(一)足太陽之脈
足太陽脈の背部での循行については、二つの異なる説がある。早期は一行であったが、『霊枢』経脈では明確に二行となっている。これ以前の経別篇にも二行説の影響が見いだせる。経脈病候と本輸主治で経脈循行を決定する法則からみて、足太陽脈の背部は一行説がより理にかなっている。
表裏の経と臓腑が相合する説では、足太陽脈と足少陰脈が相表裏をなし、関連する臓腑は膀胱と腎である。腎は左右の二つがあるが、膀胱はひとつだけである。そのため古代人は別に「三焦」という一腑を設定してこれに応じるようにし、「腎は三焦膀胱に合する」という説がある。あわせて専門の合穴と専門の三焦腑と連接する脈があった。ここでの「三焦」は、実際は下焦であり、その作用は膀胱の影のようなもので、目的は一つの膀胱を両腎に応じさせることであった。よって関連する「足三焦」の内容を足太陽脈の中に整理統合する。
(四)足太陰之脈
足太陰脈はもともと胃と関連する。『霊枢』経脈は脾と足太陰脈を関連させているが、一番はじめに築かれた足太陰と胃の「臍帯」は断ち切れず、かつ足太陰と脾を関連させる新しい臍帯もずっと築くことができなかった。よって今回の再構築では、足太陰と関連する内臓は、胃の内容を留めておく。
(六)足厥陰之脈
早期の足厥陰脈は男性のみを対象としたものであり、それに対応する女性の病症があらわれたのは後のことである。しかし、経脈の循行はずっと女性に関する循行部分を補充してこなかった。今回の再構築では、『霊枢』五色にある男女の生殖器の対応関係にもとづき、対応する循行路線をおぎなった。男女の生殖器の対応関係について、古代人は「蓋し卵と乳とは、乃ち男女の根蒂、坎離の分属なり」〔『医学綱目』巻二十三・脾胃部・大便不通〕という認識があった。この認識にもとづけば、足厥陰脈は女性では分枝が「乳」に至るべきであるが、既存の足厥陰病候には、明確な女性の乳疾患に関する記載がない。よって今回はしばらく女性の乳房あるいは乳頭を支配する経脈の分枝は補わない。
第5節 解決が待たれる問題
一、皮・脈・筋病の診断と評価
理論面からみて、「十二皮部」「十二経脈」「十二経筋」という三つの異なる説があるが、三者に共有される病症をいかに識別するかは、不可避の問題となっている。
経筋学説があらわれたのは、十二脈をコピーしたというような単純なことでは決してなく、実際上古代人が同じ診療経験に対して異なる認識をしたことを反映している。
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