名醫録越州鏡湖有邵長者家女年十七
八染瘵疾累年不愈女謂母曰妾無由脫
此疾與妾新衣梳褁仍將棺木盛我送長
流水中令我清凉逍遥化去母云不可女
曰不依妾言我即自盡仍敎傳染家中不
絶父母不柰何乃依此語有錢清江打魚
趙十於沙灘見棺木乃開見一女子遂扶
棺木抱下船中與飯并羹女云告你逐日
與我此羹并飯我得安後家中報謝你後
果獲大安趙十夫婦尋邵長者家其家大
驚喜問女如何得命女曰趙十日日煮鰻
羹供我食食覺内熱之病皆無矣邵長
者遂酬趙十三百千今醫所用鰻煎乃此
意也
【訓み下し】065-2
『名醫錄』:越州鏡湖に邵長者有り。家の女(むすめ)年十七八にして瘵疾に染む。累年愈えず。女 母に謂って曰わく,「妾 此の疾を脫する由無し。妾に新らしき衣梳を與えて裹み,仍(よ)って棺木を將(も)って我を盛(い)れ,長き流れの水の中に送り,我をして清涼逍遙して化去しめよ」。母云う,「可(ゆる)さず」。女曰わく,「妾が言に依らずんば,我即(ただ)ちに自ら盡(つ)きん。仍って家中を傳染せしむ」。絕たず。父母 奈何(いかん)ともせず。乃ち此の語に依る。錢清江に魚を打(と)る趙十有り。沙灘に於いて棺木を見る。乃ち開きて一女子を見る。遂に棺木を扶(も)って抱えて船中に下ろす。飯并(なら)びに羹を與(あた)う。女云う,「儞(なんじ)に告ぐ。逐日 我に此の羹并びに飯を與えよ。我 安きを得れば,後に家中 儞に報謝せん」。後に果して大いに安んずるを獲たり。趙十の夫婦 邵長者の家を尋ぬ。其の家大いに驚き喜ぶ。女に如何に命を得たるかを問う。女曰わく,「趙十は日日 鰻の羹を煮て我に食を供せしむ。食らえば內熱の病,皆な無きを覺えたり」。邵長者 遂に趙十に三百千を酬ゆ。今ま醫の用いる所の鰻煎は,乃ち此の意なり。
【注釋】065-2
○名醫録:008を参照。 ○越州:南朝宋於會𥡴郡置東揚州。隋改曰呉州。又改爲越州。尋曰會𥡴郡。唐復爲越州。又曰會𥡴郡。尋復曰越州。宋曰越州會𥡴郡。升爲紹興府。卽今浙江紹興縣治。 ○鏡湖:在浙江紹興縣南三里。一名鑑湖。一名長湖。又名太湖。又名慶湖。總納縣境三十六源之水。其初本通潮汐。漢永和時太守馬臻始環湖築塘瀦水。漑田至九千餘頃。唐開元中賀知章以宅爲千秋觀。求周官湖數頃爲放生池。詔賜鏡湖剡川一曲。因亦名賀監湖。宋熙寧後湖漸廢爲田。 ○長者:年紀大或輩分高的人。指顯貴的人。指德高望重的人。言行仁厚或有學問、德行的人。指豪俠。舊時對男子的尊稱。 ○女:女子,與「男」相對。女兒。 ○染:感受疾病或沾上壞習慣或接觸到什麽:染病。感染。傳染。 ○瘵疾:疫病。亦指癆病。/瘵:肺結核。如:「癆瘵」。 ○累年:歷年;接連多年。連續多年。 ○妾:古代女子對自己的謙稱。 ○無由:沒有門徑、辦法。 ○梳:整理頭髮的用具。 ○褁:「裹」の異体字。纏繞、包紮。包羅、囊括。 ○仍:因循、沿襲。於是、因此。 ○將:以、用。 ○棺木:棺材。/棺:裝斂屍體的器具。 ○盛:用容器裝東西。容納。 ○長流:長長的流水。綿延的河川。 ○清凉:涼爽。清靜,不煩擾。『百喻經』煮黑石蜜漿喻:「而望清涼寂靜之道,終無是處」。/凉:「涼」の異体字。 ○逍遥:自由自在、不受拘束。/遥:「遙」の異体字。 ○化去:謂飛昇成仙。語本『楚辭』遠游:「與化去而不見兮,名聲著而日延」。指死亡。 ○不可:禁止、不許。 ○自盡:猶自滅;自殺。 ○仍:於是、因此。 ○敎:「教」の異体字。使、讓。 ○傳染:舊謂因病疫傳播蔓延而致病。疾病由一個體侵入另一個體。可分為直接接觸的直接傳染,以及需靠媒介傳播病菌的間接傳染。 ○不絶:持續不斷。不亡滅。/意味からすると「不」は衍文か。/絶:「絕」の異体字。/仍教傳染家中不絕:言いたいことは,「仍って傳染をして家中に絕たしむ=自殺するによって,家中に伝染することを止める」ということではないか。現状の「不」がある場合は「仍って傳染せる家中をして絕たざらしむ=自殺することによって,伝染した家中が絶えないようにさせる」という意味になるか?ひとまずAIの句讀により,ここで句切り,「自殺願望が途切れなかった」と解しておく。 ○柰何:如何。/柰:「奈」の異体字。 ○錢清江:在浙江境。上流卽浦陽江。一名豐江。浦陽江經紹興縣西五十里之錢清鎭稱錢清江。東漢會𥡴太守劉寵清廉得民。及去。父老齎百錢送之。寵各選受一錢。出境投之江。江以是得名。舊時此江本由錢清鎭入海。明天順初知府彭誼以江水泛溢。建白馬山閘以遏三江口之潮。閘東盡漲爲田。自是江水不通於海。 ○打魚:捕魚。 ○沙灘:水邊的沙地。水邊或水中由沙子淤積成的陸地。 ○棺木:棺材。 ○扶:用手按着或把持着。 ○并:「幷・竝・並」の異体字。 ○羹:用肉、菜等芶芡煮成的濃湯。 ○你:「儞」の異体字。 ○逐日:一天接一天;每天。每日、按日。 ○尋:找、探求。 ○得命:謂得以保全性命。 ○日日:每天。 ○鰻:動物名。脊椎動物亞門硬骨魚綱鰻目。體圓柱狀而細長,頭尖,皮厚,富黏液,滑溜難抓。背面黑,腹側白,無腹鰭,背鰭、臀鰭和尾鰭連在一起。生活在淡水中,游至海中產卵。俗稱為「白墡」。 ○内熱:中醫指人體陰陽不協,虛火上升。/内:「內」の異体字。 ○三百千:三十万。 ○鰻煎:鰻魚湯:【功效與作用】虛損骨蒸,勞瘵屍蟲。
○『醫說』卷四・勞瘵・瘵疾:「越州鏡湖邵長者女,十八染瘵疾,累年刺灸,無不求治,醫亦不效。有漁人趙十,煮鰻羹與食,食覺內熱之病皆無矣。今醫家所用鰻煎,乃此意」。
○『稽神錄』卷三:「瓜村有漁人妻,得勞瘦(『廣記』無「瘦」字)疾,轉相傳染(『廣記』「傳染」作「染著」),死者數人。或云取病者生釘棺中,棄之,其病可絕。頃之,其女病,即生釘棺中,流之於江,至金山有漁人見而異之,引之至岸,開視之見女子猶活,因取置漁舍中(『廣記』無「中」字),多得鰻鮓魚以食之。久之病愈,遂為漁人之妻,至今尚無恙。」(『廣記』卷二百二十)
○『太平廣記』醫三・漁人妻:「瓜村有漁人妻得勞疾,轉相染著,死者數人。或云,取病者生釘棺中棄之,其病可絕。頃之,其女病,即生釘棺中,流之於江。至金山,有漁人見而異之,引之至岸。開視之,見女子猶活,因取置漁舍。每多得鰻黧魚以食之,久之病愈。遂為漁人之妻,今尚無恙。」(出『稽神錄』)
識典古籍*******************************************************
名醫錄越州鏡湖有邵長者家女,年十七八,染瘵疾,累年不愈。
【AI譯文】
『名医录』记载,越州镜湖有位邵姓老人的女儿,十七八岁时染上了痨病,多年没有痊愈。
【AI 1】『名医録』によると、越州鏡湖に住む邵姓の老人の娘は、十七、八歳のころに痨病(結核)を患い、長年治ることがなかった。
【AI 2】『名医録』にはこう記されている:越州鏡湖に邵姓の老人がおり、その娘が17~18歳のときに痨病(肺結核のような慢性病)を患い、長年治らなかった。
女謂母曰:妾無由脫此疾,與妾新衣梳褁,仍將棺木盛我,送長流水中,令我清涼,逍遥化去。
【AI譯文】
女子对母亲说:“我没有办法摆脱这个疾病,给我穿上新衣服梳妆打扮,把我装在棺材里,送到长流水中,让我清凉,自在地离去。”
【AI 1】ある日、娘は母に言った。「私はこの病から逃れられません。新しい衣服を着せ、髪を整えて私を棺に納め、長流の水へ送り出してください。涼やかに、自由に去りたいのです。」
【AI 2】娘は母親にこう言った。「もうこの病気から逃れることはできません。新しい衣を着せて、髪を整えて、私を棺に納めて、長流水(流れのある川)に流してください。そうすれば涼しく、楽にこの世を去れます。」
母云:不可。
【AI譯文】
母亲说:“不可以。”
【AI 1】母は「そんなことはできない」と拒んだ。
【AI 2】母親は「そんなことはできません」と言ったが、
女曰:不依妾言,我即自盡,仍教傳染家中。
【AI譯文】
女子说:‘如果不依照我的话去做,我就马上自杀,还要让(疫病)传染到家中。’
【AI 1】しかし娘は、「私の言う通りにしないなら、すぐに自殺してしまいます。それに、この疫病を家族に伝染させてしまうかもしれません」と言い、
【AI 2】娘は「私の言う通りにしないのなら、すぐに自殺します。それだけでなく、この病を家に広めてしまいます」と言った。
不絶。
【AI譯文】
没有断绝。
【AI 1】断念することはなかった。
【AI 2】病は治らず、
父母不柰何,乃依此語。
【AI譯文】
父母没有办法,就依照她说的话做了。
【AI 1】両親はどうすることもできず、娘の願いを受け入れた。
【AI 2】両親もどうすることもできず、やむなく娘の言葉に従った。
有錢清江打魚,趙十於沙灘見棺木乃開,見一女子,遂扶棺木,抱下船中,與飯并羹。
【AI譯文】
有钱清江上打鱼的人,赵十在沙滩上看见棺材的盖子打开了,看见里面有个女子,就把棺材扶起来,把她抱下船,给她饭菜吃。
【AI 1】その後、江で漁をする富裕な漁師・趙十が砂浜で棺の蓋が開いているのを見つけ、その中に娘がいることに気づいた。彼は棺を起こし、娘を抱えて船に乗せ、食事を与えた。
【AI 2】その後、清江で漁をしていた金持ちの男・趙十が、砂浜で棺のふたが開いているのを見つけ、中に娘がいるのを見て、棺を起こし、娘を船に運び、食事を与えた。
女云:告你逐日與我此羹并飯,我得安後,家中報謝你。
【AI譯文】
女子说:‘告诉你,每天给我送这种羹和饭,我病好之后,让我家里人报答感谢你。’
【AI 1】娘は「お願いです。毎日この羹と飯を持ってきてください。病が治ったら、必ず家族があなたに報いるでしょう」と頼んだ。
【AI 2】娘は言った。「お願いがあります。毎日、このお粥とご飯を私にください。病が治ったら、私の家族がきっとお礼に来ます。」
後果獲大安。
【AI譯文】
后来果然获得了安宁。
【AI 1】すると本当に彼女の病は快方に向かった。
【AI 2】やがて娘は本当に回復した。
趙十夫婦尋邵長者家,其家大驚喜,問女:如何得命?
【AI譯文】
赵十夫妇找到邵长者家,邵长者家非常惊喜,问女儿:‘你是怎么活下来的?’
【AI 1】趙十夫妻は邵家を訪れ、娘が生きていることを告げると、家族は驚き喜んだ。邵の老人は娘に「どうして生き延びることができたのだ?」と尋ねた。
【AI 2】趙十夫妻は邵長者の家を訪ね、長者一家は非常に驚き喜び、娘に「どうして生きていたのだ?」と尋ねた。
女曰:趙十曰:日煮縵羹供我食,食覺内熱之病皆無矣。
【AI譯文】
女子说:‘赵十说,‘每天煮烂糊的羹给我吃,吃了之后觉得体内燥热的毛病都没有了。’”。
【AI 1】娘は「趙十が毎日とろみのある羹を煮て食べさせてくれました。それを飲むと、体内の熱が消え、病の症状がなくなったのです」と答えた。
【AI 2】娘は答えた。「趙十さんが、毎日やわらかく煮たお粥を作ってくれたの。それを食べると、体の中の熱が引いていくのがわかった。」
邵長者遂酬趙十三百千。
【AI譯文】
邵长者于是酬谢赵十三十万钱。
【AI 1】その後、邵の老人は趙十に三十万銭の報酬を与えた。
【AI 2】そこで邵長者は趙十に30万銭の謝礼を贈った。
今醫所用鰻煎,乃此意也。
【AI譯文】
现在医生用鳗鱼煎药,就是这个意思。
【AI 1】この話が元となり、現在の医療でも鳗魚(ウナギ)を煎じた薬が用いられているという。
【AI 2】今、医者がウナギ(鳗魚)を使って煎じ薬を作るのは、この話に由来している。
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