2024年2月10日土曜日

鍼灸溯洄集 16 (12)鍼補瀉法

   八オモテ(643頁)

(12)鍼補瀉法

補法先以左手端按摩得穴以右手置針於穴上

令病人咳嗽一聲撚針入透於腠理得穴後令病

人呼氣一口隨呼納鍼至八分待針沉緊復退一

分許如更覺沉緊時轉針頭向病所以手循捫其

病所氣至病已隨吸而走速按其穴命之曰補


  【訓み下し】

   鍼の補瀉の法

補法は先ず左の手を以て,端(ただ)しく按摩して穴を得。右手を以て針を穴の上に置いて,病人をして咳嗽一聲ならしめ,針を撚(ひね)り,腠理に入(い)り透り,穴を得て後(のち),病人をして呼氣一口(こう)をならしめ,呼に隨って鍼を納れ,八分(ふん)に至って針の沉緊を待つ。復た退くこと一分(ふん)許(ばか)り,更わるが如くにして沉緊を覺ゆる時に,針頭を轉じて病所に向かえ,手を以て其の病所を循捫して,氣至って病已に吸に隨って走速して,其の穴を按す。之を命づけて補と曰う。


  【注釋】

 ○補法:和刻本『鍼灸聚英』補瀉:「『濟生拔萃』云:……補法先以左手端揣按得穴,以右手置鍼於穴上,令病人咳嗽一聲,撚鍼入透於〔嘉靖本無「透於」〕腠理得穴。令病人呼氣一口,隨呼〔「隨呼」,嘉靖本作「將盡」〕納針至八分。待〔「待」,嘉靖本作「覺」〕針沉緊,復退一分許。如更覺沉緊時〔「時」,嘉靖本作「仰」〕,手轉針頭向病所,以手〔「以手」,嘉靖本作「依前」〕循捫其病所,氣至病已。隨吸而走出針,速按其穴。命之曰補」。

 ◉『濟生拔萃方』竇太師流注指要賦・諸穴治證:「補法先以左手端揣按得穴。以右手置鍼於穴上。令病人咳嗽一聲。撚鍼入腠理得穴。令病人呼氣一口,將盡納針至八分,覺鍼沉緊,復退一分許。如更覺沉緊,仰手轉鍼頭向病所,依前循捫其病所,氣至病已。隨吸而走出鍼,速按其穴。命之曰補」。

 ○端:「タヽシク」と訓じているが,『鍼灸聚英』によれば「左手の端を以て,揣(はか)り」。瀉法では「以左手揣按」に作る。 ○摩:『鍼灸聚英』になし。 


  八ウラ (644頁)

夏二十四息秋冬三十六息徐出徐入氣來如動

脉之狀


  【訓み下し】

春夏(はるなつ)は二十四息(そく),秋冬は三十六息。徐(しず)かに出(い)だし徐かに入(い)れ,氣來たること動脈の狀(かたち)の如し。

  【注釋】

 ○春夏二十四息秋冬三十六息徐出徐入氣來如動脉之狀:『鍼灸聚英』補瀉:同文。『濟生拔萃方』鍼經摘英集・補瀉法。

 ○著者は,『鍼灸聚英』の瀉法→補法→「春夏秋冬」の順を,補法→「春夏秋冬」→瀉法の順番に入れ替えたために,「春夏」部分の解釈をむずかしくしてしまった。


   瀉法先以左手揣按得穴以右手置針於

穴上令病人咳嗽一聲撚針入腠理得穴令病人

吸氣一口針至六分覺針沉澁復退至三四分再

覺沉澁更退針一豆許仰手轉針頭向病所以手

循經絡至病所以合手迴針引氣隨呼徐徐出針

勿閉其穴命之曰瀉


  【訓み下し】

瀉法には先ず左の手を以て揣(にぎ)り按して穴を得。右の手を以て針を穴の上に置き,病人をして咳嗽一聲ならしむ。針を撚って腠理に入れ,穴を得。病人をして吸氣一口ならしむ。針 六分に至って針の沉澁(ちんじゅう)を覺えて,復た退くこと三四分に至って,再び沉澁を覺えて,更に針を退くこと一豆(とう)許(ばか)り,手を仰(あお)げて針頭を轉じ,病に向かう。手 經絡に循(したが)う所以は,病所に至って,以て手を合わせて針を迴(かえ)して氣を引き,呼に隨って徐徐に針を出だす。其の穴を閉づること勿(な)かれ。之を命づけて瀉と曰う。


      【注釋】

     ○瀉法:和刻本『鍼灸聚英』補瀉:「『濟生拔萃』云:先以左手揣按得穴,以右手置鍼於穴上〔「上」,嘉靖本作「下」〕,令病人咳嗽一聲,撚鍼入腠理得穴,令病人吸氣一口,鍼至六分,覺針沉澁,復退至三四分,再覺沉澁,更退針一豆許,仰手轉針頭向病所,以手循經絡,捫循至病所,以合手以迴針引氣,過針三寸,隨呼徐徐出針,勿閉其穴,命之曰瀉」。

     ◉『濟生拔萃方』竇太師流注指要賦・諸穴治證:「先以左手揣按得穴,以右手置鍼於穴下,令病人咳嗽一聲,撚鍼入腠理得穴,令病人吸氣一口,鍼至六分,覺鍼沉澁,復退至三四分,再覺沉澁,更退鍼一豆許,仰手轉鍼頭向病所,以手循經絡,循捫至病所,以合手以廻鍼引氣,過鍼三寸,隨呼徐徐出鍼,勿閉其穴,命之曰瀉」。

      ○向病所以手循經絡:「病に向かう。手 經絡に循(したが)う所以は」は,補法(病所に向かえ,手を以て其の病所を循捫して)と同じく句読し,「病所に向かえ,手を以ての經絡に循う」であろう。/ただ,引用元からすれば,「捫循」を脱す。「病所に向かい,手を以て經絡に循い,捫循して病所に至る」。

   

 ○引氣:『鍼灸聚英』『濟生拔萃方』に「過鍼三寸」あり。意図的に省かれた? 

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