2024年2月20日火曜日

鍼灸溯洄集 30 (26)同身量尺寸法

   十七オモテ(661頁)

(26)同身量尺寸法

(26の1)頭部竪寸法

前髮際至後髮際折作十二節共爲一尺二寸前

  十七ウラ(662頁)

髮不明者取眉心上行爲一尺五寸後髮際不明

者取大椎三寸共折作一尺八寸

橫寸者以眼內眥角至外眥角爲一寸又說神庭

至頭維四寸半頭橫寸用此二法


  【訓み下し】

(26)同身 尺寸を量る法

(26の1)頭(ず)部 竪(たて)の寸法

前髮際より後髮際に至って折って十二節と作(な)して,共に一尺二寸と爲す。前髮 明らかならざる者は,眉心より取って上行して一尺五寸と爲す。後髮際 明らかならざる者は,大椎三寸を取って,共に折って一尺八寸と作(な)す。

橫の寸は,以て眼(まなこ)の內眥(まがしら)の角(かど)より外眥(まじり)の角に至って一寸と爲す。又の說にて,神庭より頭維に至って四寸半,頭(かしら)の橫の寸 此の二法を用ゆ。


  【注釋】

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・頭部:「頭部折法,以前髮際至後髮際,折為一尺二寸。如髮際不明,則取眉心直上後至大杼骨,折作一尺八寸。此為直寸。橫寸法,以眼內角至外角比為一寸。頭部橫直寸法並依此。○督脈神庭至太陽曲差,曲差至少陽本神,本神至陽明頭維,各開一寸半。自神庭至頭維,共開四寸半」。


  卷上・十七ウラ(662頁)

(26の2)腹部橫寸法

兩乳間橫取折作八寸膺腹共用此法


  【訓み下し】

   腹部の橫の寸法

兩乳の間(あいだ) 橫に取って折って八寸と作す。膺腹共に此の法を用ゆ。


  【注釋】

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・胸腹部:「……胸腹折法……橫寸以兩乳相去,折作八寸。胸腹橫直寸法並依此」。


  卷上・十七ウラ(662頁)

(26の3)手足部寸法

以男左女右手中指弟二節內度以稈心比兩頭

橫紋尖為一寸取之曰中指寸


  【訓み下し】

   手足(しゅそく)の部の寸法

以て男は左,女は右の手の中指(ちゅうし)弟(だい)二節內(うち)を度り,稈心(しべ)を以て兩頭の橫紋の尖りを比べて,一寸と為す。之を取る。中指寸と曰う。


  【注釋】

 ○稈:禾本科植物的莖,常中空有節。『說文解字』禾部:「稈,禾莖也」。 ○心:芯。しべ。 

 ◉『醫學入門』鍼灸・明堂尺寸法:「手足背部橫寸,並用同身寸」注:「以男左女右手中指第二節內度,以稈心比兩頭橫紋尖為一寸取之」。

 ◉『類經圖翼』卷三・經絡・骨度・中指同身寸法:「以男左女右手大指中指圓曲交接如環,取中指中節橫紋兩頭盡處,比為一寸」。


  卷上・又十七オモテ(663頁)

(26の4)背部橫寸法

背二行三行橫寸所取古今不一或去中行各一

寸半其誤在俠字背腧篇曰挾脊相去三寸欲得

而驗之按其處應在中而痛解云云 俠字間隔一物

之義也血氣形志篇曰欲知背腧先度其兩乳間

中折之更以他草度去半即以兩隅相柱也△如

此圖翼曰脊骨內濶爲一寸兩乳間折之爲八寸

此義適古今醫統細注曰第二行俠脊各一寸半

除脊骨一寸共折四寸弟三行俠脊各三寸除脊

  又十七ウラ(664頁)

骨一寸共折作七寸


  【訓み下し】

   背部 橫の寸法

背(せなか)の二行(こう)三行 橫の寸は,取る所 古今一ならず。或いは中行を去ること各々一寸半,其の誤り「俠(さしはさむ)」の字に在り。背腧篇に曰わく,「脊(せなか)を挾(さしはさ)む相い去ること三寸,得て之を驗(こころ)みんと欲せば,其の處を按(お)し,應 中(なか)に在り,而して痛解す」と云云。「俠(さしはさむ)」の字は,間に一物を隔つるの義なり。血氣形志篇に曰わく,「背腧を知らんと欲せば,先ず其の兩乳の間を度り,中より之を折って,更に他の草を以て度って半(なか)ば去る。即ち兩隅(ぐう)を以て相い柱(ささ)うこと」△此(か)くの如し。『圖翼』に曰わく,「脊骨內(うち)の濶(はば) 一寸と爲す。兩乳の間之を折って八寸と爲す」と。此の義適(あ)たれり。『古今醫統』の細注に曰わく,「第二行 脊(せなか)を俠(さしはさ)む各々一寸半,脊骨一寸を除いて共に折って四寸,弟(だい)三行は脊(せなか)を俠(さしはさ)む各三寸,脊骨一寸を除いて,共に折って七寸と作(な)す」。


  【注釋】

 ◉『靈樞』背腧(51):「黃帝問于歧伯曰:願聞五藏之腧,出於背者。歧伯曰:背中大腧,在杼骨之端,肺腧在三焦之間,心腧在五焦之間,膈腧在七焦之間,肝腧在九焦之間,脾腧在十一焦之間,腎腧在十四焦之間。皆挾脊相去三寸所,則欲得而驗之,按其處,應在中而痛解,乃其腧也」。

 ◉『素問』血氣形志(24):「欲知背俞,先度其兩乳間,中折之,更以他草度去半已,即以兩隅相拄也,乃舉以度其背,令其一隅居上,齊脊大椎,兩隅在下,當其下隅者,肺之俞也;復下一度,心之俞也;復下一度,左角肝之俞也,右角脾之俞也;復下一度,腎之俞也。是謂五藏之俞,灸刺之度也」。

 ◉『類經圖翼』骨度・背部:「脊骨內濶一寸。凡云第二行夾脊一寸半,三行夾脊三寸者,皆除脊一寸外,淨以寸半三寸論,故在二行當為二寸,在三行當為三寸半」。

 ◉『類經圖翼』骨度・胸腹部:「兩乳之間廣九寸半〔當折八寸為當。〕」。

 ◉『古今醫統大全』卷之六・經穴發明・背部:「第二行,夾脊各一寸半,除脊一寸,共折作四寸分兩傍。第三行,夾脊各三寸,除脊一寸,共折作七寸分兩傍」。


  又十七ウラ(664頁)

        故予今論二行三行其寸爲

各二寸或三寸半者依之初學欲令曉易也近代

以中指寸取其俞人在肥瘦長短人肥則背廣而

指短瘦則背挾而指長然用中指寸者有長短過

不及之弊如何爲適中乎吾恐傷良肉猶此諸穴

不抅寸法求經得之分明也有口傳如女子乳房

垂難兩乳量代之自腕橫文至中指末折作八寸

用之可也


  【訓み下し】

故に予(わ)れ今ま二行・三行を論ずるに,其の寸 各々二寸,或いは三寸半と爲す者は,之に依ってなり。初學 曉(さと)し易(やす)からしめんことを欲してなり。近代 中指寸を以て其の俞を取る。人に肥瘦・長短 在り。人肥ゆる則(とき)は背(せなか)廣うして指短かし。瘦せる則(とき)は背(せなか)挾(せば)うして指長し。然るに中指寸を用ゆる者は,長短・過不及の弊(ついえ)有って,如何(いかん)ぞ適中と爲(せ)んや。吾れ恐らくは良肉を傷(やぶ)らんことを。猶お此の諸穴のごときに,寸法に抅(かか)わらず,經を求めて之を得ること分明(ぶんみょう)なり。口傳有り。女子(にょし)の如きは乳房(にゅうぼう)垂れて,兩乳(にゅう)量り難し。之に代ゆるに腕(わん)の橫文自り,中指の末(すえ)に至って折って八寸と作(な)す。之を用いて可なり。


  【注釋】

 ○弊:害處〔弊害〕、毛病〔欠点〕。/ついえ=費用。出費。かかり。むだな出費。浪費。つぶれてだめになること。また、減ったり悪くなったりすること。疲れ苦しむこと。衰え弱ること。 ○適中:既不是太過,又不是不及。正好,沒有過或不及。 ○抅:「拘」の異体字。 


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