名醫録温州有上髙匠温興因造屋上梁
失脚墜地地上有鏟頭豎柱傍脚被傷血
如湧出村中無藥却有門徒僧道光於空
屋門扇上聚得一撮塳塵掩定即血不出
痛止兩日便厴堅興問道光塳塵如何治
得金瘡曰古人用門桯塵者此也
【訓み下し】059-2
『名醫錄』:溫州に上高匠の溫興有り〔『醫說』作「溫州に匠人有り」。〕。屋を造るに梁を上ぐるに因って,脚を失(あやま)って地に墜(お)つ。地上に鏟の頭有り,柱の傍に豎(た)つ。脚 傷を被り,血 湧き出づるが如し。村中に藥無し。却(まさ)に門徒僧の道光有り。空屋の門扇の上に於いて,一撮(つま)みの塳塵を聚め得て,掩い定むれば,即ち血出でず,痛み止まる。兩日にして便ち厴(かさぶた)〔𥀬〕堅く興こる。道光に問う,「塳塵は如何にして金瘡を治し得るか」。曰わく,「古人の門桯の塵を用いる者は,此れなり」。
【注釋】059-2
○名醫録:008を参照。 ○温州:漢永嘉郡。唐置温州。尋曰永嘉郡。後復曰温州。宋曰温州永嘉郡。升爲瑞安府。元置温州路。明曰温州府。清因之。民國廢。故治卽今浙江永嘉縣。⦿唐置北温州。尋廢。故治在今山西孝義縣西九十里。/温:「溫」の異体字。 ○髙:「高」の異体字。 ○匠:泛稱各種技術工人。 ○温興:「温州有上髙匠温興」,『醫說』作「溫州有匠人」。 ○屋:房舍。房間。 ○上梁:建造新屋時,架上主梁。依民間習俗,上梁時,須備香燭禮品,祝告祖先、神祇,以求家宅平安。 ○失脚:舉步不慎而跌倒。走路不小心而跌倒。/脚:「腳」の異体字。 ○墜地:物體落地。 ○鏟:一種帶把的金屬器具,可削平或撮取東西。やりがんな。ちょうな。 ○豎:使物體直立。清・王念孫『廣雅疏證』卷四上・釋詁:「豎,立也。」 ○却:「卻」の異体字。正、恰好。/『醫說』になし。 ○門徒:弟子、徒弟。守門吏。江南舊俗,大戶人家有約定的僧尼道士做禮懺,平時互相往還,這些僧道被稱為某施主的“門徒”。/『醫說』になし。 ○空屋:無人居住的屋子。 ○門扇:指門。門扉。房屋、城墻、車舟等出入口能開關的障蔽裝置。 ○一撮:容量單位,古以六粟為一圭,十圭為一撮,見『孫子算經』;或以四圭為一撮,見『漢書‧律曆志上』“量多少者不失圭撮”顏師古注引應劭說。按,今市制一撮等於一市升的千分之一。用兩三個手指所能撮取者。形容微少。 ○塳:塵土。 ○塵:飛揚的細小灰土。如:「塵埃」。 ○掩:遮蔽。 ○厴:蟹臍,蟹腹下的薄殼 [operculum]。46でも同じ字が用いられている。前後の意味から,「𥀬」(瘡痂)字と解しておく。 ○金瘡:金屬利器對人體所造成的創傷。刀劍等金屬器械所造成的傷口。 ○門桯:門檻。/桯:堂屋前的柱子。通「楹」。橫木。碓等工具的杆子或短木。
○『醫說』卷七・湯火金瘡・治金瘡・又:「溫州有匠人,造屋失腳墜地。地上有鏟頭豎柱傍,腳痃被傷,血如湧出。村中無藥。有僧道光於門扇上撮得塳塵掩定,血止痛定,兩日便靨堅。問道光,塳塵如何治得金瘡?曰:古人用門桯塵者,此也」。
識典古籍*******************************************************
名醫錄:溫州有上高匠溫興,因造屋上梁,失脚墜地,地上有鏟頭豎柱,傍脚被傷,血如湧出。
【AI譯文】
『名医录』记载:温州有个工匠叫温兴,有一次在建造房屋的时候,上梁时失足坠地,地上有一把铲头竖在那里,铲头的尖部把他的小腿扎伤了,鲜血汩汩流出。
【AI 1】『名医録』には以下のように記されています。温州に温興という工匠がいた。ある時、彼が家屋の建設作業をしていた際、梁を上げる作業中に足を踏み外し、地面へ転落してしまった。その地面には立てかけられていた鋤(すき)の刃先があり、それが彼のすねを突き刺した。すると、鮮血がどくどくと流れ出たのである。
【AI 2】『名医録』には次のように記されています:温州に温興(おんこう)という名の職人がいた。あるとき、家屋の建築作業中に梁を上げている最中、足を滑らせて地面に落ちてしまった。ちょうどそこには鍬(くわ)の刃先が立てかけられており、その鋭い先端が彼のすね(脛)に突き刺さって、大量の血がどくどくと流れ出した。
村中無藥,卻有門徒僧道光,於空屋門扇上聚得一撮塳塵,掩定,即血不出,痛止兩曰,便厴堅。
【AI譯文】
村子里没有药,但是有个名叫道光的门徒僧,在空屋子的门扇上收集到一小撮尘土,涂在伤口上,血马上就不流了,疼痛也止住了,两天后,伤口就愈合了。
【AI 1】村には薬がなかった。しかし、「道光」という名の僧の弟子が、空き家の扉についたわずかな埃を集め、それを傷口に塗ったところ、すぐに出血が止まり、痛みも消えた。そして二日後には傷口が完全に治癒した。
【AI 2】村には薬がなかったが、道光という名の弟子僧がいた。彼は空き家の戸板の上にたまった少量のほこりを集め、それを傷口に塗った。すると血はすぐに止まり、痛みも収まり、二日後には傷が癒えた。
興問道光:塳塵如何治得金瘡?
【AI譯文】
温兴问道光:‘塳尘如何治得金疮?’
【AI 1】温興は道光に尋ねた。「門戸の埃でどうして金創(刀傷)を治せるのか?」
【AI 2】温興(おんこう)が道光に尋ねた:「戸板のほこりでどうして刀傷(きんしょう)が治せるのか?」
曰:古人用門程塵者,此也。 ★程:原文は「桯」。はしら。
【AI譯文】
他说:‘古人用门篷上的尘土来治病,就是这种东西。’
【AI 1】すると道光は答えた。「古代の人々は、門や天幕に積もった埃を使って病を治療していた。それと同じものなのだ。」
【AI 2】道光はこう答えた:「古人は門の庇(ひさし)や戸の上のほこりを使って病を治したもので、それがこの塵(ちり)なのです。」
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