2024年5月11日土曜日

黄龍祥『兪穴論』5

   結び

 兪穴は固定的な位置にあるかないかにより,「経兪」と「奇兪」の二つに大きく分けることができる。その中で奇兪には主に「病所」と「病応」の二種類が含まれる。経兪はまた「脈会」の大きさ深さの違いによって脈兪・気穴・骨空・募兪の四種類に分けることができる。経兪の発見と広範な応用は経絡学説と兪穴学が誕生した揺籃であり,鍼灸を「学」と称しうる前提でもある。

 「脈会」の意義の発見は,鍼灸学を脈を刺すことを主とするものから脈兪を刺すことを主とするものへの重大な転換を促した。現代の兪穴研究には,マクロな実体からミクロな実体へという新たな飛躍が必要である。兪穴の機が「脈会」にある以上,穴中の機を刺すことは血管から離れることはできない。たとえ刺して神経にあたったとしても,鍼尖が最も触れる可能性が高いのは血管周囲神経であり,その次は血管に伴走する神経である。異なる種類の経兪を刺して具体的にどのように脈にしたがって「機」に触れるかについては,経兪の位置と鍼感および得気の指標と経兪の具体的な主治病症に基づいて判定する必要がある。「脈会」にはまだ多くの未知の謎があって,探求発見が待たれる。兪穴の立体構造を明らかにし,より一般的な言葉ではっきりと説明し,中医師・西洋医いずれもみなが理解してこそ,鍼灸の有効性と兪穴作用の特異性を知る実験研究に意義をもたせ,明確な研究の結論を得ることができるし,鍼灸兪穴研究にハイテク技術を導入することにも成功の可能性がある。

 兪穴は鍼灸の標的であり,標的に中身がなく明らかでなければ,鍼灸は的がないのに矢を放つようなもので,評価のしようがない。要するに,鍼灸学で気血を調和のとれた状態にするという総目標は兪穴の定着発展に依存しなければならず,根本から鍼灸の道をはっきり説明し,そして中・西医がみなはっきり理解できるようにするには,まず兪穴の構造と機能をはっきり説明しなければならない。兪穴の構造を明らかにするには,またしっかりとした人体形態学の成果に支えられていなければならない。中国の鍼灸従事者は初心を忘れず,鍼灸学の「人形を論理する」という虚実一体の理念に基づいて,鍼灸学の発展需要を満たす虚と実をともに重視しながら,虚空構造の「人体空間構造解剖学」を特に重んじ,実質構造の研究を特に重んずる現代解剖学と最も大きい互いに恩恵を受け相補う関係を形成するよう努力しなければならない。


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