2011年3月7日月曜日

33-4 藏珍要編

33-4『藏珍要編』
     東洋医学研究会所蔵
     オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』33所収

 一部、見慣れないハングル(古いハングルか、あるいは誤字)がある。とりあえずハングルは一律●と表記する。
      一部、判読に疑念あり。
 (序)
本編は朝鮮家傳家の藏本にして
本著者は七拾有餘の弟子を
有するものなりと
           素霊識

  【注釋】
○素霊:柳谷素霊(一九〇六~一九五九)。清助(きよすけ)。戦前、弟子の堀江素文らとともに、江戸時代鍼灸書を精力的に復刻した。

     藏珍要編序
凡人之生也●皆具五糽之精而毎於風寒暑濕●從其不足處●●
生病者也●當其治病●●先看人之氣質●●次察病之輕重●此
是大槩也●雖看其氣察其病治之●●當穴投之當藥●反有其害
●●何者●不知天禀之不足●●但量病勢之沈重●●且看爲人
之輕重軟弱●●不度病症之痼疾●●以輕治重●●以重治輕●
●三焦經絡●不能均平而然矣●豈不誤哉●予則識見●淺短●
●所學●不長●●然●●幾年以來●耳聞目見●多有多驗之確
定故●畧具一二●●以備要覽而近來世俗●但稱服●●未識鍼
法中補寫濕冷之玄妙●●良可歎也●觀其人之動靜●●審其病
   二頁
之本源●●補中有瀉●●温中有冷●●適中於禀賦●●順氣於
病勢●如衡●●不淂偏倚則病無不差矣●此編●雖不繁多●皆
是先輩●秘傳之妙法●●後之學者●不可尋常工夫●●幸無歎
后之爾刊●●●上之三十一年甲午春●後學江陽后人●松溪●
謹識●●●

  【倭讀】
凡そ人の生たるや、皆な五行の精を具(そな)う。而して毎(つね)に風寒暑濕に於いて、其の不足する處に從えば、
病を生ずる者なり。其の病を治するに當たっては、先ず人の氣質を看て、次に病の輕重を察すべし。此れは
是れ大概なり。其の氣を看て其の病を察すと雖も、之を治するに穴に當たり、之を投ずるに藥に當たら〔ざれ〕ば、反って其の害有り。
何者(なんとなれば)、天禀の不足を知らずして、但だ病勢の沈重を量り、且つ爲人(ひととなり)
の輕重軟弱を看るのみにして、病症の痼疾を度(はか)らず、輕を以て重を治し、重を以て輕を治し、
三焦の經絡は、均平にすること能わずして然るなり。豈に誤らざらんや。予は則ち識見淺短にして、
學ぶ所は長ぜず。然れども幾年以來、耳に聞き目に見て、多く多驗の確
定有り。故に略(や)や一二を具(そな)えて、以て要覽に備う。而して近來の世俗は、但だ稱服するのみにして、未だ鍼
法の中に補寫・濕冷の玄妙あるを識(し)らず。良(まこと)に歎く可きなり。其の人の動靜を觀て、其の病
   二頁
の本源を審(つまび)らかにし、補中に瀉有り、温中に冷有り、禀賦に適中し、氣を
病勢に順わしむること衡の如くして、偏倚するを得ざれば、則ち病差(い)えざるは無し。此の編は、繁多ならずと雖も、皆な
是れ先輩の秘傳の妙法なり。後の學ぶ者は、尋常の工夫をす可からず。幸(ねが)わくは之に后(おく)るるを歎く無かれ。
上の三十一年甲午の春に刊す。後學、江陽の后人、松溪
謹んで識(しる)す

  【注釋】
○五糽:「糽」は、『康煕字典』に「《集韻》張梗切、音盯。絲繩緊直貌。又《玉篇》陟庚切。引也。」とある。『朝鮮の鍼法 蔵珍要編』(医道の日本社、昭和六十三年初版)に載せる柳谷素霊と朴賛旭の口訳文(写真)等は「五行」としている。「糽」は「行」の草書体からの誤記であろう。 ○毎:柳谷と朴の口訳文では「因」となっている。 ○治之●●當穴投之當藥:柳谷「治穴の当を得ざれば」。朴「治穴投薬の当を得ざれば」。 ○天禀:天生の資質。天賦の性質。生まれつき(備わったもの)。 ○沈重:病気がおもいこと。「沈」は、重い、深い。 ○稱服:称賛し敬服する。 ○濕冷:
   二頁
○衡:天秤。はかりざお。 ○淂:「得」の異体字。 ○偏倚:かたより。 ○無不:すべて。 ○差:「瘥」に通ず。 ○繁多:種類が多いこと。 ○後之學者:後学の者。 ○不可尋常工夫●●幸無歎后之▲刊●●●: ○上之三十一年甲午:高宗三十一年。一八九四年、明治二十七年。 ○江陽:慶尚南道陝川? ○松溪:松又溪。

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