2024年2月20日火曜日

鍼灸溯洄集 31 (27)人身名所圖

   十八オモテ(665頁)

(人身名所圖)

頰車(ほうがまち)=耳以下曲處(みみのいかまがるところ)。 頞中(はなすじ)=鼻莖也。 人中(はなのしたのくぼみ)=口唇上(こうしんのかみ)鼻柱下(はなばしらのした)。

齗縫(はぐき)=齒根肉(しこんのにく)也。 頄骨(ほうほね)。 巨骨(おうほね)=膺上橫骨(ようじょうのおうこつ)也,鈌盆(けつぼんと)同。 髀樞(くろろのほね)=揵骨下(しょうこつのした)也。

肘(ひじのおりかがみ)=手(ての)臂(へきの)中節(なかのふし)。 肋(あばらほね)=脇骨也。 季脇(すえのわきほね)=脇骨(わきぼね)之下(のした)。

膕(おりかがみ)=膝後(ひざのあと)曲處(まがるところ)。 足心(つちふまず)。 聚毛(ななつげ)=一ニ三毛ト云。爪甲(つめのこうの)後(あと)也。


  【注釋】

 ○頰車:ホウカマチ。「つら‐がまち=輔/輔車」 上下のあごの骨。かまち。ほほ骨。〈名義抄〉 ○鈌盆:「缺盆・欠盆」におなじ。/鈌:「缺・欠」の異体字。以下,「缺」で表記する。 ○髀樞:添え仮名は「クロノヽホ子」。意味から「くろろのほね」とした。「くろろ」は「くるる」におなじ。/髀骨外側的凹陷部分。也稱髀臼。 ○揵骨:「楗骨」と書くべきであろう。音は「けんこつ」。楗骨:人體部位名。即股骨,此骨在髁骨之下,分兩支向前,居於臀內,與尻骨成鼎足之勢,為身坐之主骨。「しょうこつ」との音注は「捷」字との混同か。 ○臂:添え仮名「ヘキ」。「ヒ」とすべきであろう。 ○季脇:脇下小肋骨。 ○膕:「コク」と添え仮名があるが,漢和辞典では「カク」。 ○聚毛:「ななつげ(七毛)」:手足の指に生える柔らかい毛。『書言字考節用集』五:「聚毛 ナナツゲ。胲 同〔『韻會』〕足大指毛也」。


  十八ウラ(666頁)

額顱(ひたい)=髮際下(はつさいのした)也。 前髮際(かみのはえぎわ)=顖前。 瞳子(ひとみ)。 頸(くびまわり)=頭莖(ずけい)也。 内眥(まがしら)=目(めの)大角(たいかく)也。

舌本(したのね)=舌根(ぜっこん)。 天柱(くび)骨(ほね)=肩背之上(かみ),頸項(けいこう)之(の)根(ね)也。 膊(かたさき)=脊(せなかの)兩旁(りょうぼうの)骨(ほね)也。

臂(うで)=臑下(じゅか)掌上(しょうじょう)也。 小腹(ほうかみ)=臍下(さいか)也。 魚(ぎょ)=掌骨(しょうこつの)前肥肉隆起(たかくおこる)處。


  【注釋】

 ○膊:身體肩以下手腕以上的部位。近肩部分稱為「上膊」,近手部分稱為「下膊」(前膊)。『十四經發揮』手太陽小腸經:「脊兩旁為膂。膂上兩角為肩解,肩解下成片骨為肩胛(一名膊)」。おそらくここが出典であろう。ただし,「一名膊」とは「膂,一名膊」であって,骨の名称ではなかろう。


  十九オモテ(667頁)

兌髮(こびたい)。 䪼(なみだうけ)=目下(めのした)也。 珠子(こみみ)=耳之前。 肩(かたなり)。 臑(ちからこぶ)=膊肉側(ないそく)嫰耎(やわらなる)白(はく)肉處(にくのところ)。

屏翳(ありのとうわたり)。 手輔骨(かまちほね)=臂骨也。 腕(てくび)=臂骨盡(のつくる)處。 兌骨(てくるぶし)=踝也(かなり)。

臏(ひざさら)=膝(ひざの)解中也。 伏兎(ふともも)=膝上起(き)肉(にくの)處。 絶骨(ようじほね)=外踝上(のかみ)。


  【注釋】

○兌髮:兌通銳。即銳髮。『人鏡經』:「耳前髮脚為兌髮」。銳髮,指耳前曲周部下的頭髮。禾髎穴在此髮尖處,『素問』氣府論:「足少陽脈氣所發者六十二穴:……銳髮下各一……」 ○䪼:顴骨。 ○珠子:『鍼灸甲乙經』:「聽宮,在耳中珠子,大如赤小豆」。 ○肉側:添え仮名「ナイソク」によれば「內側」の誤り。 ○屏翳:經穴別名,即會陰。 ○腕:前臂與手掌相連的關節部位。如:「手腕」「腕關節」。 ○兌骨:亦稱銳骨。指手腕背部小指一側的骨性隆起,今稱尺骨莖突。『鍼灸甲乙經』:「神門者……在掌後兌骨之端陷者中」。 ○臏:膝蓋骨。 ○膝解:膝解爲人體部位名。指股骨和脛骨連接而成的膝關節。『黃帝內經素問』骨空論:「膝解爲骸關」。


  十九ウラ(668頁)

顳顬(ひたいのまがりほね)=鬢骨。 顴骨(つらかまち)。 頷(おとがい)=腮下(さいか)也。 腮(あぎと)。 腋(わきつぼ)=肩下(けんかの)脇(わきの)上際。 

脇(わきつぼ)=腋下也。 掌中(てのうち)。 胠(ひばら)=脇也。 輔骨(かまちほね)=膝下(かの)兩旁高(たかき)骨也。 腨(こむら)=腓腸也。

跗(あしのこう)=足面也。 覈骨(おゆびのくるぶし)=一名核骨。大指(たいしの)本(もとの)骨也。


  【注釋】

 ○顳顬:temple.人體部位名。位於眉弓外側,顴骨弓上方,爲手、足少陽等經脈所過。 ○鬢:近耳旁兩頰上的頭髮。 ○顴骨:兩眼眶下外側之骨骼。顴骨位於眼眶的外下方,菱形,形成面頰部的骨性突起。顴骨的顳突向後接顳骨的顴突,構成顴弓。 ○頷:下巴〔下あご〕。 ○腮:(多くほおの下半分を指し)ほお,あご。人のあごの骨の左右に角をなす部分。えらぼね。「あぎと」:あご。おとがい。 ○胠:『玉篇』肉部:「胠,腋下也」。『素問』玉機真藏論:「春脈……不及,則令人胸痛引背,下則兩脇胠滿」。王冰注:「胠,謂腋下,脇也」。 ○腨:又稱「腓」,小腿肚。『靈樞』寒熱篇:「腓者,腨也」。 ○腓腸:脛骨後之肉。其中似有腸貌,故稱為「腓腸」。 ○覈骨:指第一蹠趾關節內側圓形突起。大趾本節與蹠骨結合之關節。『醫宗金鑑』:「足大趾本節後側圓骨努突者,一名核骨」。


  二十オモテ(669頁)

銳眥(まじり)=目外角(めのそとかど)也。 結喉(ふえ)。 鼠鼷(ぐりぐりほね)=橫骨盡(のつくる)處。 中指(たかたかゆび)。 大指(おやゆび)。

岐骨(ちまたほね)=大指次指之間。 食指(ひとさしゆび)。 無名指(くすりゆび)。 犢鼻(うしのはなづら)=膝臏(ひんの)中(なか)。 外踝(とくるぶし)。


  【注釋】

 ○たかたかゆび:たけたかゆび。丈高指。指の中でいちばん長い指。 ○岐骨:泛指骨骼連接成夾角處。 


  二十ウラ(670頁)

吻(くちばき)。 頥(おとがい)。 髃骨(かたほね)=肩端兩骨也。 𩩲𩨗=胷下也。 膺(むね)=胷(むねの)兩旁高(たかき)處。

揵骨〔くるまほね・かたなさしほね〕。 仰月(おおほね)=毛際橫骨也。 股(うちもも)=髀肉也。

內踝(うちくるぶし)=後(あとの)衝中。 跟(きびす)=足跟。 䯒(はぎほね)=脛骨也。


  【注釋】

○くちばき:クチバシ? ○頥:「頤」の異体字。 ○𩩲𩨗:「骬」の異体字。𩩲骭とも。𩩲骬:指蔽心骨(胸骨劍突)。 ○胷:「胸」の異体字。 ○揵骨:「楗骨」。前出。 ○䯒:「胻」の異体字。


  二十一オモテ(671頁)

巓(いただき)=腦上也。 顖會(おどり)=項上也。 枕(まくら)骨(ほね)=腦後橫骨也。 項上三骨(くびほね)。

項(うなじ)〔ぼんのくぼ〕=腦後也。 大推(おおほね)。 片骨(かりがねほね)=肩觧下(のした)也。 推骨(せぼね)=脊骨也。

膂(せしし)=背兩旁肉也。 腰臗骨(こしほね)。 臀(しり)=尻也。 尾骶骨(とがりほね)。


  【注釋】

 ○項上:おそらく「頂上」の誤り。多く「項」と「頂」を混同して記載しているが,添え仮名は誤っていない。 ○大推・推骨:木偏,大椎と椎骨と書くべきである。 ○肩觧:「觧」は「解」の異体字。『黃帝內經靈樞』經脈:「小腸手太陽之脈……出肩解,繞肩胛」。肩解爲人體部位名。指肩關節。/『黃帝內經素問』氣穴論:「肩解二穴」。王冰注:「謂肩井也。在肩上陷解中,缺盆上,大骨前」。又『黃帝內經素問』氣府論:「肩解各一」。王冰注:「謂秉風二穴。在肩上小髃骨後,舉臂有空」。肩解爲經穴別名。 ○臗:『玉篇』肉部:「臗,尻也」。『廣韻』平聲・魂韻:「臗,臀也」。/兩股上接於腰部的骨頭。同「髖」。『字彙』肉部:「臗,與髖同」。 ○膂:脊椎骨。『說文解字』呂部:「呂,脊骨也。膂,篆文呂」。 ○しし: 肉を意味する古語で,「宍」「肉」の字をあて,食肉や人体の肉をさす。

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