2025年9月28日日曜日

『歷代名醫蒙求』086-1

 郝老明方 與權識證  郝老は方を明らめ 與權は證を識る (王通・郝老・謝與權)

    名醫録皇祐中有學究任道腿閒患一瘡

    始發赤腫𠋩絶便變黒後穴有黃水出四 

    邊浮漿起累治不差有醫者王通看之此

    瘡狹長似魚臍下瘡也以一異散子用雞

    子清調傅其瘡日三易而數日得愈任道

    求其方通曰止用雪玄一味自後累訪名

    醫求其雪玄何物也諸醫皆不能別道因

    㑹醫者郝老曰甞記聖惠中有一方治此 

    疾用臘月猪頭燒灰以雞子清調傅此

    乃是也雪玄爲藥非郝老博學而多記後

    醫豈不惑耳

    

  【訓み下し】086-1

    『名醫錄』:皇祐中,學究の任道なるもの有り,腿閒に一瘡を患う。始め赤き腫れを發す。復た絕えて便ち黑に變ず。後に穴より黃水有って出づ。四邊に浮漿起こる。累ねて治せども差(い)えず。醫者の王通有り,之を看る。此の瘡 狹く長く,魚臍下瘡に似たり,と。一つの異(い)なる散子を以て,雞子清を用い調す。其の瘡に傅(ぬ)りて,日に三たび易う。而して數日にして愈ゆるを得たり。任道 其の方を求む。通曰わく,「止(た)だ雪玄の一味を用いるのみ」。自後 累(しき)りに名醫に訪(たず)ねて,其の雪玄の何物たるかを求めり。諸醫 皆な別つ能わず。道 醫者の郝老に會うに因る。曰わく,「嘗て『聖惠』中に一方有って,此の疾を治するを記(おぼ)ゆ。臘月猪の頭を用いて燒きて灰にし,雞子清を以て調して傅(ぬ)る,と。此れ乃ち是れなり」。雪玄の藥と爲すは,郝老の博學にして多く記ゆるに非ずんば,後の醫 豈に惑わざるのみならんや。

    

  【注釋】

 ○名醫録:008を参照。 ○皇祐:宋仁宗趙禎的年號(1049年~1054年)。 ○學究:本為唐宋時考試的科目之一。後用以泛稱讀書人。 ○腿閒:「間」の異体字。 ○瘡:皮膚或黏膜上的潰瘍。如:「頭瘡」、「膿瘡」。 ○赤腫:紅腫。 ○𠋩:「復」の異体字。 ○絶:「絕」の異体字。斷、隔開。如:「斷絕」。停止。 ○黒:「黑」の異体字。 ○四邊:四方,四周。東、南、西、北四方。方形物體的四周邊緣。 ○浮漿:泛稱較濃稠的液體。 ○差:病癒。通「瘥」。 ○魚臍下瘡:『備急千金要方』卷二十二 癰腫毒方・疔腫第一:「魚臍疔瘡,似新火針瘡,四邊赤中央黑,可針刺之,若不痛即殺人,治之方:以臘月魚頭灰和髮灰等分,以雞溏屎和傅上。此瘡見之,甚可而能殺人〔一作「效否即殺人」〕。(『外臺』不用髮灰,用雞子清和塗)。/治魚臍瘡,其頭白似腫痛不可忍者方:先以針刺瘡上四畔作孔,擣白苣取汁,滴著瘡孔內。」 ○異:特別的、不平常的。 ○散子:散藥。 ○雞子清:雞蛋清,是去掉收蛋黃的部位的,主要成分是蛋白質。卵白,其氣清,其性微寒,能清氣,治伏熱、目赤、咽痛諸疾。/雞子:雞蛋。 ○調:混合、配合。 ○傅:擦抹、塗抹。 ○方:為治療某種疾病而組合起來的若幹種藥物的名稱、劑量和用法:藥方。合成藥物的配方 [recipe]。 ○一味:中醫上稱藥一種為「一味」。 ○自後:從此以後。厥後。 ○累:頻頻。 ○訪:詢問、徵詢。尋求、探尋。探望、拜望。 ○何物:什麼東西。 ○別:區分;辨別 [distinguish]。『醫說』作「識」。 ○㑹:「會」の異体字。 ○郝老:おそらく郝允のこと。郝允(?-1054年),宋代醫家。博陵(今河北定縣、蠡縣一帶)人。精通醫術,尤長脈診。治病多效,行醫四十餘年,活人甚眾。嘗將『內經』一書加以注釋,名為『素問箋』。太醫趙宗古等從其學。子懷質,傳其學,亦精脈診。090「郝允苦瓢 王通雪玄」を参照。 ○甞:「嘗」の異体字。 ○記:將事物印象留在腦海中。 ○聖惠:『太平聖惠方』。方書。簡稱『聖惠方』。一百卷。刊於922年。本書系北宋翰林醫官院王懷隱、王佑、鄭彥、陳昭遇等人依據醫局所藏北宋以前各種方書、名家驗方並宋太宗親驗醫方,又廣泛收集民間效方集體編寫而成。 ○中有一方治此疾:『太平聖惠方』卷第六十四・治魚臍丁瘡諸方:「治魚臍丁瘡如黑豆色者。以大針刺瘡四邊。兼中央。後宜此方。臘月豬頭(一枚燒灰)。右擣細羅為散。以鷄子清調令白〔『太平聖惠方正誤』當作「勻」〕。傅瘡上。日三易之」。 ○臘月:農曆十二月。 ○猪:「豬」の異体字。/『太平聖惠方』に「臘月豬」が135回ほど見える。固有名詞か。俗語稱臘月二十六,殺豬割年肉。 ○博學:廣泛地學習。學識淵博。【博學多聞】學問廣博,見識豐富。 ○耳:『醫說』作「耶」。豈に惑わざらんや。

     ○『醫說』卷十・瘡・魚臍瘡:「皇祐中,學究任道腿間患一瘡,始發赤腫,復絕,便變黑,後穴則有黃水出,四邊浮漿起,累治不差。醫王通看之,此瘡狹長,似魚臍下瘡也。遂以大鍼鍼四向幷中,隨鍼有紫赤水汁出如豆汁。言此一因風毒蘊結而成,二因久坐,血氣凝澁而致,三因食肉,有人汗落其間也。道曰:素好讀書而久坐。此疾數歲前夏月,道中買猪脯味水飯,疑似人肉,食以後得斯疾。通曰:與誤食人汗不遠矣。以一異散子,用雞子清調敷其瘡,日三易,數日得愈。道堅求其方。通曰:止用雪玄一味。自後累訪名醫,求其雪玄何物,醫皆不識。道因至許鄭間,會醫者郝老,曰:嘗記『聖惠』有一方治此疾。用臘月猪頭燒灰,以雞子清調傅,此乃是也。雪玄,非郝老博學多記,後醫豈不惑耶(『名醫錄』)」。

    

識典古籍*******************************************************

郝老明方,與權識證。

    【AI譯文】

郝老明白药方,与权认识病症。

    【AI  1】「郝先生は薬の処方を理解しており、権氏は病状を把握している。」

    【AI  2】「郝老は薬の処方を理解し、権は病の症状を認識している。」

名醫錄:皇祐中,有學究任道,腿閒患一瘡,始發赤腫,復絶便變黑,後穴有黃水出,四邊浮漿起,累治不差。

    【AI譯文】

『名医录』记载:皇祐年间,有个学究叫任道,大腿内侧长了一个疮,开始发作的时候红肿,不久就变成黑色,,后来疮口有黄水流出,四周泛起浮浆,多次治疗都不见好。

    【AI 1】『名医録』によると、皇祐年間に、学究の任道という人物が大腿の内側に腫れ物を患った。発症時は赤く腫れたが、ほどなくして黒ずみ、やがて膿が出始め、周囲には黄色い滲出液が広がった。何度も治療を試みたものの、回復の兆しはなかった。

    【AI 2】『名医録』によると、皇祐年間(北宋の仁宗の時代)、任道という学者がいた。彼は太ももの内側に腫れ物(できもの)を患い、発病当初は赤く腫れていたが、間もなく黒く変色した。さらに膿が出て、周囲がじくじくし、何度治療しても効果がなかった。

有醫者王通看之,此瘡狹長,似魚臍下瘡也。

    【AI譯文】

有个叫王通的医生给他看病,说这个疮又长又窄,像是鱼脐下面的疮。

    【AI 1】そんな折、王通という医師が診察し、「この腫れ物は細長く、まるで魚のへそ下の病変に似ている」と述べた。

    【AI 2】ある日、王通という医者が診察し、「この腫れ物は細長く、魚のへその下にできる腫れ物に似ている」と言った。

以一異散子,用雞子清調傅其瘡,日三易,而數日得愈。

    【AI譯文】

用一味雄黄散,用鸡蛋清调后敷在他的疮上,每天换三次药,几天就好了。

    【AI 1】そして雄黄散を処方し、鶏卵の白身で調合した薬を患部に塗布し、一日三度の貼り替えを指示したところ、数日で完治した。

    【AI 2】そして、「雄黄散」という薬を一種類だけ使い、それを鶏卵の卵白で練って患部に塗り、1日3回薬を取り替えるようにしたところ、数日で完治した。

任道求其方,通曰:止用雪玄一味。

    【AI譯文】

任道问他有什么方法,他回答说:‘只用雪玄一味药。’

    【AI 1】任道は王通に「治療法は何か特別なものなのか」と尋ねると、王通は「ただ雪玄という一種類の薬を使っただけだ」と答えた。

    【AI 2】任道が「これはどんな方法なのか?」と尋ねると、王通は「『雪玄(せつげん)』という一種類の薬を使っただけだ」と答えた。

自後累訪名醫,求其雪玄何物也?

    【AI譯文】

从那以后,多次拜访名医,请教他们‘雪玄’到底是什么东西。

    【AI 1】このことから、任道は名医を訪ね歩き、「雪玄とは何か」と問うたが、

    【AI 2】それ以後、任道は「雪玄とは一体何か」を調べるために、たびたび名医たちを訪ねたが、

諸醫皆不能别。

    【AI譯文】

各位医生都不能区分。

    【AI 1】誰もその正体を知らなかった。

    【AI 2】誰もそれが何であるか分からなかった。

道因會醫者郝老曰:嘗記聖惠中有方,治此疾,用臘月猪頭燒灰,以雞子清調傳,此乃是也。

    【AI譯文】

道因碰到医生郝老说:“曾经记得『圣惠方』中有个方子,治疗这种病,用腊月的猪头烧成灰,用鸡蛋蛋清调匀敷上,这就是(治疗的方子)啊。”

    【AI 1】後に、彼は医師の郝老と出会い、郝老はこう述べた。「『聖恵方』に記されている処方の中に、この病を治す方法がある。それは、臘月の豚の頭を焼いて灰にし、鶏卵の白身と混ぜて塗布するというものだ。まさにこれがその治療法だ」。

    【AI 2】その後、郝老(かくろう)という医者に出会い、彼がこう言った。「昔、『聖恵方』という医書の中に、こういう病に効く処方が載っていた。臘月(旧暦12月)の豚の頭を焼いて灰にし、それを卵白と混ぜて塗る――これこそがその“方子”だ。」

雪玄爲藥,非郝老博學而多記,後醫豈不惑耳。

    【AI譯文】

雪玄作为药材,如果不是郝老博学多识,后来的医生岂不是要感到疑惑吗?

    【AI 1】雪玄が薬材として用いられる場合、もし郝老が博識でなかったなら、後の医師たちは戸惑うことになったのではないでしょうか。

    【AI 2】つまり、「雪玄」という薬の正体はこの処方であり、もし郝老のように博識な人物がいなければ、後の医者たちはきっと混乱したままだったろう、ということである。

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