腕上陷中。足大指次指直上,跗上陷者宛宛中」。

三里合土[膝下三寸䯒骨外廉大筋內陷]。 /【訓】三里合土[膝下三寸,䯒骨の外廉,大筋の內(うち)陷]。

  卷中・五ウラ(686頁)

足大陽膀胱至隂井金[足小指外側去爪甲角]。 /【訓】足大(太)陽膀胱至陰井金[足の小指外側,爪甲の角を去る]。

 【注釋】「大陽」:「太陽」。

通谷榮水[足小指外側本節前陷中]。 /【訓】通谷榮水[足の小指の外側,本節(もとふし)の前の陷中]。

束骨俞木[足小指外側本節後赤白肉際陷中]。 /【訓】束骨(そくこつ)俞木[足の小指の外側,本節(もとふし)の後(しりえ),赤白(しゃくびゃく)肉の際の陷中]。

京骨原[足外側大骨下赤白骨際陷中按而得之]。 /【訓】京骨原[足の外側,大骨の下(しも),赤白骨際(こつさい)の陷中,按(お)して之を得(う)]。

 【注釋】「骨際」:『鍼灸聚英』同じ。『鍼灸甲乙経』は「肉際」に作る。

崑崙經火[足外踝後跟骨上陷中動脉應手]。 /【訓】崑崙經火[足外踝の後(しりえ),跟骨の上(かみ)の陷中,動脈 手に應ず]。

委中合土[膕中央約文動脉陷中]。 /【訓】委中合土[膕の中央の約文(やくもん),動脈の陷中]。

 【注釋】「約文」:「約紋」におなじ。関節などに見られる横筋(よこすじ),しわ。


2024年2月23日金曜日

鍼灸溯洄集 35 卷中(2)禁灸穴

   卷中・二ウラ(680頁)

(2)禁灸穴/【訓】禁灸の穴

唖門[入髮際五分頂中央宛宛中]。/【訓】[髮際に入ること五分,頂(うなじ)〔項〕の中央宛宛たる中]。

 【注釋】「唖」は「瘂」の異体字。また「頂」と書いてあるが,「ウナシノ」とカナが添えてあるので,「項」と書くべきもの。上巻でも「頂」に「ウナシ」とカナが振られていた。以下,おなじ。

風府[頂後入髮際一寸]。/【訓】[頂(うなじ)〔項〕の後(しりえ),髮際に入ること一寸]。

晴明[內眥頭外一分陷中]。/【訓】[內眥の頭(かしら)の外一分陷中]。

 【注釋】「晴明」。「晴」は,日偏ではなく目偏で,「睛明」と書くべきもの。なお『備急千金要方』は「精明」に作る。

攅竹[兩眉頭少陷中]。/【訓】[兩眉(び)の頭(かしら),少し陷中]。

 【注釋】旧字は「攢竹」。

承光[五處後一寸五分]。/【訓】[五處の後(しりえ),一寸五分]。

天柱[挾頂後髮際大節外廉陷者中]。/【訓】[頂(うなじ)〔項〕を挾(さしはさ)む後(ご)髮際,大節(せつ)の外廉(がいれん)の陷者(くぼみ)の中]。

素膠[鼻柱上端準頭]。/【訓】[鼻柱(はなばしら)の上端(はし),準頭]。

 【注釋】「素髎」。以下,「膠」は「髎」とおなじ。準頭:鼻尖。舊時相術用語。/鼻頭。相術上稱鼻子下部隆起的部位為「準頭」。

心俞[五推下相去脊中各二寸]。/【訓】[五の推(すい)〔椎〕の下(しも),脊中(せなか)を相い去ること各二寸]。

 【注釋】「推」。本来「椎」であるが,本書にかぎらず,江戸時代では「推」と書かれることは珍しくない。以下,おなじ。/『鍼灸聚英』心俞:「五椎下,兩旁相去脊中各一寸五分。正坐取之」。『鍼灸溯洄集』卷上664頁(26-4)背部橫寸法を参照(「予(わ)れ今ま二行・三行を論ずるに,其の寸 各々二寸,或いは三寸半と爲す者は,之に依ってなり。初學 曉(さと)し易(やす)からしめんことを欲してなり」。)。

白環[二十一推下相去脊中各二寸]。/【訓】[二十一推〔椎〕の下(しも),脊中(せなか)を相い去ること各二寸]。

 【注釋】「白環兪」。

  卷中・三オモテ(681頁)

承扶[尻臀下陷文中]。/【訓】[尻臀の下(しも),陷文(くぼみもん)の中(なか)]。

殷門[承扶下六寸]。/【訓】[承扶の下(しも)六寸]。

委中[膕中央約文動脉陷中]。/【訓】[膕の中央,約文(もん)の動脈の陷中(くぼみ)]。

申脉[外踝下五分陷中白肉際]。/【訓】[外踝(がいか)の下五分の陷中,白肉(はくにく)の際(あいだ)]。

下關[耳前動脉下廉合口有空開口則閉]。/【訓】[耳前(にぜん)動脈の下廉(げれん),口を合わせ空(あな)有り,口を開(ひら)けば則ち閉づ]。

頭維[額角入髮際神庭旁四寸五分]。/【訓】[額の角(かど),髮際に入ること神庭の旁(かたわら)四寸五分]。

人迎[頸大脉動應手夾結喉兩旁一寸五分]。/【訓】[頸(けい)の大脈 動 手に應ず,結喉の兩旁を夾(さしはさ)む一寸五分]。

乳中[當乳中是]。/【訓】[乳の中(なか)に當たる,是れなり]。

伏兔[膝上六寸起肉取之]。/【訓】[膝(しつ)上六寸,起肉に之を取る]。

脾關[膝上伏兔後交分中]。/【訓】[膝上(しつじょう),伏兔の後(しりえ),交分の中(うち)]。

 【注釋】「髀關」。

隂市[膝上三寸]。/【訓】[膝(しつ)上三寸]。

 【注釋】「隂」は「陰」の異体字。 

犢鼻[膝臏下䯒骨上]。/【訓】[膝臏(ひざさら)の下(しも),䯒骨の上(かみ)]。

 【注釋】「臏」:膝蓋骨。「䯒」:脛骨。通「胻」。『正字通』骨部︰「䯒,人身脛骨也。與肉部胻通」。

條口[下廉上一寸舉足取之]。/【訓】[下廉の上(かみ)一寸,足を舉げて之を取る]。

隱白[足大指端內側去爪甲角]。/【訓】[足の大指の端(はし)內側(ないそく),爪の甲の角を去る]。

漏谷[內踝上六寸䯒骨下陷中]。/【訓】[內踝上(かみ)六寸,䯒骨の下(しも),陷中]。

隂陵泉[膝下內側輔骨下陷曲膝取之]。/【訓】[膝下(しつか),內(うち)の側(かたわら),輔骨の下(しも)の陷(くぼみ),膝を曲(かが)め之を取る]。

周榮[中府下一寸六分陷者中]。/【訓】[中府の下(しも)一寸六分陷者(くぼみ)中]。

天府[腋下三寸臂臑內廉]。/【訓】[腋下(えきか)三寸,臂臑の內廉(れん)]。

魚際[大指本節後內側陷]。/【訓】[大指の本節(せつ)の後(しりえ),內側(ないそく)の陷]。

少商[大指端內側去爪甲角]。/【訓】[大指の端(はし)內側,爪の甲の角(かど)を去る]。

迎香[鼻下孔旁五分]。/【訓】[鼻下(びか),孔(あな)の旁(かたわら)五分]。

經渠[寸口陷中]。/【訓】[寸口の陷中]。

腹哀[日月下一寸半去腹中行四寸五分]。/【訓】[日月(じつげつ)に下(しも)一寸半,腹の中行を去る四寸五分]。

脊中[十一推節下間]。/【訓】[十一の推(すい)〔椎〕,節(ふし)の下(しも)の間(あいだ)]。

地五會[足小指次指本節後陷中]。/【訓】[足の小指次指本節(もとふし)の後(あと)の陷中]。

陽關[陽陵泉上三寸犢鼻外陷中]。/【訓】[陽陵泉の上(かみ)三寸,犢鼻の外(ほか)の陷中]。

  卷中・三ウラ(682頁)

絲竹空[眉後陷中]。/【訓】[眉後(びご)の陷中]。

陽池[手表腕上陷中至腕中心]。/【訓】[手の表腕(ひょうわん)の上(かみ)陷中,腕中の心(しん)に至る]。

臨泣[目上直入髮際五分陷中]。/【訓】[目の上(かみ),直ちに髮際に入る五分の陷中]。

淵腋[腋下三寸陷中]。/【訓】[腋下(えきか)三寸陷中]。

天牖[頸大筋外缺盆上完骨下髮際之上]。/【訓】[頸(けい)大筋の外(ほか),缺盆上,完骨の下(しも),髮際の上(かみ)]。

中冲[手中指端去爪甲角]。/【訓】[手の中指の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。

 【注釋】「冲」は「衝」の異体字。 

鳩尾[在臆前蔽骨下五分]。/【訓】[臆前蔽骨の下(しも)五分に在り]。

肩貞[曲胛下兩骨觧間肩髃後陷中]。/【訓】[曲胛の下(しも),兩骨の解間,肩髃の後(しりえ)の陷中]。

 【注釋】「觧」は「解」の異体字。 

顴膠[面頄骨下廉銳骨端陷中]。/【訓】[面(おもて)の頄骨の下廉,銳骨の端(はし)陷中]。

 【注釋】「膠」は「髎」におなじ。なお「顴」には「クハン」と添え仮名あり。教科書『新版 経絡治療経穴概論』では「ケン」と読んでいる。「頄」:顴骨。『易經』夬卦・九三:「壯于頄,有凶」。三國魏・王弼 注:「頄,面權也」。『玉篇』面顴也。『廣韻』頰閒之骨。


  【注釋】

 ◉『鍼灸大全』禁灸穴歌:「禁灸之穴四十五,承光啞門及風府,天柱素髎臨泣上,晴〔睛〕明攢竹迎香數。禾窌顴窌絲竹空,頭維下關與脊中,肩貞心俞白環俞,天牖人迎共乳中。周榮淵腋并鳩尾,腹衰〔哀〕少商魚際位,維〔經〕渠天府及中冲,陽關陽池地五會。隱白漏谷隂陵泉,條口犢鼻竅〔一作「還」〕陰市,伏兔脾〔髀〕關委中穴,殷門申脉承扶忌」。

『鍼灸聚英』禁灸穴歌も,ほぼ同文であるが,ここで引用されている「條口・犢鼻・陰市」穴の部分を欠く。また「睛明」「髀關」を『鍼灸大全』と同じく「晴明」「脾關」に作ることから,出典は『鍼灸大全』(か,その引用書)であると思われる。

鍼灸溯洄集 34 卷中(1)禁鍼法

   卷中・二オモテ(679頁)

 鍼灸溯洄集卷中

(1)禁鍼法/【訓】禁鍼の法

腦户[枕骨上强間後一寸五分]。/【訓】[枕骨の上(かみ),強間の後(しりえ)一寸五分]。

 【注釋】『甲乙經』「枕」作「跳」。以下,おもに『十四經發揮』『鍼灸聚英』からの引用か。

顖會[上星後一寸陷者中]。/【訓】[上星の後(しりえ)一寸の陷者(くぼみ)の中(なか)]。

 【注釋】『甲乙經』「一寸陷者中」作「一寸骨間陷者中」。『發揮』に「者」字なし。

神庭[直鼻上入髮際五分]。/【訓】[直ちに鼻上 髮際に入る五分]。

神道[五推節下]。/【訓】[五推〔椎〕の節(ふし)の下(しも)]。

靈臺[六推節下]。/【訓】[六推〔椎〕の節(ふし)の下(しも)]。

承靈[正營後一寸五分]。/【訓】[正營の後(しりえ)一寸五分]。

絡却[通天後一寸五分]。/【訓】[通天の後(しりえ)一寸五分]。

玉枕(ぎょくしん)[枕骨上入髮際二寸]。/【訓】[枕骨(しんこつ)の上(かみ),髮際に入る二寸]。

顱顖[耳後間青絡脉中]。/【訓】[耳の後(しりえ)の間,青絡の脈の中(うち)]。

 【注釋】顱顖は,「顱息」の別名。一説に「顱息」の誤写。『鍼灸聚英』禁鍼穴歌に「禁鍼穴道要先明……顱顖……」とある。『鍼灸大全』もおなじ。『鍼灸甲乙經』卷3・耳前後凡二十穴第11:「顱息,在耳後間青絡脈……」。また卷12・小兒雜病第11「小兒癇喘不得息,顱顖主之」。『鍼灸大全』卷6・論一穴有二名:「顱顖,一名顱息」。

角孫[耳郭中間上髮際下開口有穴]。/【訓】[耳郭(にかく)の中間の上,髮際の下(しも),口を開けば穴(あな)有り]。

承泣[目下七分直瞳子陷者中]。/【訓】[目下七分,直瞳子(じきどうし)の陷者中]。

膻中[兩乳間陷者中]。/【訓】[兩乳の間,陷者中]。

鳩尾[蔽骨之端在臆前蔽骨下五分]。/【訓】[蔽骨の端(はし),臆前に蔽骨の下五分在り]。

水分[下脘下一寸臍上一寸]。/【訓】[下脘の下一寸,臍の上一寸]。

神闕[當臍中]。/【訓】[臍中に當たる]。

會陰[兩陰之間]。/【訓】[兩陰の間]。

橫骨[陰上橫骨中宛曲如仰月中央去腹中行各一寸半]。/【訓】[陰上の橫骨の中,宛曲 仰月の如く,中央 腹の中行を去る各一寸半]。

 【注釋】「仰」,『發揮』,『聚英』は「却」に作る。「仰」に作るのは,『醫學入門』。

氣衝[鼠鼷上一寸動脉應手陷]。/【訓】[鼠鼷の上一寸,動脈 手に應ず陷(くぼみ)]。

 【注釋】「陷」字のある書,未詳。

箕門[魚腹上越筋間陰股內動脉應手]。/【訓】[魚腹の上,越筋の間,陰股の內,動脈 手に應ず]。

承筋[腨腸中央陷中]。/【訓】[腨腸の中央の陷中]。

三陽絡[臂上大交脉支溝上一寸]。/【訓】[臂(ひじ)の上,大交脈支溝の上一寸]。

    卷中・二ウラ(680頁)

五里[肘上三寸行向裏大脉中央]。/【訓】[肘(うで)の上三寸,行(ゆ)いて裏に向かう大脈の中央]。

青靈[肘上三寸伸肘舉臂取之]。/【訓】[肘(うで)の上三寸,肘(うで)を伸べ,臂(ひじ)を舉げ,之を取る]。

雲門[去胸中行各六寸]。/【訓】[胸の中行を去ること各六寸]。

缺盆[肩下橫骨陷中]。/【訓】[肩下(けんか)の橫骨(おうこつ)の陷中]。

肩井[肩上陷中]。/【訓】[肩上(けんじょう)の陷中]。

孕婦合谷[手大指次指歧骨間陷中]。/【訓】[手の大指の次指歧骨(ちまたほね)の間の陷中]。

 【注釋】『鍼灸聚英』禁鍼穴歌:「孕婦不宜鍼合谷」。

三陰交[踝上三寸]。/【訓】[踝上三寸]。

石門[臍下二寸]。/【訓】[臍(へそ)の下二寸]。

鍼灸深可忌

五藏俞深刺則暈倒邪盛則非可忌然禁刺妄常

不可驗於施治可有心得矣

  【訓み下し】

鍼灸深く忌む可し。五藏の俞深く刺す則(とき)は,暈倒す。邪盛んなる則は,忌む可きにも非ず。然れども禁刺なれば,妄りに常に驗(こころ)む可からず。治を施すに於いて,心得有る可し。


  【注釋】

 ◉『鍼灸聚英』禁鍼穴歌:「禁鍼穴道要先明。腦戶顖會及神庭。絡卻玉枕角孫穴。顱顖承泣隨承靈。神道靈臺膻中忌。水分神闕並會陰。橫骨氣衝手五里。箕門承筋並青靈。更加臂上三陽絡。一十二穴不可鍼。孕婦不宜鍼合谷。三陰交內亦通論。石門鍼灸應須忌。女子終身無妊娠。外有雲門並鳩尾。缺盆客主人莫深。肩井深時人悶倒。三里急補人還平」。

2024年2月21日水曜日

鍼灸溯洄集 33 卷中・目錄

   卷中・目錄

        船橋市西図書館所蔵,オリエント出版社『鍼灸医学典籍集成』7所収677頁~

       龍谷大学図書館所蔵     

                                 https://da.library.ryukoku.ac.jp/view/160152/2


 鍼灸溯洄集卷中目録

〔『鍼灸溯洄集(し)』卷(けん)の中 目録 /上巻では「集」には「シウ」と添え仮名あり。番号は保寶彌一郎氏による〕

一、 禁針穴法〔本文は「禁鍼法」〕

二、 禁灸穴法〔本文は「禁灸穴」〕

三、 井榮(ゑい)俞經合穴

四、 中風 附(つけたり)類中〔以下,治法〕

五、 痺症 附(つけたり)痛風

六、 痿症

七、 傷寒

八、 瘧疾〔本文は「瘧」〕

九、 痢病〔本文は「痢」〕

十、 世瀉

十一、 霍亂

十二、 嘔吐 附(つけたり)翻胃膈噎

十三、 痰飲

十四、 欬嗽

十五、 喘急

十六、 欝症 附(つけたり)諸氣〔本文は「欝證 附諸氣」〕

十七、 飲食(いんしい)

十八、 腹痛

十九、 脇痛

二十、 心痛 附(つけたり)胃脘痛

 鍼灸溯洄集目録終


鍼灸溯洄集 32 (28)鍼灸補瀉論

   二十一ウラ(672頁)

(28)鍼灸補瀉論

灸法不問虛實寒熱悉令灸之其亦有補瀉之功

虛者灸之使火氣以助元陽也實者灸之使實邪

隨火氣而發散也寒者灸之使其氣復温也熱者

灸之引欝熱之氣外發火就燥之義也其針刺雖

有補瀉法恐但有瀉而無補焉經謂瀉者迎而奪

之以針迎其經脉之來氣而出之固可以瀉實也

謂補者隨而濟之以針隨其經脉之去氣而留之

未必能補虛也不然内經何以曰無刺熇熇熱無

  二十二オモテ(673頁)

刺渾渾脉無刺漉漉汗無刺大勞人無刺大飢人

無刺大渴人無刺新飽人無刺大驚人又曰形氣

不足病氣不足此陰陽皆不足也不可刺凢虛損

危病久病俱不可刺針刺之重竭其氣老者絕滅

壯者不復矣若此等語皆有瀉無補之謂也學者

玩之或問曰吾子前論者語於補瀉詳也今有瀉

無補其言似矛盾針有實補然吾子何曰無補乎

經曰邪之所湊其氣必虛是即開决凝滯而以扶

正氣爲補也對曰然汝內經慇懃之論未曉乎予

  二十二ウラ(674頁)

試語汝調養五藏虛脫者以五味今針可有五味

也若無則何曰滋補乎且夫元氣虛資以甘藥然

則補中益氣六君子腎氣丸湯等與滋補之劑同

日而不可語今針之補者髣髴之補也猶曰平胃

散敗毒散等之補除去邪氣則正氣實之意也吾

子致思乎


  【訓み下し】

   鍼灸補瀉論

灸法 虛實・寒熱を問わず。悉く之を灸せしむ。其れ亦た補瀉の功有り。虛する者は之を灸し,火氣をして以て元陽を助けせしむ。實する者は之を灸し,實邪をして火氣に隨って發散せしむ。寒する者は之を灸し,其の氣をして復た温ためせしむ。熱する者は之を灸し,鬱熱の氣を引き,外(ほか)に發す。火は燥(かわ)けるに就くの義なり。其の針刺(さ)して,補瀉の法有りと雖も,恐らくは但だ瀉有って補無し。經(きょう)に瀉を謂う者は,迎えて之を奪う,針を以て其の經脈の來氣を迎えて之を出だす。固(まこと)に以て實を瀉す可し。補を謂う者は,隨って之を濟(すく)う。針を以て其の經脈の去氣に隨って之を留(とど)め,未だ必ず能く虛を補わず。然らずんば,『内經(だいきょう)』何を以てか曰わん,「熇熇の熱を刺すこと無かれ,

  二十二オモテ

渾渾の脈を刺すこと無かれ,漉漉の汗を刺すこと無かれ,大勞の人を刺すこと無かれ,大飢の人を刺すこと無かれ,大渴の人を刺すこと無かれ,新たに飽く人を刺すこと無かれ,大驚の人を刺すこと無かれ」。又た曰わく,「形氣不足,病氣不足,此れ陰陽 皆な不足なり。刺す可からず。凡そ虛損,危病・久病,俱に刺す可からず。針刺の重き,其の氣を竭(つ)くし,老者は絕滅し,壯者は復(かえ)らず」。此れ等の語の若きは,皆な瀉有って補無きの謂(いい)なり。學者 之を玩(もてあそ)ぶ。或ひと問うて曰わく,「吾子 前の論には,補瀉を語ること詳(つまび)らかなり。今ま瀉有って補無し。其の言(こと)矛盾(ぼうじゆん)に似たり。針に實に補有り。然るに吾子何(なん)ぞ補無しと曰わんや。經(きょう)に曰わく,〈邪の湊まる所,其の氣必ず虛す〉。是れ即ち凝滯を開決して,正氣(しょうき)を扶くるを以て補と爲す」。對(こた)えて曰わく,「然り。汝『內經』慇懃の論,未だ曉(さと)らずや。予(よ)

  二十二ウラ

試み汝に語らん。五藏虛脫の者を調養するに,五味を以てす。今ま針に五味有る可しや。若し無き則(とき)は,何ぞ滋補と曰わんや。且つ夫れ元氣虛するときは,資(と)るに甘き藥を以てし,然る則は補中益氣・六君子・腎氣丸湯等の滋補の劑と日を同じくすと語る可からず。今ま針の補は,髣髴の補なり。猶お平胃散・敗毒散等の補と曰わんがごとし。邪氣を除き去れば,則ち正氣 實するの意(こころ)なり。吾子 思いを致せ」。


  【注釋】

★「助けせしむ」→「助けしむ」。「温ためせしむ」→「温ためしむ」。

 ○經謂瀉者迎而奪之:『靈樞經』小鍼解:「迎而奪之者,寫也;追而濟之者,補也」。訓:「經(きょう)に瀉を謂う者は……」ではなく,「經に瀉と謂う者は……」または,「經に,瀉(と)は/なる者は/迎えて之を奪うを謂う」とよむのがよいか。 ○謂補者隨而濟之:「補と謂う者は……」または「補(と)は/なる者は/隨って之を濟うを謂う」とよむのがよいか。 

  二十二オモテ

 ○針刺之重竭其氣:「針刺の重き 其の氣を竭くし」ではなく,「之を針刺して,重ねて其の氣を竭くせば」とよむのがよいか。 ○玩:研習。「ならう」とも訓ず。 ○或問曰:以下,著者の創作か。

 ○然:答辭。『難経』の答えの最初にある「然」の意。 ○慇懃:[industrious]辛勤。情意懇切、周到。憂え痛むさま。慇勤。 

  二十二ウラ

 ★「今ま針に五味有る可しや」:「可」の添え仮名は「シ」。「ン」であれば「今ま針に五味有る可けんや」。

 ○同日而不可語:一般的な漢語では「不可同日而語」。差別很大,不能相提並論。 ○致思:用心思考。

 ◉虞摶(1438~1517)『醫學正傳』(1515年)或問:「針法有補瀉迎隨之理,固可以平虛實之證。其灸法不問虛實寒熱,悉令灸之,其亦有補瀉之功乎?曰:虛者灸之,使火氣以助元陽也;實者灸之,使實邪隨火氣而發散也;寒者灸之,使其氣之復溫也;熱者灸之,引鬱熱之氣外發,火就燥之義也。其針刺雖有補瀉之法,予恐但有瀉而無補焉。經謂瀉者迎而奪之,以針迎其經脈之來氣而出之,固可以瀉實矣;謂補者隨而濟之,以針隨其經脈之去氣而留之,未必能補虛也。不然,『內經』何以曰:無刺熇熇之熱,無刺渾渾之脈,無刺漉漉之汗;無刺大勞人,無刺大飢人,無刺大渴人,無刺新飽人,無刺大驚人。又曰:形氣不足,病氣不足,此陰陽皆不足也,不可刺;刺之,重竭其氣,老者絕滅,壯者不復矣。若此等語,皆有瀉無補之謂也,學者不可不知」。

 ◉李梴(1575序刊)『醫學入門』鍼灸・灸法:「或問:針有補瀉迎隨之理,固可以平虛實之証,其灸法不問虛實寒熱,悉令灸之,其亦有補瀉之功乎?丹溪凡灸有補瀉,若補,火艾滅至肉;瀉,火不要至肉,便掃除之,用口吹風主散。曰:虛者灸之,使火氣以助元陽也;實者灸之,使實邪隨火氣而發散也;寒者灸之,使其氣之復溫也;熱者灸之,引鬱熱之氣外發,火就燥之義也。其針刺雖有補瀉之法,予恐但有瀉而無補焉。經謂:瀉者迎而奪之。以針迎其脈之來氣而出之,固可以瀉實也。謂補者隨而濟之,以針隨其經脈之去氣而留之,未必能補虛也。不然,『內經』何以曰無刺熇熇之熱,無刺渾渾之脈,無刺漉漉之汗,無刺大勞人,無刺大飢人,無刺大渴人,無刺新飽人,無刺大驚人?又曰:形氣不足,病氣不足,此陰陽皆不足也。不可刺。〔割注:凡虛損,危病,久病,俱不宜針。〕刺之重竭其氣,老者絕滅,壯者不復矣。若此等語,皆有瀉無補之謂也,學人玩之」。

 ◉『素問』瘧論:「經言無刺熇熇之熱,無刺渾渾之脈,無刺漉漉之汗」。

 ◉『素問』刺禁論:「無刺大醉,令人氣亂。無刺大怒,令人氣逆。無刺大勞人,無刺新飽人,無刺大饑人,無刺大渴人,無刺大驚人」。

 ◉『靈樞』根結:「黃帝曰:形氣之逆順奈何?歧伯曰:形氣不足,病氣有餘,是邪勝也,急寫之;形氣有餘,病氣不足,急補之;形氣不足,病氣不足,此陰陽氣俱不足也,不可刺之,刺之則重不足。重不足則陰陽俱竭,血氣皆盡,五藏空虛,筋骨髓枯,老者絕滅,壯者不復矣。形氣有餘,病氣有餘,此謂陰陽俱有餘也。急寫其邪,調其虛實。故曰:有餘者寫之,不足者補之,此之謂也。

 ○補中益氣:補中益氣湯(補養之劑)。總結:補中昇陽。主治:脾胃氣虛,少氣懶言,四肢無力,睏倦少食,飲食乏味,不耐勞累,動則氣短;或氣虛發熱,氣高而喘,身熱而煩,渴喜熱飲,其脈洪大,按之無力,皮膚不任風寒,而生寒熱頭痛;或氣虛下陷,久瀉脫肛。現用於子宮下垂;胃下垂或其它內臟下垂者」。

 ○六君子:六君子湯。【功用】益氣健脾,燥濕化痰。【主治】脾胃氣虛兼痰濕證。食少便溏,胸脘痞悶,嘔逆等。

 ○腎氣丸:【功用】溫補腎氣。【主治】腎氣不足,腰酸腳軟,肢體畏寒,少腹拘急,小便不利或頻數,舌質淡胖,尺脈沉細;及痰飲喘咳,水腫腳氣,消渴,久泄。現用於糖尿病、甲狀腺功能低下、慢性腎炎、腎上腺皮質功能減退及支氣管哮喘等屬於腎氣不足者。

 ○平胃散:功效:燥濕健脾,消脹散滿。/適應症:脾土不運,濕濁困中,胸腹脹滿,口淡不渴,不思飲食,或有噁心嘔吐,大便溏瀉,睏倦嗜睡,舌不紅,苔厚膩。

 ○敗毒散:【功用】 散寒祛濕,益氣解表。主治:氣虛,外感風寒濕表證。憎寒壯熱,頭項強痛,肢體酸痛,無汗,鼻塞聲重,咳嗽有痰,嘔噦寒熱,胸膈痞滿,舌淡苔白,脈浮而按之無力。


 鍼灸溯洄集卷上〔おわり〕

2024年2月20日火曜日

鍼灸溯洄集 31 (27)人身名所圖

   十八オモテ(665頁)

(人身名所圖)

頰車(ほうがまち)=耳以下曲處(みみのいかまがるところ)。 頞中(はなすじ)=鼻莖也。 人中(はなのしたのくぼみ)=口唇上(こうしんのかみ)鼻柱下(はなばしらのした)。

齗縫(はぐき)=齒根肉(しこんのにく)也。 頄骨(ほうほね)。 巨骨(おうほね)=膺上橫骨(ようじょうのおうこつ)也,鈌盆(けつぼんと)同。 髀樞(くろろのほね)=揵骨下(しょうこつのした)也。

肘(ひじのおりかがみ)=手(ての)臂(へきの)中節(なかのふし)。 肋(あばらほね)=脇骨也。 季脇(すえのわきほね)=脇骨(わきぼね)之下(のした)。

膕(おりかがみ)=膝後(ひざのあと)曲處(まがるところ)。 足心(つちふまず)。 聚毛(ななつげ)=一ニ三毛ト云。爪甲(つめのこうの)後(あと)也。


  【注釋】

 ○頰車:ホウカマチ。「つら‐がまち=輔/輔車」 上下のあごの骨。かまち。ほほ骨。〈名義抄〉 ○鈌盆:「缺盆・欠盆」におなじ。/鈌:「缺・欠」の異体字。以下,「缺」で表記する。 ○髀樞:添え仮名は「クロノヽホ子」。意味から「くろろのほね」とした。「くろろ」は「くるる」におなじ。/髀骨外側的凹陷部分。也稱髀臼。 ○揵骨:「楗骨」と書くべきであろう。音は「けんこつ」。楗骨:人體部位名。即股骨,此骨在髁骨之下,分兩支向前,居於臀內,與尻骨成鼎足之勢,為身坐之主骨。「しょうこつ」との音注は「捷」字との混同か。 ○臂:添え仮名「ヘキ」。「ヒ」とすべきであろう。 ○季脇:脇下小肋骨。 ○膕:「コク」と添え仮名があるが,漢和辞典では「カク」。 ○聚毛:「ななつげ(七毛)」:手足の指に生える柔らかい毛。『書言字考節用集』五:「聚毛 ナナツゲ。胲 同〔『韻會』〕足大指毛也」。


  十八ウラ(666頁)

額顱(ひたい)=髮際下(はつさいのした)也。 前髮際(かみのはえぎわ)=顖前。 瞳子(ひとみ)。 頸(くびまわり)=頭莖(ずけい)也。 内眥(まがしら)=目(めの)大角(たいかく)也。

舌本(したのね)=舌根(ぜっこん)。 天柱(くび)骨(ほね)=肩背之上(かみ),頸項(けいこう)之(の)根(ね)也。 膊(かたさき)=脊(せなかの)兩旁(りょうぼうの)骨(ほね)也。

臂(うで)=臑下(じゅか)掌上(しょうじょう)也。 小腹(ほうかみ)=臍下(さいか)也。 魚(ぎょ)=掌骨(しょうこつの)前肥肉隆起(たかくおこる)處。


  【注釋】

 ○膊:身體肩以下手腕以上的部位。近肩部分稱為「上膊」,近手部分稱為「下膊」(前膊)。『十四經發揮』手太陽小腸經:「脊兩旁為膂。膂上兩角為肩解,肩解下成片骨為肩胛(一名膊)」。おそらくここが出典であろう。ただし,「一名膊」とは「膂,一名膊」であって,骨の名称ではなかろう。


  十九オモテ(667頁)

兌髮(こびたい)。 䪼(なみだうけ)=目下(めのした)也。 珠子(こみみ)=耳之前。 肩(かたなり)。 臑(ちからこぶ)=膊肉側(ないそく)嫰耎(やわらなる)白(はく)肉處(にくのところ)。

屏翳(ありのとうわたり)。 手輔骨(かまちほね)=臂骨也。 腕(てくび)=臂骨盡(のつくる)處。 兌骨(てくるぶし)=踝也(かなり)。

臏(ひざさら)=膝(ひざの)解中也。 伏兎(ふともも)=膝上起(き)肉(にくの)處。 絶骨(ようじほね)=外踝上(のかみ)。


  【注釋】

○兌髮:兌通銳。即銳髮。『人鏡經』:「耳前髮脚為兌髮」。銳髮,指耳前曲周部下的頭髮。禾髎穴在此髮尖處,『素問』氣府論:「足少陽脈氣所發者六十二穴:……銳髮下各一……」 ○䪼:顴骨。 ○珠子:『鍼灸甲乙經』:「聽宮,在耳中珠子,大如赤小豆」。 ○肉側:添え仮名「ナイソク」によれば「內側」の誤り。 ○屏翳:經穴別名,即會陰。 ○腕:前臂與手掌相連的關節部位。如:「手腕」「腕關節」。 ○兌骨:亦稱銳骨。指手腕背部小指一側的骨性隆起,今稱尺骨莖突。『鍼灸甲乙經』:「神門者……在掌後兌骨之端陷者中」。 ○臏:膝蓋骨。 ○膝解:膝解爲人體部位名。指股骨和脛骨連接而成的膝關節。『黃帝內經素問』骨空論:「膝解爲骸關」。


  十九ウラ(668頁)

顳顬(ひたいのまがりほね)=鬢骨。 顴骨(つらかまち)。 頷(おとがい)=腮下(さいか)也。 腮(あぎと)。 腋(わきつぼ)=肩下(けんかの)脇(わきの)上際。 

脇(わきつぼ)=腋下也。 掌中(てのうち)。 胠(ひばら)=脇也。 輔骨(かまちほね)=膝下(かの)兩旁高(たかき)骨也。 腨(こむら)=腓腸也。

跗(あしのこう)=足面也。 覈骨(おゆびのくるぶし)=一名核骨。大指(たいしの)本(もとの)骨也。


  【注釋】

 ○顳顬:temple.人體部位名。位於眉弓外側,顴骨弓上方,爲手、足少陽等經脈所過。 ○鬢:近耳旁兩頰上的頭髮。 ○顴骨:兩眼眶下外側之骨骼。顴骨位於眼眶的外下方,菱形,形成面頰部的骨性突起。顴骨的顳突向後接顳骨的顴突,構成顴弓。 ○頷:下巴〔下あご〕。 ○腮:(多くほおの下半分を指し)ほお,あご。人のあごの骨の左右に角をなす部分。えらぼね。「あぎと」:あご。おとがい。 ○胠:『玉篇』肉部:「胠,腋下也」。『素問』玉機真藏論:「春脈……不及,則令人胸痛引背,下則兩脇胠滿」。王冰注:「胠,謂腋下,脇也」。 ○腨:又稱「腓」,小腿肚。『靈樞』寒熱篇:「腓者,腨也」。 ○腓腸:脛骨後之肉。其中似有腸貌,故稱為「腓腸」。 ○覈骨:指第一蹠趾關節內側圓形突起。大趾本節與蹠骨結合之關節。『醫宗金鑑』:「足大趾本節後側圓骨努突者,一名核骨」。


  二十オモテ(669頁)

銳眥(まじり)=目外角(めのそとかど)也。 結喉(ふえ)。 鼠鼷(ぐりぐりほね)=橫骨盡(のつくる)處。 中指(たかたかゆび)。 大指(おやゆび)。

岐骨(ちまたほね)=大指次指之間。 食指(ひとさしゆび)。 無名指(くすりゆび)。 犢鼻(うしのはなづら)=膝臏(ひんの)中(なか)。 外踝(とくるぶし)。


  【注釋】

 ○たかたかゆび:たけたかゆび。丈高指。指の中でいちばん長い指。 ○岐骨:泛指骨骼連接成夾角處。 


  二十ウラ(670頁)

吻(くちばき)。 頥(おとがい)。 髃骨(かたほね)=肩端兩骨也。 𩩲𩨗=胷下也。 膺(むね)=胷(むねの)兩旁高(たかき)處。

揵骨〔くるまほね・かたなさしほね〕。 仰月(おおほね)=毛際橫骨也。 股(うちもも)=髀肉也。

內踝(うちくるぶし)=後(あとの)衝中。 跟(きびす)=足跟。 䯒(はぎほね)=脛骨也。


  【注釋】

○くちばき:クチバシ? ○頥:「頤」の異体字。 ○𩩲𩨗:「骬」の異体字。𩩲骭とも。𩩲骬:指蔽心骨(胸骨劍突)。 ○胷:「胸」の異体字。 ○揵骨:「楗骨」。前出。 ○䯒:「胻」の異体字。


  二十一オモテ(671頁)

巓(いただき)=腦上也。 顖會(おどり)=項上也。 枕(まくら)骨(ほね)=腦後橫骨也。 項上三骨(くびほね)。

項(うなじ)〔ぼんのくぼ〕=腦後也。 大推(おおほね)。 片骨(かりがねほね)=肩觧下(のした)也。 推骨(せぼね)=脊骨也。

膂(せしし)=背兩旁肉也。 腰臗骨(こしほね)。 臀(しり)=尻也。 尾骶骨(とがりほね)。


  【注釋】

 ○項上:おそらく「頂上」の誤り。多く「項」と「頂」を混同して記載しているが,添え仮名は誤っていない。 ○大推・推骨:木偏,大椎と椎骨と書くべきである。 ○肩觧:「觧」は「解」の異体字。『黃帝內經靈樞』經脈:「小腸手太陽之脈……出肩解,繞肩胛」。肩解爲人體部位名。指肩關節。/『黃帝內經素問』氣穴論:「肩解二穴」。王冰注:「謂肩井也。在肩上陷解中,缺盆上,大骨前」。又『黃帝內經素問』氣府論:「肩解各一」。王冰注:「謂秉風二穴。在肩上小髃骨後,舉臂有空」。肩解爲經穴別名。 ○臗:『玉篇』肉部:「臗,尻也」。『廣韻』平聲・魂韻:「臗,臀也」。/兩股上接於腰部的骨頭。同「髖」。『字彙』肉部:「臗,與髖同」。 ○膂:脊椎骨。『說文解字』呂部:「呂,脊骨也。膂,篆文呂」。 ○しし: 肉を意味する古語で,「宍」「肉」の字をあて,食肉や人体の肉をさす。

鍼灸溯洄集 30 (26)同身量尺寸法

   十七オモテ(661頁)

(26)同身量尺寸法

(26の1)頭部竪寸法

前髮際至後髮際折作十二節共爲一尺二寸前

  十七ウラ(662頁)

髮不明者取眉心上行爲一尺五寸後髮際不明

者取大椎三寸共折作一尺八寸

橫寸者以眼內眥角至外眥角爲一寸又說神庭

至頭維四寸半頭橫寸用此二法


  【訓み下し】

(26)同身 尺寸を量る法

(26の1)頭(ず)部 竪(たて)の寸法

前髮際より後髮際に至って折って十二節と作(な)して,共に一尺二寸と爲す。前髮 明らかならざる者は,眉心より取って上行して一尺五寸と爲す。後髮際 明らかならざる者は,大椎三寸を取って,共に折って一尺八寸と作(な)す。

橫の寸は,以て眼(まなこ)の內眥(まがしら)の角(かど)より外眥(まじり)の角に至って一寸と爲す。又の說にて,神庭より頭維に至って四寸半,頭(かしら)の橫の寸 此の二法を用ゆ。


  【注釋】

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・頭部:「頭部折法,以前髮際至後髮際,折為一尺二寸。如髮際不明,則取眉心直上後至大杼骨,折作一尺八寸。此為直寸。橫寸法,以眼內角至外角比為一寸。頭部橫直寸法並依此。○督脈神庭至太陽曲差,曲差至少陽本神,本神至陽明頭維,各開一寸半。自神庭至頭維,共開四寸半」。


  卷上・十七ウラ(662頁)

(26の2)腹部橫寸法

兩乳間橫取折作八寸膺腹共用此法


  【訓み下し】

   腹部の橫の寸法

兩乳の間(あいだ) 橫に取って折って八寸と作す。膺腹共に此の法を用ゆ。


  【注釋】

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・胸腹部:「……胸腹折法……橫寸以兩乳相去,折作八寸。胸腹橫直寸法並依此」。


  卷上・十七ウラ(662頁)

(26の3)手足部寸法

以男左女右手中指弟二節內度以稈心比兩頭

橫紋尖為一寸取之曰中指寸


  【訓み下し】

   手足(しゅそく)の部の寸法

以て男は左,女は右の手の中指(ちゅうし)弟(だい)二節內(うち)を度り,稈心(しべ)を以て兩頭の橫紋の尖りを比べて,一寸と為す。之を取る。中指寸と曰う。


  【注釋】

 ○稈:禾本科植物的莖,常中空有節。『說文解字』禾部:「稈,禾莖也」。 ○心:芯。しべ。 

 ◉『醫學入門』鍼灸・明堂尺寸法:「手足背部橫寸,並用同身寸」注:「以男左女右手中指第二節內度,以稈心比兩頭橫紋尖為一寸取之」。

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・中指同身寸法:「以男左女右手大指中指圓曲交接如環,取中指中節橫紋兩頭盡處,比為一寸」。


  卷上・又十七オモテ(663頁)

(26の4)背部橫寸法

背二行三行橫寸所取古今不一或去中行各一

寸半其誤在俠字背腧篇曰挾脊相去三寸欲得

而驗之按其處應在中而痛解云云 俠字間隔一物

之義也血氣形志篇曰欲知背腧先度其兩乳間

中折之更以他草度去半即以兩隅相柱也△如

此圖翼曰脊骨內濶爲一寸兩乳間折之爲八寸

此義適古今醫統細注曰第二行俠脊各一寸半

除脊骨一寸共折四寸弟三行俠脊各三寸除脊

  又十七ウラ(664頁)

骨一寸共折作七寸


  【訓み下し】

   背部 橫の寸法

背(せなか)の二行(こう)三行 橫の寸は,取る所 古今一ならず。或いは中行を去ること各々一寸半,其の誤り「俠(さしはさむ)」の字に在り。背腧篇に曰わく,「脊(せなか)を挾(さしはさ)む相い去ること三寸,得て之を驗(こころ)みんと欲せば,其の處を按(お)し,應 中(なか)に在り,而して痛解す」と云云。「俠(さしはさむ)」の字は,間に一物を隔つるの義なり。血氣形志篇に曰わく,「背腧を知らんと欲せば,先ず其の兩乳の間を度り,中より之を折って,更に他の草を以て度って半(なか)ば去る。即ち兩隅(ぐう)を以て相い柱(ささ)うこと」△此(か)くの如し。『圖翼』に曰わく,「脊骨內(うち)の濶(はば) 一寸と爲す。兩乳の間之を折って八寸と爲す」と。此の義適(あ)たれり。『古今醫統』の細注に曰わく,「第二行 脊(せなか)を俠(さしはさ)む各々一寸半,脊骨一寸を除いて共に折って四寸,弟(だい)三行は脊(せなか)を俠(さしはさ)む各三寸,脊骨一寸を除いて,共に折って七寸と作(な)す」。


  【注釋】

 ◉『靈樞』背腧(51):「黃帝問于歧伯曰:願聞五藏之腧,出於背者。歧伯曰:背中大腧,在杼骨之端,肺腧在三焦之間,心腧在五焦之間,膈腧在七焦之間,肝腧在九焦之間,脾腧在十一焦之間,腎腧在十四焦之間。皆挾脊相去三寸所,則欲得而驗之,按其處,應在中而痛解,乃其腧也」。

 ◉『素問』血氣形志(24):「欲知背俞,先度其兩乳間,中折之,更以他草度去半已,即以兩隅相拄也,乃舉以度其背,令其一隅居上,齊脊大椎,兩隅在下,當其下隅者,肺之俞也;復下一度,心之俞也;復下一度,左角肝之俞也,右角脾之俞也;復下一度,腎之俞也。是謂五藏之俞,灸刺之度也」。

 ◉『類經圖翼』骨度・背部:「脊骨內濶一寸。凡云第二行夾脊一寸半,三行夾脊三寸者,皆除脊一寸外,淨以寸半三寸論,故在二行當為二寸,在三行當為三寸半」。

 ◉『類經圖翼』骨度・胸腹部:「兩乳之間廣九寸半〔當折八寸為當。〕」。

 ◉『古今醫統大全』卷之六・經穴發明・背部:「第二行,夾脊各一寸半,除脊一寸,共折作四寸分兩傍。第三行,夾脊各三寸,除脊一寸,共折作七寸分兩傍」。


  又十七ウラ(664頁)

        故予今論二行三行其寸爲

各二寸或三寸半者依之初學欲令曉易也近代

以中指寸取其俞人在肥瘦長短人肥則背廣而

指短瘦則背挾而指長然用中指寸者有長短過

不及之弊如何爲適中乎吾恐傷良肉猶此諸穴

不抅寸法求經得之分明也有口傳如女子乳房

垂難兩乳量代之自腕橫文至中指末折作八寸

用之可也


  【訓み下し】

故に予(わ)れ今ま二行・三行を論ずるに,其の寸 各々二寸,或いは三寸半と爲す者は,之に依ってなり。初學 曉(さと)し易(やす)からしめんことを欲してなり。近代 中指寸を以て其の俞を取る。人に肥瘦・長短 在り。人肥ゆる則(とき)は背(せなか)廣うして指短かし。瘦せる則(とき)は背(せなか)挾(せば)うして指長し。然るに中指寸を用ゆる者は,長短・過不及の弊(ついえ)有って,如何(いかん)ぞ適中と爲(せ)んや。吾れ恐らくは良肉を傷(やぶ)らんことを。猶お此の諸穴のごときに,寸法に抅(かか)わらず,經を求めて之を得ること分明(ぶんみょう)なり。口傳有り。女子(にょし)の如きは乳房(にゅうぼう)垂れて,兩乳(にゅう)量り難し。之に代ゆるに腕(わん)の橫文自り,中指の末(すえ)に至って折って八寸と作(な)す。之を用いて可なり。


  【注釋】

 ○弊:害處〔弊害〕、毛病〔欠点〕。/ついえ=費用。出費。かかり。むだな出費。浪費。つぶれてだめになること。また、減ったり悪くなったりすること。疲れ苦しむこと。衰え弱ること。 ○適中:既不是太過,又不是不及。正好,沒有過或不及。 ○抅:「拘」の異体字。 


2024年2月19日月曜日

鍼灸溯洄集 29 (25)骨度法

   十六オモテ(659頁)

(25の1)骨度法 仰人尺寸  

髮以下至頥長一尺結喉至天突四寸天突下至

鳩尾九寸鳩尾至神闕八寸神闕至橫骨六寸半

橫骨至內輔上廉長一尺六寸內輔上廉至下廉

長三寸半內輔下廉至內踝一尺三寸內踝下至

  十六ウラ(660頁)

地長三寸 都合七尺五寸


  【訓み下し】

   骨度の法 仰人の尺(せき)寸

髮より以下 頥(い)に至って長きこと一尺,結喉より天突に至って四寸,天突下(しも) 鳩尾に至って九寸,鳩尾より神闕に至って八寸,神闕より橫骨に至って六寸半,橫骨より內輔の上廉に至って長きこと一尺六寸,內輔の上廉より下廉に至って長きこと三寸半,內輔の下廉より內踝に至って一尺三寸,內踝より下(しも) 地に至って長きこと三寸。 都合七尺五寸。


  【注釋】

 ○頥:「頤」の異体字。下巴。指鼻子下面腮頰部分。 ○結喉:謂喉頭凸出隆起。男性在青春期後,於頸部前面,由喉部甲狀軟骨所構成的隆起物。也稱為「喉結」。/なお「結」は,ここでも実際は「𦀽(糸+告)」と書かれている。増画俗字。 ○天突:經穴名。約在喉下四寸處。/出『靈樞』本輸。別名玉戶、天瞿。屬任脈。陰維、任脈之會。在頸部,當前正中線上,胸骨上窩中央。另說「在頸結喉下二寸」(『鍼灸甲乙經』)、5寸(『千金要方』)、3寸(『太平聖惠方』)、1寸(『銅人腧穴鍼灸圖經』)。布有鎖骨上神經前支,皮下有頸靜脈弓,甲狀腺下動脈分支,深部為氣管,胸骨柄後方為無名靜脈及主動脈弓。 ○鳩尾:『醫宗金鑒‧刺灸心法要訣‧任脈穴歌』: 「上腕巨闕連鳩尾」。原注: 「從巨闕上行一寸,鳩尾穴也」。「鳩尾者,即蔽心骨也。其質系脆骨,在胸骨之下岐骨之間」。別名尾翳、𩩲骬。 ○神闕:人體穴位名。即肚臍的別名。穴位名,位於臍部的正中,屬任脈經。 ○橫骨:人體部位名。指恥骨。橫骨穴,出『鍼灸甲乙經』。別名下極。必足少陰腎經。衝脈、足少陰之會。在下腹部,當臍中下5寸,前正中線旁開0.5寸。另說在臍下4.5寸,旁開0.5寸(『鍼灸甲乙經』);臍下5寸,旁開1寸(『鍼灸大成』);臍下5寸,旁開1.5寸(『鍼灸資生經』)。 ○內輔上廉:內輔骨(股骨〔大腿骨〕内髁上縁〔内側上顆〕)上廉。 ○下廉:脛骨の内側顆。 

  十六ウラ

 ○都合七尺五寸:以上の合計は7尺3寸で合わない。『霊枢』骨度(14)の「髮所覆者,顱至項,尺二寸」を欠く。

 ◉『靈樞』骨度(14):「願聞衆人之度,人長七尺五寸者……髮所覆者,顱至項,尺二寸。髮以下至頤,長一尺。……結喉以下至缺盆中,長四寸。缺盆以下至𩩲骬,長九寸。……𩩲骬以下至天樞,長八寸。……天樞以下至横骨,長六寸半。……横骨上廉以下,至内輔之上廉,長一尺八寸。内輔之上廉以下至下廉,長三寸半。内輔下廉下至内踝,長一尺三寸。内踝以下至地,長三寸」。


  卷上・十六ウラ(660頁)

(25の2)側人尺寸      

角以下至柱骨長一尺此間口傳腋中行不見者

四寸腋以下至季脇長一尺二寸季脇下至髀樞

長六寸髀樞以下至膝中長一尺九寸膝以下至

外踝長一尺六寸外踝下至京骨三寸京骨下至

地一寸 都合七尺一寸 四寸不足


  【訓み下し】

   側人の尺寸

角(かく)より以下 柱骨に至って長きこと一尺,此の間(あいだ)口傳。腋中行(ゆ)いて見えざる者四寸,腋(わき)より以下 季脇に至って長きこと一尺二寸,季脇より下(しも) 髀樞に至って長きこと六寸,髀樞より以下 膝中に至って長きこと一尺九寸,膝より以下 外踝に至って長きこと一尺六寸,外踝より下(しも) 京骨に至って三寸,京骨より下(しも) 地に至って一寸。 都合七尺一寸。 (四寸足らず。)


  【注釋】

 ◉『靈樞』骨度(14):「角以下至柱骨,長一尺。行腋中不見者,長四寸。腋以下至季脇,長一尺二寸。季脇以下至髀樞,長六寸。髀樞以下至膝中,長一尺九寸。膝以下至外踝,長一尺六寸。外踝以下至京骨,長三寸。京骨以下至地,長一寸」。


  卷上・十六ウラ(660頁)

(25の3)伏人尺寸      

顱至頂一尺二寸頂至背骨二寸半膂以下至尾

  十七オモテ(661頁)

骶二十一節共長三尺此間骨度篇脫簡乎膝膕

下至跗属長一尺六寸跗属下至地三寸


  【訓み下し】

   伏人の尺寸

顱より頂(うなじ)〔項〕に至って一尺二寸,頂(うなじ)〔項〕より背骨(はいこつ)に至って二寸半,膂より以下 尾骶に至って二十一節,共に長きこと三尺,此の間,骨度篇に脫簡か。膝膕の下(しも) 跗屬に至る長きこと一尺六寸,跗屬下(しも) 地に至って三寸。


  【注釋】

 ◉『靈樞』骨度(14):「膝膕以下至跗屬,長一尺六寸。跗屬以下至地,長三寸。……項髮以下至背骨,長二寸半。膂骨以下至尾骶,二十一節,長三尺。上節長一寸四分分之一,奇分在下,故上七節至于膂骨,九寸八分分之七。此衆人骨之度也」。


  卷上・十七オモテ(661頁)

(25の4)肩臂尺寸      

肩以下至肘長一尺七寸肘以下至腕長一尺二

寸半腕至中指本節長四寸中指本節至末四寸

半有口授左右都合七尺六寸(一寸有餘)


  【訓み下し】

   肩(けん)臂(べき)の尺寸

肩(かた)より以下 肘(ちゅう)に至って長きこと一尺七寸,肘より以下 腕(わん)に至って長さ一尺二寸半,腕より中指(ちゅうし)の本節(ほんせつ)に至って長きこと四寸,中指の本節より末(すえ)に至って四寸半。口授(くじゅ)有り。左右都合七尺六寸。(一寸餘り有り。)


  【注釋】

 ◉『靈樞』骨度(14):「肩至肘,長一尺七寸。肘至腕,長一尺二寸半。腕至中指本節,長四寸。本節至其末,長四寸半」。