2024年2月23日金曜日

鍼灸溯洄集 35 卷中(2)禁灸穴

   卷中・二ウラ(680頁)

(2)禁灸穴/【訓】禁灸の穴

唖門[入髮際五分頂中央宛宛中]。/【訓】[髮際に入ること五分,頂(うなじ)〔項〕の中央宛宛たる中]。

 【注釋】「唖」は「瘂」の異体字。また「頂」と書いてあるが,「ウナシノ」とカナが添えてあるので,「項」と書くべきもの。上巻でも「頂」に「ウナシ」とカナが振られていた。以下,おなじ。

風府[頂後入髮際一寸]。/【訓】[頂(うなじ)〔項〕の後(しりえ),髮際に入ること一寸]。

晴明[內眥頭外一分陷中]。/【訓】[內眥の頭(かしら)の外一分陷中]。

 【注釋】「晴明」。「晴」は,日偏ではなく目偏で,「睛明」と書くべきもの。なお『備急千金要方』は「精明」に作る。

攅竹[兩眉頭少陷中]。/【訓】[兩眉(び)の頭(かしら),少し陷中]。

 【注釋】旧字は「攢竹」。

承光[五處後一寸五分]。/【訓】[五處の後(しりえ),一寸五分]。

天柱[挾頂後髮際大節外廉陷者中]。/【訓】[頂(うなじ)〔項〕を挾(さしはさ)む後(ご)髮際,大節(せつ)の外廉(がいれん)の陷者(くぼみ)の中]。

素膠[鼻柱上端準頭]。/【訓】[鼻柱(はなばしら)の上端(はし),準頭]。

 【注釋】「素髎」。以下,「膠」は「髎」とおなじ。準頭:鼻尖。舊時相術用語。/鼻頭。相術上稱鼻子下部隆起的部位為「準頭」。

心俞[五推下相去脊中各二寸]。/【訓】[五の推(すい)〔椎〕の下(しも),脊中(せなか)を相い去ること各二寸]。

 【注釋】「推」。本来「椎」であるが,本書にかぎらず,江戸時代では「推」と書かれることは珍しくない。以下,おなじ。/『鍼灸聚英』心俞:「五椎下,兩旁相去脊中各一寸五分。正坐取之」。『鍼灸溯洄集』卷上664頁(26-4)背部橫寸法を参照(「予(わ)れ今ま二行・三行を論ずるに,其の寸 各々二寸,或いは三寸半と爲す者は,之に依ってなり。初學 曉(さと)し易(やす)からしめんことを欲してなり」。)。

白環[二十一推下相去脊中各二寸]。/【訓】[二十一推〔椎〕の下(しも),脊中(せなか)を相い去ること各二寸]。

 【注釋】「白環兪」。

  卷中・三オモテ(681頁)

承扶[尻臀下陷文中]。/【訓】[尻臀の下(しも),陷文(くぼみもん)の中(なか)]。

殷門[承扶下六寸]。/【訓】[承扶の下(しも)六寸]。

委中[膕中央約文動脉陷中]。/【訓】[膕の中央,約文(もん)の動脈の陷中(くぼみ)]。

申脉[外踝下五分陷中白肉際]。/【訓】[外踝(がいか)の下五分の陷中,白肉(はくにく)の際(あいだ)]。

下關[耳前動脉下廉合口有空開口則閉]。/【訓】[耳前(にぜん)動脈の下廉(げれん),口を合わせ空(あな)有り,口を開(ひら)けば則ち閉づ]。

頭維[額角入髮際神庭旁四寸五分]。/【訓】[額の角(かど),髮際に入ること神庭の旁(かたわら)四寸五分]。

人迎[頸大脉動應手夾結喉兩旁一寸五分]。/【訓】[頸(けい)の大脈 動 手に應ず,結喉の兩旁を夾(さしはさ)む一寸五分]。

乳中[當乳中是]。/【訓】[乳の中(なか)に當たる,是れなり]。

伏兔[膝上六寸起肉取之]。/【訓】[膝(しつ)上六寸,起肉に之を取る]。

脾關[膝上伏兔後交分中]。/【訓】[膝上(しつじょう),伏兔の後(しりえ),交分の中(うち)]。

 【注釋】「髀關」。

隂市[膝上三寸]。/【訓】[膝(しつ)上三寸]。

 【注釋】「隂」は「陰」の異体字。 

犢鼻[膝臏下䯒骨上]。/【訓】[膝臏(ひざさら)の下(しも),䯒骨の上(かみ)]。

 【注釋】「臏」:膝蓋骨。「䯒」:脛骨。通「胻」。『正字通』骨部︰「䯒,人身脛骨也。與肉部胻通」。

條口[下廉上一寸舉足取之]。/【訓】[下廉の上(かみ)一寸,足を舉げて之を取る]。

隱白[足大指端內側去爪甲角]。/【訓】[足の大指の端(はし)內側(ないそく),爪の甲の角を去る]。

漏谷[內踝上六寸䯒骨下陷中]。/【訓】[內踝上(かみ)六寸,䯒骨の下(しも),陷中]。

隂陵泉[膝下內側輔骨下陷曲膝取之]。/【訓】[膝下(しつか),內(うち)の側(かたわら),輔骨の下(しも)の陷(くぼみ),膝を曲(かが)め之を取る]。

周榮[中府下一寸六分陷者中]。/【訓】[中府の下(しも)一寸六分陷者(くぼみ)中]。

天府[腋下三寸臂臑內廉]。/【訓】[腋下(えきか)三寸,臂臑の內廉(れん)]。

魚際[大指本節後內側陷]。/【訓】[大指の本節(せつ)の後(しりえ),內側(ないそく)の陷]。

少商[大指端內側去爪甲角]。/【訓】[大指の端(はし)內側,爪の甲の角(かど)を去る]。

迎香[鼻下孔旁五分]。/【訓】[鼻下(びか),孔(あな)の旁(かたわら)五分]。

經渠[寸口陷中]。/【訓】[寸口の陷中]。

腹哀[日月下一寸半去腹中行四寸五分]。/【訓】[日月(じつげつ)に下(しも)一寸半,腹の中行を去る四寸五分]。

脊中[十一推節下間]。/【訓】[十一の推(すい)〔椎〕,節(ふし)の下(しも)の間(あいだ)]。

地五會[足小指次指本節後陷中]。/【訓】[足の小指次指本節(もとふし)の後(あと)の陷中]。

陽關[陽陵泉上三寸犢鼻外陷中]。/【訓】[陽陵泉の上(かみ)三寸,犢鼻の外(ほか)の陷中]。

  卷中・三ウラ(682頁)

絲竹空[眉後陷中]。/【訓】[眉後(びご)の陷中]。

陽池[手表腕上陷中至腕中心]。/【訓】[手の表腕(ひょうわん)の上(かみ)陷中,腕中の心(しん)に至る]。

臨泣[目上直入髮際五分陷中]。/【訓】[目の上(かみ),直ちに髮際に入る五分の陷中]。

淵腋[腋下三寸陷中]。/【訓】[腋下(えきか)三寸陷中]。

天牖[頸大筋外缺盆上完骨下髮際之上]。/【訓】[頸(けい)大筋の外(ほか),缺盆上,完骨の下(しも),髮際の上(かみ)]。

中冲[手中指端去爪甲角]。/【訓】[手の中指の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。

 【注釋】「冲」は「衝」の異体字。 

鳩尾[在臆前蔽骨下五分]。/【訓】[臆前蔽骨の下(しも)五分に在り]。

肩貞[曲胛下兩骨觧間肩髃後陷中]。/【訓】[曲胛の下(しも),兩骨の解間,肩髃の後(しりえ)の陷中]。

 【注釋】「觧」は「解」の異体字。 

顴膠[面頄骨下廉銳骨端陷中]。/【訓】[面(おもて)の頄骨の下廉,銳骨の端(はし)陷中]。

 【注釋】「膠」は「髎」におなじ。なお「顴」には「クハン」と添え仮名あり。教科書『新版 経絡治療経穴概論』では「ケン」と読んでいる。「頄」:顴骨。『易經』夬卦・九三:「壯于頄,有凶」。三國魏・王弼 注:「頄,面權也」。『玉篇』面顴也。『廣韻』頰閒之骨。


  【注釋】

 ◉『鍼灸大全』禁灸穴歌:「禁灸之穴四十五,承光啞門及風府,天柱素髎臨泣上,晴〔睛〕明攢竹迎香數。禾窌顴窌絲竹空,頭維下關與脊中,肩貞心俞白環俞,天牖人迎共乳中。周榮淵腋并鳩尾,腹衰〔哀〕少商魚際位,維〔經〕渠天府及中冲,陽關陽池地五會。隱白漏谷隂陵泉,條口犢鼻竅〔一作「還」〕陰市,伏兔脾〔髀〕關委中穴,殷門申脉承扶忌」。

『鍼灸聚英』禁灸穴歌も,ほぼ同文であるが,ここで引用されている「條口・犢鼻・陰市」穴の部分を欠く。また「睛明」「髀關」を『鍼灸大全』と同じく「晴明」「脾關」に作ることから,出典は『鍼灸大全』(か,その引用書)であると思われる。

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