2016年8月16日火曜日

黄龍祥著『経脉理論還原与重構大綱』第一篇 理論体系:還元と解釈  第1章 経脈・絡脈と営・衛——古代の血脈理論の新概念 まとめ

1. 「経脈」とは,もともと古代人が構築した血脈循環という核心的概念である。血脈の大きなものを「経脈」と命名した。いわゆる「経脈」「絡脈」「孫脈」(毛脈)は,脈の大きさの分類であり,「血脈運行潮汐論」の産物である。しかし「十二経脈」での「経脈」とは,常の脈を指し,「経数の脈」の略称である。同じ術語がまったく異なる意義を持っていて,人々の思考にきわめて大きな混乱をもたらした。後代の人,とりわけ現代人は,しばしば識別できず,血脈理論と経脈理論の異なる「経脈」概念を混淆している。誤って「血を行らす」ことを血脈の作用とみなし,「血気を行らす」「気を行らす」ことを経脈の作用に帰属させている。これにより,血脈以外に「経脈」という実体構造の根本となるよりどころを求めて,根本的な誤りを犯している。
2. 『内経』では「経脈」という語は全部で82回あらわれるが,「十二」「二十八」を伴ってはじめて「経数の脈」として理解できる。その他の状況,特に「経脈」が「絡脈」「孫脈」を伴うときは,みな血脈理論の枠組みの下での血脈の分類を示す術語である。「経数の脈」という概念が形成される以前では,「経脈」はみな血脈を指したが,「聯繋する脈」をいうときは,往々にして単に「脈」あるいは「絡」というだけであった。このほか,脈診を論じるときに使われる「経脈」は,「常脈」,つまり正常な脈象をあらわす。また動詞としても用いられ,「脈を診る」という意味をあらわす。婦人の病症を論じるときの「経脈」は,つねに婦人の月経の脈を指している。「経脈」という用語が持つ多義性は,現代人が古典文献を正確に理解するうえで,きわめて大きな障碍となった。
3. 経絡と気血以外に,さらに「営衛」を設定したのは,気血の循環に理論的支柱を提供するためである。「衛」は循環する気であり,一般的な血気ではなく,気血の循環を構築し,気血の定速運行を保証する不可欠の概念である。『内経』の「営衛」の論を通覧すれば,ひとつの明らかな特徴——「周(めぐ)りて復た始まる」「環の端無きが如し」——がわかる。もし「営衛」の循環という特定の意味を除いてしまったら,その機能は実際のところ,「血気」と異なるところがなくなる。

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