卷中・三ウラ(682頁)
(3)井榮(ゑい)俞經合穴
【注釋】「榮(ゑい)」:古くから通行した表記ではあるが,意味からすれば「滎」とすべきもの。『說文解字』滎:「絕小水也」。『說文解字注』:「絕小水者,極小水也」。音は「ケイ」。「エイ」の音もあるが,河川名。
井[所出]。/【訓】[出づる所]。 榮(ゑい)[所流]。/【訓】[流るる所]。 俞[所注]。/【訓】[注ぐ所]。 原[所過]。/【訓】[過(す)ぐる所]。
經[所行]。/【訓】[行く所]。 合[所入]。/【訓】[入(い)る所]。
手太隂肺少商井木[大指端內側去爪甲角]。 /【訓】手の太陰肺少商井木[大指の端(はし),內側(うちかたわら),爪の甲の角(かど)を去る]。
魚際榮火[大指本節後陷]。 /【訓】魚際榮(ゑい)火[大指本節(もとふし)の後(あと)の陷]。
【注釋】禁灸穴では,[大指の本節(せつ)の後(しりえ),內側(ないそく)の陷]に作る。「本節後」「內側」の訓は一定していない。
太淵俞土[掌後陷中]。 /【訓】太淵俞土[掌後の陷中]。
經渠經金[寸口陷中]。 /【訓】經渠經金[寸口の陷中]。
尺澤合水[肘中約文上動脉中]。 /【訓】尺澤合水[肘中(ちゅうちゅう)約文(やくもん)の上(かみ),動脈の中(なか)]。
手少隂心少衝井木[手少指內廉端去爪甲角]。 /【訓】手の少陰心少衝井木[手の少指の內廉の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。
【注釋】「少指」:「小指」。以下,おなじ。
少府榮火[少指本節後骨縫陷中]。 /【訓】少府榮火[少指本節(もとふし)の後(しりえ)の骨縫の陷中]。
卷中・四オモテ (682頁)
神門俞土[掌後銳骨端之陷中]。 /【訓】神門俞土[掌後(じょうご)銳骨の端(はし)の陷中]。
靈道經金[掌後一寸五分]。 /【訓】靈道經金[掌後(じょうご)一寸五分]。
少海合水[肘內廉節後大骨外去肘端五分屈肘向頭得之]。 /【訓】少海合水[肘(ちゅう)の內廉,節後(せつご)大骨(こつ)の外(ほか),肘端を去ること五分,肘(ひじ)を屈(かしら)に頭(こう)に向かえ,之を得]。
【注釋】[屈肘向頭]:「肘(ひじ)を屈(かが)め,頭(こうべ)に向かえ」か。本書では「肘」を「ひじ」だけでなく,以下の「曲澤」穴に見られるように「うで」と読むことが多い。
卷中・四オモテ(683頁)
手厥隂心主中冲井木[手中指端去爪甲角]。 /【訓】手の厥陰(けついん)心主中冲井木[手の中指の端(はし),爪の甲の角(かど)を去る]。
【注釋】「中冲」:「中衝」におなじ。/「冲」は,沖の異体字で,「衝」に通ず。
勞宮榮火[掌中央動脉]。 /【訓】勞宮榮火[掌(たなごころ)の中央,動脈]。
太陵俞土[掌后骨下兩筋間陷]。 /【訓】太陵俞土[掌后(じょうこ)骨の下(しも),兩筋の間(あいだ)の陷(くぼみ)]。
【注釋】「太陵」:「大陵」におなじ。『鍼灸甲乙経』などに見える。
間使經金[掌後三寸兩筋間陷]。 /【訓】間使經金[掌後三寸,兩筋の間の陷]。
曲澤合水[肘內廉下陷屈肘得之]。 /【訓】曲澤合水[肘(ちゅう)の內廉の下(しも)の陷(くぼみ),肘(うで)を屈(かが)めて之を得]。
足大隂隱白井木[足大指端內側去爪甲角]。 /【訓】足の大陰隱白井木[足の大指の端(はし)內側,爪の甲の角(かど)を去る]。
【注釋】「大隂」:「太陰」におなじ。
大都榮火[足大指本節後內側陷中]。 /【訓】大都榮火[足の大指の本節の後(しりえ),內側の陷中]。
大白俞土[足大指內側內踝前核骨下陷中]。 /【訓】大白俞土[足の大指の內側內踝の前,核骨の下(しも)の陷中]。
【注釋】「大白」:「太白」におなじ。
商丘經金[足內踝骨下微前陷]。 /【訓】商丘經金[足の內踝の骨の下(しも),微(すこ)し前の陷(くぼみ)]。
隂陵泉合水[膝下內側輔骨下陷伸足取之]。 /【訓】陰陵泉合水[膝の下(しも),內側輔骨の下(しも)の陷,足を伸べ之を取る]。
足少隂腎湧泉井木[足心陷中]。 /【訓】足の少陰腎湧(ゆ)泉井木(せいぼく)[足心の陷中(くぼみ)]。
然谷榮金[足內踝前起大骨下陷中]。 /【訓】然谷榮金[足の內踝の前,起こる大骨の下(しも)の陷中]。
【注釋】起大骨:舟状骨。「起こる」は,「隆起した」の意。
復溜經金[足內踝上二寸筋骨陷中]。 /【訓】復溜經金[足の內踝の上(かみ)二寸,筋骨の陷中]。
隂谷合水[膝下內輔骨後大筋下小筋上按之應手屈膝得之]。 /【訓】陰谷合水[膝の下(しも),內輔骨の後(しりえ),大筋の下(しも),小筋の上(かみ),之を按(お)して手に應ず,膝を屈(かが)めて之を得(う)]。
卷中・四ウラ(684頁)
足厥隂肝大敦井木[足大指端去爪甲角]。 /【訓】足の厥陰(けついん)肝大敦井木(ぼく)[足の大指の端(はし),爪甲の角を去る]。
行間榮火[足大指縫間動脉應手陷]。 /【訓】行間榮火[足の大指の縫間,動脈 手に應ず。陷]。
大冲俞土[足大指本節後二寸]。 /【訓】大冲俞土[足の大指の本節の後(あと)二寸]。
【注釋】「大冲」:太衝におなじ。/「冲」:「沖」の異体字で,「衝」におなじ。/「後」:「あと」「しりえ」の両読あり。
中封經金[足內踝骨前一寸筋裏陷]。 /【訓】中封經金[足の內踝の骨の前一寸,筋裏の陷]。
曲泉合水[膝股上內側輔骨下大筋上小筋下陷屈膝橫紋頭取之]。 /【訓】曲泉合水[膝股(しつこ)の上(かみ),內側輔骨の下(しも),大筋の上(かみ),小筋の下(しも)の陷,膝を屈(かが)めて橫紋の頭(かしら),之を取る]。
手陽明大腸商陽井金[手大指次指内側去爪甲角]。 /【訓】手の陽明大腸商陽井金[手の大指の次指内側,爪甲の角を去る]。
二間榮水[食指本節前內側陷]。 /【訓】二間榮水[食指の本節の前,內側の陷]。
三間俞木[食指本節後內側陷]。 /【訓】三間俞木[食指の本節の後(しりえ),內側の陷]。
合谷原[手大指次指歧骨間陷中]。 /【訓】合谷原(げん)[手の大指の次指歧骨の間の陷中]。
【注釋】「歧」:「岐」の異体字。
陽谿經火[腕中上側兩筋間陷]。 /【訓】陽谿經火[腕(わん)中(ちゆう)上側,兩筋の間の陷]。
【注釋】「陽谿」:「陽溪・陽渓」におなじ。/「腕」:前臂與手掌相連的關節部位。如:「手腕」、「扼腕」。てくび。また「腕」の添え仮名は「ハン」。「わん」と発音するのだろう。
曲池合土[肘外輔骨屈肘曲骨之中]。 /【訓】曲池合土[肘(うで)の外輔骨,肘を屈(かが)め曲骨の中(うち)]。
手太陽小腸少澤井金[手小指端外側去爪甲角]。 /【訓】手太陽小腸少澤井金[手の小指の端(はし),外側,爪甲の角を去る]。
前谷榮水[手小指外側本節前陷中]。 /【訓】前谷榮水[手の小指外側の本節の前,陷中]。
後谿俞木[手小指外側本節後陷中握拳取之]。 /【訓】後谿(こうけい)俞木(ぼく)[手の小指の外側,本節の後(しりえ)の陷中,拳(こぶし)を握り之を取る]。
腕骨原[手外側腕前起骨下陷中]。 /【訓】腕骨原[手の外側の腕(わん)の前,起こる骨の下(しも),陷中]。
陽谷經火[手外側腕中銳骨下陷中]。 /【訓】陽谷經火[手の外側,腕の中,銳骨の下(しも)の陷中]。
少海合土[肘內大骨外去肘端五分]。 /【訓】少海合土[肘(うで)の內(うち),大骨の外(ほか),肘端を去る五分]。
【注釋】「少海」は,「小海」とすべきもの。『鍼灸聚英』の誤りを継承していると思われる。『鍼灸聚英』は太陽小腸経の「しょうかい」と少陰心経の「しょうかい」を,両方とも「少海」に作る。和刻本『鍼灸聚英』卷2・手太陽小腸經穴の「少海」穴,および卷4末の「五藏六府井滎俞原經合」の表を参照。
卷中・五オモテ (685頁)
手小陽三焦關衝井金[手小指次指之端去爪甲角]。 /【訓】手の小(少)陽三焦關衝井金[手の小指次指の端,爪の甲の角を去る]。
【注釋】「小陽」:「少陽」の誤り。
液門榮水[手小指次指間陷中握拳取之]。 /【訓】液門榮水[手の小指次指の間の陷中,拳(こぶし)を握り之を取る]。
中渚俞水[手小指次指本節後間陷]。 /【訓】中渚俞水(ぼく)(木)[手の小指の次指本節の後(しりえ)の間の陷]。
【注釋】「俞水」:「水」字に「ホク」の添え仮名(ぼく=木)。
陽池原[手表腕上陷中從指本節直摸下至腕中心]。 /【訓】陽池原[手の表(ほか),腕(わん)の上の陷中,指の本節(もとふし)從(よ)り直ちに摸(さぐ)り下って腕(わん)中の心(しん)に至る]。
支溝經火[腕後臂外三寸兩骨間陷]。 /【訓】支溝經火[腕後,臂(ひじ)の外(ほか)三寸,兩骨の間の陷]。
天井合土[肘外大骨後肘上一寸輔骨上兩筋叉骨𦉋中屈肘拱胸取之]。 /【訓】天井合土[肘の外(ほか),大骨の後(しりえ),肘(うで)の上(かみ)一寸,輔骨の上(かみ),兩筋叉骨の罅(すきま)の中(うち),肘(うで)を屈(かが)めて胸を拱(こまぬ)いて之を取る]。
【注釋】
○「𦉋」:「罅」の異体字。裂縫;縫隙 [crack]。
足少陽膽竅隂井金[足小指次指之端去爪甲之角]。 /【訓】足の少陽膽竅陰井金[足の小指次指の端(はし),爪甲の角を去る]。
夾谿榮水[足小指次指歧骨間本節前陷]。 /【訓】夾谿榮水[足の小指次指の歧(ぎ)骨の間,本節(もとふし)前の陷]。
【注釋】「夾谿」:「侠渓・俠溪・俠谿」におなじ。
臨泣俞木[足小指次指本節後間陷]。 /【訓】臨泣俞木[足の小指次指の本節(もとふし)の後(しりえ)の間の陷]。
丘墟原[足外踝下如前陷中]。 /【訓】丘墟原[足の外踝の下(しも),前に如(ゆ)く陷中]。
陽輔經火[足外踝上四寸輔骨前絶骨端]。 /【訓】陽輔經火[足の外踝の上(かみ)四寸,輔骨の前,絶骨の端(はし)]。
陽陵泉合土[膝下一寸䯒外廉陷中]。 /【訓】陽陵泉合土[膝下(しっか)一寸,䯒の外廉の陷中]。
足陽明胃厲兌井金[足大指次指之端去爪甲角]。 /【訓】足の陽明胃厲兌井金[足の大指次指の端(はし),爪甲の角を去る]。
內庭榮金[足大指次指外間陷]。 /【訓】內庭榮金[足の大指次指の外間(がいかん)の陷]。
陷谷俞木[足大指次指外間本節後陷中去內庭二寸]。 /【訓】陷谷俞木[足の大指次指の外間の本節(もとふし)後(しりえ)の陷中,內庭を去る二寸]。
卷中・五ウラ(686頁)
衝陽原[足跗上五寸去陷谷三寸骨間動脉]。 /【訓】衝陽原[足の跗上五寸,陷谷去ること三寸,骨間動脈]。
觧谿經火[冲陽後一寸五分腕上陷]。 /【訓】解谿經火[冲陽の後(しりえ)一寸五分,腕上の陷]。
【注釋】「觧」:「解」の異体字。「冲」:「衝」の異体字。『鍼灸聚英』解谿:「衝陽後一寸五分,腕上陷中。足大指次指直上,跗上陷者宛宛中」。
三里合土[膝下三寸䯒骨外廉大筋內陷]。 /【訓】三里合土[膝下三寸,䯒骨の外廉,大筋の內(うち)陷]。
卷中・五ウラ(686頁)
足大陽膀胱至隂井金[足小指外側去爪甲角]。 /【訓】足大(太)陽膀胱至陰井金[足の小指外側,爪甲の角を去る]。
【注釋】「大陽」:「太陽」。
通谷榮水[足小指外側本節前陷中]。 /【訓】通谷榮水[足の小指の外側,本節(もとふし)の前の陷中]。
束骨俞木[足小指外側本節後赤白肉際陷中]。 /【訓】束骨(そくこつ)俞木[足の小指の外側,本節(もとふし)の後(しりえ),赤白(しゃくびゃく)肉の際の陷中]。
京骨原[足外側大骨下赤白骨際陷中按而得之]。 /【訓】京骨原[足の外側,大骨の下(しも),赤白骨際(こつさい)の陷中,按(お)して之を得(う)]。
【注釋】「骨際」:『鍼灸聚英』同じ。『鍼灸甲乙経』は「肉際」に作る。
崑崙經火[足外踝後跟骨上陷中動脉應手]。 /【訓】崑崙經火[足外踝の後(しりえ),跟骨の上(かみ)の陷中,動脈 手に應ず]。
委中合土[膕中央約文動脉陷中]。 /【訓】委中合土[膕の中央の約文(やくもん),動脈の陷中]。
【注釋】「約文」:「約紋」におなじ。関節などに見られる横筋(よこすじ),しわ。
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