序 5
https://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100253551/viewer/5
醫家千字文註幷序 000
盖聞醫道如林學者未得其萌芽■■如
海學者未得其涓滴世有愚者曰讀方三
年便謂天下無病可治治病三年乃知天
下無方可用誠是逺而難望深而難測之
故也爰有草澤之孤陋嗜藥石於獨學猶
暗精微之道徒馳麤賤之思唯對疾不曉
了譬無目如夜遊然而鑽仰送春有欣永
一ウラ
日渉獵暎雪未倦稽古肆勒一卷書名曰
千字文凡分乾象坤儀之部次二十一韵
任淺見寡聞之智談二百餘言昔周興之
集千字也蓄儒材兮終一日之功今魯愚
之集千字也披醫書兮摭十全之要乃以
立意為宗不以能文為本
于時永仁元年大呂中旬惟宗時俊撰
【訓み下し】
醫家千字文幷びに序
蓋し聞くならく、「醫道は林の如し、學者未だ其の萌芽を得ず、(□□は)海の如し、學者未だ其の涓滴を得ず」と。世に愚者有り、曰わく、「方を讀むこと三年なれば、便ち天下に病として治す可きもの無しと謂い、病を治すること三年なれば、乃ち天下に方として用う可きもの無きを知る」と。誠に是れ遠くして望み難く、深くして測り難きの故なり。爰(ここ)に草澤の孤陋有り、藥石を獨學に嗜む。猶お精微の道に暗く、徒らに麤賤の思いを馳す。唯だ疾(やまい)に對して曉了せず、譬うれば目無くして夜遊ぶが如し。然り而して鑽仰して春(とし)を送り、永日
一ウラ
涉獵するに欣(よろこ)び有り、雪に映(てら)して未だ倦まず。古えを稽(かんが)え肆(ほしいまま)に勒すること一卷、書 名づけて『千字文』と曰う。凡そ乾象坤儀の部に分かち、二十一韵に次し、淺見寡聞の智に任せて、二百餘言を談ず。昔し周興の千字を集むるや、儒材を蓄えて一日の功を終う。今ま魯愚の千字を集むるや、醫書を披(ひら)きて十全の要を摭(ひろ)う。乃ち立意を以て宗と為し、能文を以て本と為さず。
時に永仁元年大呂中旬 惟宗時俊撰す
【注釋】
醫家千字文幷序
○盖:「蓋」の異体字。 ○萌芽:草木初生。開始發芽比喻事物的開始。 ○■■:墨釘。□□は、……。不必要であれば、以下の主語は「醫道」となる。 ○涓滴:一滴一滴的流。水滴。水點,極少的水。比喩極小或極少的事物。 ○世有愚者曰:孫思邈『備急千金要方』卷第一・大醫精誠第二:「世有愚者,讀方三年,便謂天下無病可治;及治病三年,乃知天下無方可用」。初學中醫的人,學了三年就沾沾自喜〔得意満面、ひとりでうぬぼれる〕,以為懂得一些方劑就可以治好天下所有疾病;但是當自己行醫三年之後,才知道天下間疾病太多、太複雜,我們手上的方,遠遠不夠面對這麼多疾病,所以說「無方可用」。 ○天下:泛稱全世界。 ○治:診療。 ○治病:治療疾病,使恢復健康。 ○乃:然後、於是。才、始。卻。竟、居然。 ○方:治病的藥單、配藥的單子。藥方、處方。 ○誠:的確、確實。 ○逺:「遠」の異体字。 ○望:向遠處或高處看。 ○難測:不容易揣測。 ○爰:發語詞,無義。 ○草澤:草野;民間。荒野、窮僻之地。亦指郷野民間。【草澤醫】江湖醫生。 ○孤陋:見聞少,學識淺陋。【獨學孤陋】比喩無人可切磋,學識有限。語本《禮記.學記》:「獨學而無友,則孤陋而寡聞。」【孤陋寡聞】學識淺薄,見聞不廣泛。《抱朴子.外篇.自敘》:「貧乏無以遠尋師友,孤陋寡聞,明淺思短,大義多所不通。」 ○嗜:喜愛、愛好。貪求、貪愛。 ○藥石:藥劑和砭石。泛指藥物。《文選.枚乘.七發》:「今太子之病,可無藥石針刺灸療而已,可以要言妙道說而去也。」 ○獨學:謂自學而無師友指導切磋。 ○精微:精深微妙。精專細緻。 ○徒:白白的、平白。いたずらに。 ○麤:「粗」におなじ。 ○曉了:通曉,明瞭。 ○譬無目如夜遊 ○然而:轉折連詞。用在子句頭,表示雖然有前句所敘述的事情,卻亦有末句所表達的狀況、行為等。 ○鑽仰:深入探求其理而信仰之。深入研求。語本《論語‧子罕》:「仰之彌高,鑽之彌堅」。 ○春:年、歲。 ○欣:悅服、愛戴。喜樂。 ○永日:整天、終日。從早到晚。多日;長久。
一ウラ
○渉獵:粗略的看過而不深入鑽研。謂讀書治學或學習其他技能,但作浮淺的閱覽或探索, 不求深入研究掌握。調査・研究などのために、たくさんの書物や文書を読みあさる。 ○暎雪:暎:「映」の異体字。/晉時孫康家貧,夜晚利用雪光照明讀書。典出《文選.任昉.為蕭揚州薦士表》李善注引《孫氏世錄》。後形容在困苦的環境中勤奮讀書。【映雪囊螢】映雪囊螢形容人在艱困的環境中勤奮讀書。 ○倦:疲憊、懈怠。 ○稽古:考察古事。 ○肆:任意、放縱。陳列、陳設。動詞であれば「つらねて」。 ○勒:刻、寫。 ○書名曰千字文:『續羣書類從』第31輯上(雜部)および『皇漢醫學叢書』第二冊は、「稽古肆勒一卷書(一卷の書に勒し)、名曰千字文」と句切る。7字+5字にしたくない。6字+6字とする。 ○乾象:天象。舊以為天象變化與人事有關。 ○坤儀:大地。晉 劉琨 《答盧諶》詩:「乾象棟傾,坤儀舟覆」。 ○次:依序編排。 ○韵:「韻」の異体字。参考:【次韻】依次用所和詩中的韻作詩。也稱「步韻」。 ○淺見寡聞:見聞狹窄,所知不多。形容見識淺薄。《史記.卷一.五帝本紀.太史公曰》:「非好學深思,心知其意,固難為淺見寡聞道也。」 ○周興:『千字文』の撰者。【千字文】南朝梁周興嗣所撰,傳說是集王羲之字,以一千個不同的單字所寫成,每四字一句,隔句押韻,以便於背誦,是舊時兒童啓蒙時必讀的書。 ○材:資質、能力。有才能的人。 ○魯:愚鈍、笨拙。 ○披:打開、翻開。 ○摭:拾起、摘取。 ○十全:比喩完美無缺憾。比喩很有把握。謂治病十治十愈。 ○立意:確立作品的思想、主題。 ○能文:善於屬文〔連綴字句而成文,指寫文章〕。 ○于時:在此。當時。 ○永仁元年:1293年。 ○大呂:夏曆十二月的別稱。
****************************************
押韻について:
深く検討したわけではないが、印象を書いておく。
序に「次二十一韵」、本文の最後「管窺次韻、綿聯作吟」の注に「起於平聲東韻、至于侵韻、每韻六字、至二十一韻矣」とある。
・東韻6+冬韻6+侵韻1+支韻11+魚韻6+虞韻6+灰韻6+真韻6+元韻6+寒韻6+先韻6+蕭韻6+肴韻6+豪韻6+歌韻6+麻韻6+覃韻6+陽韻6+庚韻6+尤韻6+侵韻6=21韻。
二句末の字は東冬(侵)支魚虞灰真元寒先蕭肴豪歌麻覃陽庚尤侵の21韻。みな平声。
「倉廩充盈閭里弘罙〔深の異体字〕(侵韻・平)」。ここだけ他字と韻を踏まない。
全体で実際は1008字ある。末尾の「管窺次韻、綿聯作吟。」は千字文には数えないのだろう。
全体で二度使われている文字が一つある。「包」字。
073「十全欲施八能叵包」と080「洗浴包損博奕眼勞」。後者は「胞」の誤りか?
0 件のコメント:
コメントを投稿