2011年2月23日水曜日

29-1 鍼灸手引草

29-1鍼灸手引草
    慶應義塾大学医学情報センター富士川文庫F492・7-Sh-10
    『臨床鍼灸古典全書』29所収
  一部、判読に疑念あり。かりに訓み下す。

鍼灸手引草序
其鍼灸者原素靈而其
書簡古幽邃初學者未
易通也故爾本軒岐扁
雖繡梓鍼治要穴灸經希
行于世然而多缺略故補
  一ウラ
其畧采摭羣書之要領而
以欲使邊鄙獨學者而
通曉乎
     大簡室主人
安永癸巳仲夏


  【訓み下し】
鍼灸手引草序
其れ鍼灸は、素靈に原(もと)づく。而れども其の
書は簡古幽邃にして、初學者は未だ
通じ易からざるなり。爾(しか)るが故は軒岐扁に本づき、
梓を繡すと雖も、鍼治要穴灸經、
世に行わるること希(まれ)なればなり。然り而して缺略多し。故に
  一ウラ
其の略を補い、群書の要領を采摭して、而して
以て邊鄙の獨學者をして
通曉せしめんと欲す。
     大簡室主人
安永癸巳仲夏


  【注釋】
○書:あるいは「至」か。 ○簡古:簡朴古雅。素朴であって古びた良さを持つ。 ○ 幽邃:奥深い。深遠。 ○故爾:そのため。 ○軒岐扁:「軒岐扁」は軒轅(黄帝)と岐伯と扁鵲。 ○繡梓:上梓する。印刷する。 
  一ウラ
○采摭:拾い集める。 ○大簡室主人: ○安永癸巳:安永二年(一七七三)。 ○仲夏:陰暦五月。


 以下、句切り、カタカナをひらがなにかえる。すべての漢字にふりがなが付いているが、一部をのぞき、はぶく。

鍼灸手引草題言
此(コノ)書原(モト)素・難、甲乙經、類經、千金方、神應經、入門、聚英、資生經、外臺祕要方等
の説を採(トツ)て其(ソノ)孔穴なるものを参考して、以て邊鄙の針工の手引の
資(タスケ)にならんことを思(ヲモフ)て、國字を以て示す、四十餘年以來、療治の風(フウ)に變(カハリ)
あるにより、某(ソレカシ)當時見聞(ケンモン)して、又は經驗なることを増益し、當流施治の
手引に至(イタラ)んことを思(ヲモフ)て、手引草(テヒキクサ)と号(ナヅク)る而已(ノミ)。

  【注釋】
○神應經:明代・陳会が撰述し、弟子の劉瑾が編輯したとあるが、内容からみて、おもに『普済方』鍼灸門を元として改編したものという。「神應」は、扁鵲に対する諡(宋代、仁宗の時)。 ○入門:明・李梴『醫學入門』。 ○聚英:明・高武『鍼灸聚英』。 ○資生經:南宋・王執中『鍼灸資生經』。 ○國字:日本語文。漢字かな交じり文。

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