2016年8月22日月曜日

黄龍祥著『経脉理論還原与重構大綱』 第7章 奇経の奇――八脈の謎は,衝脈に網をかけて綱となす  結語:謎を解く

  まとめ
1.  十二経脈のテキストとくらべて,奇経八脈はまだ厳格な意味での確定されたテキストではなく,定稿以前の草稿のようであり,その上,それぞれの脈の成熟度も異なり,いくつかのテキストの破片を留めているにすぎないものさえある。
2. 八脈中の衝脈は,漢代に生まれたひとつの気血理論革命の系統的な成果――原気説にもとづいて再構築された血脈理論——を継承している。「臍下腎間の動気」「三焦」「原気」という三つの鍵となる概念を採用し,衝脈をその運び手として全体をあらわしている。衝脈は「腎間の動気」「三焦」「原気」の代名詞といえるかもしれない。そのため,気の源,血の海であり,十二経脈はみなこれによって発動する。衝脈が担ったこの一連の新概念に十分な時間と土壌があたえられたとしても,それは最終的には旧説に取って代わり,新たな規範となることはできなかった,と誰がいえようか。【蔵象学説の「脾が太陰を主る」は,「脾胃が共に主る」という過渡期をへて,最終的に「胃が太陰を主る」に取って代わった。】
3. 衝脈の本体は,「伏膂の脈」にすぎなかった。それが「腎間の動気」と関連が生じた後,一歩一歩「命門学説」への道をつくり橋を架ける役割を構築した。この過程で「腎命」のために事をおこなうことによって,種々の「肩書き」を賦与され,異なる顔が生まれたが,衝脈の病候は依然として我々が今日知っている,本体の「胎生期の記憶」にすぎない。【衝脈の循行と病候との間には,おおきな落差がある。】
4. 蹻脈の循行が反映しているのは,「人体三陰三陽分部」説が確立する以前のものである。脈の循行については,同一の脈でありながら異なる道筋をめぐってもよいように描かれている。対立する方向に向かっても,始めと終わりがつながっていさえすればよいのである。これは,経脈循行の意味をさらに明確にしている。つまり,重要なのは具体的な循行路線ではなく,起始と停止,「出る」ところである。

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