2016年9月10日土曜日

黄龍祥著『経脉理論還原与重構大綱』 第9章 理論構造と科学的概念内容――「鏡」に照らすと「ふるい」にかける

第9章 まとめ
1.経脈理論の「脈」と「絡」は、コンテキストに依存する概念である――異なるコンテキストにおいては異なる概念内容をあらわす。経脈理論の発展過程全体からみると、早期の文献中の「脈」と「絡」は、実体概念により重きを置いている。晩期の文献は、抽象概念をより多くあらわす傾向にある。まさにこのような抽象概念にもとづいて、手足の三陰脈は、四肢近位端の循行においてはじめて、体表解剖学で実証された三脈が一つに合わさった実線から発展変化して、『霊枢』経脈篇にある三脈が並行する虚偽の線にとなった。「絡」の一種である「経別」は、完全に抽象的な概念であり、その機能は、六陽脈と対応する六腑との連係を説明することにある。
2.「経脈理論」あるいは「経脈学説」は、古代人が「人体遠隔部位にある縦方向の関連律」を解釈する仮説の一つにすぎない。しかしずっとわれわれはこれを一つの関連律の「仮説集」とみなし、「仮説体系」全体とさえみなしていた。
3.生体の遠隔部位間にある連係の本質について、古代人は前後して多くの仮説を提出した。最初の陰陽五行の哲学面での解釈から、すすんで医学面での「脈」の解釈にいたった。経脈学説以後の諸学説はみな一つの共通した特徴をあらわしている。つまり、接続する実体構造をつかって直接に連接する解釈であるが、それぞれの学説はいずれもこの「定式」をこえてない。これからわかるように、いかなる時代の科学理論もその時代の特徴を深く留めざるを得なく、理論の構築者は、かれのいる時代を超越した科学的仮説を提出することは不可能である。
4.古典経脈理論の価値は、それが提出した問題にあり、それが問題をみる特殊な角度にあり、それが問題を解決した様式にあるのであって、それが出した具体的な答案にあるのではない。経脈理論は、四肢末端を本となし、頭面を標となす木型モデルにもとづいて構築され、数千年にわたって鍼灸臨床実践を指導している。有力な証拠によってこの理論をささえる経験事実が強固で信頼にたることを証明できさえすれば、中西の医師が異なる「生命の木」を発見したことを意味することになるし、あるいは同一の樹木が異なる条件下では異なる特徴を表わすといえるかも知れない。この意味は、鍼灸学そのものをはるかに超えているし、これは未来の生命科学を創り出すについての重大な啓発的意義があり、多くの高い評価をしてもしすぎることはないことは論ずるまでもない。
5.元素周期律理論という「鏡」に映すことによって読み取れる経脈理論に欠けている点は、事実に対する鑑別と検証、概念の明確な定義、基本仮説にもとづく推論である。したがって未来の研究は、経験を検証し、法則を明確にすることを重視すること――偽りを去り真実を残し、漏れているものを拾い集め、欠けているものを補うことをしなければならない。
6.現代医学という「鏡」に映すことによって、現代の鍼灸人が失った自信を取り戻させる。つまり、「関係」を研究して、法則を探り出し、そして関連法則を効果的に利用する。古典鍼灸学には非常にあきらかな強みがあり、特に経脈理論は非常に有効な研究道具と研究素材を提供する。

0 件のコメント:

コメントを投稿