2021年6月19日土曜日

解讀『醫家千字文註』 はじめに

     【底本】京都大学附属図書館富士川文庫(請求記号:イ/91)。対応箇所の検索参照の便を考えて、新日本古典籍総合データベースへのリンクを附した。京大本には一部虫損箇所があるので、確認のため早稲田大学図書館所蔵本(請求記号:ヤ09 00890)、国会図書館所蔵本(特1-628)も利用した。『續羣書類從』第31輯 上 (雜部)も参照した。

    https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000909

    https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/ya09/ya09_00890/ya09_00890.pdf

                    https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535945   

    

    【翻字】

    ・なるべく原文に近いフォントを使う。点は刊本にしたがう。なお原文の行末で点を省略してある箇所もあるかも知れない。注の末尾には点があったりなかったりするが、ここには点を打った。踊り字(〻)は「々」にかえた。

    ・作業は、インターネットで参照できる『中醫笈成』のデータを校正する形でおこなった。『中醫笈成』の底本は、『皇漢醫學叢書』第二冊、1936年上海世界書局刊行本である。

https://jicheng.tw/tcm/book/%E9%86%AB%E5%AE%B6%E5%8D%83%E5%AD%97%E6%96%87/index.html

    (國家圖書館掃描本 皇漢醫學叢書 Part1/2)

     表示されるまで時間がかかる

          https://taiwanebook.ncl.edu.tw/zh-tw/book/NTL-9900015274/reader

                                      

    二句ごとに仮に番号を振った。001~126。序を000とした。

  

    【訓み下し】

    【訓み下し】を読んで、【注釋】を参照しなくても、内容がなるべく理解できるようなものにしたい。したがって一般的な書き下し文よりも和語が多くなり、一般的な訓にはこだわらないであろう。ときには、漢字のルビも使うかも知れない。

    ・押韻する四字の二句は、そのまま音読するものと思われるが、参考までに【訓み下し】をつけた。

    ・もとの点には必ずしもしたがわない。

    ・書名の「大素經」と「太素經」、人名の「楊上善」と「揚上善」など、表記が一定していないものは一般的なものに統一する。

    ・原本では複数の字体がつかわれているが、基本的に繁体字か日本の旧字体とする。・常用漢字体も一部使用する。

    ・異体字の例:内・內。說・説。眞・真。畧・略。槩・概。横・橫。黄・黃。胷・胸。莭・節。将・將。苐・第。聦・聰。聴・聽。満・滿。曽・曾。静・靜。卧・臥。讃・讚。悪(西+心)・惡。甞・嘗。絶・絕。恒・恆。蔵・藏。髪・髮。輙・輒。晋・晉。㑹・會。従・從。决・決。来・來。逺・遠。娱・娛・娯。髙・高。覧・覽。熈・熙。恠・怪。黒・黑。寳・寶。劔・劍。刄・刃。暦・曆。歴・歷。懐・懷。竒・奇。蟇・蟆。峯・峰。経・經。廵・巡。栁・柳。遥・遙。甦・蘓・蘇。潜・潛。祕・秘。鋭・銳。拋・抛。叙・敘。荅・答。溉・漑。乆・久。沉・沈。禄・祿。

    「公」を部品とするものは「㕣」の形の文字があれば、かえる。兌。

    

    ・異体字と考えられる漢字でも、「針」と「鍼」、「乃」と「廼」、「絡」と「胳」、「麤」と「麁」(=粗)など字形がかなり異なるものの中にはそのままにしたものもある。

   

    ・基本的に引用文で構成されているので、わかりやすいように引用部分を「」で括った。そのため、曰わく、……と、ではなく、曰わく、「」。として、最後の「、と」を省略したところもある。

    ・引用されている文献と比較し、文字を補った方が意味が判りやすくなる、語調がととのうと思われるところは、一部〔〕に入れて文字を補った。誤字と思われるところはその文字の後に、正しいと思われる文字を【】に入れた。

    

    【注釋】

    ・引用文献の出典を捜索し、あわせて語句の意味をしらべる。おもに漢語の辞書による。辞書が引用する例文も理解を助けるために貼り付けているところもあるが、原典チェックはしていない。標点符号は引用元のままのところが多いが、一部改変した。

    ・簡体字の注は繁体字に置換した。

    ・繁体字の一部を、フォントとの兼ね合いで常用漢字にあらためたところがある。

    

    すべてのインターネット・リソース等の提供者ならびに先行する研究者に深甚なる感謝の意を表します。


辻本裕成 『医家千字文註』の基礎的研究/南山大学日本文化学科論集. 南山大学日本文化学科論集 (9), 19-36, 2009-03.

2021/06/19現在、未読。

****************************************

『醫家千字文註』:小曽戸洋『日本漢方典籍辞典』:惟宗時俊(これむねときとし)(生没年不詳、鎌倉時代)の著になる医学入門書。全一巻。永仁元(一二九三)年の成立。原本は幕末に焼失したが、天保年間(一八三〇~四四)に刊本となり流布した。医家にとって必要な学識を『千字文』の形式で四言二句の要訣とし、さらに注をつけて解説したもの。鎌倉時代の代表的医書の一つ。注には『黄帝内経太素』『黄帝内経明堂』『八十一難経』『千金方』『新修本草』などの旧渡来中国医書を引用する一方で、『素問』(新校正注本)『外台秘要方(げだいひようほう)』『活人書』『本事方』『千金翼方』『選奇方』『証類本草』などの新渡来の宋版医書もいちはやく活用されている。


0 件のコメント:

コメントを投稿