4 脈死候
本篇の簡一四「人有病平臍,死」に似ている文は,『鍼灸甲乙経』巻八第四の「水腫大臍平,灸臍中,腹無理不治」[11]に見える。「唇反人盈,肉死」は,『脈書』51と馬王堆『陰陽脈死候』2に見え,「肉死」を「肉先死」に作る。『霊枢』経脈は「人中滿則唇反,唇反者肉先死」[5]に作る。『甲乙経』でも巻八第四に見えるが,並びの順序は上に挙げた文の前にあり,「水腫,人中盡滿,唇反者死」[11]に作る。この簡の内容は,「脈死候」に属する。この部分の内容は出土と伝世の経脈文献の中で,いずれも比較的安定した形式で存在する。上述した『脈書』『陰陽脈死候』以外でも,天回医簡『脈書』上下経の両方から見つかった。ただ『霊枢』経脈篇には説明的な言葉としてあらわれ,「伝注」の体例に近い。このことから,「脈死候」は文章としては長くはないが,秦漢時代の「脈書」類の文献にあっては,欠くべからざる重要な内容であり,伝世の経脈文献と対照して読むことで,経脈文献の伝承が変遷発展する流れを理解する上で有益であることがわかる。
このほか,本篇の一五と一六には治療器具(鍼具か?)の形状のような内容が記載されているようだが,破損がひどく,ここでは論じない。
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