2011年2月25日金曜日

30-2 穴名総目

30-2穴名総目
     国会図書館所蔵特1-1839
     オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』30所収
 一部、判読に疑念あり。

穴名總目序
髓穴之於人也大矣湯液之報使鍼
砭之迎隨灸焫之補瀉一取法於此
為醫不可不究焉故著其書者歷代
以來相踵不絶然而或失之繁或失之
簡元滑壽所著十四經發揮能盡其
系屬矣雖然載穴法分寸者揮散各
  一ウラ
注而圏以別之予毎講論其書後進
之徒開卷而狼狽不知其序次者不由
焉故今撮其書穴法分寸而成小冊名
曰穴名總目滑説屬謬誤者引諸書以
正之聊便于初學云爾文化戊辰孟
秋九日序于阿東鳳剛園


 【訓み下し】
穴名總目序
髓穴の人に於けるや、大なり。湯液の報使、鍼
砭の迎隨、灸焫の補瀉、一に法を此に取る。
醫為(た)るもの究めざる可からず。故に其の書を著す者は、歷代
以來、相い踵(つ)ぎて絶えず。然り而して或いは之を繁に失し、或いは之を
簡に失す。元の滑壽著す所の十四經發揮、能く其の
系屬を盡くす。然りと雖も穴法分寸を載する者は、揮るって各
  一ウラ
注に散じ、而して圏して以て之を別かつ。予、其の書を講論する毎に、後進
の徒は、卷を開きて狼狽す。其の序次を知らざる者は、焉(これ)に由らず。
故に今ま其の書の穴法分寸を撮りて、而して小冊を成す。名づけて
穴名總目と曰う。滑説の謬誤に屬する者は、諸書を引きて以て
之を正す。聊か初學に便ずと云爾(しかいう)。文化戊辰、孟
秋九日、阿東の鳳剛園に序す。

  【注釋】
○隨穴:隧穴、隧輸(腧穴に対する堀元厚などの用語)とおなじか。 ○報使:「引經報使。方剤中のある種の薬物には、他の薬物成分を病変部位や特定の経脈に運ぶ作用がある。この作用を引経報使という。」(たにぐち『中国医学辞典』基礎編) ○系屬:穴がどの経脈に属する、ということか。 ○揮:まき散らす。 ○圏:丸印をつける。 ○講論:談論、討論。 ○開卷:本を開く。読書すること。 ○狼狽:周章狼狽。どうしていいかわからず、途方に暮れる。 ○序次:順序。編集方針。 ○文化戊辰:文化五年(一八〇八年)。 ○孟秋:初秋。旧暦七月。 ○阿東:封面に「阿波 鳳剛園藏」とあるので、阿波の漢語風表記か。 ○鳳剛園:


書穴名總目後
經絡之終始孔穴之分寸必取
法於靈素二經而可以精覈細
尋也捨靈素二經而其將誰適
從生於聖没千載之後而猶有
遺經之可以憲章祖述者則此
天之未喪斯文也醫家之幸其   ※「未」、原作「末」。
  一ウラ
謂之何然而僥倖之徒不取法
於靈素二經而捷徑是趍詭遇
十禽務競名利不可不歎也方
國家祟重文教治具畢張吾醫
之道亦随而較著矣於是乎使
峒山先生講醫經於學館先生
  二オモテ
益脩其業彌精其學頃著此書
以頒二三子此書也眀於十四
經發揮之穴法而其旨則根於
靈素二經也後學苟能據此以
精覈細尋焉則經絡之終始孔
穴之分寸宜得靈素二經之意
也詩云古訓是式威儀是力其
  二ウラ
斯之謂與
文化五年戊辰秋九月
    門人 横田壽卿識
       〔印形白字「壽卿/之印」「萬/◆」〕


  【訓み下し】
穴名總目の後に書す
經絡の終始、孔穴の分寸、必ず
法を靈素二經に取る。而して以て精覈細
尋す可きなり。靈素の二經を捨てて、而して其れ將に誰にか適
從せんとする。聖没して千載の後に生まれ、而して猶お
遺經の以て憲章祖述す可き者有れば、則ち此れ
天の未だ斯文を喪(ほろぼ)さざるなり。醫家の幸い、其れ
  一ウラ
之を何と謂わん。然り而して僥倖の徒、法を
靈素の二經に取らず、而して捷徑是れ趍(はし)る。詭遇して
十禽し、務めて名利を競う。歎かざる可からざるなり。方
國家は、文教を祟重し、治具畢(ことごと)く張る。吾が醫
の道も、亦た隨いて較著なり。是(ここ)に於いて
峒山先生をして、醫經を學館に講ぜしめ、先生
  二オモテ
益々其の業を脩(おさ)め、彌々(いよいよ)其の學に精(くわ)し。頃おい此の書を著し、
以て二三子に頒つ。此の書や、十四
經發揮の穴法を明らかにし、而して其の旨は、則ち
靈素の二經に根ざすなり。後學、苟も能く此れに據り、以て
焉(これ)を精覈細尋せば、則ち經絡の終始、孔
穴の分寸、宜しく靈素二經の意を得べし。
詩に云う、古訓は是れ式(のつと)り、威儀を是れ力(つと)む、と。其れ
  二ウラ
斯れを之れ謂うか。
文化五年戊辰秋九月
  門人 横田壽卿識(しる)す


  【注釋】
○精覈:詳しく考察する。 ○細尋:細かく探究する。 ○適從:したがう。『春秋左傳』僖公五年:「一國三公、吾誰適從」。 ○憲章:法制を遵守する。『禮記』中庸:「仲尼祖述堯舜、憲章文武」。 ○祖述:古人の行ないを奉じならう。 ○斯文:礼楽・教化・制度。『論語』子罕:「天之將喪斯文也、後死者不得與於斯文也」。 
  一ウラ
○然而:逆接の接続詞。しかしながら。 ○僥倖:思いがけない成功や災いを免れること。 ○捷徑:近道。手っ取り早い手段。 ○趍:「趨」に同じ。追求する。追い求める。 ○詭遇:もともとは礼法に反して禽獣を射止めること。『孟子』滕文公下:「一朝而獲十禽……吾為之範我馳驅、終日不獲一。為之詭遇、一朝而獲十(一朝にして十禽を獲たり……吾れ之が為に我が馳驅を範すれば、終日にして一をも獲ず。之が為に詭遇すれば、一朝にして十を獲たり)」。趙岐注:「橫(ほしいままに)而射之曰詭遇」。朱熹注「詭遇、不正而與禽遇」。後に正道によらず名利を追求することの比喩。 ○十禽:十匹の禽獣を獲る。 ○方今:いままさに。 ○祟重:崇拜して重んじる。 ○文教:文化教育。 ○治具:国を治めるために必須の道具。法令をいう。唐・韓愈『進學解』:「方今聖賢相逢、治具畢張、拔去凶邪、登崇畯良」。政治の道具である法制もことごとく行われる。 ○張:確立する。 ○較著:明らか。顕著。 ○於是乎:順接の接続詞。「於是」と同じ。 ○峒山先生:本書の撰者、小原春造の号。 
  二オモテ
○二三子:各位。諸君。 ○眀:「明」の異体字。この跋は隷書で書かれていて、実際は「目」の部分が「囧」となっている。 ○根:根拠とする。もとづく。 ○後學:後進の学習者。 ○古訓是式、威儀是力:『詩經』大雅・蕩之什・烝民。/古訓:鄭玄箋:「故訓、先王之遺典也。式、法也。力猶勤也」。/威儀:荘厳な仕儀。

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