2011年11月6日日曜日

『醫説』鍼灸 關聯史料集成 3 妙鍼獺走

宋人王纂海陵人,少習經方,尤精鍼石,遠近知其盛名。宋元嘉中,縣人張方女日暮宿廣陵廟門下,夜有物,假作其壻來,女因被魅惑而病。纂爲治之,始下一鍼,有獺從女被内走出。病因而愈。(劉穎叔異苑)

關聯史料
南朝宋 劉敬叔『異苑』卷八
元嘉十八年,廣陵下市縣人張方女道香,送其夫壻北行。日暮,宿祠門下。夜有一物,假作其壻來,云:「離情難遣,不能便去。」道香俄昏惑失常。時有海陵王纂者,能療邪。疑道香被魅,請治之。始下一針,有一獺從女被內走入前港。道香疾便愈。

【訓讀】
元嘉十八年,廣陵下市縣の人,張方が女(むすめ)道香,其の夫壻を送って北のかたに行く。日暮れて,祠門の下に宿る。夜 一物有り,假して其の壻と作(な)り來たって,「離情遣(や)り難く,便ち去ること能わず」と云う。道香俄かに昏惑して常を失う。時に海陵の王纂なる者有り,能く邪を療す。道香の魅せらるるを疑い,之を治せんことを請う。始めて一針を下せば,一獺有り,女(むすめ)の被內從り走って前の港に入る。道香の疾(やまい)便ち愈ゆ。

【註釋】
○元嘉十八年:441年。 ○廣陵:いま江蘇省中部,揚州。 ○壻:婿。 ○日暮:見送って帰途に日が暮れて。 ○祠:先祖や昔の賢人を祭る場所。ほこら。廟。 ○物:物怪。もののけ。 ○假:「真」の反對。いつわる。假裝する。 ○作:假裝する。「詐」に通ず。 ○離情難遣:離別の情が紛らわせがたい。 ○去:行く。 ○昏惑:意識朦朧となる。眩暈幻惑する。 ○失常:言動や精神狀況が常軌を逸する。 ○時:當時。その時。 ○海陵:いま江蘇省泰州市。廣陵とは50kmほどの距離。 ○王纂: ○邪:奇怪な,正常と異なるもの。人事では理解不能なことがら。邪氣(邪惡不正の氣)。邪魔(妖魔)。邪神(邪惡な鬼神)。邪祟(邪靈異怪の鬼物)。邪惡。妖邪。 ○被魅:惑わされる。もののけに取り憑かれる。 ○始:……するとすぐ。/ひとたび鍼を刺入したらすぐに。 ○獺:現在,獺は三種に分類される。水獺(カワウソ),海獺(ラッコ),旱獺(マーモット)。 ○被:掛け布団。 ○走:逃走する。遁走する。にげる。 ○港:川や海の湾曲して奥まったところ,船舶が停泊できる岸。みなと。 

『太平廣記』卷第四百六十九 水族六 張方
廣陵下市廟,宋元嘉十八年,張方女道香送其夫婿北行,日暮,宿祠門下。夜有一物,假作其婿來云:「離情難遣,不能便去。」道香俄昏惑失常。時有王纂者能治邪,疑道香被魅,請治之。始下針,有一獺從女被內走入前港,道香疾便愈。(出《異苑》)

【補説】
元 王國瑞『扁鵲神應鍼灸玉龍經』註解標幽賦
「王纂鍼交兪,而妖精立出。」 
○交兪:場所未詳。肓兪とは音が異なる。 ○妖精:妖怪變化。

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