2011年2月16日水曜日

27-8 經脈藥註

27-8 『經脈藥註』
       京都大学医学図書館富士川文庫所蔵『經脈藥註』(ケ-60)
       オリエント出版社『臨床鍼灸古典全書』27所収
  一部、虫損で難読。
  (跋)
予意一汗一下以經而分一宣一導因經而異
 故寒熱温涼及補瀉引嚮非因經而分之則
 繕生救死之功殆鮮矣是以先詳乎經脉之
 所歴而後以各經主藥附之以三書同異麤
 述其意使初學者分經施治則庶幾不誤焉
 又奇經八脉主藥引嚮先哲已忘言非闕歟
 故是亦推以述大槩然綴學以欲補闕未知
 養生之士爲一具否抑恐爲覆瓿
旹寛文九己酉季壯月初二 雒宜春菴玄醫書

予意(おも)えらく、一汗一下、經を以て而して分つ。一宣一導、經に因りて而して異(こと)にす。
 故に寒熱温涼及び補瀉引嚮、經に因りて之を分つに非ざれば、則ち
 生を繕(おさ)め死を救うの功、殆ど鮮(すく)なし。是(ここ)を以て先ず經脉の
 歴(へ)る所を詳らかにし、而る後に各經の主藥を以て之に附す。三書の同異を以て麤(あら)々
 其の意を述べ、初學者をして經に分かち治を施さしめば、則ち誤らざるに庶幾(ちか)からん。
 又た奇經八脉の主藥引嚮は、先哲已に言を忘れて闕するに非ざる歟(か)。
 故に是れも亦た推して以て大槩を述ぶ。然して學を綴り、以て闕を補わんと欲す。未だ
 養生の士の一具と爲るや否やを知らず。抑(そも)々覆瓿と爲るを恐る。
旹は寛文九己酉季壯月初二 雒の宜春菴玄醫書す

   【注釋】
○汗・下・宣・導:いずれも治法。汗は腠理を開いて、発汗を促進させ、病邪を肌表から汗とともに解する治法。/下は、大便を瀉下することにより、下焦に停留する宿食・瘀血などの実邪を体外に排出する治法。/宣は、邪気を発散し、欝滞を疏通させる治法。/導は、気を特定の経絡に誘導することであろう。 ○寒熱温涼:それぞれ治法。 ○補瀉引嚮:それぞれ治法。嚮は、導く。 ○繕:治める。 ○三書:未詳。本文から推定するに、龔廷賢『万病回春』、楊祟魁『本草真詮』、李中梓『頤生微論』か。 ○麤:「粗」の異体字。 ○先哲:古代の賢人。 ○覆瓿:重んずるほどの価値のない著述。また、自分の著述の謙称。著述などが世間に広まらず、その書物でかめのふたをする。『漢書』揚雄傳「時有好事者載酒肴從游學、而鉅鹿侯芭常從雄居、受其『太玄』、『法言』焉。劉歆亦嘗觀之、謂雄曰、空自苦。今學者有祿利、然尚不能明『易』、又如『玄』何。吾恐後人用覆醬瓿也」。 ○旹:「時」の異体字。 ○寛文九己酉:西暦一六六九年。 ○季:原文は「子」の部分が、「了」となっているが、「季」と判断した。ここでは「年」の意か。 ○壯月:陰暦八月。 ○初二:二日。陰暦では、毎月一日から十日までをみな上に「初」字を冠する。上旬の意。 ○雒:字形および名古屋玄医著『閲甫食物本草』などから推定。雒邑、京都の意。 ○宜春菴玄醫:名古屋玄医(1628~96)。玄医は京都の人で、字は閲甫・富潤、号は丹水子・宜春庵・桐渓。(『日本漢方典籍辞典』)

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