2024年2月13日火曜日

鍼灸溯洄集 20 (16)經脈迎隨

   十一ウラ(650頁)

(16)經脉迎隨

經云十二經病盛則瀉之虗則補之熱則疾之寒

則留之不盛不虗以經取之迎而奪之隨而濟之

迎者迎其氣之盛而奪之爲瀉隨者隨其氣之方

虛而濟之爲補經曰瀉必用方補必用圓方者以

氣方盛也候其方呼而徐引出針故曰瀉圓者行

  十二オモテ(651頁)

行者移也行謂行不宣之氣移謂未復之脉候吸

而椎鍼至血故圓與方非針形也蓋手三陽從手

至頭故針芒從外向上爲隨針芒從内向下爲迎

足三陽從頭而至足故鍼芒從内向下爲隨針芒

從外向上爲迎足三陰從足至腹故針芒從外向

上爲隨從内向下爲迎手三陰從胷至手故針芒

從内向下爲隨針芒從外向上爲迎


  【訓み下し】

   經脈迎(ごう)隨

經に云わく,「十二經 病盛んなる則(とき)は之を瀉す。虛なる則は之を補い,熱する則は之を疾(と)くす。寒する則は之を留(とど)む。盛んならず虛せず,經を以て之を取る。迎えて之を奪い,隨って之を濟(すく)う。迎は,其の氣の盛んなるを迎えて,之を奪う。瀉と爲す。隨は,其の氣の方(まさ)に虛するに隨って,之を濟う。補と爲す」。經に曰わく,「瀉は必ず方を用ゆ。補には必ず圓を用ゆ。方(ほう)は,氣 方(まさ)に盛んなるを以て,其の方に呼するを候(うかご)うて徐(そろそろ)針を引き出だす。故(かるがゆえ)に瀉と曰う。圓は,行なり。行は移なり。行は,行(ゆ)いて宣(の)びざるの氣を謂う。移とは未だ復(かえ)らざるの脈を謂う。吸を候(うかが)って鍼を椎(お)〔推〕して血に至る。故(かるがゆえ)に圓と方とは,針の形に非ず」。蓋し手の三陽は,手從り頭(こうべ)に至る。故に針の芒(ほさき) 外(ほか)從り上(かみ)に向かえるを隨と爲す。針の芒 内從り下(しも)に向かうを迎(ごう)と爲す。足の三陽 頭(こうべ)從り足に至る。故(かるがゆえ)に鍼の芒(ほさき) 内從り下(しも)に向かうを隨と爲す。針の芒(ほさき) 外(ほか)從り上(かみ)に向かう,迎(ごう)と爲す。足の三陰は足從り腹に至る。故にの芒(ほさき) 外(ほか)從り上(かみ)に向かう,隨と爲す。内從り下(しも)に向かう,迎(ごう)と爲す。手の三陰 胸從り手に至る。故にの芒(ほさき) 内從り下(しも)に向かう,隨と爲す。針芒(さき) 外(ほか)從り上(かみ)に向かう,迎(ごう)と爲す。


  【注釋】

 ◉『靈樞』經脈(10):「盛則寫之,虛則補之,熱則疾之,寒則留之,陷下則灸之,不盛不虛,以經取之」。

 ◉『靈樞』九針十二原(01):「迎而奪之,惡得無虛?追而濟之,惡得無實?迎之隨之,以意和之,鍼道畢矣」。

 ◉『難經』七十九難曰:「經言迎而奪之,安得無虛?隨而濟之,安得無實?虛之與實,若得若失;實之與虛,若有若無,何謂也?」

 ◉『難經本義』七十二難:四明陳氏曰:「迎者,迎其氣之方來而未盛也,以瀉之。隨者,隨其氣之方往而未虛也,以補之。」

 ◉『素問』八正神明論(26):「寫必用方,方者,以氣方盛也,以月方滿也,以日方溫也,以身方定也,以息方吸而內鍼,乃復候其方吸而轉鍼,乃復候其方呼而徐引鍼,故曰寫必用方,其氣而行焉。補必用員,員者,行也,行者,移也,刺必中其榮,復以吸排鍼也。故員與方,非鍼也。故養神者,必知形之肥瘦,榮衛血氣之盛衰。血氣者,人之神,不可不謹養」。

 ◉『鍼經指南』真言補瀉手法・素問瀉必用方補必用員:「夫瀉必用方,以氣方盛也,以月方滿也,以日方溫也,以身方定也,以息方吸而內針。及復後其方吸而轉針,及復後其方呼而徐引針,故曰瀉。夫補必用員,員者行也,行者移也。行謂行不宣之氣,移謂移未復之脈。故刺必中其榮,及復後吸而推針至血,故員與方非針也。余不知聖人之意,請後之明達之士詳究焉」。

 ◉『醫學入門』附雜病穴法:「此萬世不易法也〔注:「瀉必用方,以氣方盛也,月方滿也,日方溫也,身方定也。息方吸而內針,及復候其方吸而轉針,及復候其方呼而徐引出針,故曰瀉。補必用圓,圓者行也,行者移也。行謂行不宣之氣,移謂移未復之脈,故刺必中其滎。及復候吸而推針至血,故圓與方非針也」〕。『圖注難經』云:手三陽從手至頭,〔注:手三陽經穴皆起於手也〕。針芒從外往上為隨,針芒從內往下為迎。足三陽從頭至足,〔注:足三陽經穴皆起於頭也〕。針芒從內往下為隨,針芒從外往上為迎。足三陰從足至腹,〔注:足三陰經穴皆起於足也〕。針芒從外往上為隨,針芒從內往下為迎。手三陰從胸至手,〔注:手三陰經穴皆起於胸也〕。針芒從內往下為隨,針芒從外往上為迎,大要以子午為主」。

 ◉『圖注八十一難經』の七十二難注には「芒」字が見えるが,文は異なる。七十二難・經脉迎隨之圖は,「芒」を「頭」に作るなど,やはり異なる。

https://ctext.org/library.pl?if=gb&file=30926&page=44&remap=gb

 ○「椎」と「推」字について:江戸時代の鍼灸書に共通して見られる現象であるが,この両字は混用される。特に脊椎には「推」字で書かれていることが非常に多い印象がある。本書でも脊椎に関しては,一貫して「推」字で書かれているようである。

 ○宣:実際は「ウ/一/且」と書いてある。

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