2024年5月4日土曜日

黄龍祥『兪穴論』2.2

  2.2 核心

 すべての「節の交」がみな兪穴であるわけではなく,脈が出入遊行するその間にあってこそ,「節の交」は兪穴となることができる。これについては,『黄帝内経』が以下のように繰り返し強調している。

 ・所言節者,神氣之所遊行出入也,非皮肉筋骨也〔言う所の節なる者は,神氣の遊行出入する所なり。皮肉筋骨には非ざるなり〕。(『霊枢』九針十二原)

・節之交三百六十五會者,絡脈之滲灌諸節者也〔節の交三百六十五會なる者は,絡脈の諸節に滲灌する者なり〕。(『霊枢』小針解)

・凡此八虛者,皆機關之室,真氣之所過,血絡之所遊〔凡そ此の八つの虛なる者は,皆な機關の室,真氣の過(よぎ)る所,血絡の遊ぶ所なり〕。(『霊枢』邪客)

 ・筋骨血氣之精而與脈并為系,上屬於腦後出於項中(髓空風府穴所在)〔筋骨血氣の精而(すなわ)ち脈と幷して系と為り,上って腦の後に屬し項中(髓空風府穴の在る所)に出づ〕。(『霊枢』大惑論)〔一般的な句読とは異なる。下文の説明に合わせた。「幷」には「合」「併」「並」「兼」などの意味あり。今,音読す。〕

 これから分かるように,兪穴の中核をなすものは,みな「脈会」から構成されているが,異なるタイプの経兪脈会の具体的な構成は,すべて同じであるとは限らない。脈会・骨会・肉会・皮肉の会の「節の交」にしても,大きさや量の異なる「脈」がその間に会してはじめて,兪穴になることができる。孫脈が分肉の間に出入する肉肓が気穴となり,大脈が出入する会が脈兪となり,絡脈が出入する会が絡兪となり,脈と絡が内臓の肓膜(包膜〔envelope,外皮,膜〕・系膜〔mesentery,腸間膜〕・網膜・隔膜)に出入するところが原となり募となり,脈と系が骨の所に出入するところが骨空・髄空となる。しかしこれらの大兪要穴は何千何万という鍼灸臨床試験をへてはじめて最終的に確定される必要がある。

 『素問』で気穴を専門に論じている気穴論篇を見ると,たとえ渓谷になく,穴と会することがなくても,「血盛而當瀉〔血盛んにして當に瀉すべき〕」孫絡でも兪となれる。経兪となる唯一にして不可欠の要素が「脈会」であり,脈が発するところ,過ぎるところが兪穴の内在的根拠であり,その他の渓・谷・郄・骨空・節交は,「脈会」を探すための座標点にすぎないことが,以上から十分にうかがえる。古人は脈は虚空を行(めぐ)ると確信していたので,虚空の場所に「脈会」の所在をより容易に発見したのである。

 同じことが他にもあり,現代の有効点療法や民間の針挑〔挫刺〕療法で刺す部位も期せずして同じように血管が分かれる箇所である「脈会」を強調し,古典鍼灸学の「脈兪」概念をより多くより真に伝承した。針挑療法は静脈・動脈を問わず,血管の分岐点を定点とすることを強調する。現代の鍼灸家が総括した鍼灸の有効点の分布法則は,「動脈・静脈・リンパ管・リンパ節の周囲で特に血管の分岐点,リンパ分布が比較的多い場所につねに分布する」[6]である。

  [6] 郭效宗.针灸有效点理论与临床[M].北京:人民卫生出版社,1995:21.

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