夷堅志李次仲與小郗先生游建康市啜
茶於肆中有丐者蹣跚行前滿股皆瘡穢
李謂郗曰此人惡瘡如此願先生救之郗
曰不難也正恐恠竒驚衆耳李固請之
郗索紙一幅吐津塗其上稠如膠餳持以
與丐者移時問之曰覺熱否曰始時甚痛
已而極痒今正熱不可忍郗揭紙命李視
之病瘡處新肉已滿瘢痕悉平市人聞者
爭來聚觀郗忽於衆中逸去李急追訪不
及矣
【訓み下し】060-2
『夷堅志』:李次仲,小郗先生と建康の市に游び,茶を肆(みせ)に啜(すす)る。中に丐者有り,蹣跚して前に行き,滿股に皆な瘡(かさ)穢(けが)らわし。李 郗に謂って曰わく,「此の人の惡瘡 此(か)くの如し。願わくは先生之を救わんことを」。郗曰わく,「難からず。正に怪しみ奇(あや)しんで衆を驚かすを恐るるのみ」。李 固く之を請う。郗 紙を索(もと)むること一幅,津を吐いて其の上に塗る。稠(こ)きこと膠餳の如し。持って以て丐者に與(あた)う〔『夷堅志』に「股に貼らしむ」あり〕。時を移して,之に問うて曰わく,「熱を覺ゆるや否や」。曰わく,「始めの時 甚だ痛む。已にして極めて癢(かゆ)し。今ま正に熱さ忍ぶ可からず」。郗 紙を揭げて,李に命じて之を視しむ。瘡を病む處,新たな肉 已に滿ち,瘢痕 悉く平らげり。市人の聞く者爭って來たり聚まり觀る。郗 忽ち衆の中に逸(のが)れ去る。李急ぎて追い訪ぬるも,及ばず。
【注釋】060-2
○夷堅志:044を参照。 ○李次仲:齋藤茂ら『『夷堅志』訳注 乙志上』:李季,次仲は字。『夷堅志』乙志・卷第十三・嚴州乞兒,同書・卷第十六・何村公案にも名が見える。/南宋・李心傳『建炎以來繫年要錄』卷四十三:「紹興元年(1131)三月……甲寅,……初,河間府免解進士李季集天文諸書,號乾象通鑑,季寓居婺州,貧不能逹,乃命本州給札上之。既而天文官呉師彥等頗摘其訛謬,詔與舊書參用,遂以季為將仕郎」。/宋代曹勳の詩に『用秦公贈李次仲韻呈次仲三首』あり。 ○小郗先生:『夷堅志』乙志・卷八・小郗題詩と『夷堅志』丙志・卷第六・李秀才にも名が見える。 ○游:遨遊。通「遊」。 ○建康:建康縣。秦漢秣陵縣地。三國呉孫權移都𥞊陵。改𥞊陵曰建業。因置縣。晉改業爲鄴。避愍帝諱。改建鄴爲建康。隋省。故城在今江蘇江寧縣南。/建康是南京在六朝時期的名稱。 ○市:進行買賣、交易物品的地方。如:「夜市」。 ○啜:吃、喝。『說文解字』口部:「啜,嘗也。」 ○肆:市集貿易的地方、店鋪。/啜茶於肆:『夷堅志』作「入茶肆(茶店に入る)」。 ○中有:『夷堅志』作「見」。 ○丐者:行乞的人。/丐:乞求。乞食的人。 ○蹣跚:形容步伐不穩,歪歪斜斜的樣子。跛行貌。行步緩慢貌。行步搖晃跌撞貌。舞步翩躚貌。 ○行前:行於前列。 ○滿:全、遍、整個。 ○瘡:皮膚或黏膜上的潰瘍。 ○穢:骯髒的、不乾淨的[dirty]。如:「汙穢」、「穢物」。腐敗;腐爛 [corrupt;foul]。 ○不難:簡單、容易。 ○恠竒:怪異奇特。/恠:「怪」の異体字。/竒:「奇」の異体字。 ○衆:許多的人。「眾・众」の異体字。 ○固:堅決、堅持、極力。 ○郗:『夷堅志』作「乃」。 ○索:探求、搜尋。討、要。如:「索求」。 ○津:口水。 ○稠:深濃、厚密。如:「濃稠」。 ○膠餳:稠厚的飴糖。 ○持以與丐者:このあと,『夷堅志』に「令貼於股」あり。 ○移時:經歷一段時間。一會兒。 ○已而:旋即;過了不久。然後。 ○痒:「癢」の異体字。皮膚受到刺激而產生需要抓搔的感覺。 ○忍:含容。 ○瘢痕:疤痕。創口或瘡口留下的痕跡。 ○悉:全部。 ○平:平坦,不高不低、不凸出的。尋常的。安寧的。平安;太平 [safe and sound;peaceful]。平定;平息 [calm down]。平復,康復 [becured]。如:平愈(平復痊愈)。 ○市人:市民。 ○聚觀:群聚觀看。 ○逸去:猶逃走。 ○追訪:追蹤尋訪。追蹤隨訪。 ○不及:趕不上;來不及。
○『夷堅乙志』卷第一・小郗先生:李次仲〔一本有「季」〕與小郗先生游建康市,入茶肆,見丐者蹣跚行前,滿股瘡穢。李謂郗曰:此人惡疾如此,願先生救之。郗曰:不難也。正恐怪奇驚眾耳。李固請,乃索紙一幅,吐津塗其上,稠如膠餳,持以與丐者,令貼於股。移時,問之曰:覺熱否。曰:始時甚痛,已而極癢,今正熱不可忍。郗揭紙,命李視之,新肉已滿,瘢痕悉平。市人爭來聚觀,郗於眾中逸去。李急追訪之,不及矣。〔一本有「湯與立說」。〕
識典古籍*******************************************************
夷堅志:李次仲與小郗先生游建康市,啜茶於肆中,有丐者蹣跚行前,滿股皆瘡穢。
【AI譯文】
『夷坚志』记载:李次仲和小郗先生在建康城中游玩,在一家茶馆中喝茶,有一个乞丐蹒跚地走到他们面前,满大腿都是疮和脏东西。
【AI 1】『夷堅志』には以下のように記されています。李次仲と小郗先生が建康城を散策し、茶館で茶を飲んでいた時、一人の乞食がよろめきながら彼らの前へやって来た。その乞食の両脚はひどい潰瘍と汚れに覆われていた。
【AI 2】『夷坚志』には次のように記されています:李次仲(り・しちゅう)と小郗先生(しょうけいせんせい/郗超)は、建康(けんこう)の町を遊び歩いていた。ある茶館でお茶を飲んでいたところ、ひとりの乞食がよろよろと歩いてきて、太ももいっぱいにただれた潰瘍(えそう)と汚れ物がついていた。
李謂郗曰:此人惡瘡如此,願先生救之。
【AI譯文】
李𫷷对郗愔说:“这个人的恶疮严重到这种地步,希望先生救治他。”
【AI 1】これを見た李𫷷は郗愔に言った。「この者の悪性の潰瘍はあまりにひどい。先生、どうか救ってやってください。」
【AI 2】李𫷷(り・こう)は郗愔(けい・いん)に言った:「この男の悪性の潰瘍はひどいものです。どうか先生、彼をお救いください。」
郗曰:不難也,正恐怪奇驚衆耳。
【AI譯文】
郗超说:“这不难啊,只是担心这怪异奇特的行为会让众人吃惊罢了。”
【AI 1】すると郗超は答えた。「それほど難しいことではありません。ただ、この奇妙な方法を使えば、人々は驚くだろうと思っただけです。」
【AI 2】郗超は答えた:「それほど難しいことではありません。ただ、この奇妙なやり方を見て、人々が驚くだろうというのが気がかりなのです。」
李固請之,郗索紙一幅,吐津塗其上,稠如膠餳,持以與丐者。
【AI譯文】
李固再三请求,郗鉴要来一张纸,在上面吐了一口唾沫,唾沫浓稠得像胶糊,他把纸递给乞丐。
【AI 1】李固が何度も頼むので、郗鑑は一枚の紙を手に取り、それに濃い唾液を吐きつけた。その唾液はまるで膠のように粘り気があった。そして、その紙を乞食に渡した。
【AI 2】李固(り・こ)が繰り返し懇願したため、郗鑑(けい・かん)は一枚の紙を取り出し、その上に唾を吐いた。その唾液は糊のように濃く粘っていた。そしてそれを乞食に手渡した。
移時,問之曰:覺熱否?
【AI譯文】
过了一会儿,(小郗)问他说:‘觉得热吗?’
【AI 1】しばらくして郗先生が乞食に尋ねた。「熱さを感じますか?」
【AI 2】しばらくすると、小郗が乞食に尋ねた:「熱く感じますか?」
曰:始時甚痛,巳而極痒,今正熱不可忍。
【AI譯文】
那人回答说:“刚开始刚开始的时候非常痛,后来又特别痒,现在则是热得受不了。”
【AI 1】すると乞食は答えた。「最初は強烈な痛みがありましたが、その後はひどく痒くなり、今は耐えられないほど熱さを感じます。」
【AI 2】乞食は答えた:「最初はひどく痛みましたが、その後ものすごくかゆくなり、今は熱くてたまりません。」
郗掲紙命李視之,病瘡處新肉巳滿,瘢痕悉平。
【AI譯文】
郗雍揭开纸让李阳看,疮口已经长满了新肉,疤痕都已经长平了。
【AI 1】その言葉を聞き、郗雍は紙を剥がして李陽に見せた。すると、潰瘍の傷口には新しい皮膚が再生され、傷跡もほぼ平らになっていた。
【AI 2】郗雍(けい・よう)が紙をめくって李陽に見せたところ、潰瘍の患部にはすでに新しい肉が盛り上がり、傷跡すら平らになっていた。
市人聞者,爭來聚觀。
【AI譯文】
集市上听到这个消息的人,都争着赶来围观。
【AI 1】この出来事を耳にした市場の人々は、競い合うように集まって見物した。
【AI 2】この出来事を聞きつけた市中の人々は、こぞって押し寄せ、見物に集まった。
郗忽於衆中逸去,李急追訪,不及矣。
【AI譯文】
郗超忽然在众人之中悄悄离开,李弘度急忙追赶寻找,但是没有追上。
【AI 1】しかし、郗超は騒ぎの中で静かにその場を離れた。李弘度は急いで彼を追いかけたが、見つけることはできなかった。
【AI 2】すると郗超はその人混みの中を、ひそかに立ち去ってしまった。李弘度(り・こうど)は慌てて後を追ったが、結局追いつくことはできなかった。
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